アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

ドン・グルーシン / ゼファー4

ZEPHYR-1 普通なら「お兄ちゃんが習っているから僕も〜」と弟がお兄ちゃんの真似をしそうに思えるが,殊更,ジャズメンにおいては,肉の兄弟で同じ楽器を演奏するパターンは少ない。
 ランディー・ブレッカートランペットマイケル・ブレッカーテナーサックスブランフォード・マルサリステナーサックスウイントン・マルサリストランペットキャノンボール・アダレイアルトサックスナット・アダレイトランペット日野皓正トランペット日野元彦ドラム…。

 そう。兄弟ジャズメンはみんな揃って仲がいい。それって同じ楽器を演奏していないことが理由として寄与している? だって肉の兄弟がライバルになってしまうわけだし,一家に一台の楽器を兄弟ゲンカで「我先に!」と奪い合うこともなくなるから?

 そんな中,デイヴ・グルーシンドン・グルーシングルーシン兄弟は仲がいい。同じ楽器で同じジャンル。兄弟揃って同じ音楽性を追い求めている。趣味が一致した兄弟は最強なのである。

 デイヴ・グルーシンドン・グルーシンの違いを書けば,デイヴ・グルーシンが一般に受けているのに対しドン・グルーシンは玄人に受けている。ドン・グルーシンはスーパーなスタジオ・ミュージシャンが主戦場である。

 そんな「裏方稼業」の仕事が多いドン・グルーシンが,自ら前に出たソロ・アルバムが『ZEPHYR』(以下『ゼファー』)である。
 『ゼファー』の主役はドン・グルーシンピアノであるが,何となく主役のピアノが控え目に響いている。ハイライトとなるアドリブは共演者に任せきりでピアノはとにかくメロディー・ラインを弾き上げている。その部分が実にドン・グルーシンらしい!

 それどころか『ゼファー』では共演していないはずのデイヴ・グルーシンの演奏のようにも聴こえてしまう。自然とではなく“敢えて”ドン・グルーシンデイヴ・グルーシンに“寄せて”いるように聴こえてしまう。

 ここが最強の兄を持つ弟のサガなのか? ドン・グルーシンはいつの時代でもシーンの1.5列目に位置している。デイヴ・グルーシンリー・リトナー渡辺貞夫と,いい位置で目立っている人なのです。

ZEPHYR-2 管理人の結論。『ゼファー批評

 『ゼファー』とはドン・グルーシンがスーパー・サポートの傍らでコツコツと書き上げてきた作品の佳作集。
 演奏同様,上品で地味な『ゼファー』の中にあって【アニョランザ】だけは名曲中の名曲です。そしていつか詳しく書きますが【アニョランザ】は,後のデイヴ・グルーシンのスムーズ・ジャズ路線につながる名曲。弟が偉大な兄をリードすることもあるのです。

 最後にぶっちゃけ。管理人の中で『ゼファー』と来ればドン・グルーシンではなくラッセル・モカシン社のブーツのことです。

 
01. ZEPHYR
02. TONIGHT, PURE LOVE
03. STILL GOOD LOOKIN'
04. ANORANZA
05. HARDWOOD
06. STORYTELLER
07. CHICO
08. TRIBE
09. THE LAST TRAIN
10. HATTIE-MAE (DANCE ALL DAY)

 
DON GRUSIN : Synthesizers, Acoustic Piano, Electric Piano, Background Vocal, Vocal Chant
ABRAHAM LABORIEL : Bass
MARCUS MILLER : Bass
TOM BRECHTLEIN : Drums
ALEX ACUNIA : Drums, Percussion, Cymbals, Hi-Hat, Congas
CARLOS RIOS : Guitar
DORI CAYMMI : Voice, Acoustic Guitar
ERNIE WATTS : Alto Saxophone, Tenor Saxophone
ERIC MARIENTHAL : Soprano Saxophone
GARY HERBING : Tenor Saxophone
GARY GRANT : Trumpet
JERRY HEY : Trumpet
JERRY GOODMAN : Violin, Electric Violin
CARL ANDERSON : Lead Vocal, Background Vocal, Vocal Chant
LOU PARDINI : Lead Vocal, Background Vocal, Vocal Chant
KATE MARKOWITZ : Background Vocal, Vocal Chant
MARILYN SCOTT : Background Vocal, Vocal Chant

(ビクター/JVC 1991年発売/VICJ-73)
(ライナーノーツ/ドン・グルーシン)

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山中 千尋 / ローザ4

ROSA-1 山中千尋に(ビジュアル面を含めて)入れ込んでいる管理人。山中千尋のアルバムは全部持っている。だから『ROSA』(以下『ローザ』)も買うのは当然の儀式。でも本音を書くと今回ばかりは「ためらい」があった。

 『ローザ』の“売り”は「ピアノベースギター」のドラムレス・トリオの「アフター・アワーズ」の第3弾という触れ込みなのに,実際にはドラム入りのカルテット編成である。

 加えて『ローザ』の並びが?である。「ベートーヴェン生誕250周年,チャーリー・パーカー生誕100周年,さらに山中千尋デビュー15周年のトリプル記念盤」と来ている。
 1枚のアルバムの中に“極右と極左の代表のような”ベートーヴェンチャーリー・パーカーを同列でアレンジしてよいものなのか? その2人と同格扱いで自分を紹介してよいものか?」 ← いいんです。山中千尋ならそれが許されてしまうんです。

 ただし,すでに企画が破綻しております。もはや企画段階から年1ペースのお約束でしょ? お願いだから何でもいいからリリースして!の匂いがプンプン。ねっ,あなたも買うのを「ためらった」でしょ?

 そんな『ローザ』だったから,山中千尋お得意の“エグすぎる”アレンジは【交響曲 第5番】=【運命】での「カッコウの輪唱風」だけだったかなぁ。
 でも「カッコウの輪唱風」の【運命】が凄い! こんな【運命】は山中千尋の頭の中でないと絶対に成立しない! 超エグイ!

ROSA-2 「ザ・山中千尋」の代名詞である「異端のアレンジ」が爆発していない分,オリジナルに力が入っている。特に“跳ねに跳ね回っている”【ローザ】が超お気に入り!

 『ローザ』の発売日以降,管理人の2020年7月は【ローザ】と共にあります。新型コロナ=【ローザ】が記憶に刻まれそうで恐いです。パンデミックで暗いニュースのイメージだったのに【ローザ】の底抜けの明るさに励まされる毎日です。家の外では戦争が起こっているのに家の中だけは能天気な平和ボケなのが恐いです。こんな思い出を口にしようものなら全員から袋叩きで恐いのです。

 だから管理人は【ローザ】を5回聴きたいことろを4回に我慢して,その1回で【サムディ・サムウェア】を聴くようにしています。このローテーションがウルウル来ます。1人でド感傷に浸ってしまいます。
 山中千尋のメロディー・ラインと管理人の心がシンクロし始めています。こんな体験は初めてです。これがかの有名な「パーカー・ショック」なのか? いいや,これこそ「ちーたん・ショック」なのでしょう!?

 いえいえ,理由は分かっております。【ローザ】のサビの部分でピアノギターがユニゾンしているせいなのです。アヴィ・ロスバードギターがとっても気持ちよい。【ローザ】の名脇役改め影の主役はアヴィ・ロスバード“この人”なのでした。

ROSA-3 「アフター・アワーズ」の第3弾である『ローザ』を聴き終えて,アヴィ・ロスバードギターを主役と認めることができて,初めて「アフター・アワーズ」シリーズの真の面白さに接することができた気がしている。
 こうなったら勢いで『アフター・アワーズ〜オスカー・ピーターソンへのオマージュ』と『アフター・アワーズ2』を聴き直すモードかと思いきやそれはまだまだ。

 本日,管理人は「アフター・アワーズ」シリーズの第1弾と第2弾ではなくDVDリーニング・フォワード』を見ております。
 なぜって? それこそ【サムディ・サムウェア】! 恐らく【サムディ・サムウェア】がCDで音源化されたのは今回が初めてのことなのでは? そう言えば【サムディ・サムウェア】目当てで『リーニング・フォワード』を何回も見ていたよなぁ。
 『リーニング・フォワード』を見ていると,こちらもCD未収録の【MELO】と【SEJO】の存在が気になってきた〜。

PS 「ROSA-3」は販促用のクリアファイルです。

 
CD
01. My Favorite Things
02. Falling Grace
03. Sonata No.8 Third movement
04. Donna Lee
05. Old Folks
06. Rosa
07. Take Love Easy
08. Symphony No. 5
09. Yardbird Suite
10. Someday Somewhere

DVD
01. My Favorite Things
02. So Long
03. Take Love Easy

 
CHIHIRO YAMANAKA : Piano, Fender Rhodes
AVI ROTHBARD : Guitar
YOSHI WAKI : Bass
JOHN DAVIS : Drums

(ブルーノート/BLUE NOTE 2020年発売/UCCJ-9223)
★【初回限定盤】 UHQCD+DVD

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デイヴ・グルーシン / マイグレーション5

MIGRATION-1 フォープレイの前身がボブ・ジェームスソロ・アルバム『GRAND PIANO CANYON』にあったことは以前に書いたが,実は『GRAND PIANO CANYON』にも前身があった。つまりはフォープレイの元ネタの元ネタに当たる。

 それが何と!ボブ・ジェームスのライバルであるデイヴ・グルーシングラミー受賞作MIGRATION』(以下『マイグレーション』)である。
 そう。『マイグレーション』には,ライバルさえも魅了させる音,あのボブ・ジェームスさえも振り向かせる音がある。本当にいいアルバムだ。『マイグレーション』の音に,何年経っても憧れる自分が,いいや“恋焦がれる”自分がいる。

 『マイグレーション』の基本的な編成は,デイヴ・グルーシンキーボード(そこにドン・グルーシンプログラミングで多重録音を加えている),エイブラハム・ラボリエルマーカス・ミラーベースハーヴィー・メイソンオマー・ハキムドラムマイク・フィッシャーパーカッション。そこにサックスギターが数曲ゲストで参加している。ピアノ・トリオ+1。

 こんなにも小さな編成なのに,実に「艶やかな」演奏である。これ以上の音の厚みは『マイグレーション』には必要ない。
 『マイグレーション』で実証されたデイヴ・グルーシンのアイディアが『GRAND PIANO CANYON』でも実証されて,あのフォープレイの出発点に繋がったのだった。

 いいものはいい。ボブ・ジェームスだろうとデイヴ・グルーシンだろうと関係ない。
 かつて2人は「東のボブ・ジェームス。西のデイヴ・グルーシン」と呼ばれていた。しかしフォープレイは「東のボブ・ジェームス」に西海岸のリズム隊。
 そうなったのは『マイグレーション』で「西のデイヴ・グルーシン」が東海岸のマーカス・ミラーオマー・ハキムと組んでみせたから。

MIGRATION-2 やっぱり『マイグレーション』と来れば【FIRST−TIME LOVE】である。
 元々“素の”【FIRST−TIME LOVE】が大好きだったのだが,超最高に好きになったのには理由があった。

 それがTOKYO FM系「SELECT LIVE UNDER THE SKY」の生中継終わりで,ナジャが語るバックで流れるエンディング曲。あのシチュエーションが本当に素晴らしかった! 盛り上がりすぎた真夏の大興奮LIVEをCOOLに冷ます。
 自分の大好きな曲がラジオから流れ出した瞬間の,あのジンワリと来るうれしさは格別だった。その曲があの番組のあの余韻を語り合う最良の部分のシメを飾るうれしさ。

 【FIRST−TIME LOVE】のイントロが流れ出すと,あの時代の「最高の人生」の記憶が一気に甦る。ここは「ジャパフュー」ではなくデイヴ・グルーシンでなければならない。ボブ・ジェームスデイヴ・グルーシンと同時代に生まれてきて良かった。心からそう思う。

 
01. PUNTA DEL SOL
02. SOUTHWEST PASSAGE
03. FIRST-TIME LOVE
04. WESTERN WOMEN
05. DANCING IN THE TOWNSHIP
06. OLD BONES
07. IN THE MIDDLE OF THE NIGHT
08. T.K.O.
09. POLINA
10. SUITE FROM MILAGRO BEANFIELD WAR
  a. LUPITA
  b. COYOTE ANGEL
  c. PISTOLERO
  d. MILAGRO
  e. LITTLE DRUMMER GIRL EPILOGUE

 
DAVE GRUSIN : Keyboards
ABRAHAM LABORIEL : Bass
MARCUS MILLER : Bass
HARVEY MASON : Drums
OMAR HAKIM : Drums
MICHAEL FISHER : Percussion
CARLOS RIOS : Guitar
HUGH MASEKELA : Flugelhorn
BRANFORD MARSALIS : Soprano Saxophone, Tenor Saxophone
DON GRUSIN : Additional Synthesizer Programming
GERALD VINCI : Concertmaster

(GRP/GRP 1989年発売/VDJ-1221)
(ライナーノーツ/上田力)

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大西 順子 / バロック4

BAROQUE-1 『BAROQUE』(以下『バロック』)の大西順子が重い! 『バロック』の大西順子が強い! いや〜“女帝”大西順子が重くて強い! 大西順子がキビシーイッ!

 トランペットニコラス・ペイトンテナーサックスアルトサックスバスクラリネットフルートジェームス・カータートロンボーンワイクリフ・ゴードンベースレジナルド・ビールロドニー・ウィテカードラムハーリン・ライリーコンガローランド・ゲレロ

 このビッグネームが横並びする圧! 大西順子って,もしやウイントン・マルサリスご用達のピアニストだったのか?
 いやいやそんなことはない,と一旦は否定してみたが『バロック』を聴き進めるにつれ,大西順子が本当にウイントン・マルサリス級に感じてしまう。

 大西順子に信念を感じる。その信念のもとに「やるべきことをメンバーに強制させる」パワーを感じる。
 『バロック』なんて聴くんじゃなかった。もはや手放しで上原ひろみ山中千尋を称賛することなどできなくなった。
 大西順子こそが,J−ジャズの女性ピアニストの頂点にいる。この事実を再認識させられてしまった気分がした。

 まぁ,単純に大西順子上原ひろみ山中千尋を比較するのは無意味であろう。
 基本,上原ひろみは作曲家だし,山中千尋は編曲家である。そして大西順子ジャズの人である。それもセロニアス・モンクチャールス・ミンガスの人である。音楽的な「生まれも育ちも」全然違っている。

 そんな大西順子のアルバム・タイトルが『バロック』と来た。
 芸術の世界では「バロック的である」という言い方は,かなりの褒め言葉として通っている。芸術に造詣の深い大西順子のこと,そう軽々しく『バロック』を名乗れないことは承知している。
 その大西順子が自ら,アルバム・タイトルとして『バロック』と名付けたのは,かなりの自信作なのであろう。

 ズバリ『バロック』の真髄とは,2010年版「フルカラーのビ・バップ」である。話題となった蜷川実花撮影によるジャケット写真通りの「多色刷りの音楽」である。大西順子が,覚悟を決めて“百花繚乱”舞い踊っている。一曲一曲が強烈な原色カラーを放っている。
 『バロック』の楽曲のモチーフ,それは2010年のセロニアス・モンクであり2010年のチャールス・ミンガスであり2010年のウイントン・マルサリスである。
 そして,その光源こそが2010年版「フルカラーのビ・バップ」であり,2010年版の大西順子の“ジャズピアノ”なのである。

 『バロック』からは,生半可な気持ちでは弾けない,高度なビ・バップ理論が聞こえてくる。ビ・バップは手強い。聴いて楽しいのはハード・バップの方である。
 『バロック』で大西順子がチャンジした音楽とは“傾聴に値する”類まれなジャズの1枚だと思う。
 ただし,凄いことは分かるが,ちょっと意味が分からず,取り残される自分もいる。置いてけぼりな管理人は,ぶったまげて,腰を抜かして,お口ポカーン。

 だから管理人。『バロック』を1枚聴き通すのに10回はチャンジした。音楽に集中しようと思っても,何だか訳の分からない外国語口座を聴いている感じ? 冗談などではなく過去9回は途中で意識が飛んでしまった。

BAROQUE-2 事実『バロック』を聴いて楽しむには,ジャズについてのそれなりの知識や経験が必要とされる。仮にジャズについての知識や経験があったとしても,相当なエネルギーを必要とする。1回完走するのが「やっと」なのでヘビロテするのは難しい。
 そう。『バロック』は“聴き手を選ぶ”名盤である。管理人は愛聴できていないから,残念ながら「選に洩れた」口である。

 ここまで“高尚な”アルバムを作った大西順子のメンタルの強さに改めて圧倒されてしまう。1つの目標?理想?に向かって驀進している。
 『バロック』は,現代社会,ジャズも含めて小手先の技術に翻弄されてる世界に対して,何か啓示を突きつけたような重さを持つアルバムである。
 大西順子の重さと強さに,原始的な太古の昔からある力,生命力のような強さを感じてしまう。

 
01. Tutti
02. The Mother's
03. The Threepenny Opera
04. Stardust
05. Meditations for a Pair of Wire Cutters
06. Flamingo
07. The Street Beat/52nd Street Theme
08. Memories of You

 
JUNKO ONISHI : Piano
NICHOLAS PAYTON : Trumpet
JAMES CARTER : Tenor Saxophone, Bass Clarinet, Alto Saxophone, Flute
WYCLIFFE GORDON : Trombone
REGINALD VEAL : Bass
RODNEY WHITAKER : Bass
HERLIN RILEY : Drums
ROLAND GUERRERO : Conga

(ヴァーヴ/VERVE 2010年発売/UCCJ-2081)

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T-SQUARE / AI FACTORY4

AI FACTORY-1 『AI FACTORY』は『REBIRTH』〜『CITY COASTER』の延長線上で評価されるべきアルバムである。

 『AI FACTORY』の中に,所謂“キラー・チューン”は入っていない。『AI FACTORY』は楽曲単位で聴くアルバムではない。アルバム1枚,全9曲を聴き通して「どうですか?」と問われている感じのアルバムである。『REBIRTH』の最大の功績はその部分にある。

 CDが発売されて曲の選択と頭出しが一発でできるようになった。そしてアイポッドが発売されてシャッフル再生ができるようになった。
 ジャズなんてLPの時代はアルバム単位で評価されるのが普通だったというのに,デジタル時代になって,特に配信とダウンロードが1曲幾らになってからは,気に入った曲しか聴かなくなった。管理人もその1人になってしまった。

 『REBIRTH』と『CITY COASTER』の収録時間も短かったが『AI FACTORY』の収録時間は44分58秒。LP時代に舞い戻ったかのような短さである。潔い。
 ファンとしては「もう1曲入れて欲しい」なのだが,スクェアとしては「楽曲単位ではなくアルバム1枚を聞かせたい」。そんな狙いがあるのかも?

 思うに,T−スクェアがアルバム単位に戻ったのは【TRUTH】頼みという“コンプレックス”を乗り越えた自信から来ていると思う。
 勿論,今でもライブのラスト・ナンバーは【TRUTH】が定番である。でもそれは「お決まり」なだけであって,仮に【TRUTH】を演奏してくれなくても,観客の誰1人として何の不満も感じないと思う。

 事実,今は【RONDO】が【TRUTH】に取って変わっている。でも【RONDO】の一択で確定しているわけではない。【THE BIRD OF WONDER】にしても【THROUGH THE THUNDERHEAD】にしてもしかり。【RONDO】に変わる曲が何曲もストックされている。

 そう。現「河野坂東」時代のT−スクェアは,バンド史上初めて“キラー・チューン”不要の時代に入っている。
 メロディ・メイカーとしての安藤正容がいる。そこに坂東慧がいる。河野啓三もいる。信頼して待っていれば,何曲もいい曲が集まっている。それも“T−スクェアらしい”新曲がゴロゴロである。そのどれもが没に出来ない“スクェア印”が押されている。

 オープナーである【AI FACTORY】は,坂東チューンらしい,メカニックな実験作。近未来な「グイッグイッ」4ビートの手強いリズムが鳴っている。これぞ正しく“FACTORY”な楽曲である。
 続く【GEISYA】は,河野啓三の得意とする「胸に迫るマイナー調の佳曲」と思わせといて,ラスト一発でメジャーへとハジケルて終わる! 「お帰りなさい,河野啓三」!
 過去の自分を捨て去った安藤正容の【DAYLIGHT】が,新境地と思わせて,聞けば聞くほど安藤メロディー。伊東たけしがよく歌っているんだよなぁ,これがっ!

 この出だしの3曲で『AI FACTORY』のヘビロテ入りが決まったわけだが(管理人は『AI FACTORY』のハイライトとして6曲目と7曲目で連続するミディアム・バラードでの盛り上がりを指名します!)聞けば聞くほど“味わい深い”全9曲。そこには2年振りのレコーディングとなる「音楽監督」河野啓三の存在がある。

AI FACTORY-2 河野啓三不在の『HORIZON』は真にスペシャルなアルバムであった。LAのフュージョン・バンドを思わせる“キラキラした爽やかさ”が大好物だった。

 でもどこかが違う。何かが違う。いつもの,例えそれが名盤だろうが駄盤だろうが,現在進行形のスクェア・サウンドの変化をキチンと受け止めるべく,一心にスクェアと向き合うのとはちょっと気分が違っていた。客観的に『HORIZON』を聴いている自分に気付くことがあった。

 『HORIZON』の主役はフィリップ・セスだった。フィリップ・セスはサポートに徹してくれていたのだが,細かな最後の“塩加減”が河野啓三のそれとは明らかに違っていた。

 『AI FACTORY』には白井アキトが全面参加。フィリップ・セスばりの大活躍である。でもでもフィリップ・セスの場合とは違う。
 そう。『AI FACTORY』のキーボードの音は白井アキトではなく河野啓三の音なのだ。T−スクェアの音が鳴っている。河野啓三の音がT−スクェアの音なのだ。そう感じられた自分自身が好きになった。

 「ポップ・インストゥルメンタル」としか表現のしようがない「オール佳曲」集の『AI FACTORY』。河野啓三白井アキトの「豪華絢爛」ツイン・キーボードがこれからも続くとうれしいなぁ。

 
DISC 1
01. AI Factory
02. Geisha
03. Daylight
04. Rising Scope
05. 88/200
06. 残照
07. Colors Of The Smile
08. Darwin
09. Over The Border

DISC 2 DVD
01. HORIZONからAI Factoryへ! 〜激動の軌跡〜
  来日したPhilippe Saisse〜河野啓三・復帰ステージ〜新作レコーディング風景まで

 
T-SQUARE
MASAHIRO ANDOH : Guitars
TAKESHI ITO : Alto Sax, EWI, Flute
KEIZO KAWANO : Keyboards
SATOSHI BANDOH : Drums

Special Support:
SHINGO TANAKA : Bass
AKITO SHIRAI : Keyboards

(オレンジレディ/ORANGE LADY 2020年発売/OLCH 100017〜18)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
★【初回生産限定盤】ボーナスDVD付 2枚組
★【初回生産限定盤】三方背BOX仕様
★音匠仕様レーベルコート

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クラーク・テリー / ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート4

THE SECOND SET - RECORDED LIVE AT THE VILLAGE GATE-1 クラーク・テリーとはマイルス・デイビスオスカー・ピーターソンからベタボメされた「偉大なるトランペッター」である。
 しかし,管理人がクラーク・テリーを聴こうと思う時,それはクラーク・テリートランペットを聴きたいからではない。管理人の中でクラーク・テリーとば“トランペッター”という認識は薄い。

 そう。クラーク・テリーと来れば“音楽家”である。クラーク・テリートランペットからは,様々な優れた音楽的要素が同時に鳴り響いている。
 決して最先端の音楽ではない。しかし,クラーク・テリーから発せられた音からは,いつでも「教養の高さや深み」を感じて幸福感で満たされてしまう。マイルス・デイビスオスカー・ピーターソンが目を付けていたのはその部分なのだろう。

 同じ「教養の高さや深み」を感じるとしても,クラーク・テリーを聴いて感じるのはウイントン・マルサリスのそれとは異なる。ウイントン・マルサリスの場合は,本当の「英才教育」であり“本物”感がバリバリである。ウイントン・マルサリスジャズトランペッターに必要な全ての要素を身に着けている。完全無欠であり,史上最高のトランペッターウイントン・マルサリスのことだと信じている。

 一方のクラーク・テリーの場合,これは長年の現場を経験してきたからこそ語ることのできる「説得力」。これである。
 酸いも甘いも,成功も挫折も幾度となく経験してきたからこそ理解できる真実がある。ウイントン・マルサリスが1年で学んだことをクラーク・テリーは10年かけて学んだのかもしれない。
 ある問題点の解決策としてウイントン・マルサリスクラーク・テリーも同じ答えを提出するかもしれない。出した答えは同じであっても,真実の答えは同一ではない。やはり経験を通して学んできた者の発言は重い。
 たった一音だけなのに,その簡潔な一音に込められた意味を察することができた時,参らされることがある。経験がお金では決して買うことのできない「生涯の宝物」と呼ばれる所以である。

 『THE SECOND SET−RECORDED LIVE AT THE VILLAGE GATE』(以下『ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート』)は,単純に「聴いて楽しい」演奏である。普通に聴くと“平凡な1枚”である。そして“平凡な1枚”という評価のまま終わってしまうことがある。別にそれが悪いことだとは思わない。

 だが,偶然にも『ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート』の「楽しさの理由」に気付いてしまうと,それから先は「耳が止まってしまう」ことだろう。
 クラーク・テリーの一音一音にKOされるようになる。ビ・バップがあるしスイングさえも混ざっている。そんなジャズトランペットの歴史を聞かせつつも,結局最後は“エンターテイメント”である。アドリブ芸術からは最も離れた場所で,紛れもないジャズを感じることができるのだ。これぞクラーク・テリーのオリジナリティであろう。

THE SECOND SET - RECORDED LIVE AT THE VILLAGE GATE-2 『ザ・セカンド・セット〜ライヴ・アット・ヴィレッジゲート』はライブ盤である。会場の雰囲気が最高で演奏も大いに盛り上がっているのだが,クラーク・テリーはどんなに盛り上がろうとも勢いだけで押し切ろうとはしていない。常にクールにスイングしている。

 世間一般ではクラーク・テリートランペットの特徴について“口笛を鳴らすように”と表現されているのだが,その表現に納得の,こちらも名うてのベテラン陣,ジミー・ヒーステナーサックスドン・フリードマンピアノマーカス・マクラーレンベースケニー・ワシントンドラムに“口笛の”ニュアンス1つで全体へ指示を飛ばしている。

 バンド全体がクラーク・テリーのフレーズをなぞるかのように演奏している。これってマイルス・バンドの運営手法?
 そう。マイルス・デイビスの「憧れのトランペッター」。それがクラーク・テリーという“音楽家”なのである。

 
01. One Foot in the Gutter
02. Opus Ocean
03. Michelle
04. Serenade to a Bus Seat
05. Joonji
06. Ode to a Fuglehorn
07. Funky Mama
08. "Interview"

 
CLARK TERRY : Trumpet, Flugelhorn
JIMMY HEATH : Tenor Saxophone
DON FRIEDMAN : Piano
MARCUS McLAUREN : Bass
KENNY WASHINGTON : Drums

(チェスキー・レコーズ/CHESKY RECORDS 1995発売/SSCJ-1010)
(ライナーノーツ/三崎光人)

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チック・コリア

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発売直後の新作を批評してほしい
初心者を意識したほんわかサイトにしてほしい
マニアを意識したニッチなサイトにしてほしい
オーディオについて批評してほしい



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