アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2008年12月

TBS / 日本レコード大賞 / 上原ひろみ

日本レコード大賞 / 上原ひろみ 普段あえて書かない私事ですが,久しぶりに年越しを実家で過ごそうとしております。
 親元にいると家事や料理の面ではらくちんなのですが,ジャズ・マニアとしては日課であるジャズ鑑賞が楽しめないのでストレスが溜まってしまいます。読書にも飽きるとTV鑑賞となるわけですが,何せチャンネル権は両親が有しているわけで…。

 それで好むと好まざるとに関わりなく,食卓を囲む時間は家族全員でTVを見るわけですが,今夜はこれで一つ得をしました。自分一人では“絶対に”見ることのない(十数年ぶり?)『第50回 輝く! 日本レコード大賞』を偶然目にしたわけですが,これが何と普段見たくても見れない衝撃映像でした。

 そう。オープニングで“我らが”上原ひろみ嬢の大熱演! ひろみさんったら『ビヨンド・スタンダード』で「優秀アルバム賞」を受賞していたようです。それで歴代の大賞受賞曲のメドレーをソロイストとしてピアノで弾き倒しておりましたが,凄かったぁ! もう身体全身を使って表現しようとするものだから,まるでエリントンピアノ・オーケストラ風! あの速さでダイナミックな演奏にトレードマークの笑顔&笑顔! いいものを見せていただいた両親に(今回も)感謝しないといけませんねっ。

 オープニングのMCでは上戸彩&“愛しの”松下奈緒嬢のすぐ後ろ。そうそうたる受賞者の面々を押しのけ,上原ひろみが堂々とど真ん中に立っていました。一言インタビューを受けた後,CMを挟んで上原ひろみソロ・ピアノの開演です。
 演奏曲はワン・テイクでスタッフがOKしたのに,彼女自身が首を横に振って20もテイクを重ねた“あの”【アイ・ガット・リズム】! 途中で沸き起こった会場の手拍子が追いつけないほどの正確な早弾きが圧巻! それを幼稚園児のごとく“ニッコリ笑顔”で演ってしまうものだから,口があんぐりでした。そう言えば子供の頃,よく学校の先生に(勿論両親にも)「口を閉じるように」って怒られていたよなぁ。

 上原ひろみさん,何はともあれレコ大の「優秀アルバム賞」受賞,おめでとうございます! 先日発表されたスイングジャーナル誌主催「第42回ジャズ・ディスク大賞」の金賞制作企画賞最優秀ジャズ・ビデオ賞受賞の“驚異の3冠達成”が余り話題にならなかった分,今回は反響が大きいのでは? もっともっと『ビヨンド・スタンダード』が売れますように!

リー・モーガン / ヒアズ・リー・モーガン / I 'M A FOOL TO WANT YOU5


 『HERE’S LEE MORGAN』の3曲目は【I’M A FOOL TO WANT YOU】(以下【アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー】)。


 管理人は【アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー】を“世紀の名演”の類に入れたいと思っている。メンバー全員のソロ回しに涙してしまう,とにもかくにも素晴らしいバラードである。

 リー・モーガントランペットが泣きまくっている。このニュアンスはビリー・ホリディの“絶唱”に近い。胸が締め付けられるような“キュン”とくるミュートは,一晩中聴いていたいと思わせる魅力に満ちている。
 4分30秒での,4回も溜めたドモリ口調(分かるかな?)のミュートに【アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー】への思いの丈が溢れている。

 そして「主役喰い」のクリフォード・ジョーダン降臨! 1分13秒からのテナー・ソロがゆったりと進行し,リー・モーガンウィントン・ケリーが絡んでくる。このタイム感こそが【アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー】の聴き所であろう。
 ハイライトは,3分44秒からのクリフォード・ジョーダンの“一吹き”! これぞ“ゾクッと”鳥肌もののテナー・サックスである。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

LEE MORGAN : Trumpet
CLIFFORD JORDAN : Tenor Sax
WYNTON KELLY : Piano
PAUL CHAMBERS : Bass
ART BLAKEY : Drums

チック・コリア・エレクトリック・バンド / トゥ・ザ・スターズ・ツアー・エディション / THE LONG PASSAGE4

 『TO THE STARS TOUR EDITION/DISC 1』の12曲目は【THE LONG PASSAGE】(以下【ザ・ロング・パッセージ】)。


 【ザ・ロング・パッセージ】は,何ともイメージが掴みにくい一曲である。リズムもテーマもことごとく変化する。しかし“なんでもあり”には聴こえない“凄い”一曲である。

 ちなみに曲の構成を分解して記録してみると…。
 イントロから33秒までのテーマ ぃ械管辰ら46秒までのピアノ,47秒から55秒までのリフ,56秒から2分7秒までのSFテーマ,2分8秒からのユニゾンテーマ ぃ格18秒からのピアノ・ソロ+ユニゾン◆帖
 あー疲れる。全部分析しようと思ってはみたが,延々と曲想が変化するので,この位でやめさせてもらいます。すみません。
 読者の皆さんにも実際に一聴していただければ,途中でやめることにした管理人の“もやもやした気持ち”も少しは理解していただけるかと思っております。はい。

 好みかどうかは別にして,この1曲を分割して10曲ぐらいは作曲できそうな,とにかく“凄い”一曲。【ザ・ロング・パッセージ】とのネーミングはお見事である。
 全体のまとまりに欠けるのは管理人の文章力であり,チック・コリアではありませんから,どうぞご安心を。

CHICK COREA ELEKTRIC BAND
CHICK COREA : Keyboards, Piano
FRANK GAMBALE : Guitar
ERIC MARIENTHAL : Sax
JOHN PATITUCCI : Bass
DAVE WECKL : Drums

綾戸 智絵 / FOR ALL WE KNOW / I ONLY HAVE EYES FOR YOU5

 『FOR ALL WE KNOW』の1曲目は【I ONLY HAVE EYES FOR YOU】)。


 【I ONLY HAVE EYES FOR YOU】を,一度で良いから無心で聴いてみてほしい。きっと“アドリブ至上主義”としてのジャズ観が変わるはず!

 【I ONLY HAVE EYES FOR YOU】を彩る,綾戸智絵が凄いのか,それともバックが凄いのか,いやいや,これぞ理想の相乗効果! フロントとバックが入り混じる,そこにいる全員がジャズ・ヒーローなのだ。
 益田幹夫ピアノが,鈴木良雄ベースが,日野元彦ドラムが,そして綾戸智絵が…。
 イエーイ,イッツ,グレイト・ジャズ! アドリブ至上主義はジャズの一面であってジャズの全てではない。

CHIE AYADO : Vocal
MIKIO MASUDA : Piano
YOSHIO SUZUKI : Bass
MOTOHIKO HINO : Drums

ハービー・ハンコック / ヘッド・ハンターズ / VEIN MELTER4


 『HEAD HUNTERS』の4曲目は【VEIN MELTER】。


 【VEIN MELTER】は,これまでのファンク3連続から一転,全体にゆったりと時が流れるフュージョンである。
 心臓の拍動にも似たビートの上に,ベニー・モウピンバス・クラリネットが,曲想にあったアドリブを添えている。

 4分47秒からのハービー・ハンコックエレピ・ソロは,繊細で絵画的なタッチ。こちらが本来のハービー・ハンコックの持ち味かと思わせてくれる。
 ラストは,心と身体を“クールダウン”させるかのごとく,ポール・ジャクソンベースハービー・メイソンドラムがゆっくりとフェードアウトしていく。ここがまたカッコイイ。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

HERBIE HANCOCK : Fender Rhodes Electric Piano, Clavinet, Arp Odyssey Synthesizer, Arp Soloist Synthesizer, Pipes
BENNIE MAUPIN : Soprano and Tenor Saxophone, Saxello, Bass Clarinet, Alto Flute
PAUL JACKSON : Electric Bass, Marimbula
HARVEY MASON : Drums
BILL SUMMERS : Congas, Shekere, Balafon, Agogo, Cabasa, Hindewho, Tambourine, Log Drum, Surdo, Gankoqui, Beer Bottle
 

アキコ・グレース / 東京 / KUROSAWA4

 『TOKYO』の10曲目は【KUROSAWA】。


 【KUROSAWA】とは,映画監督・黒澤明のこと。【KUROSAWA】は“時代劇”で流される黒沢映画の音であろう。

 藤原道山尺八がドラマティック! 映画界の日本代表が黒澤明なら,ピアノの日本代表はアキコ・グレースである。ワールド・クラスのピアノのバックで移ろい行く映像美が,時に時代劇,時にフランス映画であり,勿論,ニューヨークしている。
 そう。【KUROSAWA】の主演はアキコ・グレースであって【KUROSAWA】は「アキコ・グレースのPV」と成り得る。

 …と書いてはみたが,管理人の第一印象は黒澤映画ではなく水戸黄門。1分1秒から1分23秒と3分6秒から3分30秒が「おな~り~」をイメージさせる。

AKIKO GRACE : Piano
KIYOTO FUJIWARA : Bass
TAPPY IWASE : Drums
DOZAN FUJIWARA : Shakuhachi

綾戸 智絵 / FOR ALL WE KNOW5

FOR ALL WE KNOW-1 綾戸智絵である。彼女について何から語ったらよいのだろう。恐らく,綾戸は日本一有名なジャズ・ボーカリストであろう。

 何と言ってもあの「しゃべり」である。あるいは乳ガンだとか国際結婚だとかシングル・マザーだとか親の介護だとか…。
 しかしそれらは多分に“人間”綾戸智絵としてであって“ジャズ・ボーカリスト綾戸智絵としてではない。何とも勿体ない。綾戸智絵は,日本一有名で日本一“ディープ・エモーション”なジャズ・ボーカリストなのだから…。

 綾戸智絵のデビューCDFOR ALL WE KNOW』には,綾戸智絵の“魂”が詰まっている! 歌詞の一言一言に“命の息吹”が吹きかけられている。

 そう。『FOR ALL WE KNOW』は,綾戸智絵の人生の証し,命の叫び,そのものである。『FOR ALL WE KNOW』を,生半可な気持ちで聴くことなどできない。“素っ裸の”綾戸智絵を受け止める勇気が必要なのだ。

 もしかしたら『FOR ALL WE KNOW』が綾戸の“最初で最後の”CDになるかもしれない。次作を録音できる保証はない。だから「全力投球」だから「一球入魂」なのである。

 これは『FOR ALL WE KNOW』が,売れるか売れないか,の話ではない。
 そうではなく綾戸智絵の抱える爆弾=声帯の問題であった。綾戸智絵は,喉のポリープを診察した医者から「歌えるのはあと1年かもしれない」と宣告されたそうだ。それ以来「いつ歌えなくなるとも限らない。このステージが最後になるかもしれない」という思いを胸に“身体を張って”ライブに立ってきた。そしてついに掴んだCDデビューの大チャンス!

 そう。『FOR ALL WE KNOW』は,いつ何時“命の炎”が消えるかもしれない。そんな不安感との消耗戦のさなかに発売された“ジャズ・ボーカリスト綾戸智絵の生存を伝える“目に見える証し”。もう後がない,切羽詰った綾戸智絵が“命を削って”吹き込んだ大傑作なのである。

 管理人は,そんなことなど全く知らずに『FOR ALL WE KNOW』を聴いてしまった。感動しまくった。マジで涙してしまった。泣きながらライナーノーツを読んだ。感動が後から後から込み上げてくる。文字で涙し耳でも涙する。この感動は“今の今でも”薄れることがない。

 その日以来,管理人は綾戸智絵をずっと応援してきた。新作のニュースを聞く度に,何だか凄くうれしくなる。またCD出せたんだ。身内のように小躍りしてしまう。
 ただし最近はそんなに聴いていない。それというのもブレイク後,ニュアンスが変わってしまったかなぁ。

FOR ALL WE KNOW-2 正直,TVでトークしている綾戸智絵を見るのは好きではない。トークはいつでも絶品である。大阪のおばはん丸出しである。めっちゃ明るい。あれが綾戸智絵の偽らざる“地”に違いない。

 しかし『FOR ALL WE KNOW』から綾戸智絵に触れた者としては,あの“底なしの明るさ”に違和感を覚えてしまう。
 「素の綾戸さんはそんな薄っぺらい人とちゃうでしょう?」という気持ちを抑えながら,でもあのトークに笑わされてしまう。きっと“地獄を何度も経験してきた者”だからこそ出せる明るさなのだろう。綾戸智絵を見ていると「悲しみの数だけ人は強くなれる〜♪」の歌詞は真実だと思う。

 あぁ,やっぱりグダグダと書いてしまった。綾戸智絵と向き合おうとすると,いつも胸中複雑な心境に襲われてしまって…。
 とにかく綾戸智絵ジャズ・ボーカリストは“魂”そのもの。人生であり命である。『FOR ALL WE KNOW』を綾戸智絵の最高傑作と読む。( by 寺島靖国風 )

  01. I Only Have Eyes For You
  02. I Can't Stop Loving You
  03. Guess Who I Saw Today
  04. Just One Of Those Things
  05. Bridge Over Troubled Water
  06. Angel Eyes
  07. Hallelujah, I Love Him So
  08. One For My Baby
  09. Oleo
  10. In A Mellow Tone
  11. What Are You Doing The Rest Of Your Life 
  12. I Love Being Here With You
  13. When Sunny Gets Blue
  14. For All We Know
  15. Heritage

(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 1998年発売/EWCD-0005)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/内田修,児山紀芳,綾戸智絵)

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小林 香織 / ファイン / SLEEP ON IT4

 『FINE』の7曲目は【SLEEP ON IT】(以下【スリープ・オン・イット】。


 土方隆行カルロス菅野笹路正徳が“精魂込めて創り上げた”ゴキゲンなイントロを,たったの一吹きで自分の物としてしまう,アルト・サックス・プレイヤー小林香織。【スリープ・オン・イット】は,アルト・サックス・プレイヤー小林香織の存在際立つフュージョン・ナンバー。

 バックの野獣どもを振り切る,2分28秒でのアドリブの入りがお見事! 小林香織アルト・サックスが,チャカ・カーン以上に歌う歌う! 歌ものに強いかおりんであった。

 4分17秒からの野村義男ギター・ソロにエリック・ゲイルを期待するのは間違いである。純粋に4分50秒からラストまでの小林香織との“掛け合い”が楽しめる。

KAORI KOBAYASHI : Alto Sax
MASANORI SASAJI : Keyboards
TAKAYUKI HIJIKATA : Guitar
KENJI HINO : Bass
SHUICHI "PONTA" MURAKAMI : Drums
CARLOS KANNO : Percussions
YOSHIO NOMURA : Guitar solo

akiko / リトル・ミス・ジャズ・アンド・ジャイヴ / IT DON'T MEAN A THING (IF IT AIN'T GOT THAT SWING)4

 『LITTLE MISS JAZZ & JIVE』の1曲目は【IT DON’T MEAN A THING (IF IT AIN’T GOT THAT SWING)】(以下【スウィングしなけりゃ意味ないね】)。


 「ONE-TWO,ONE-TWO,TEST,TEST」と“跳ね系”のリズムで始まる【スウィングしなけりゃ意味ないね】は,42秒で発せられた,akikoの「JAZZ!」宣言により,スウィング・パーティへと大変身!

 これは古い録音エフェクト! ミッドレンジ・ステレオのセンター寄り+厚めの中低音+高域カットで,バンドが団子の一丸音! それでも“キレキレ”な,岡淳テナー・ソロ,友金まゆみピアノ・ソロは,デューク・エリントン・オーケストラにおけるソロ・パートの再現であろう。そこへ“掛け合う”akikoの無機質なボイスが,やっぱり“跳ね系”=ジャンプ&ジャイヴ! 
 「1,2,3…」と「A,B,C…」ときた後の,1分36秒での「ドゥワッ,ドゥワッ」でドッピュー!? そう。ジャンプ&ジャイヴで【スウィングしなけりゃ意味ないね】!

AKIKO : Vocal
MAYUMI TOMOKANE : Piano
OSAMU KAWAKAMI : Bass
HAJIME ARIZUMI : Drums
MAKOTO OKA : Tenor Saxophone

本田 雅人 WITH VOICE OF ELEMENTS / MASATO HONDA WITH VOICE OF ELEMENTS / BOP FACTORY4

 『MASATO HONDA WITH VOICE OF ELEMENTS』の7曲目は【BOP FACTORY】。


 【BOP FACTORY】は,VOEの考えるBOPではない。VOEの考える“ビッグ・バンド”である。

 本田雅人の“一人ブラス隊”のアレンジが,もろビッグ・バンド! 一人多重録音でここまで手色の違う音を吹き分けるとは,さすがの一言! 2分1秒から登場する“リード・アルト奏者”本田雅人アドリブにしびれてしまう。

 本田雅人お得意の“キメまくり”テーマの連続に,ビッグ・バンド・サウンドが徐々に熱気を帯びていき,4分24秒から繰り出される則竹裕之のスティック捌きで完全疾走する! このアップテンポなのに粘り気のあるビートは“ウェザー・リポート風”! 則竹裕之ドラムスピーター・アースキンしている!
 ああそうか。則竹アースキンしているからビッグ・バンド・サウンドに聴こえるのかも? そう思って聴き直せば,2分36秒からの須藤満フレットレス・ベースが“ジャコパス風”に聴こえてくるからもう大変! 一人納得のVOE版“ビッグ・バンド”が大好きである。

MASATO HONDA WITH VOICE OF ELEMENTS
MASATO HONDA : Saxophones, EWI, Flute, Synth-programming
KEIJI MATSUMOTO : Keyboards, Piano, Guitar, Accordion, Synth-programming
MITSURU SUTOH : Bass
HIROYUKI NORITAKE : Drums

グラント・グリーン / フィーリン・ザ・スピリット / JOSHUA FIT DE BATTLE OB JERICHO5


 『FEELIN’ THE SPIRIT』の2曲目は【JOSHUA FIT DE BATTLE OB JERICO】(以下【ジェリコの戦い】。


 “アーシー”なムードに【コンドルは飛んでいく】のメロディが融合した【ジェリコの戦い】のテーマ弾きが,グラント・グリーンの真骨頂! 朴訥なメロディをひたすら繰り返しながらエクスタシーの瞬間へと登り詰めていく!

 管理人の好みは【ジェリコの戦い】のテーマ弾きであるが,聴き所は別物。テーマに挟まれた中盤にこそある。
 2分31秒から3分3秒までの早弾きフレーズを聴けば,3分7秒から3分43秒までが“同じモチーフ上のアドリブ”であることが良くわかる。この展開,変形メロディの思考パターンにグラント・グリーンの個性が現れている。ここが好きなんだよなぁ。

 そしてハービー・ハンコック! 3分47秒からのハービーピアノ連弾は,グラント・グリーンの流れを受けた“ご愛嬌”だろうと思っていたが,4分9秒4分14秒までは“モロ”そうだし,完全にハービー・ハンコックアドリブが“グラント・グリーン化”してしまっている。どうしたハービー? いいえ,これこそグラント・グリーンの底力! ハービー・ハンコックに感化を与え得たジャズメンは「マイルス・デイビスか,グラント・グリーンか」という大袈裟な話? いいんです。グラント・グリーンは“小粒”でいいんです。管理人さえそう信じていれば,いいんですっ!

 5分51秒から6分0秒の“泣きのギター”。6分22秒から6分33秒でまたまた繰り出すリフレイン! シングル・トーンに“じんわり”やられてしまう。歌心あるよなぁ。グラント・グリーンの“魂のギター”を耳にすれば,あのサンタナでも“泣き”が入ったことと思います。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

GRANT GREEN : Guitar
HERBIE HANCOCK : Piano
BUTCH WARREN : Bass
BILLY HIGGINS : Drums
GARVIN MASSEAUX : Tambourine

グラント・グリーン / フィーリン・ザ・スピリット5


フィーリン・ザ・スピリット グラント・グリーンと出会えたことを幸運に思っている。グラント・グリーンは,ジャズを聴いていなかったら決して出会うことのなかった「B級」ジャズ・ギタリストである。そう。グラント・グリーンを聴く楽しみは,ジャズ好きのみに“許された”特権なのである。

 グラント・グリーンは,決してテクニシャン・タイプではない。むしろ不器用そのものである。悪く言えば「ワン・パターン」に違いない。しかしグラント・グリーンの“誰にでも簡単に弾けそうなフレーズを何度も繰り返し積み上げていく”ギター・スタイルは,実はそう易々と“できそうでできない”代物なのである。紙一重のレベルで“一芸を極めた”グラント・グリーンジャズ・ギターには,ジャズの“酸いも甘いも”を味わってきたものだけが辿り着ける「電化マイルス」以上の価値さえあると思っている。

 全てのジャズ上級者たちよ。『FEELIN’ THE SPIRIT』(以下『フィーリン・ザ・スピリット』)を聴け! グラント・グリーン奏でる,ニグロ・スピリチュアルな『フィーリン・ザ・スピリット』の音世界へ足を踏み入れよ! …って,強気の中山康樹風です。
 ねっ,ズボズボでしょ? グラント・グリーンの禁断の音世界へ一歩足を踏み入れたなら二度と抜け出せなくなるのです。そう。グイグイ足を取られていく,確実に底なし沼へと引きずり込まれる感触が味わえるのです。
 図太い音色で同じフレーズを執拗に繰り返し続ける“一人コール&レスポンス”で,いつしか絶頂へと登り詰めた時の快感! 管理人は,グラント・グリーンの“一人コール&レスポンス”で幻聴体験を迎えるのが常である。(危な〜い)
 幻聴体験とは,すなわち,グラント・グリーンの“声”がCDから聞こえてくる。グラント・グリーンに“語りかけられている”気がしてしょうがないのである。黒人霊歌を甘美なシングルトーンで,時に情熱的に時に哀愁を湛え真摯に語りかけてくる。そして年に一度はグラント・グリーンの“声”が霊界との会話に聞こえてくるから一大事である。(おお危ない危ない)
 そう。グラント・グリーンジャズ・ギターは,ウエス・モンゴメリーとは違う意味での“神業”なのである。

 きっとグラント・グリーンへの評価が「B級」なのは,真似しようとも真似できない,手が届きそうで届かない,掴めそうで掴めない“はがゆさ”ゆえ? 永遠に現実と幻想が交錯する“幻聴のジャズ・ギター”だからに違いない。

(1962年録音/TOCJ-9038)

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