アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2009年11月

大西 順子 / ビレッジ・バンガードII / RINGO OIWAKE5

 『VILLAGE VANGUARD Ⅱ』の4曲目は【RINGO OIWAKE】(以下【りんご追分】)。


 “日本女性のジャズ・ピアニスト”を意識したと思われる選曲の【りんご追分】が,大西順子ジャズ・ピアノに,かっちりとハマッタ! このトラックを聴いて以降,管理人も大西順子にハマッタ!

 【りんご追分】は“クールな”大西順子ピアノと“ホット”なリズム隊が一体となった大名演である。つまりは「頭寒足熱」の大名演。日本的情緒に溢れる【りんご追分】が,これほどスイングしようとは…。
 マイナー調のテーマが格調高く鳴り響いていると思った瞬間,たった一音のピアノのアタックで,ジャズ特有の“黒の深み”へと持っていかれてしまう。このアレンジたるやただごとではない。

 モーダルな大西順子ピアノ・ソロが続く中,7分43秒から突如として表われる美メロ! 【りんご追分】にジャズ・スタンダードの素養を見出した大西順子の構成力は真に天才の証しである。

 ついさっきまで大西順子を猛プッシュしていた,レジナルド・ヴィールハーラン・ライリーの2人も長めのソロ・タイムになると己の名人芸に没入している。この2人のレベルの高さは耳ダンボである。このアドリブは「ビレッジ・バンガード」という会場だけが産み出すことのできる“聖地の黒ノリ”である。

 17分49秒で再度テーマが登場するのだが,3人のソロを讃える観客が自然と拍手を送るその場に毎回自分自身もいるかのように感じてしまう。【りんご追分】を聴くと,何かしらスイッチが入ってしまう自分に気付く。

JUNKO ONISHI : Piano, Keyboards
REGINALD VEAL : Bass
HERLIN REILEY : Drums

大西 順子 / ビレッジ・バンガードII5

VILLAGE VANGUARD II-1 読者の皆さんは,90年代に巻き起こった大西ブームをご存知であろうか? 当時の異様な盛り上がりと比べれば,今の上原ブームなど足元にも及ばない。
 そのブームの頂点に鎮座する大西順子を評して,やれ,J-ジャズの旗頭だのオピニオン・リーダーだの,ジャズ・シーンの牽引車と語られていた。
 管理人も大西フィーバーに沸いた一人であったのだが,あの論調には疑問を感ずにはいられなかった。みんなして大西順子を真剣に聞いているのか,と思ってしまった。

 管理人の意見はこうだ。大西順子は“オーソドックスなジャズ・ピアニスト”であって革命児ではない。大西順子は正統派のスインガーであって,モードよりもハード・バップ=ノリ重視のジャズ・ピアニストなのである。

 大西順子ジャズ・ピアノに無意味なアドリブはない。ジャズを単なる素材として遊び道具の様に扱う傲慢さとも無縁である。テーマ,ソロ,アレンジなどトータルなバランスに重きが置かれており,曲を成立させる&聴かせることに真摯に取り組んでいる。
 そう。ウイントン・マルサリスとM-BASEの狭間で学んだバークリー卒,それが大西順子なのである。

 大西順子をマラソンに例えるなら,先頭集団に属してはいるが集団の後方を走っているようなランナーである。
 決して自分からレースを引っ張るでもなく仕掛けるでもない。TV画面の隅っこに映り続け時折名前を紹介されるようなランナー。最後は粘って8位入賞のような…。← 大西順子ファンの皆さん,ごめんなさい。

 大西順子自身,ヒートアップするメディア,身の丈以上の過大評価に戸惑っていたのではなかろうか? いや,これは管理人にも確信があるが,大西順子はこの状況に燃えに燃えたはずだ! 勝気で反骨精神に溢れる彼女は,デビュー以前にも増してジャズに打ち込んだに違いない!

 努力を重ねた“人気先行”大西順子に,ついに実力が追いつく日がやっていた! CDデビューから2年,大西順子は名実共にJ-ジャズの旗頭,オピニオン・リーダーになった!
 その成長の証しが“ジャズの殿堂”ビレッジ・バンガードでの2枚のライブ盤である。

 『JUNKO ONISHI LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』(以下『ビレッジ・バンガードの大西順子』)と『JUNKO ONISHI LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD Ⅱ』(以下『ビレッジ・バンガードⅡ』)の2枚のライブ盤は,ビル・エヴァンスジョン・コルトレーンらの,ビレッジ・バンガード録音の傑作ライブ盤と肩を並べる“掛け値なし”の大名盤である。

VILLAGE VANGUARD II-2 大西順子のトレードマークである,男勝りの打楽器的なピアノ演奏と“グシャッ”とした音色が炸裂している。「ゴリゴリ」とピアノを力任せにドライブさせながらもメロディアスにスイングする“生粋のジャズメン魂”がパンチラする,いやモロ見えである!
 透け透けの“ジャズメン魂”で「低音スイング」するジャズ・ピアノが大好物である。

 しかしここでまさかのねじれ現象! ここでもやっぱり東芝EMIである(大西順子と東芝EMIとの決定的な関係は後日詳述します)。
 『ビレッジ・バンガードの大西順子』と『ビレッジ・バンガードⅡ』の2枚は同日録音である。当然クオリティに差はないのだが,片やスイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】1994年度ジャズ・ディスク大賞【銀賞】受賞。片や無冠という処遇ぶり。冷遇である。

 管理人の好みは無冠の帝王『ビレッジ・バンガードⅡ』にある。単純にスローな選曲。とりわけ【りんご追分】である。もっともっと『ビレッジ・バンガードⅡ』!

  01. THE HOUSE OF BLUE LIGHTS
  02. NEVER LET ME GO
  03. BRILLIANT CORNERS
  04. RINGO OIWAKE
  05. TEA FOR TWO

(サムシンエルス/SOMETHIN'ELSE 1995年発売/TOCJ-5572)
(ライナーノーツ/成田正)

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寺井 尚子 / BEST / STOLEN MOMENTS5

 『BEST』の9曲目は【STOLEN MOMENTS】(以下【ストールン・モーメンツ】)。


 寺井尚子の【ストールン・モーメンツ】は,同トラック数ある名演の中でも“ダントツ”のカッコよさ!
 オリバー・ネルソンの作曲のイメージに,寺井尚子ヴァイオリンほどマッチする楽器もないと思う。オリバー・ネルソン自身のサックス以上の相性である。

 マイナー・ブルースのテーマを流麗なユニゾンで示してから,寺井尚子ヴァイオリン野力奏一ピアノ坂井紅介ベースによる各ソロに入ってゆくのだが,このオーソドックスなユニゾンとアドリブの対比が肝!

 テーマで聴かせる寺井尚子の重音! 【ストールン・モーメンツ】はフロントの3管ユニゾンであるが,寺井尚子の【ストールン・モーメンツ】は,ヴァイオリンの一人二役! この重音がジャズ史上,現れたどんなフロント陣をも凌駕する美しさ! 軽やかに&しなやかに…。尚子さまぁ〜。

NAOKO TERAI : Violin
SOICHI NORIKI : Piano, Synthesizer
BENISUKE SAKAI : Bass
MOTOHIKO HINO : Drums

グラント・グリーン / フィーリン・ザ・スピリット / SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD4


 『FEELIN’ THE SPIRIT』の5曲目は【SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD】(以下【時には母のない子のように】。


 【時には母のない子のように】は,タイトル通りの「うら淋しい」夜のブルースである。

 グラント・グリーンの,スナップの効いた強烈なギター・リフが耳に痛い! これがまたネチッコイうえにリズミカルときている! 【時には母のない子のように】のような“ザ・ブルース”は,お腹一杯の時に聴いてはいけない。
 3分15秒からのハービー・ハンコックピアノ・ソロがいい。重厚であるがグラント・グリーンのような満腹感は覚えない。黒い。ただそれだけ。これはライカの黒である。

 【時には母のない子のように】には,グラント・グリーンハービー・ハンコックの他にもう一人主役がいる。それが2人のソロのバックで“時間正しく暴れ出す”ビリー・ヒギンズドラミングが楽しい。
 トラックに耳が慣れてきたなら,読者の皆さんにもビリー・ヒギンズドラムだけを追いかけてみて欲しい。「なるほど。オーネットコールマン」と合点がいくと思う。素晴らしいドラマーである。

CD視聴(試聴)・購入はジャケット写真から

GRANT GREEN : Guitar
HERBIE HANCOCK : Piano
BUTCH WARREN : Bass
BILLY HIGGINS : Drums
GARVIN MASSEAUX : Tambourine

ブライアン・ブロンバーグ / ポートレイト・オブ・ジャコ / TEEN TOWN(BASS VERSION)4

 『PORTRAIT OF JACO』の3曲目は【TEEN TOWN(BASS VERSION)】(以下【ティーン・タウン(ベース・ヴァージョン)】。


 ジャコパスウェザー・リポート時代の18番=【ティーン・タウン(ベース・ヴァージョン)】は“トータル・ミュージシャン”であったジャコパスへのトリビュートで溢れている。

 超絶技巧のブライアン・ブロンバーグからすると,オリジナルよりスロー・テンポで演奏される【ティーン・タウン(ベース・ヴァージョン)】が意表を突いている。遅めのテンポで振り下ろされる指&指。ストリングスとの融和性が強調されている。

 ウッド・ベースエレクトリック・ベースの掛け合いが聴き所であるが,スロー・テンポゆえこちらも物足りなさが残ってしまう。
 コンビネーション重視のアドリブが連続するのだが,3分9秒からのウッド・ベース・ソロは,本来の弾きまくりがスパークした名演である。

BRIAN BROMBERG : Acoustic Bass, Fretted Bass, Fretless Bass, Horn Arranging
DAVE KOCHANSKI : Keyboards and Loop Programming
DLOC : Drums
GANNON ARNOLD : Guitar
JEFF LORBER : Electric Piano
GREGG MATHISON : B3 Organ
GARY GRANT : Trumpet
JERRY HEY : Trumpet
DAN HIGGINS : Saxophone
LARRY WILLIAMS : Saxophone
ANDY MARTIN : Trombone

市原 ひかり / SARA SMILE / I'VE GOT IT4

 『SARA SMILE』の5曲目は【I’VE GOT IT】。


 【I’VE GOT IT】は,キャッチーなメロディーと実直な演奏力が共存する“ザ・市原ひかり”な名演である。

 ブルージーなメジャー調のテーマが端正に演奏されていくが,ビートの効いたリズム隊が“渋め”のアクセントをつけていく。
 一転,1分22秒からの市原ひかりドミニク・ファリナッチによる,ツイン・トランペットのハーモニーが美しい。このサビは管理人の“ツボ”である。

 中盤は,2分15秒からのピーター・ワシントンベース・ソロこそ,フィーチャリングI’VE GOT IT】だし,
3分35秒からの市原ひかりトランペットソロ〜5分11秒からのアダム・バーンバウムピアノソロの流れは,即興演奏も作曲と捉える,コンポーザー兼アレンジャーとしての市原ひかりの才能であろう。

HIKARI ICHIHARA : Trumpet, Flugelhorn
ADAM BIRNBAUM : Piano
PETER WASHINGTON : Bass
LEWIS NASH : Drums
DOMINICK FARINACCI : Trumpet

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