アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2006年04月

マル・ウォルドロン / レフト・アローン / LEFT ALONE5

アナログレコード

 『LEFT ALONE』の1曲目は【LEFT ALONE】(以下【レフト・アローン】)。


 【レフト・アローン】こそ“ジャズの代名詞”と言い切っても過言ではない! このトラックは大方の日本人なら,まず“嗚咽”してしまうのではなかろうか?
 ジャズ・ファンは勿論のこと,普段ジャズとは無縁な演歌ファンからヘヴィ・メタルやヒップ・ホップ・ファンに至るまで,聴けば必ず“何か”を感じることと思う。
 大袈裟に表現すれば,ついさっきまで爆笑していた人が,このトラックを聴いたとたんに泣きじゃくるくらい【レフト・アローン】には聴き手の心を“悲しみで掻きむしる”強烈なパワーが秘められていると思うのだ。

 その第一原因は,ビリー・ホリディの代わりに“歌う”ジャッキー・マクリーンの“枯れた”サックスにこそある! この“すすり泣き”にも等しい“枯れた”サックスの味わいは,他の何物にも代え難い「ジャズ界の至宝」であろう。
 加えてジャッキー・マクリーンのこの“語り口”! 決して饒舌ではない“奥歯に物が挟まった”感じの語り口がたまらない。時に切々と,時に朗々と…。
 そう。伝えようとする“その何か”は定かではないのだが,それでも“その何か”を必死に伝えようとする,ジャッキー・マクリーンの“内省的な熱情”だけは,痛いほど伝わってくるのである。
 結果論ではあるが【レフト・アローン】のサックス奏者はジャッキー・マクリーン以外には考えられない。ビリー・ホリディの“かすれ声”にジャッキー・マクリーンの“すすり泣き”を重ね合わせた,マル・ウォルドロンの“眼力”いや“聴力”に惜しみない称賛の言葉を贈りたい。

 さて,ジャッキー・マクリーンアルト・サックスについては批評したくない。正直,どこかをいじると全体のバランスが崩れそうで恐いのだ。
 それで管理人の中では,この演奏が“頭のテッペンから足の先まで”パーフェクトと信じて疑わないことに決めている。聴き所を楽しみに読んでくださっている読者の皆さんには,誠に申し訳ない。ご勘弁を。

 マル・ウォルドロンピアノについても同様ではあるが,持ち上げることなら幾らか出来る。まず,豪快なイントロでの連打が素晴らしい。マクリーンへの的確なバッキングの妙については,彼の右に出る人はいないことだろう。
 2分30秒からの“間奏”についても傑出した“哀愁”のピアノを聴かせてくれる。その全てが“超”のつく“ド・マイナー”であり【レフト・アローン】の“悲しさ倍増”に一役買っている。素晴らしい!

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

THE MAL WALDRON TRIO
MAL WALDRON : Piano
JULIAN EUELL : Bass
AL DREARES : Drums

GUEST ARTIST
JACKIE McLEAN : Alto Sax


レフト・アローン
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マル・ウォルドロン / レフト・アローン5

アナログレコード

 伴奏楽器と言えばピアノであろう。そして“百戦錬磨のピアノ伴奏者”と言えば,管理人の中では“ご存知”マル・ウォルドロンに違いない。
 あっ,こう言った紹介をしてしまうと,マル・ウォルドロンは生涯を通じて伴奏者をしていたように思われるかも…。
 正確にはビリー・ホリディアビー・リンカーンの伴奏者を務めていた逸話が,単に有名になり過ぎただけのこと。元来マル・ウォルドロンチャールス・ミンガス寄りの“ハード・バッパー”なのである。

 しかしその点は良く承知しているはずなのに,どうも「マル・ウォルドロン=伴奏者」の印象を拭えない。これにはマル自身のプレイ・スタイルが関係しているので,管理人が一方的に悪いわけではない,と思っている?
 マル・ウォルドロンは,いつでも“控え目”にそっと音を合わせていく。これは相手がジャズ・ジャイアントであろうと無名の新人であろうと変わらない。フォーマットがトリオであってもクインテットであっても同じことである。
 そう。マル・ウォルドロンは決して“自己主張しない”数少ないジャズメンなのである。マルは共演者の魅了を引き出す“ツボ”を心得ている。

 そこで『LEFT ALONE』(以下『レフト・アローン』)! このCDは亡き女主人,ビリー・ホリディへ捧げた追悼盤。ビリー・ホリディの愛唱歌をマル・ウォルドロン流に仕上げている。
 今回のマル・ウォルドロンのパートナーは,アルト・サックスジャッキー・マクリーン。ちまたでは『レフト・アローン』はジャッキー・マクリーンを聴くためにこそある! という批評がよく論じられている。その主張に管理人も同感ではある。確かにジャッキー・マクリーン一世一代の“絶唱”に違いない。
 しかしジャッキー・マクリーンの絶唱の背景に“名伴奏者”マルがいることを聴き逃してはならない。手馴れた“伴奏のプロ”がマクリーンの演奏をリードし,導いていく。完全に通り道を作っている。この朴訥とした“語り口”は間違いなくマル・ウォルドロン特有の世界なのである。

 そう。『レフト・アローン』で“名伴奏者”マル・ウォルドロンが真にサポートするのは,ジャッキー・マクリーンでもビリー・ホリディでもなく“作・編曲者”としてのマル・ウォルドロン自身なのである。
 “作・編曲者”としてのマルと共演する“名伴奏者”のマル! これが見事にハマッテいる。
 純粋に“ピアニスト”としてのマル・ウォルドロンについても,2曲目以降のトリオで十分楽しめる。レベルの高いアドリブの連発に“ピアニストマル・ウォルドロンの実力が垣間見える。この確かな力量が,大物たちから“引っ張りダコ”の理由でもあろう。

(1960年録音/COCY-78641)

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イエロー・ジャケッツ / ポリティクス / EVENING DANCE5

アナログレコード

 『POLITICS』の10曲目は【EVENING DANCE】(以下【イヴニング・ダンス】)。


 【イヴニング・ダンス】は,ジャズ好きなら絶対に“燃える”(“萌える”?)!
 クールからホット,ホットからクールへのスムーズな展開力。曲想がジワジワと盛り上がり,サックスに合わせて全員が一気にブレイク! これこそジャズの醍醐味である。

 特筆すべきはラッセル・フェランテキーボード! 【イヴニング・ダンス】の決定的なムードは全てラッセル・フェランテが創りだしている。テーマに彩りを添える繊細なタッチでメンバーを支えている。彼のジャズ・センスの高さを垣間見ることができる。

 【イヴニング・ダンス】のハイライトはマーク・ルッソ! 2分1秒からのマーク・ルッソサックス・ソロが“突然変異”でうめきはじめる。
 この音を「何分何秒がどうのこうの…」と指摘するのはヤボ! 最初はソプラノっぽい美しい響きの音であるが,最後はそれこそ力技。“電車道”で持っていかれるかのような疾走感!
 これはジョン・コルトレーンウェイン・ショーターが得意としたアドリブであるが,マーク・ルッソアドリブは“ルッソ流”と呼べるほど,完全に自分の言葉で歌っている。

 そしてこれが計算ではなく,演奏中に“自然と熱気を帯びた感じ”に聴こえるところが,実に憎い!
 無意識のうちにボルテージが上がる感じなので,まるで自分の内で感情が湧きたったかのような錯覚に襲われてしまう。
 そう。これがジャズを聴く楽しみなのである。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

YELLOWJACKETS
RUSSELL FERRANTE : ALL KEYBOARDS
JIMMY HASLIP : 5-STRINGS BASS
MARC RUSSO : SAXOPHONE
WILLIAM KENNEDY : DRUMS

GUEST MUSICIANS
ALEX ACUNA : PERCUSSION
STEVE CROES : SYNCLAVIET


Politics
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チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / GOT A MATCH?5

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 2』の3曲目は【GOT A MATCH?】(以下【ゴット・ア・マッチ?】)。


 【ゴット・ア・マッチ?】は,管理人が“死ぬほど聴いた”1曲の一つであるが,今回の【ゴット・ア・マッチ?】の出来には感服させられた。
 あれほど聴いたはずなのに…。目が点になる,驚異のアドリブが実に新鮮だ! 初めて聴いた時に感じたと同じ,いやそれ以上の衝撃! これがライブ前のリハーサル演奏とは,にわかに信じられない。

 曲は超カッコイイし,ユニゾンでの早弾きには,思わず声を上げてしまう。
 同様の感想のトラックは,チック・コリア・エレクトリック・バンドには多いものだが【ゴット・ア・マッチ?】はその中でも別格である。

 とにかく全員がすごすぎる。余りのハイテクぶりに“賞賛を通り越して”ため息さえもれてしまう。擬音ばかり出てしまい紹介にならない。
 何分何秒批評など無意味。立ち止まる必要など一切ない。あっという間の14分46秒。一気に聴き通せる。その全てが聴き所。管理人ウソつかない。 ← インディアン風。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums

イエロー・ジャケッツ / ポリティクス / LOCAL HERO5

アナログレコード

 『POLITICS』の3曲目は【LOCAL HERO】(以下【ローカル・ヒーロー】)。


 【ローカル・ヒーロー】と言えば,今ではボーカル・ナンバーの方が有名であるが“元祖”サックス・バージョンもどうして…。アルト歌手=マーク・ルッソがよく“歌っている”。

 マーク・ルッソの特徴は,アドリブを吹いている時よりも,普通にテーマを奏でている時の方が掴みやすい。
 例えば,メイン・テーマ。注意深く耳を傾ければすぐに聴き取れるはずだが,マーク・ルッソアルト・サックスは“絶えず”微妙に揺れている。“スーッ”と伸びきっているように思えて,実は“静止状態”がほとんどない。これが聴いて“なんだかよく分からないけど気持ちいい”のミソなのだ。
 “レイコンマ何秒の世界”で描く,ルッソ独自の“味付け”が【ローカル・ヒーロー】成功の秘訣であろう。

 いやいや,歌っているのはマーク・ルッソ1人ではない。
 ラッセル・フェランテキーボードが,たまらなくいい! キーボードを一音一音丁寧に,メンバーの音に“添えた”彼のプレイが,トラック全体に“さわやかな”音の厚みと奥行きを与えている。
 例えば,イントロでのリズミカルで“華やいだ”タッチや,3分48秒からの音色の選択こそが,正にイエロー・ジャケッツの魅力そのものとも言える。

 そして“陰の主役たち”ジミー・ハスリップベースウイリアム・ケネディドラムの“快演”に言及しないで,この記事を結ぶことなどできない。
 “ローカル”というネーミングがぴったりな,ちょっと“古め”のノリに“お尻くねくね”したくなる。このビート,このベース・ラインが最高に気持ちいい!

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

YELLOWJACKETS
RUSSELL FERRANTE : ALL KEYBOARDS
JIMMY HASLIP : 5-STRINGS BASS
MARC RUSSO : SAXOPHONE
WILLIAM KENNEDY : DRUMS

GUEST MUSICIANS
ALEX ACUNA : PERCUSSION
STEVE CROES : SYNCLAVIET


Politics
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イエロー・ジャケッツ / ポリティクス / OZ5

アナログレコード

 『POLITICS』の1曲目は【OZ】。


 【OZ】の,このイントロが“も〜うたまらない”。ジミー・ハスリップの“うなる”ベースウィリアム・ケネディの“JAZZY”なドラムが一体となって,重低音のビートを前へ前へと押し出している。
 そこへラッセル・フェランテの“ビビット”なキーボードマーク・ルッソの“天使”のアルト・サックスが舞い降りてくるのだから“本当たまらない”。イントロの1分13秒間だけで大満足なのだ!

 しかしイエロー・ジャケッツはさらにやってくれる。イントロ終わりから始まるラッセル・フェランテのリズミカルなコード押しからサビへの一気の盛り上がり。
 マーク・ルッソアドリブも,2分35秒からの,どう展開しようかと“手探り”での歌い出しに,いつも感情移入してしまう。

 それにしても【OZ】でのベース・ラインは最高である。ジミー・ハスリップのスゴテクの成せる技なのであろうが,それを際立たせる他の3人のコラボ。いやあ,イエロー・ジャケッツというバンドは“ただ者”ではない。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

YELLOWJACKETS
RUSSELL FERRANTE : ALL KEYBOARDS
JIMMY HASLIP : 5-STRINGS BASS
MARC RUSSO : SAXOPHONE
WILLIAM KENNEDY : DRUMS

GUEST MUSICIANS
ALEX ACUNA : PERCUSSION
STEVE CROES : SYNCLAVIET


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イエロー・ジャケッツ / ポリティクス5

アナログレコード

 ウェザー・リポート亡き後,ジャズ界を強力に引っ張るコンボは未だ現われていない。
 PMGにしてもフォープレイにしても,発売と同時にマニアからも批評家からも絶賛,もしくはバッシングされるような“一目置かれる存在”までには達し得ていない。
 要はコマーシャルな部分とマニアックな部分が絶妙に同居したコンボ。多くのジャズメンが尊敬し目標とする存在であると同時に,一般大衆受けする“伝説のコンボ”。そのようなコンボは管理人にとって,ウェザー・リポートが最後なのである。

 そんな中,真のジャズ・コンボとして管理人がずっと期待しているのが“イエロー・ジャケッツ”である。
 イエロー・ジャケッツも,早いもので,もう結成20ウン年。現状は明らかに“期待外れ”ではあるのだが,いえいえ,管理人はまだあきらめきれていない。
 外野では「伸び悩み」「今一歩煮え切れていない」「売れ線に走った」等,イエロー・ジャケッツへの厳しい意見がささやかれていることは,十分承知している。
 しかし,他のジャズ批評家たちが何を言おうと,イエロー・ジャケッツは今でも管理人の心を揺さぶり続けている。イエロー・ジャケッツが姿勢においてジャズ・コンボであり続けようとする限り,真にクリエイトなジャズが今でも創造されているのだ。

 イエロー・ジャケッツにこれ程“入れ込む”ようになったきっかけが,名盤POLITICS』(以下『ポリティクス』)である。そう。言わずと知れたグラミー受賞作
 しかしイエロー・ジャケッツにとって『ポリティクス』は別の意味での金字塔。そう。『ポリティクス』は彼らが,ジャズへの転向を高らかに“宣言”したCDなのである。

 誰でも自分のそれまでのスタイルを変化させる際には,勇気や力がいる。踏ん切りがいる。女性の気持ちは良く分からないが,髪型一つ変えるだけでも大騒ぎである。
 それがある意味,今より人気がない方向への変化だとしたらどうか? “古い”とか“時代遅れ”とか,マイナスに語られることが多いスタイルに,あえてイメチェンするだろうか?
 イエロー・ジャケッツは正にそれをやってのけた。人気フュージョン・バンドからジャズ・コンボへの“華麗なる”転身である。この姿勢に管理人は,たまらなく,たまらなくグッときたのだ。

 今思えばちょうど失恋した直後のように,ウェザー・リポートを失い,傷心しきったハートのスキを,彼らがたまたま射止めただけだったのかもしれない。
 しかし仮にそうではあっても,その当時『ポリティクス』には何度も癒やされ,熱狂させられた。満たされない心を埋めてくれる,新たな恋人と出会った時の“トキメキ”があったのだ。

 ん? 仮になどは必要ない。歴としたグラミー受賞作なのだから…。とにもかくにも『ポリティクス』を聴いていただきたい。
 『ポリティクス』にはウェザー・リポート解散後失われていた“真にグレートな”ジャズ・コンボの音がある。この特有の緊張感は並のコンボでは表現不可能。現代では唯一,イエロー・ジャケッツでなければ“奏でられない音”なのだ。

 カムバック! イエロー・ジャケッツ! もうイメチェンなどしないでおくれ!

(1988年録音/25XD-1091)

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ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / MOONLIGHT IN VERMONT5


 『SOPRANO SAX』の2曲目は【MOONLIGHT IN VERMONT】(以下【ヴァーモントの月】)。


 【ヴァーモントの月】でのズート・シムズは“そっと優しく”ソプラノ・サックスを奏でる。
 テナー・サックスで時折聴かせてきた“ブロー”とは対極にあるジャズ・スタイル。

 この“そこはかとない心地良さ”は【ヴァーモントの月】自体がバラード名曲という理由もあるのだろうが,管理人に言わせればズート・シムズの“優しい”人間性がそのまま表現として“にじみでた”結果に思えてならない。
 正に“心が揺さぶられる”真の“癒し系”ナンバーである。

 1分11秒からのソプラノ・ソロでの,ごくわずかな強弱を聴き逃さないでほしい! メゾ・ピアノピアノの間を行き来するのが,ズート・シムズの内に宿る“ジャズメン魂”そのものであろう。
 これ以上はあえて解説しない。分かる人には分かると思う。分からない人は是非,分かるようになるまでCDを聴き込んでいただきたい。← 高飛車ですみません。どうぞお許しを。 

 2分23秒からのレイ・ブライアントピアノ・ソロが抜群の雰囲気を醸し出している。何か特殊な録音テクニックを使用したかに思える,キラキラと透き通るように昇華した“音色”にも大注目! 「アドリブログ」ナイス・サポート賞金賞受賞作!

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums

ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス4

アナログレコード

 春。4月。別れと出会い+引越し+新入生や新社会人…。
 連想ゲームはまだ続くが,管理人は“お上りさん”で溢れるこの時期の東京が大好きだった。管理人自身18歳で上京し,毎週毎週東京見物。エンジョイ東京ライフ!(正確には千葉県民でしたが)。ホームシックなどかかるはずもない。

 しかし,たった一度だけ長崎の田舎を思い出したことがあった。それがズート・シムズを聴き返した瞬間だった。
 ズートの“ほんわか”サウンドに“田舎の良さ”を感じたのだ。ここがミソ! ここがズート・シムズ最大の特徴であり,魅力であり,味なのである。
 思わず“昔は良かった。田舎は良かった”と口走りそうになる。都会人が失ってしまった何かが,現代ジャズが失ってしまった何かが,残されている。

 このように紹介するとズート・シムズは“相当の田舎者”に思えるかもしれないが,実はカリフォルニア州イングルウッド=「ブラック・ビバリーヒルズ」とも称される“都会派”の出身である。
 ではなぜ“やぼったい”のだろう? ズート・シムズのフレーズは,それがアドリブを吹く場合であっても“真面目にきちんと”がモットー。一言一言が明瞭で,変に自己主張しない音。この辺りの生真面目さが“やぼったさ”とつながっているのだろう。

 確かにズート・シムズは天才肌のテナー・マンではないかもしれないが,ズートの持ち味をこよなく愛する人にとっては,彼に代わるテナー・マンはいない。そう。ズート・シムズは肩肘張らないジャズ・ファンのアイドルなのだ。

 晩年,ズート・シムズテナーだけでなくソプラノアルトバリトンもプレイした。ズート・シムズテナー・マンであることを認めつつも,個人的に彼の音楽性と一番マッチするのはソプラノ・サックスだと思う。
 『SOPRANO SAX』(以下『プレイズ・ソプラノ・サックス』)がいい。全曲“癒し系”の選曲と相まってズート・シムズの持ち味が表現された一番のCDである。

 『プレイズ・ソプラノ・サックス』の別の聴き所は“音色”。ズート・シムズソプラノは,シドニー・ベシェのようにビブラートを多用したり,ジョン・コルトレーンのように表現の限界に挑むといった,ソプラノ・サックスが本来が持ち合わせている“美しい味わい”を損なうものではない。そう。ここにあるのは“自然で素直な音”。
 プレイヤーとしてのズート・シムズのテクニックは“超一流”なのである。

(1976年録音/VICJ-23598)

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