アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

チック・コリア・アコースティック・バンド / LIVE5

LIVE-1 「チック・コリア・エレクトリック・バンド」の再結成から遅れること14年。ついに「チック・コリア・アコースティック・バンド」が再始動した。
 「アコースティック・バンド」名義としては実に27年振りのライブ・レコーディングとなったのが『LIVE』である。

 「エレクトリック・バンド」の再結成時は“2004年最高の話題作”と謳われたものだったが,今回の「アコースティック・バンド」の再始動は静かなもの。寂しいよなぁ。
 でも『LIVE』は日本限定発売とのこと。いつも熱狂するのは日本のジャズ・ファンだけのようである。
 まっ,そんな世間の無関心など気にしないし気にもならない。とにかく『LIVE』の演奏が物凄い。ここにあるのは紛れもなくピアノ・トリオ史上屈指の大名演集である。

 『LIVE』のせいで久しぶりにやって来たチック・コリアのマイブーム。『LIVE』はCDだから良いのだ。これが映像作品となると,画面から時を感じてしまっていけない。
 音を聴いている限りではチック・コリアが,ジョン・パティトゥッチが,デイブ・ウェックルが,一向に歳を取っていない。30年前の当時のまんまだ。何なら若返った気さえする。だから感情移入してしまったのだろう。「静かな熱狂」が『LIVE』に当てはまる。

 今回の「アコースティック・バンド」の再始動は,チック・コリアにとってどんな意味を持つのだろう。セットリストは往年のレパートリーばかりで新曲はない。単純に同窓会を開いてみたかっただけなのだろうが,その動機とは,離れ離れになった3人の27年間の歩みを確かめたくなったのだろう。

 チック・コリアは自分のバンドから独立した後もジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルの演奏をチェックし続けてきた。最初に「みーつけた」と思ったあの頃の感動が,近年甦ってきたのかもしれない。
 回り回って再び「みーつけた」とガッツポーズ。チック・コリアピアノ・トリオを組んできたベーシストドラマーは数多くいるが,これほどまでスムーズに連動するリズム隊は「ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックル組」しかない,と断言する。

 そう。「アコースティック・バンド」と来れば「余裕しゃくしゃくで息ぴったり」がトレードマークであったのだが,27年間“超絶技巧”を維持し発展させてきたという「テクニックへの更なる自信」が,最高のチームを組んで一層の高みでの連動を実現させた最大の理由であろう。
 とにかくチック・コリアの最良の部分だけを聴かせてくれる“ピアノ・トリオの雄”に違いない。

 管理人は思う。「アコースティック・バンド」解散後のチック・コリアピアノ・トリオって一体何だったのだろう? その答えとは「アコースティック・バンド」を超えるためのチャレンジではなかったのか?

 チック・コリアとしては「アコースティック・バンド」を超えた瞬間を何度も感じたはずである。『ライヴ・フロム・ザ・ブルーノート東京』でのジョン・パティトゥッチヴィニー・カリウタ組。『過去,現在,未来』でのアヴィシャイ・コーエンジェフ・バラード組。『ランデヴー・イン・ニューヨーク』でのミロスラフ・ヴィトウスロイ・ヘインズ組。『スーパー・トリオ』でのクリスチャン・マクブライドスティーヴ・ガッド組。『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』でのジョン・パティトゥッチアントニオ・サンチェス組。『マイルストーンズ〜マイルス・デイヴィスに捧ぐ』でのエディ・ゴメスジャック・デジョネット組。『モンクス・ムード〜セロニアス・モンクに捧ぐ』でのクリスチャン・マクブライドジェフ・バラード組。『ワルツ・フォー・デビイ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』でのエディ・ゴメスアイアート・モレイラ。『ブルックリン・パリ・トゥ・クリアウォーター』でのアドリアン・フェローリッチー・バーシェイ組。『フォーエヴァー』でのスタンリー・クラークレニー・ホワイト組。『ファーザー・エクスプロレイションズ〜ビル・エヴァンスに捧ぐ』でのエディ・ゴメスポール・モチアン組。『トリロジー』『トリロジー2』でのクリスチャン・マクブライドブライアン・ブレイド組。

LIVE-2 その全ての組み合わせが最高で文句のつけようがない高水準のピアノ・トリオだったのだが「アコースティック・バンド」での「ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックル組」のしなやかで機械的なアプローチこそが,チック・コリアの10本の指を20本に変えることのできる唯一のリズム隊だと断言する。

 チック・コリアはこれからも浮気を繰り返すことだろう。ただしチック・コリアの中での“正妻”は決まっている。チック・コリアが,どこをどう切っても間違いを犯すことのない絶対的に信頼を寄せる絶対服従の“正妻”は決まっている。
 そう。チック・コリアピアノ・トリオを組むに当たって,もう2度と手放したくない,離れることなど考えられない“正妻”ベーシストとはジョン・パティトゥッチであり“正妻”ドラマーとはデイブ・ウェックルである。

 ついでに書くと,ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックルが演奏すればこそ一際輝く【MORNING SPRITE】と【HUMPTY DUMPTY】。この2トラックも「アコースティック・バンド」の“正妻”である。
 『LIVE』での【MORNING SPRITE】と【HUMPTY DUMPTY】こそが「アコースティック・バンド」史上最高峰! このピアノ・トリオ,一体どこまで上り詰めるねん!

 
CD1
01. Morning Sprite
02. Japanese Waltz
03. That Old Feeling
04. In a Sentimental Mood
05. Rhumba Flamenco
06. Summer Night
07. Humpty Dumpty (Set 1)

CD2
01. On Green Dolphin Street
02. Eternal Child
03. You and the Night and the Music
04. Monk's Mood
05. Humpty Dumpty (Set 2)
06. You're Everything (featuring Gayle Moran Corea)

 
CHICK COREA AKOUSTIC BAND
CHICK COREA : Piano
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 2018年発売/UCCJ-3040/1)
(☆SHM−CD2仕様)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/チック・コリア,ジョン・パティトゥッチ,デイヴ・ウェックル,ロビン・D.G.ケリー)

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小沼 ようすけ / ジャム・カ・ドゥ4

JAM KA DEUX-1 “衝撃”の『JAM KA』から6年。続編となる『JAM KA DEUX』(以下『ジャム・カ・ドゥ』)は,従来の小沼ようすけギター・サウンドだけではなく,あの『JAM KA』からも遠く離れてしまっている。

 小沼ようすけは,一体どこまで走り続けるつもりなのか? 『ジャム・カ・ドゥ』は,もはやテクニカルなギターでもグルーヴィーギターでもなく,というか『ジャム・カ・ドゥ』はギター・メインのアルバムではない。
 主役はカリブのリズム「グオッカ」である。小沼ようすけが凄腕のギターを捨てて,リズムの妙で勝負している。

 そう。小沼ようすけが『ジャム・カ・ドゥ』で表現したのはギターではなく“前人未到の”ジャズなのだ。
 『3, 2 & 1』までは,ジャズ・ギターの可能性にとことんこだわってきた小沼ようすけだったが『BEAUTIFUL DAY』での「ナチュラル・オーガニック」ときて『ジャム・カ』での「グオッカ」推し!

 この変わり身は小沼ようすけがピックから指弾きへ転向した時と似ている。ギター・コンテストで優勝するくらいの最高のピック使いだったのに,それをリチャード・ボナと出会ったがばかりに,あっさりと捨てた。
 小沼ようすけは,もう2度とピックでギターを弾いてはくれない。小沼ようすけは,もう2度と『NU JAZZ』『SUMMER MADNESS』『JAZZ’N’POP』のような音楽はやってくれない。

 だ〜って『JAM KA』でも激変だったのに『JAM KA DEUX』はその上を行っている。小沼ようすけの場合,アルバムをリリースする度にキレイ目だったスタイルが段々と崩れた「グランジ系」ジャズ・ギター。『JAM KA DEUX』では原型を辛うじてとどめているだけで,出来上がりはぐっちゃぐちゃ〜。

 いいや,書きすぎた。申し訳ない。実はぐちゃぐちゃのようで『ジャム・カ・ドゥ』の中身は,しっかりと整っている。スタイルは変われど小沼ようすけ小沼ようすけである。
 『ジャム・カ・ドゥ』は,全部の音の中心に小沼ようすけが鎮座している。“行き過ぎた”『ジャム・カ・ドゥ』ではあるが,小沼ようすけの“突然変異”などではなく,キャリアの延長線上で“行き過ぎた”1枚だと思っている。

JAM KA DEUX-2 イメージとしては『JAM KA』と『JAM KA DEUX』に関しては「小沼ようすけ・特別編」である。
 今まで一度も聴いたことのないジャズ・ギターが聴こえてくる。何だかワクワクして,見たことも聞いたこともない“新しい世界”に連れていってもらったような感覚がする。

 【FLOWING】が実に泣ける。笑顔なのに涙が流れ落ちてくる。真に感動する。【TI’ PUNCH】では「小沼ようすけ流・フレンチ・グラント・グリーン」が登場する。
 「グランジ系」ジャズ・ギターとは身体が自然と反応する音楽である。薄汚れ役の小沼ようすけが超カッコイイ。

 果たして『JAM KA』路線は小沼ようすけにとって,定住なのかお出かけなのか…。次作が本当に楽しみである。

 
01. Moai's Tihai
02. Flowing
03. Terre
04. The Elements
05. Ka Interlude
06. Ti' Punch
07. Duo Ka
08. Dlo Pann
09. Fellows
10. Gradation Part 3 : Heartbeat
11. Pourquoi
12. Beyond The Sea
13. Songe Mwen

 
YOSUKE ONUMA : Electric Guitar, Acoustic Guitar, Fretless Guitar
REGGIE WASHINGTON : Electric Bass
ARNAUD DOLMEN : Ka, Drums, Vocal
OLIVIER JUSTE : Ka
GREGORY PRIVAT : Piano, Fender Rhodes
SONNY TROUPE : Ka
HERVE SAMB : Steel Strings Acoustic Guitar
JOE POWERS : Harmonica
SIMONE SCHWARZ-BART : Poetry Reading
JACQUES SCHWARZ-BART : Acoustic Guitar

(フライウェイ/FLYWAY 2016年発売/DDCZ-2126)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/松永誠一郎)

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チック・コリア / チック・コリア・ソロ Vol.25

PIANO IMPROVISATIONS VOL.2-1 ECMソロ・ピアノと来れば,キース・ジャレット一連のソロ・ピアノが有名であるが,キース・ジャレットに先立つこと半年,レーベル・オーナー兼プロデューサーのマンフレート・アイヒャーが最初に白羽の矢を当てたのは,キース・ジャレットではなくチック・コリアの方であった。

 マンフレート・アイヒャーが「いの一番」でオファーしたのはチック・コリアであって,チック・コリアの成功があってのキース・ジャレットの大成功へと繋がる構図。
 つまりソロ・ピアノにおけるマンフレート・アイヒャーの評価としては“天才”キース・ジャレットよりもチック・コリアの方が上だったということだ。

 この評価はキース・ジャレット・マニアの管理人をして正しいのかもしれない。『PIANO IMPROVISATION VOL.2』(以下『チック・コリア・ソロ VOL.2』)におけるチック・コリアの煌めきが最高に素晴らしい。

 今でこそソロ・ピアノと来れば,キース・ジャレットの独壇場となっているが,管理人の評価ではドローである。
 キース・ジャレットチック・コリアより評価されている理由は単純に作品数の多さ,圧倒的なボリュームにある。加えてチック・コリアは多作家であり,興味を抱いたものに次々と手を出してはその全てを見事にまとめてくる。その点で自分の音楽人生の主軸をソロ・ピアノに捧げてきたキース・ジャレットとはソロ・ピアノへの評価が異なって当然であろう。

 「長編小説」としてはキース・ジャレットの圧勝であるが「短編小説」としての破壊力ではチック・コリアに分があるように思う。
 と言うのもキース・ジャレットの「短編小説」,例えば『FACING YOU』と『STAIRCASE』の美しさは,牧歌的でゴスペルチックでありつつも,毒である“電化マイルス”の大ヒーロー=キース・ジャレットまでも堪能できる良さがある。
 対するチック・コリアソロ・ピアノは,真にクリスタルな美しさが身体全身に満ちている。超絶な演奏テクニックと相まって高度にロマンティックな音楽がフリージャズの文脈で置き換えられている。「その手があったか〜」な感じがするのだ。

 そう。『PIANO IMPROVISATION』の『VOL.1』『VOL.2』を聴けば聴くほど,この全てが完全即興演奏とはにわかに信じられない。
 どれもこれもがチック・コリアの「生命の息吹き」であり,新しいジャズ・ピアノの「創造」であった。

 ECMソロ・ピアノの何がそこまで素晴らしいのか? 一言で書けば「未完成」だから素晴らしい。
 『チック・コリア・ソロ VOL.1』『チック・コリア・ソロ VOL.2』の真実とは,チック・コリアの「デッサン集」である。
 事実『チック・コリア・ソロ VOL.1』『チック・コリア・ソロ VOL.2』に詰め込まれたアイディアの中から,後のチック・コリア名盤群が発展した跡が残されている。

PIANO IMPROVISATIONS VOL.2-2 完全即興なのだから「デッサン集」で十分だし,発展途上の曲だからこそ,骨格が丸分かりだし,何をモチーフとしているかが感覚として近い。様々なアイディアが詰め込まれた「音の玉手箱(←古い)」だからこそ,オークションにかければ完成品以上の値打ちが付く。そんなアルバムだと思う。

 それでこそチック・コリアである。チック・コリアの音楽は,いつでもスタイリッシュだし,目に見える部分で最高に美しい。絵画と表現するよりも写真と表現した方がしっくりくる。カメラとレンズを通して見るジャズ・ピアノの「ミニマルな新世界」なのだ。

 管理人の結論。『チック・コリア・ソロ VOL.2批評

 『チック・コリア・ソロ VOL.1』の1年後に発売された『チック・コリア・ソロ VOL.2』は『チック・コリア・ソロ VOL.1』の高評価を受けて制作された続編ではない。これ重要!

 個人的に『チック・コリア・ソロ VOL.2』のアルバム名を耳にすれば,条件反射的に【AFTER NOON SONG】が頭の中で鳴り始めてしまう。
 【AFTER NOON SONG】に関しては2つの解釈が可能である。1つは『チック・コリア・ソロ VOL.1』収録の【NOON SONG】の「次の」曲なのかもしれないし,単純に「午後の曲」という新曲パターン。管理人の予想では,本当は何の関連もないのに,ジョーク好きのチック・コリアの後付け【NOON SONG】→【AFTER NOON SONG】の出来上がりぃ!

 『チック・コリア・ソロ VOL.1』にも【ホエア・アー・ユー・ナウ? 〜8つの絵の組曲】があったが『チック・コリア・ソロ VOL.2』にも【ア・ニュー・プレイス】という組曲がある。
 この2つの組曲を聴いていると,後のキース・ジャレットの「短編小説」の原型のように思えてくる。チック・コリアキース・ジャレット。後に2人で連弾をしたこともある仲。互いに互いのピアノが大好き。ソロ・ピアノの2大巨匠は相互に影響を及ぼしあっていた。

 
01. After Noon Song
02. Song For Lee Lee
03. Song For Thad
04. Trinkle Tinkle
05. Masqualero
06. Preparation 1
07. Preparation 2
08. Departure from Planet Earth
09. A New Place
1). Arrival
2). Scenery
3). Imps Walk
4). Rest

 
CHICK COREA : Piano

(ECM/ECM 1972年発売/POCJ-2017)
(ライナーノーツ/野口久光)

アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION

新ブログ 『アドリブログ 〜JAZZ/FUSION スーパートリビア〜』

 3月4月は引っ越しシーズン! ということでアドリブログもライブドアから移転することになりました。

 ただし,5/1現在,アドリブログの記事投稿数は2251ありまして,コンテンツ全部の移転はかなりの長期化が予想されます。

 それで移転の計画は「少しずつ」です。今度の移転先は「レンタルサーバー+独自ドメイン」ですので,ライブドアの全コンテンツを「フロントページ+5つのサブドメイン」に分けることにしました。
 ですので,引っ越しの荷造りは「サブドメイン毎」に進めていくことに決めました。

 2020年のGWはPCの前に張り付いて頑張りました。強制ではなく自発的な「ステイホーム」の甲斐あって,本日,5つのサブドメインの中の1つ目のコンテンツを公開したことをお知らせいたします。

 新しいウェブサイトの第三弾は以下の通りです。

新ブログ・フロントページ:
 『アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION』(工事中)

新サブドメイン・コンテンツ:
 「アドリブログ 〜JAZZ/FUSION スーパートリビア〜」

新URL:  https://www.adliblog.org/supertrivia/ 

 アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION

 この投稿以降,ライブドアへUPする記事は全て新ブログ仕様となります。
 先に書いた通り,新ブログへの完全移行まではまだまだ時間がかかります。それで新記事の投稿間隔は月に数本程度に鈍るとはいえ,引き続きライブドアでも公開を続けます。「先行公開」なんちゃって〜。

アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION

チック・コリア / チック・コリア・ソロ Vol.15

PIANO IMPROVISATIONS VOL.1-1 ECMソロ・ピアノと来れば,キース・ジャレット一連のソロ・ピアノが有名であるが,キース・ジャレットに先立つこと半年,レーベル・オーナー兼プロデューサーのマンフレート・アイヒャーが最初に白羽の矢を当てたのは,キース・ジャレットではなくチック・コリアの方であった。

 マンフレート・アイヒャーが「いの一番」でオファーしたのはチック・コリアであって,チック・コリアの成功があってのキース・ジャレットの大成功へと繋がる構図。
 つまりソロ・ピアノにおけるマンフレート・アイヒャーの評価としては“天才”キース・ジャレットよりもチック・コリアの方が上だったということだ。

 この評価はキース・ジャレット・マニアの管理人をして正しいのかもしれない。『PIANO IMPROVISATION VOL.1』(以下『チック・コリア・ソロ VOL.1』)におけるチック・コリアの煌めきが最高に素晴らしい。

 今でこそソロ・ピアノと来れば,キース・ジャレットの独壇場となっているが,管理人の評価ではドローである。
 キース・ジャレットチック・コリアより評価されている理由は単純に作品数の多さ,圧倒的なボリュームにある。加えてチック・コリアは多作家であり,興味を抱いたものに次々と手を出してはその全てを見事にまとめてくる。その点で自分の音楽人生の主軸をソロ・ピアノに捧げてきたキース・ジャレットとはソロ・ピアノへの評価が異なって当然であろう。

 「長編小説」としてはキース・ジャレットの圧勝であるが「短編小説」としての破壊力ではチック・コリアに分があるように思う。
 と言うのもキース・ジャレットの「短編小説」,例えば『FACING YOU』と『STAIRCASE』の美しさは,牧歌的でゴスペルチックでありつつも,毒である“電化マイルス”の大ヒーロー=キース・ジャレットまでも堪能できる良さがある。
 対するチック・コリアソロ・ピアノは,真にクリスタルな美しさが身体全身に満ちている。超絶な演奏テクニックと相まって高度にロマンティックな音楽がフリージャズの文脈で置き換えられている。「その手があったか〜」な感じがするのだ。

 そう。『PIANO IMPROVISATION』の『VOL.1』『VOL.2』を聴けば聴くほど,この全てが完全即興演奏とはにわかに信じられない。
 どれもこれもがチック・コリアの「生命の息吹き」であり,新しいジャズ・ピアノの「創造」であった。

 ECMソロ・ピアノの何がそこまで素晴らしいのか? 一言で書けば「未完成」だから素晴らしい。
 『チック・コリア・ソロ VOL.1』『チック・コリア・ソロ VOL.2』の真実とは,チック・コリアの「デッサン集」である。
 事実『チック・コリア・ソロ VOL.1』『チック・コリア・ソロ VOL.2』に詰め込まれたアイディアの中から,後のチック・コリア名盤群が発展した跡が残されている。

PIANO IMPROVISATIONS VOL.1-2 完全即興なのだから「デッサン集」で十分だし,発展途上の曲だからこそ,骨格が丸分かりだし,何をモチーフとしているかが感覚として近い。様々なアイディアが詰め込まれた「音の玉手箱(←古い)」だからこそ,オークションにかければ完成品以上の値打ちが付く。そんなアルバムだと思う。

 それでこそチック・コリアである。チック・コリアの音楽は,いつでもスタイリッシュだし,目に見える部分で最高に美しい。絵画と表現するよりも写真と表現した方がしっくりくる。カメラとレンズを通して見るジャズ・ピアノの「ミニマルな新世界」なのだ。

 管理人の結論。『チック・コリア・ソロ VOL.1批評

 『チック・コリア・ソロ VOL.1』は,前半5曲がメジャー・ヒット・チューン,後半8曲は印象派風の【ホエア・アー・ユー・ナウ? 〜8つの絵の組曲】で構成されている。
 個人的に『チック・コリア・ソロ VOL.1』のアルバム名を耳にすれば,条件反射的に【NOON SONG】が頭の中で鳴り始めてしまう。【NOON SONG】を聴いて感じる「クリティカルな人肌の清涼感と滑らかな肌触り」と「何回聴いても暗譜の途中で意識が飛んでいく美しさ」。ああ〜!

 チック・コリアを愛するファンならば【SOMETIME AGO】の初演は必聴である。“荒削りの”【SOMETIME AGO】にドキドキしてしまう。
 後のフュージョン史を彩る大名曲【SOMETIME AGO】が世に産れ出た瞬間を見届けよ!

 
01. Noon Song
02. Song For Sally
03. Ballad For Anna
04. Song Of The Wind
05. Sometime Ago
  Where Are You Now? −A Suite Of Eight Pictures−
06. Picture 1
07. Picture 2
08. Picture 3
09. Picture 4
10. Picture 5
11. Picture 6
12. Picture 7
13. Picture 8

 
CHICK COREA : Piano

(ECM/ECM 1971年発売/J25J 20325)
(ライナーノーツ/野口久光)

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デイヴ・リーブマン / ドゥーイン・イット・アゲイン5

DOIN' IT AGAIN-2 変な質問とお思いでしょうが,読者の皆さんは,どのデイヴ・リーブマンがお好きですか?
 マイルス・デイビスのバンドにいた頃の「元気印」のデイヴ・リーブマンですか? それとも今ではこちらが「定番」として定着した感のある「内省的で叙情的な」デイヴ・リーブマンですか?

 デイヴ・リーブマンというサックス奏者は,アルバムのコンセプトやレコーディング時期によって演奏スタイルが大きく異なる代表格。成長しているとか円熟しているという言葉は,ある音楽スタイルを追求してきた場合の評価だろう。「クラッシュ・アンド・ビルド」は,壊したスタイルに戻らないのが前提となるだろう。

 まっ,デイヴ・リーブマンという人は,幸か不幸か,マイルス・デイビスに人格までも破壊された人。
 管理人はマイルス・デイビスのバンドを去った後のデイヴ・リーブマンの音楽は,自分探しの「武者修行」だと思っている。

 『DOIN’ IT AGAIN』(以下『ドゥーイン・イット・アゲイン』)は「元気印」のデイヴ・リーブマンの“最高傑作”である。
 ここまでグイグイとストレートにサックスを吹きまくるデイヴ・リーブマンを知ってしまうと,現在の「耽美主義的な」演奏に不満を感じてしまうだろう。

 とにかく“何でも出来てしまう”デイヴ・リーブマンジャズメンとしてのレベル高さを感じてしまうのだ。共演者の発したメッセージへの瞬時の対応力がハンパない。
 『ドゥーイン・イット・アゲイン』を聴く限り,デイヴ・リーブマンはスタジオ・ミュージシャンと対等に対峙できる数少ない“アーティスト”の1人に違いない。もしあのまま「元気印」のデイヴ・リーブマンを続けていたならマイケル・ブレッカーのライバルとして認められる存在になっていたことと思う。まっ,ゲイリー・バーツにしてもソニー・フォーチュンにしても然り…。

 さて,ボスの要求に答え応じ続けるうちに,どんな注文にも即時に対応できる術を身に着けたデイヴ・リーブマンの真骨頂が『ドゥーイン・イット・アゲイン』で爆発している。
 『ドゥーイン・イット・アゲイン』は,デイヴ・リーブマンのレギュラー・バンドのメンバーである,ベースロン・マクルーアドラムアダム・ナスバウムの凄腕に,トランペット日野皓正ギタージョン・スコフィールドが参加した,スペシャル・スーパー・セッション

 5人が5人とも超キレッキレ! 5人が5人とも尖がっている! 本当の意味で“丁々発止”の音楽的やりとりに興奮しまくり&アドレナリンでまくり〜!
 『ドゥーイン・イット・アゲイン』のフロントである,デイヴ・リーブマン日野皓正組は,マイケル・ブレッカーランディ・ブレッカー組が考え抜いたフレーズでそれまでより一段上の音楽を表現しようとしているのに対して,もうちょっと自由でその場勝負なジャズ・ライン! ニューヨーク時代に“ジャズトランペッター”を張っていた日野皓正は,大袈裟ではなく真に「世界一」に王手をかけていたと思っている。

DOIN' IT AGAIN-2 そ・こ・へ“キーマン”ジョン・スコフィールドが“ロック・ギター・ブルース”の乱れ打ち!
 ジョン・スコフィールドギタージャズがベースにあってのロック的な演奏と,時々,フリーに走る塩梅がちょうどよい!

 後の「ファンキーへたうまアウト」ではなく(これももちろん素晴らしいのだが)ヒステリックかつスリリングで攻撃的な,それはそれはカッコいいソロとハイテンションなコードワークに痺れまくる。
 こんな“ロック・ギター・ブルース”は世界中を探してもジョン・スコフィールド以外に見つからない。それくらい斬新な解釈のドロッとしたフレージングが神レベルである。

 とにかく素晴らしい。読者の皆さんにも,こんなにも「元気印」なデイヴ・リーブマンを,こんなにも“ジャズトランペッター”な日野皓正を,こんなにも“ロック・ギター・ブルース”のジョン・スコフィールドを知ってほしいと思う。絶対いいから!

 
01. DOIN' IT AGAIN
02. LADY
03. STARDUST
04. CRIFF'S VIBES

 
DAVE LIEBMAN : Tenor Saxophone, Soprano Saxophone
TERUMASA HINO : Trumpet, Flugelhorn, Percussion
JOHN SCOFIELD : Guitar
RON McCLURE : Acoustic Bass, Electric Bass
ADAM NUSSBAUM : Drums

(タイムレス/TIMELESS 1979年発売/ABCJ-123)
(ライナーノーツ/小西啓一)

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