アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2006年12月

ソニー・ロリンズ / ウェイ・アウト・ウエスト / WAY OUT WEST5

アナログレコード

 『WAY OUT WEST』の6曲目は【WAY OUT WEST】(以下【ウェイ・アウト・ウエスト】)。


 【ウェイ・アウト・ウエスト】は,3人の名人技が“噛み合った”ソニー・ロリンズを代表する“歌もの”である。

 “歌もの”と言っても,当然ながらテナー・サックス・オンリー。しかし【ウェイ・アウト・ウエスト】に限っては“歌もの”と言い切ってよい,と思っている。
 ソニー・ロリンズに加えて,レイ・ブラウンベースシェリー・マンドラムスでさえ,歌っているのだから…。
 歌おうと思わず,ふと気がついたら歌を口ずさんでいた,と言う「怖ろしい病気」を誰しも一度は経験したことがあるのでは? 【ウェイ・アウト・ウエスト】での,レイ・ブラウンシェリー・マンの演奏は,正にそんな感じ。無意識のうちに歌を歌っている。

 3人が繰り出すアドリブは“超ド級”! しかしそこはかとなくリラックス! 自然体であるがゆえ,天才の実力が100%発揮されたのだろう。最高のジャム・セッションの記録である。 

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

SONNY ROLLINS : Tenor Sax
RAY BROWN : Bass
SHELLY MANNE : Drums


WAY OUT WEST
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安藤 まさひろ / メロディー・ブック / HARLEQUIN5

 『MELODY BOOK』の2曲目は【HARLEQUIN】(以下【ハーレクィン】)。

 
 【ハーレクィン】は,笹路正徳の繰り出す“必殺”シンセベースに乗せた,安藤まさひろ“お気に入り”のボーカル・ナンバー。
 このグルーヴ感にシンディボーカルが確かに合う&合う。

 安藤まさひろギターソロは曲の“間奏”って感じの軽いノリ。1分4秒からの美しい音色のバックで,小鳥の“さえずり”が聴こえる。このアイディアが妙にツボにハマッテしまう。好きだ。
 2分24秒からのアドリブは“さりげなく”ハイテクを披露した感じ。あくまでも“さりげなく”。ここが安藤らしい。

 そう。この“飛び跳ねた”感じは,笹路正徳の世界! 安藤メロディーがポップかつファンクに変貌し,やけに耳に残る。
 今後も笹路正徳と組みさえすれば,安藤まさひろが一度は断念した“歌もの”をいつでも発表できそうな勢いを感じさせる。

MASAHIRO ANDOH : Electronic Guitar, Acoustic Guitar
MASANORI SASAJI : Synthesizers, Keyboards
JUN AOYAMA : Drums
CINDY : Vocal
CARL MOORE : Vocal

クルセイダーズ / セカンド・クルセイド / DON'T LET IT GET YOU DOWN4

 『THE 2ND CRUSADE』の1曲目は【DON’T LET IT GET YOU DOWN】(以下【ドント・レット・イット・ゲット・ユー・ダウン】)。


 【ドント・レット・イット・ゲット・ユー・ダウン】は“もろ”ブラック・ファンクなのだが,まだ“垢抜け”しきっていない。どこか田舎のジャズ・ファンク

 管理人は,普段は凡庸なのに,ここぞ,という所で“大仕事”をやってのける,ウェイン・ヘンダーソンこそ“クルセイダーズの象徴”だと思っているのだが,55秒からのサックスとのユニゾンを聴いて,その思いが一層強くなった。
 ゆったり&堂々,大きなスケール感あるトロンボーンがフィルインしてきた瞬間に「あっ,クルセイダーズだ」と思わせてくれる。

 NO! クルセイダーズの特徴はバンドとしての「フュージョングルーヴ」! 【ドント・レット・イット・ゲット・ユー・ダウン】でも,イントロから鳴り続ける手拍子に絡みつく,ウィルトン・フェルダーベースサックス,それを支えるステイックス・フーパーの“粘っこい”パーカッション。これにクルセイダーズ特有の彩り=ジョー・サンプルの“リズミック”なキーボードがメッチャ連動する。
 この「ゆるゆるだけど鉄壁な」トライアングルがハイライト!

 2分4秒からのエンディングは,実に“エレガント”なジャズ・ファンク。確かに新時代のビート感であるが,まだ着こなし方が分かっていない? “荒削りの大物新人登場”と言った風情か?

THE CRUSADERS
NESBERT "STIX" HOOPER : Percussion, Effects
JOE SAMPLE : Keyboards
WILTON FELDER : Saxes, Electric Bass, Bass Marimba
WAYNE HENDERSON : Trombone

ARTHUR ADAMSGuitars
LARRY CARLTONGuitars
DAVID T. WALKERGuitars

クルセイダーズ / セカンド・クルセイド4

 ジャズフュージョン界の好敵手,ライバル相関図の名文句は「カシオペアスクェアがいるように,ウェザー・リポートにはクルセイダーズがいる」。これが世間一般の通例である。
 「カシオペア VS スクェア」は理解できるが,管理人は「ウェザー・リポート VS クルセイダーズ」という記事を見つける度に,いつも首をかしげてしまう。悶々としてしまう…。

 アドリブ芸術であるジャズにおいて“誰々に似ている”と批評されるのは,ジャズメンにとって“屈辱”なのかも知れないが(中には矢野沙織のようにチャーリー・パーカーに似ていると呼ばれることが“最高の栄誉”と言う人もいますが…)世間では簡単な判断基準として,何につけ誰かと誰かを比較する。二つ並べて見た方が確かに分かりやすい。言わば批評の“常套手段”であろう。

 さて,ウェザー・リポートクルセイダーズは「ブラック・ファンク」の共通項はあるものの,音楽性は明確に異なっている。
 マニア同士の間では無意味な比較であることが浸透しているはずなのに,相手が初心者だったりすると,ついつい,引き合いに出してしまいがちである。やはりビッグ・ネームは通りがいい。
 キーボードが同じ“ジョー”で,ホーンが同じ“ウェイン”という点も,潜在的なライバル意識として働いていると思うのだが…。

 では,ウェザー・リポート抜きに,クルセイダーズ自体を解剖してみると「ファンキー&メロディアスなリズム+2ホーンのカウンター」が特徴! しかしこの特徴が確立されたのは,フュージョンの波が押し寄せてきてからのことである。

 フュージョン・ブーム以前のCDは正直,管理人の耳には合わない。いかにも古臭い。クルセイダーズクルセイダーズ“らしく”なったのは70年代に入ってからのこと。
 ちょうど『THE JAZZ CRUSADERS』→『THE CRUSADERS』へバンド名を変更した頃からだ。

 “新生”クルセイダーズは,バンド名から『ジャズ』を除き去ることにより,ジャズブルースを前面にアピールするバンドから,ジャズを下敷きにした「ブラック・ファンク」をアピールするバンドへと脱皮した。
 そう。クルセイダーズの代名詞である“躍動的なビート”は,納豆のごとく“ねっとりと糸を引くブルース系から“洗練された”ブラック・ファンクへと昇華したのだ。

 『THE 2ND CRUSADE』(以下『セカンド・クルセイド』)は,そんな過渡期のブラック・ファンクが録音されている。過渡期と書いたが,正確には“新芽”を聴き分けることができる。そう。クリエイティブな音楽が“誕生した瞬間の”感動や“みずみずしさ”で満ちている。

 誤解を招かないよう補足しておくと,この『セカンド・クルセイド』は,バンド名を“新生”クルセイダーズに変えてからの2作目であって“ぽっとでの”デビュー2作目ではない。この時すでにクルセイダーズジャズ界の中堅グループとしての地位を確立していたのだ。
 そんな彼らの“チャレンジ作”だからこそ,安心して“目新しい所”だけを抜き出して聴き取れる。これもまた『セカンド・クルセイド』の楽しみの一つである。

 『セカンド・クルセイド』以降,フュージョン・シーンをリードしてきた,クルセイダーズの“洗練された”ブラック・ファンクには「軽さ」が伴っている。
 ここで詳しく語ることはしないが,ジャズフュージョンにおいて「軽さ」と言う言葉は良い意味で用いられる。「重くぶ厚い音」も確かにジャズの魅力であるが,「軽やかな音」こそ,よりジャズ的と言える。
 全体を貫く“黒さ”に,印象としてのんびりとした休日の雰囲気が混在している。混在こそがフュージョン! 真に開放的で明るいサウンドである。

 冒頭で述べたように,世間ではクルセイダーズを説明する手段としてウェザー・リポートとよく対比させる。
 しかし管理人に言わせれば,クルセイダーズの対抗馬は,ハービー・ハンコックヘッド・ハンターズでしょ? 同年録音の『ヘッド・ハンターズ』と『セカンド・クルセイド』を聴き比べれば「明るく伸び伸び,骨太なのに軽い」クルセイダーズの特徴が“より際立つ”に違いない。

 明日以降,ライバル対決の話題なら「ハービー・ハンコックヘッド・ハンターズ) VS クルセイダーズ」で行きませんか?
 『セカンド・クルセイド』を聴いていただければ,この主張に同意していただけることと思っています。

  01. Don't Let It Get You Down
  02. Take It or Leave It
  03. Gotta Get It On
  04. Where There's a Will There's a Way
  05. Look beyond the Hill
  06. Journey from Within
  07. Ain't Gon' Change a Thang
  08. A Message from the Inner City
  09. A Search for Soul
  10. No Place to Hide
  11. Tomorrow Where Are You?
  12. Tough Talk
  13. Do You Remember When?

(MCA/MCA 1974年発売/38XD-637)
(ライナーノーツ/上田力)

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ズート・シムズ / プレイズ・ソプラノ・サックス / WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS ( AND DREAM YOUR TROUBLES AWAY )5

アナログレコード

 『SOPRANO SAX』の3曲目は【WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS ( AND DREAM YOUR TROUBLES AWAY )】(以下【苦しみを夢に隠して】)。


 【苦しみを夢に隠して】は,ノリノリのスインギー。タイトルの“苦しみ”とはどこへやら? やはりズート・シムズの“本性”は隠せない。“夢”に向かって突っ走る,圧倒的パワーで満ちている。
 こうも明るく前向きで元気モリモリ(←古い)の要因は,ズート・シムズが自分のプレイに専念できる,充実のサイドメンたちにある。
 この“円熟の”リズム・セクションは,ズート・シムズとの共演歴も長いので,互いに手の内を知り尽くしているかのような,独特の一体感がある。そう。ズート・シムズの激しい振幅の変化に,敏感に,しなやかに反応している。
 名うてのスインガーが,これで「ノラナきゃウソ」である! で,見事に“飛び跳ねた”ズート・シムズの“一丁”出来上がり!

 しかし何度聴いても,このソプラノ・サックスはいい! 他に類を見ないプレーヤーとの“相性”の良さを感じる。この独特の味わいは,例の何分何秒批評では伝わらないと思う。
 【苦しみを夢に隠して】は,一曲通して聴いてほしい。聴き終わった後で“ジワジワと効いてくる”あの何とも表現し難い満足感? いや,これは中毒症状?
 読者の皆さんにも,これら“B級ジャズ”以外では決して手に入れることができない,真のジャズ好きだけに許された“至福の世界”を,一度体験していただきたい。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

ZOOT SIMS : Soprano Sax
RAY BRYANT : Piano
GEORGE MRAZ : Bass
GRADY TATE : Drums


Soprano Sax
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レッド・ガーランド / グルーヴィー / GONE AGAIN5

アナログレコード

 『GROOVY』の2曲目は【GONE AGAIN】(以下【ゴーン・アゲイン】)。


 【ゴーン・アゲイン】は,お涙頂戴の一歩手前=しっとり系のバラード。この雰囲気がハマル。何より3人の“歌心溢れる”アドリブが素晴らしい。

 レッド・ガーランドアドリブは,聴衆抜きに“自分の郷愁の世界”に一人没頭している感がある。
 このテーマの微妙な変化に気付いてほしい。イントロから始まる,いわゆる“崩しのない”前半の特徴が“無情”だとすれば,後半のそれはいかにも“情緒不安定”。曲の美しさに“クラクラ&フラフラ”。もう惚れてしまっている。
 演奏が進むにつれ“高揚感タップリ”で,ジャズらしくなる。4分10秒以降のピアノには“揺らぎ”があるし,4分43秒以降のフレーズには,ジョン・ルイスが入っている。5分44秒からは,バド・パウエルさえ入っている。感極まっている!

 2分1秒からのポール・チェンバースベース・ソロは,地を這うように重く,力強いのであるが,2分32秒からのフレーズは完全な“むせび泣き”である。そう。ポール・チェンバースも完全に一人“悦に入っている”。

 どうやら【ゴーン・アゲイン】の成功は,まとめ役に回った,アート・テイラーの“手腕”が大きいと言えよう。やはりソロイストには「叩きすぎない」ドラマーがピッタリである。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

THE RED GARLAND TRIO
RED GARLAND : Piano
PAUL CHAMBERS : Bass
ARTHUR TAYLOR : Drums


グルーヴィー
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小曽根 真 ザ・トリオ / ファースト・ディケイド / AGUA DE LA MUSICA5

 『FIRST DECADE』の5曲目は【AGUA DE LA MUSICA】(以下【アグア・デ・ラ・ムジカ】)。


 【アグア・デ・ラ・ムジカ】の新録音バージョンは,繊細かつダイナミックな演奏で,聴き所が一層UPの増量中! これぞ「ザ・トリオ」の全て,と言い切っても過言ではない! いい!

 イントロから始まる,静かで“粒立ち”の良いプレイは,チック・コリアの世界に通じる緊張感。クラシック調のソロ・ピアノで。掴みはOK。“グっと”来る!
 北川潔ではない,ジェームス・ジーナス・バージョンの【アグア・デ・ラ・ムジカ】を感じるのが,1分33秒からの躍動感! この“しなやかな”連動感は,他のピアノ・トリオにはない「ザ・トリオ」オリジナルの“味”である。

 2分5秒からのジェームス・ジーナスベース・ソロも,叙情性を感じさせる“さすが”の出来で素晴らしい。
 4分10秒からの「ザ・トリオ」の象徴的“ヤマ場”が強烈! クラレンス・ペン“渾身の”ドラミングには(音楽素人であろうと)誰しも魅了されることであろう。全世界からの絶賛の嵐も至極当然&「お見事!」の一言に尽きる。
 ただし,ここで聴き逃してならないのは,その直前と直後の,小曽根真ピアノ・ソロである。ここでの盛り上がりなしに“例のヤマ場”は成立しない! “世界の小曽根”が超・最高!

THE TRIO
MAKOTO OZONE : Piano
JAMES GENUS : Bass
CLARENCE PENN : Drums, Percussion

オスカー・ピーターソン / プリーズ・リクエスト / QUIET NIGHT QUIET STARS (CORCOVADO)5

アナログレコード

 『WE GET REQUESTS』の1曲目は【QUIET NIGHT QUIET STAR (CORCOVADO)】(以下【コルコヴァード】)。


 【コルコヴァード】の,オスカー・ピーターソンはまるで“ひとり・MJQ”!
 【コルコヴァード】でのピアノは,ジョン・ルイスピアノミルト・ジャクソンヴァイブが“ブレンド”されたかのような音を出す。キラキラとした透明感のある“ヴァイブのような”ピアノの音!

 オスカー・ピーターソンアドリブは,全くもって“非の打ち所のない”出来である。いつ,何度聴いても“スゴイ”と思わせてくれる名演
 “高速”【コルコヴァード】の解釈がいいし,何より心ゆくまで“歌っている”。このトラックは,本家『ゲッツ/ジルベルト』での,ジョアン・ジルベルトアストラッド・ジルベルトの“あの”語り口を超えてしまっている。

 この成功の陰にはレイ・ブラウンエド・シグペンの好サポートがある。ピアノに“つかず離れず”の位置取りが,見事なコントラストを演出している。

 それにしても,こんなにおもしろい程ピアノが弾けるとなると,楽しすぎるだろうなぁ…。
 どこをどう聴いても最高の一曲であるが,ピンポイントで1分43秒からの“連打”とそれに続く1分50秒までの“飛翔感”! 最高のジャズピアノ

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

THE OSCAR PETERSON TRIO
OSCAR PETERSON : Piano
RAY BROWN : Bass
ED THIGPEN : Drums


プリーズ・リクエスト
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オスカー・ピーターソン / プリーズ・リクエスト4

アナログレコード

 ジャズ界の「優等生」。それがオスカー・ピーターソンである。
 彼のレベルは相当高い! アドリブの冴え,リズム感,ドライブ感…。その他,ピアノという楽器にまつわる,ありとあらゆる項目でトップランクを軒並みGET! ジャズメンに通信簿があるならば,オスカー・ピーターソンは“オール5”の「優等生」であろう。

 恐らく,全てのジャズメンはオスカー・ピーターソンに“なれるものならなりたい”と思っていることだろう。オスカー・ピーターソンは,ある意味“ジャズメンの神様”的位置にいる。
 しかし“ジャズメンの神様”の音楽が愛されるかと言えば,必ずしもそうではない。頭では,聴くCD聴くCD,全部が「五つ星」であることは分かっている。しかし“心を動かされた”とか“熱烈に愛する”という感動が薄い。すごい,が即,愛聴盤とはならないのである。
 これは“世の常”ゆえ,どうしようもないことであるが,手のかかる子ほど“かわいい”ものである。真面目な「優等生」は人気が出ない。正直,出来すぎてつまらない。
 下手クソでも“灰汁の強さ”さえあれば何とかなるのがジャズ。みんなが羨む“絶大な才能”が,かえって足かせとなっている。オスカー・ピーターソンにとって,この“不条理”が悲劇なのである。

 こうなったら,オスカー・ピーターソンの“底なしの素晴らしさ”を徹底的に楽しむしかないであろう。それがジャズ・マニアに残された唯一の道! 明るく開放的なジャズも聴き方によっては結構楽しめる!
 ここは自称・ジャズ批評家としての腕の見せ所? オスカー・ピーターソンの“おいしい聴き方”には少々“コツ”が必要なのだ。

 『WE GET REQUESTS』(以下『プリーズ・リクエスト』)を例に挙げよう。オスカー・ピーターソンは,ライブでよく聴衆からのリクエストを受けたそうだ。そう。『プリーズ・リクエスト』は,名曲オンパレードのアンコール集である。
 実際はスタジオでの“名録音盤”として,その名を天下に轟かせているのだが,この質感は“ライブ盤”である。この演奏の雰囲気には,大勢の聴衆に囲まれてこそ“オーラを発揮する”オスカー・ピーターソンの本質がよく表われている。

 そしてここが聴き所であるが,オスカー・ピーターソンの“エレガントな”ピアノは,アドリブを奏でている時でさえ丁寧にバックに音を合わせている。
 「黄金のトリオ」「キング・オブ・トリオ」と称された“指折り”のピアノ・トリオの成功は,オスカー・ピーターソンの“音楽監督”としてのバランス感覚に負うところが大きい。
 ベースレイ・ブラウンドラムエド・シグベンを従えた,わずか3人の演奏ではあるが,オスカー・ピーターソンが“指揮”するピアノ・トリオの演奏は,あたかもオーケストラと“ジャズ”を共演しているかのような風情がある。繊細かつ大迫力の3人のオーケストラ! いや(聴衆の熱気がトリオに影響を及ぼすことから)ビッグ・バンドと呼んでもいい!
 そう。オスカー・ピーターソンが「優等生」として,共演者を,時には観客さえも,自分の音世界の“彩り”の一つとしてまとめあげていく! 実に素晴らしい!

 そんな“音楽監督”オスカー・ピーターソンが『プリーズ・リクエスト』でプロデュースしたのが“世界一のピアニストオスカー・ピーターソン! ベースドラムの間隙を縫うように,協調性のあるアドリブが展開されている。
 この音造りは“してやったり”である。本当かどうかは『プリーズ・リクエスト』を聴いて確かめてもらうこととして,ここで結論! トリオのためにピアノを弾くのではなく,ピアノのためにトリオが必要であった。カルテットやクインテットではこうも自由な演奏は難しい。やはり無意識のうちに“自分を生かす”トリオ・フォーマットを選択した,オスカー・ピーターソンは天才であろう。
 ん? もしや「優等生」が“必死に隠す”計算高さ? ははぁ。

 いずれにしても,オスカー・ピーターソンは根っからのジャズメン! このアドリブには“灰汁がなく”人気が出ないと分かってはいても,体質的にジャズ以外はプレイできないことが手に取るように伝わってくる。“ピアニスト”としてのオスカー・ピーターソンは,いつでも100%“ジャズ”している。

 非の打ち所のないジャズもいいものではないか! 明るく開放的なジャズもいいではないか! たまには薄暗い部屋を飛び出し,青空の下,オスカー・ピーターソンを聴くのもいい。TPOに合わせるジャズ,これがオスカー・ピーターソンを聴く“コツ”である。

(1964年録音/UCCU-9506)

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