アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2009年10月

チャーリー・ヘイデン & パット・メセニー / ミズーリの空高く / THE MOON IS A HARSH MISTRESS5

 『BEYOND THE MISSOURI SKY (SHORT STORY)』の6曲目は【THE MOON IS A HARSH MISTRESS】(以下【ザ・ムーン・イズ・ア・ハーシュ・ミストレス】。


 『ミズーリの空高く』で燃え上がる,静かなる青い炎は【ザ・ムーン・イズ・ア・ハーシュ・ミストレス】から始まった!
 『ミズーリの空高く』の最重要曲=チャーリー・ヘイデンパット・メセニーのクロス・ポイントが【ザ・ムーン・イズ・ア・ハーシュ・ミストレス】である。

 チャーリー・ヘイデンウッド・ベースパット・メセニーのステール弦による“静かな静かな”のデュエットは『ミズーリの空高く』前半の音世界である。
 そこへ,1分31秒でフィルインしてくるガッド・ギターで奏でられた美メロに頭くらくらした瞬間,更なる追い討ちをかけるシンクラビアによるストリングス・アレンジが実に美しい。美しすぎる! これぞ一気に華やぐ『ミズーリの空高く』後半の音世界である。

 ライナーノーツの中でチャーリー・ヘイデンが,メセニー・ミュージックを指して“アメリカ印象主義”と呼んでいるが【ザ・ムーン・イズ・ア・ハーシュ・ミストレス】は,これぞ“アメリカ印象主義”の王道である。パット・メセニージャズフュージョン界のモネである(アメリカ印象主義ではないけれど…)。

 【ザ・ムーン・イズ・ア・ハーシュ・ミストレス】は『ミズーリの空高く』のジャケット写真にある,群青やセピア色の空の移ろいが音楽的に表現されたトラックである。夕暮れを覆いつくす空一面のオレンジの雲が“アメリカ印象主義”の象徴である。

CHARLIE HADEN : Bass
PAT METHENY : Acoustic Guitars and all other instruments

和泉 宏隆 トリオ / ア・スクェア・ソング・ブック / WHITE MANE5

 『A SQUARE SONG BOOK』の2曲目は【WHITE MANE】。

 
 【WHITE MANE】がいい。和泉宏隆ピアノがメインを取り,村上聖フレットレス・ベースが脇を固める最高のアレンジである。

 【WHITE MANE】とは「白い馬のたてがみ」のことだが,確かに目を瞑って聴いていると「白い馬のたてがみ」が,爽やかな風になびいている! ここは北の大地の平原である。幼ない競走馬の卵たちが,何とも無邪気に“かけっこ”している。
 そうかと思えば,ある時には「白い馬のたてがみ」に白髪が入り混じっても見える。そう。競走を終えた名馬たちが余生を静かに過ごしている。軽く小走りしている。「走るって楽しいなぁ」。そんな会話が聞こえてくる?

 【WHITE MANE】は,T−スクェアの名バラードの一曲であるが,こうして和泉宏隆ピアノ・トリオと聴き比べてみると,俄然カラフルに聴こえてしまう。
 T−スクェアが“セピア調”なら和泉宏隆トリオは“水墨画”。伊東たけし和泉宏隆との個性の違いであろう。

HIROTAKA IZUMI : Piano
KIYOSHI MURAKAMI : 6 Strings Bass
JUN AOYAMA : Drums

ロン・カーター / イッツ・ザ・タイム / IT'S THE TIME4


 『IT’S THE TIME』の1曲目は【IT’S THE TIME】(以下【イッツ・ザ・タイム】)。

 
 「伊藤園 TULLY’S BARISTA’S SPECIAL」のTVCF曲=【イッツ・ザ・タイム】の新録トリオ・バージョンの聴き所は,メロディを提示するピアノに応えるベースギターのコール・アンド・レスポンス! まさにタリーズでコーヒー・ブレイクを取る【イッツ・ザ・タイム】に聞こえてきたら最高であろう。

 1分38秒から始まる「ヘタウマ・ウォーキング・ベース」は一発でそれと分かる“ザ・ロン・カーター”なベース・ソロである。
 ラストの2箇所で聞こえるフィンガー・ノイズはロンの心憎い演出なのか? 超個性派ベーシストロン・カーターは,ファッションだけでなくアドリブまでも“ドレッシー”である。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

RON CARTER : Bass
MULGREW MILLER : Piano
RUSSELL MALONE : Guitar

ロン・カーター / イッツ・ザ・タイム4


イッツ・ザ・タイム ジャズ・ベースの重鎮であり続ける「ミスター・ベース」=ロン・カーターを語る時,管理人は必ずソニー・ロリンズを引き合いに出す。
 共にモダン・ジャズの重鎮であり「生きる伝説」と称されているが,そもそも「生きる伝説」って何なの? コルトレーン・チルドレンはいるのにロリンズ・チルドレンなどいやしない。ベース界の「生きる伝説」と言えばジャコパスただ一人でしょ?
 そう。ロン・カーターソニー・ロリンズの共通点は,このジャズのメインストリームから一歩も二歩も距離を置いた感じである。どうにもアウトローで一匹狼的な印象を拭えない孤高の巨匠。俗世間の流行に組しないオリジナリティの追求が「生きる伝説」なのである。

 おっと,熱く語りすぎてしまった。上記は管理人の意見であって真実とは異なっている。真実のロン・カーターとは(ソニー・ロリンズにしてもそうであるが)厭世主義者ではない。ロン・カーターは,大学で教鞭を取ったほど若いベーシストの指導にも力を入れている,人なつっこく面倒見の良い協調性に富んだおじさんである。
 しかしロン・カータージャズ・ベースを聴いていると,なぜだか“最新のジャズ事情”には無頓着なイメージを受けてしまう。「流行の音楽に耳を傾けるほど暇ではない。そんな時間があるのなら“セッセ&コツコツと”己の信じたジャズ,自分の目指すジャズに磨きをかけることが重要なのだ」。そう思えてしまうほどロン・カータージャズ・ベースは“ゴーイング・マイウェイ”→“ワン・アンド・オンリー”なジャズメンなのである。このギャップもまた「生きる伝説」ならではの…。

 そう。「生きる伝説」ロン・カータージャズ・ベースの「世界標準」である。ジャズのメインストリームから“ハミダシテイル”にも関わらず,ジャズ・ベースを志す者ならば,今の自分の立ち居地を知るためにロン・カーターを聴いてみるらしい。「ロン・カーターがこう来たから自分は次はこう動こう」。そう思うらしいのだ。そう。ロン・カータージャズ・ベースの「絶対座標」! 「ミスター・ベース」の称号は,ジャコ・パストリアスではなくロン・カーターにこそふさわしい!

 事実,近年のロン・カーターは“これぞロン・カーター”的なCDの大連発である。
 『IT’S THE TIME』(以下『イッツ・ザ・タイム』)は,近年のロン・カーターが意欲的に取り組んできたベース・トリオの大傑作である。マルギリュー・ミラーピアノラッセル・マローンギターと絡む
ロン・カーターウッド・ベースは,いつもの個性的な節回しなのに,全体と良く調和している。ベース・トリオの3人が3人ともにリズムを取りメロディを奏で合うのだが,ロン・カーターがいつも以上にスペースを埋めている。
 ロン・カーターの特徴と言えば,有り得ないくらいの「長尺ベース・ソロ」であるが『イッツ・ザ・タイム』では「ストレスが溜まるのでは?」と心配になるぐらいロン自身のベース・ソロが控えられている。その分,前述のスペースを埋めることが楽しかったのだろう。ベース・ラインが“粒立っている”。これぞ「ミスター・ベース」の別名「ヘタウマ・ウォーキング・ベースマン」の真骨頂である。
 以前のように暴走しなくとも「ヘタウマ・ウォーキング・ベース」でコンボをリードする術に磨きがかかったベース・トリオ。このベース・トリオの味はロン・カーターでなければ決して出せない味である。ロン・カーターが扉を開いた「ドラムレス・ベース・トリオ」にはまだまだ可能性が秘められている。
 「ミスター・ベース」=ロン・カーターは,流行を睨むことなく視線をさらに己の高みに向けている。


  01. It's the Time
  02. Eddie's Theme
  03. Mack the Knife
  04. Candle Light
  05. Softly as in a Morning Sunrise
  06. I Can't Get Started
  07. Super Strings
  08. My Ship
  09. Laverne Walk
  10. It's the Time (TVCM Version)

(サムシンエルス/SOMETHIN'ELSE 2007年発売/TOCJ-68075)
(ライナーノーツ/児山紀芳)

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デヴィッド・サンボーン / クローズ・アップ / PYRAMID4

 『CLOSE−UP』の6曲目は【PYRAMID】(以下【ピラミッド】)。


 【ピラミッド】は,逆円柱型の【ピラミッド】である。後半に行けば行く程分厚い“グルーヴ”で覆われていく。

 マーカス・ミラーによる打ち込みとウイリアム・ジュジュ・ハウスの生ドラムに,ベースギターキーボードが絡みつくイントロでの“グルーヴ”は,ファラオのアクビであろうが,管理人にはマイルス・デイビスの“例の囁き”に聞こえてしょうがない。
 逆円柱型の【ピラミッド】の頂点に君臨するのがデヴィッド・サンボーン! 泣きのアルト・サックスが“グルーヴ”に乗った定番のフュージョン・サウンドで一気に場が安定していく!

 4分27秒からのリッキー・ピーターソンエレピ・ソロは音色といいタッチといい,渡辺貞夫と共演するデイヴ・グルーシンを連想してしまう。

DAVID SANBORN : Alto Sax
MARCUS MILLER : Bass, Keyboards, Percussion Programming
RICKY PETERSON : Electric Piano Solo, Additional Keyboards
WILLIAM JU JU HOUSE : Drums
PAUL JACKSON JR. : Guitar

クルセイダーズ / セカンド・クルセイド / LOOK BEYOND THE HILL5

 『THE 2ND CRUSADE』の5曲目は【LOOK BEYOND THE HILL】(以下【丘のかなた】)。


 【丘のかなた】を聴いていると,本当に【丘のかなた】の景色が見えてくる。やばいぞ。

 【丘のかなた】が見せてくれるのは,管理人が『THE 2ND CRUSADE』にハマッテいた80年代の景色であり,鈴木英人やわたせせいぞうのイラストである。
 ここは憧れのアメリカ → 郷愁の強いアメリカ → 渡辺貞夫の『カリフォルニア・シャワー』→ ナベサダ・スマイルである。← この意味分かるかなぁ?

 【丘のかなた】は“レトロ”であるが,この“ほのぼの感”が様々な風景をイメージさせてくれる。これだからクルセイダーズはやめられない。媚薬である。

THE CRUSADERS
NESBERT "STIX" HOOPER : Percussion, Effects
JOE SAMPLE : Keyboards
WILTON FELDER : Saxes, Electric Bass, Bass Marimba
WAYNE HENDERSON : Trombone

ARTHUR ADAMSGuitars
LARRY CARLTONGuitars
DAVID T. WALKERGuitars

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