アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

デイヴ・グルーシン / マイグレーション5

MIGRATION-1 フォープレイの前身がボブ・ジェームスソロ・アルバム『GRAND PIANO CANYON』にあったことは以前に書いたが,実は『GRAND PIANO CANYON』にも前身があった。つまりはフォープレイの元ネタの元ネタに当たる。

 それが何と!ボブ・ジェームスのライバルであるデイヴ・グルーシングラミー受賞作MIGRATION』(以下『マイグレーション』)である。
 そう。『マイグレーション』には,ライバルさえも魅了させる音,あのボブ・ジェームスさえも振り向かせる音がある。本当にいいアルバムだ。『マイグレーション』の音に,何年経っても憧れる自分が,いいや“恋焦がれる”自分がいる。

 『マイグレーション』の基本的な編成は,デイヴ・グルーシンキーボード(そこにドン・グルーシンプログラミングで多重録音を加えている),エイブラハム・ラボリエルマーカス・ミラーベースハーヴィー・メイソンオマー・ハキムドラムマイク・フィッシャーパーカッション。そこにサックスギターが数曲ゲストで参加している。ピアノ・トリオ+1。

 こんなにも小さな編成なのに,実に「艶やかな」演奏である。これ以上の音の厚みは『マイグレーション』には必要ない。
 『マイグレーション』で実証されたデイヴ・グルーシンのアイディアが『GRAND PIANO CANYON』でも実証されて,あのフォープレイの出発点に繋がったのだった。

 いいものはいい。ボブ・ジェームスだろうとデイヴ・グルーシンだろうと関係ない。
 かつて2人は「東のボブ・ジェームス。西のデイヴ・グルーシン」と呼ばれていた。しかしフォープレイは「東のボブ・ジェームス」に西海岸のリズム隊。
 そうなったのは『マイグレーション』で「西のデイヴ・グルーシン」が東海岸のマーカス・ミラーオマー・ハキムと組んでみせたから。

MIGRATION-2 やっぱり『マイグレーション』と来れば【FIRST−TIME LOVE】である。
 元々“素の”【FIRST−TIME LOVE】が大好きだったのだが,超最高に好きになったのには理由があった。

 それがTOKYO FM系「SELECT LIVE UNDER THE SKY」の生中継終わりで,ナジャが語るバックで流れるエンディング曲。あのシチュエーションが本当に素晴らしかった! 盛り上がりすぎた真夏の大興奮LIVEをCOOLに冷ます。
 自分の大好きな曲がラジオから流れ出した瞬間の,あのジンワリと来るうれしさは格別だった。その曲があの番組のあの余韻を語り合う最良の部分のシメを飾るうれしさ。

 【FIRST−TIME LOVE】のイントロが流れ出すと,あの時代の「最高の人生」の記憶が一気に甦る。ここは「ジャパフュー」ではなくデイヴ・グルーシンでなければならない。ボブ・ジェームスデイヴ・グルーシンと同時代に生まれてきて良かった。心からそう思う。

 
01. PUNTA DEL SOL
02. SOUTHWEST PASSAGE
03. FIRST-TIME LOVE
04. WESTERN WOMEN
05. DANCING IN THE TOWNSHIP
06. OLD BONES
07. IN THE MIDDLE OF THE NIGHT
08. T.K.O.
09. POLINA
10. SUITE FROM MILAGRO BEANFIELD WAR
  a. LUPITA
  b. COYOTE ANGEL
  c. PISTOLERO
  d. MILAGRO
  e. LITTLE DRUMMER GIRL EPILOGUE

 
DAVE GRUSIN : Keyboards
ABRAHAM LABORIEL : Bass
MARCUS MILLER : Bass
HARVEY MASON : Drums
OMAR HAKIM : Drums
MICHAEL FISHER : Percussion
CARLOS RIOS : Guitar
HUGH MASEKELA : Flugelhorn
BRANFORD MARSALIS : Soprano Saxophone, Tenor Saxophone
DON GRUSIN : Additional Synthesizer Programming
GERALD VINCI : Concertmaster

(GRP/GRP 1989年発売/VDJ-1221)
(ライナーノーツ/上田力)

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大西 順子 / バロック4

BAROQUE-1 『BAROQUE』(以下『バロック』)の大西順子が重い! 『バロック』の大西順子が強い! いや〜“女帝”大西順子が重くて強い! 大西順子がキビシーイッ!

 トランペットニコラス・ペイトンテナーサックスアルトサックスバスクラリネットフルートジェームス・カータートロンボーンワイクリフ・ゴードンベースレジナルド・ビールロドニー・ウィテカードラムハーリン・ライリーコンガローランド・ゲレロ

 このビッグネームが横並びする圧! 大西順子って,もしやウイントン・マルサリスご用達のピアニストだったのか?
 いやいやそんなことはない,と一旦は否定してみたが『バロック』を聴き進めるにつれ,大西順子が本当にウイントン・マルサリス級に感じてしまう。

 大西順子に信念を感じる。その信念のもとに「やるべきことをメンバーに強制させる」パワーを感じる。
 『バロック』なんて聴くんじゃなかった。もはや手放しで上原ひろみ山中千尋を称賛することなどできなくなった。
 大西順子こそが,J−ジャズの女性ピアニストの頂点にいる。この事実を再認識させられてしまった気分がした。

 まぁ,単純に大西順子上原ひろみ山中千尋を比較するのは無意味であろう。
 基本,上原ひろみは作曲家だし,山中千尋は編曲家である。そして大西順子ジャズの人である。それもセロニアス・モンクチャールス・ミンガスの人である。音楽的な「生まれも育ちも」全然違っている。

 そんな大西順子のアルバム・タイトルが『バロック』と来た。
 芸術の世界では「バロック的である」という言い方は,かなりの褒め言葉として通っている。芸術に造詣の深い大西順子のこと,そう軽々しく『バロック』を名乗れないことは承知している。
 その大西順子が自ら,アルバム・タイトルとして『バロック』と名付けたのは,かなりの自信作なのであろう。

 ズバリ『バロック』の真髄とは,2010年版「フルカラーのビ・バップ」である。話題となった蜷川実花撮影によるジャケット写真通りの「多色刷りの音楽」である。大西順子が,覚悟を決めて“百花繚乱”舞い踊っている。一曲一曲が強烈な原色カラーを放っている。
 『バロック』の楽曲のモチーフ,それは2010年のセロニアス・モンクであり2010年のチャールス・ミンガスであり2010年のウイントン・マルサリスである。
 そして,その光源こそが2010年版「フルカラーのビ・バップ」であり,2010年版の大西順子の“ジャズピアノ”なのである。

 『バロック』からは,生半可な気持ちでは弾けない,高度なビ・バップ理論が聞こえてくる。ビ・バップは手強い。聴いて楽しいのはハード・バップの方である。
 『バロック』で大西順子がチャンジした音楽とは“傾聴に値する”類まれなジャズの1枚だと思う。
 ただし,凄いことは分かるが,ちょっと意味が分からず,取り残される自分もいる。置いてけぼりな管理人は,ぶったまげて,腰を抜かして,お口ポカーン。

 だから管理人。『バロック』を1枚聴き通すのに10回はチャンジした。音楽に集中しようと思っても,何だか訳の分からない外国語口座を聴いている感じ? 冗談などではなく過去9回は途中で意識が飛んでしまった。

BAROQUE-2 事実『バロック』を聴いて楽しむには,ジャズについてのそれなりの知識や経験が必要とされる。仮にジャズについての知識や経験があったとしても,相当なエネルギーを必要とする。1回完走するのが「やっと」なのでヘビロテするのは難しい。
 そう。『バロック』は“聴き手を選ぶ”名盤である。管理人は愛聴できていないから,残念ながら「選に洩れた」口である。

 ここまで“高尚な”アルバムを作った大西順子のメンタルの強さに改めて圧倒されてしまう。1つの目標?理想?に向かって驀進している。
 『バロック』は,現代社会,ジャズも含めて小手先の技術に翻弄されてる世界に対して,何か啓示を突きつけたような重さを持つアルバムである。
 大西順子の重さと強さに,原始的な太古の昔からある力,生命力のような強さを感じてしまう。

 
01. Tutti
02. The Mother's
03. The Threepenny Opera
04. Stardust
05. Meditations for a Pair of Wire Cutters
06. Flamingo
07. The Street Beat/52nd Street Theme
08. Memories of You

 
JUNKO ONISHI : Piano
NICHOLAS PAYTON : Trumpet
JAMES CARTER : Tenor Saxophone, Bass Clarinet, Alto Saxophone, Flute
WYCLIFFE GORDON : Trombone
REGINALD VEAL : Bass
RODNEY WHITAKER : Bass
HERLIN RILEY : Drums
ROLAND GUERRERO : Conga

(ヴァーヴ/VERVE 2010年発売/UCCJ-2081)

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T-SQUARE / AI FACTORY4

AI FACTORY-1 『AI FACTORY』は『REBIRTH』〜『CITY COASTER』の延長線上で評価されるべきアルバムである。

 『AI FACTORY』の中に,所謂“キラー・チューン”は入っていない。『AI FACTORY』は楽曲単位で聴くアルバムではない。アルバム1枚,全9曲を聴き通して「どうですか?」と問われている感じのアルバムである。『REBIRTH』の最大の功績はその部分にある。

 CDが発売されて曲の選択と頭出しが一発でできるようになった。そしてアイポッドが発売されてシャッフル再生ができるようになった。
 ジャズなんてLPの時代はアルバム単位で評価されるのが普通だったというのに,デジタル時代になって,特に配信とダウンロードが1曲幾らになってからは,気に入った曲しか聴かなくなった。管理人もその1人になってしまった。

 『REBIRTH』と『CITY COASTER』の収録時間も短かったが『AI FACTORY』の収録時間は44分58秒。LP時代に舞い戻ったかのような短さである。潔い。
 ファンとしては「もう1曲入れて欲しい」なのだが,スクェアとしては「楽曲単位ではなくアルバム1枚を聞かせたい」。そんな狙いがあるのかも?

 思うに,T−スクェアがアルバム単位に戻ったのは【TRUTH】頼みという“コンプレックス”を乗り越えた自信から来ていると思う。
 勿論,今でもライブのラスト・ナンバーは【TRUTH】が定番である。でもそれは「お決まり」なだけであって,仮に【TRUTH】を演奏してくれなくても,観客の誰1人として何の不満も感じないと思う。

 事実,今は【RONDO】が【TRUTH】に取って変わっている。でも【RONDO】の一択で確定しているわけではない。【THE BIRD OF WONDER】にしても【THROUGH THE THUNDERHEAD】にしてもしかり。【RONDO】に変わる曲が何曲もストックされている。

 そう。現「河野坂東」時代のT−スクェアは,バンド史上初めて“キラー・チューン”不要の時代に入っている。
 メロディ・メイカーとしての安藤正容がいる。そこに坂東慧がいる。河野啓三もいる。信頼して待っていれば,何曲もいい曲が集まっている。それも“T−スクェアらしい”新曲がゴロゴロである。そのどれもが没に出来ない“スクェア印”が押されている。

 オープナーである【AI FACTORY】は,坂東チューンらしい,メカニックな実験作。近未来な「グイッグイッ」4ビートの手強いリズムが鳴っている。これぞ正しく“FACTORY”な楽曲である。
 続く【GEISYA】は,河野啓三の得意とする「胸に迫るマイナー調の佳曲」と思わせといて,ラスト一発でメジャーへとハジケルて終わる! 「お帰りなさい,河野啓三」!
 過去の自分を捨て去った安藤正容の【DAYLIGHT】が,新境地と思わせて,聞けば聞くほど安藤メロディー。伊東たけしがよく歌っているんだよなぁ,これがっ!

 この出だしの3曲で『AI FACTORY』のヘビロテ入りが決まったわけだが(管理人は『AI FACTORY』のハイライトとして6曲目と7曲目で連続するミディアム・バラードでの盛り上がりを指名します!)聞けば聞くほど“味わい深い”全9曲。そこには2年振りのレコーディングとなる「音楽監督」河野啓三の存在がある。

AI FACTORY-2 河野啓三不在の『HORIZON』は真にスペシャルなアルバムであった。LAのフュージョン・バンドを思わせる“キラキラした爽やかさ”が大好物だった。

 でもどこかが違う。何かが違う。いつもの,例えそれが名盤だろうが駄盤だろうが,現在進行形のスクェア・サウンドの変化をキチンと受け止めるべく,一心にスクェアと向き合うのとはちょっと気分が違っていた。客観的に『HORIZON』を聴いている自分に気付くことがあった。

 『HORIZON』の主役はフィリップ・セスだった。フィリップ・セスはサポートに徹してくれていたのだが,細かな最後の“塩加減”が河野啓三のそれとは明らかに違っていた。

 『AI FACTORY』には白井アキトが全面参加。フィリップ・セスばりの大活躍である。でもでもフィリップ・セスの場合とは違う。
 そう。『AI FACTORY』のキーボードの音は白井アキトではなく河野啓三の音なのだ。T−スクェアの音が鳴っている。河野啓三の音がT−スクェアの音なのだ。そう感じられた自分自身が好きになった。

 「ポップ・インストゥルメンタル」としか表現のしようがない「オール佳曲」集の『AI FACTORY』。河野啓三白井アキトの「豪華絢爛」ツイン・キーボードがこれからも続くとうれしいなぁ。

DISC 1
01. AI Factory
02. Geisha
03. Daylight
04. Rising Scope
05. 88/200
06. 残照
07. Colors Of The Smile
08. Darwin
09. Over The Border

DISC 2 DVD
01. HORIZONからAI Factoryへ! 〜激動の軌跡〜
  来日したPhilippe Saisse〜河野啓三・復帰ステージ〜新作レコーディング風景まで

(オレンジレディ/ORANGE LADY 2020年発売/OLCH 100017〜18)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
★【初回生産限定盤】ボーナスDVD付 2枚組
★【初回生産限定盤】三方背BOX仕様
★音匠仕様レーベルコート

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クラーク・テリー / ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート4

THE SECOND SET - RECORDED LIVE AT THE VILLAGE GATE-1 クラーク・テリーとはマイルス・デイビスオスカー・ピーターソンからベタボメされた「偉大なるトランペッター」である。
 しかし,管理人がクラーク・テリーを聴こうと思う時,それはクラーク・テリートランペットを聴きたいからではない。管理人の中でクラーク・テリーとば“トランペッター”という認識は薄い。

 そう。クラーク・テリーと来れば“音楽家”である。クラーク・テリートランペットからは,様々な優れた音楽的要素が同時に鳴り響いている。
 決して最先端の音楽ではない。しかし,クラーク・テリーから発せられた音からは,いつでも「教養の高さや深み」を感じて幸福感で満たされてしまう。マイルス・デイビスオスカー・ピーターソンが目を付けていたのはその部分なのだろう。

 同じ「教養の高さや深み」を感じるとしても,クラーク・テリーを聴いて感じるのはウイントン・マルサリスのそれとは異なる。ウイントン・マルサリスの場合は,本当の「英才教育」であり“本物”感がバリバリである。ウイントン・マルサリスジャズトランペッターに必要な全ての要素を身に着けている。完全無欠であり,史上最高のトランペッターウイントン・マルサリスのことだと信じている。

 一方のクラーク・テリーの場合,これは長年の現場を経験してきたからこそ語ることのできる「説得力」。これである。
 酸いも甘いも,成功も挫折も幾度となく経験してきたからこそ理解できる真実がある。ウイントン・マルサリスが1年で学んだことをクラーク・テリーは10年かけて学んだのかもしれない。
 ある問題点の解決策としてウイントン・マルサリスクラーク・テリーも同じ答えを提出するかもしれない。出した答えは同じであっても,真実の答えは同一ではない。やはり経験を通して学んできた者の発言は重い。
 たった一音だけなのに,その簡潔な一音に込められた意味を察することができた時,参らされることがある。経験がお金では決して買うことのできない「生涯の宝物」と呼ばれる所以である。

 『THE SECOND SET−RECORDED LIVE AT THE VILLAGE GATE』(以下『ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート』)は,単純に「聴いて楽しい」演奏である。普通に聴くと“平凡な1枚”である。そして“平凡な1枚”という評価のまま終わってしまうことがある。別にそれが悪いことだとは思わない。

 だが,偶然にも『ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート』の「楽しさの理由」に気付いてしまうと,それから先は「耳が止まってしまう」ことだろう。
 クラーク・テリーの一音一音にKOされるようになる。ビ・バップがあるしスイングさえも混ざっている。そんなジャズトランペットの歴史を聞かせつつも,結局最後は“エンターテイメント”である。アドリブ芸術からは最も離れた場所で,紛れもないジャズを感じることができるのだ。これぞクラーク・テリーのオリジナリティであろう。

THE SECOND SET - RECORDED LIVE AT THE VILLAGE GATE-2 『ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート』はライブ盤である。会場の雰囲気が最高で演奏も大いに盛り上がっているのだが,クラーク・テリーはどんなに盛り上がろうとも勢いだけで押し切ろうとはしていない。常にクールにスイングしている。

 世間一般ではクラーク・テリートランペットの特徴について“口笛を鳴らすように”と表現されているのだが,その表現に納得の,こちらも名うてのベテラン陣,ジミー・ヒーステナーサックスドン・フリードマンピアノマーカス・マクラーレンベースケニー・ワシントンドラムに“口笛の”ニュアンス1つで全体へ指示を飛ばしている。

 バンド全体がクラーク・テリーのフレーズをなぞるかのように演奏している。これってマイルス・バンドの運営手法?
 そう。マイルス・デイビスの「憧れのトランペッター」。それがクラーク・テリーという“音楽家”なのである。

 
01. One Foot in the Gutter
02. Opus Ocean
03. Michelle
04. Serenade to a Bus Seat
05. Joonji
06. Ode to a Fuglehorn
07. Funky Mama
08. "Interview"

 
CLARK TERRY : Trumpet, Flugelhorn
JIMMY HEATH : Tenor Saxophone
DON FRIEDMAN : Piano
MARCUS McLAUREN : Bass
KENNY WASHINGTON : Drums

(チェスキー・レコーズ/CHESKY RECORDS 1995発売/SSCJ-1010)
(ライナーノーツ/三崎光人)

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秋吉 敏子・チャーリー・マリアーノ / トシコ=マリアーノ・カルテット5

TOSHIKO MARIANO QUARTET-1 『TOSHIKO MARIANO QUARTET』(以下『トシコ=マリアーノ・カルテット』)を聴くといつでも幸福感に包まれる。
 なぜなら『トシコ=マリアーノ・カルテット』は,秋吉敏子が多大の苦労を乗り越えて,自らの手で掴んだ「幸福の記録」だと思うから。

 このジャケット写真を見てください。結婚1年後の秋吉敏子チャーリー・マリアーノがパチリ。『トシコ=マリアーノ・カルテット』には,充実した私生活が“そのまんま”極上のジャズとして記録されている。ねっ,幸せそうでしょ?

 日本から単身渡米した秋吉敏子こそがJ−ジャズ界のパイオニア。秋吉敏子が先駆者として存在していたからこそ,後の渡辺貞夫につながったのだが,当の秋吉敏子が「公私両面のパートナー」としてチャーリー・マリアーノとつながるまでには大きく3つの壁を乗り越えなければならなかった。

 その1として秋吉敏子は日本人。日本人なんかに本場のジャズが演奏できるか?というアメリカ人としての,あるいは黒人としての誇りを抱く同業者との闘いがあった。実力でアメリカン・ジャズメンを認めさせるしかない。

 その2として秋吉敏子は女性。女性にパワフルなジャズ・ピアノが演奏できるか?という通念との闘いがあった。実力で男性ジャズメンを認めさせるしかない。

 その3。これが一番の難関になったと思うのだが,その2に対する答えとして秋吉敏子は「パウエル派」に身を置くことになったのだが,秋吉敏子の個性が固まるまでは,一度貼られた「パウエル派」のレッテルを剥がすのが困難極まりない作業となった。実力で,他の誰でもない秋吉敏子,を認めさせるしかない。

 こうして3つの大きな壁を乗り越えて,夫となったチャーリー・マリアーノとの共同作業の末,ついに完成した“秋吉敏子ジャズ・ピアノ”が『トシコ=マリアーノ・カルテット』の中にある。
 「毎日磨いて磨き上げた」“秋吉敏子ジャズ・ピアノ”が完成したのだから,日本人のジャズ・ファンとしては,ちょっと自慢したくなるくらいの超・名盤だと思っている。

 本場アメリカのジャズを肌で感じ,黒人のプライドを経験を通して理解してきた秋吉敏子が,バド・パウエルのスタイルを完全に消化した「THE TOSHIKO AKIYOSHI」のオリジナル・スタイルで美メロを奏でている。
 『トシコ=マリアーノ・カルテット』の中には,3つの大きな壁と闘ってきた傷跡など見つからない。聞こえてくるのは障害を全てを乗り越えてきたからこそできる「自然体の演奏」だけである。秋吉敏子が鼻歌混じりにバド・パウエルを弾いている。

TOSHIKO MARIANO QUARTET-2 秋吉敏子が最愛のチャーリー・マリアーノと,心を合わせて&音を合わせて“歌っている”。全曲いい曲&いいメロディー&いい演奏!
 『トシコ=マリアーノ・カルテット』を聴いているだけで,自然と幸福な気分に満たされる! もっと&もっと秋吉敏子になる気分!

 過去の労苦を水に流したわけではないだろう。秋吉敏子は過去を断ち切りもしなければ,逆に固執もしていない。ただ今そこにある現実,今感じている幸福感を音楽で表現しただけのこと。
 ただそれだけなのに,とてつもなくリリカルで,かつ目が覚めるような力強さを持った秋吉敏子ジャズ・ピアノ

 そう。『トシコ=マリアーノ・カルテット』は,秋吉敏子が多大の苦労を乗り越えて,自らの手で掴んだ「幸福の記録」なのである。
 秋吉敏子さん,本当におめでとう。そして,ありがとう。

 
01. When you meet her
02. Little T
03. Toshiko's Elegy
04. Deep River
05. Long Yellow Road

 
TOSHIKO AKIYOSHI : Piano
CHARLIE MARIANO : Alto Saxophone
GENE CHERICO : Bass
EDDIE MARSHALL : Drums

(キャンディド/CANDID 1960年発売/KICJ 8381)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ)

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エディ・ヒギンズ・トリオで聴きたいスタンダード・ベスト10-5

 ヴィーナス・レコードの10周年記念企画。「スイングジャーナル」誌,2002年11月号掲載,読者投票による「エディ・ヒギンズ・トリオで聴きたいスタンダード・ベスト10」。

 実際にはランクインした「ベスト10」が無条件に演奏されたわけではなく,上位にランクインしたリクエスト曲の中から,原哲夫とエディ・ヒギンズの話し合いによって選ばれた14曲のスタンダード集が『懐かしのストックホルム』としてリリース。
 今回は(純粋に読者投票の結果)1〜5位の発表です。

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いつか王子様が★5.いつか王子様が
いつか王子様が
アレクシス・コール

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DEAR OLD STOCKHOLM-1★4.星影のステラ
懐かしのストックホルム


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DEAR OLD STOCKHOLM-1★3.あなたと夜と音楽と
懐かしのストックホルム


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ミスティ★2.ミスティ
ミスティ
ハロルド・メイバーン

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DEAR OLD STOCKHOLM-1★1.懐かしのストックホルム
懐かしのストックホルム


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 【星影のステラ】【あなたと夜と音楽と】【懐かしのストックホルム】は『懐かしのストックホルム』収録。

 【いつか王子様が】をエディ・ヒギンズが演奏しなかったのは,同じくヴィーナス・レコードアレクシス・コールの大名演が存在するからであろう。
 共喰いを避ける意味合いなのだろうが,2つの名演聴き比べの相乗効果があったのたかもしれません…。

 【ミスティ】をエディ・ヒギンズが演奏しなかったのは,同じくヴィーナス・レコードハロルド・メイバーンの大名演が存在するからであろう。
 共喰いを避ける意味合いなのだろうが,2つの名演聴き比べの相乗効果があったのたかもしれません…。

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