アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2009年12月

小曽根 真 & 塩谷 哲 / デュエット4

DUET WITH SATORU SHIONOYA-1 『DUET WITH SATORU SHIONOYA』(以下『デュエット』)は,J−ジャズを代表する2人のピアニスト“お兄”小曽根真と“ソルト塩谷哲によるピアノ・デュオ名盤である。

 “ジャズ一筋”の小曽根真と,ラテン〜ポップス〜クラシックなどを背景に“ジャズも演っている”塩谷哲。そう。5歳の年齢差以上に2人の経歴には大きな開きがある。
 小曽根真塩谷哲は,ある意味,ジャズ・ファンが連想する“対極”の代表格であろう。熱心なジャズ・ファンであればある程,2人の立ち位置は“離れ離れで”ジャズ・ピアノの“対岸”で暮らしているかのようなイメージを持っていると思う。およそ世の終わりが到来しても共演しそうになかった『デュエット』のリリースに正直,戸惑いを覚えた。

 しかし『デュエット』の最初の一音を聴いて不安が完全に吹き飛んだ! この絶品の相性は何? 2人は天才という“共通項”で遠い昔から結ばれていたに違いない。そうとしか思えない見事な調和ぶりである。

 『デュエット』には,ピアノ・デュオに期待される連弾のくだりはない。
 予想通り?小曽根真塩谷哲のフレーズは全くシンクロしていない。それぞれが自分のスタイルを最後まで貫き通している。

 しかしそれでも音楽が混沌としていないのは,2人の天才が操る“オーケストレーション”に秘密がある。要はピアノの持つ特性を最大限に活用しているのだ。そう。小曽根真塩谷哲は,ピアノの持つ“最大音域の自由”という共通言語で会話している。
 例えるならこうだ。フランス人とブラジル人が英語を使って会話をする。話題が共通の趣味に関することなので,母国語の違いなど問題ではない。言葉の壁にはボディーランゲージがある。

 小曽根真塩谷哲の『デュエット』は,音楽の交歓である。音楽さえあれば2人の間に壁など存在しなくなる。いや,2人が“長年の連れ”に聴こえてくる。
 アプローチは異なれど,小曽根真塩谷哲の間には,共通する“音のモチーフ”が確実に存在している。

 『デュエット』で,小曽根真塩谷哲は“ピアノの義兄弟”の契り?を交わしている。
 “お兄”の小曽根ソルトを上手にリードすれば,すぐにソルトがタッグを組もうと歩み寄る。当の2人はどこまで登り詰められるかを,遊びのごとく感じ,楽しんでいる。一方がアドリブに走った時の,もう一方の伴奏がスリリング。アンサンブルにも様々なパターンが織り込まれている。

 切磋琢磨の繰り返しにより,互いのジャズ・ピアノ度が高まっている。そして時に2台のピアノが1台のピアノに“合体”する時の美しさ…。聴いてこれ程“面白い”ピアノ・デュオはそう多くない。これぞ“プロ中のプロの音遊び”であろう。

 『デュエット』のハイライトは,2人の息詰まるバトルではなく,相手の曲を自分のソロで演奏したトラックである。心からリスペクトする互いの名曲を,作曲した本人の目の前で演奏するのが,もう楽しくてしょうがない様子が音の表情に表われている。
 これらのトラックを聴くにつれ,普段はピアニストとしてもコンポーザーとしても良きライバルである2人が,互いにジャズメンとして最大の敬意を抱いていることが良く分かる。素晴らしい。

 なお,今回の『デュエット』は「小曽根真名義のユニバーサル盤」と「塩谷哲名義のビクター盤」の変則2枚同時リリース。レコード会社の壁を越えた“夢の共同プロジェクト”である。

 仮想2枚組みのCDは,内容からジャケット写真&ブックレットに至るまで『デュエット』の精神が貫かれた作りとなっている。
 選曲は2枚でクロスすることのない親切設計。2枚のCDジャケットを並べると1枚の絵になる芸術設計。2枚ともCDの3曲目に【ヴァルス】ラストに【ミスティ】を配し,チャンネルもレフトが小曽根,ライトがソルトと統一されたのが大殊勲!
 ただし,小曽根盤はSACDハイブリッド盤なのにソルト盤はCD音質なのだが…。

DUET WITH SATORU SHIONOYA-2 さて,小曽根盤とソルト盤の2枚の『デュエット』であるが,これは2枚組ではリリースできない。これが同じステージの音源とは思えないくらい個性が異なっている。

 小曽根盤は“インテリ”している。小曽根盤では“アーティスティックな”小曽根真塩谷哲が楽しめる。ピアノの動きに注意を集中すると,2人がクラシックの文法で,でもジャズの言語で会話していることがよ〜く分かる。

 最後に,管理人の結論=『デュエット批評

 名盤デュエット』成功の秘訣は,ライブ・レコーディングにある。『デュエット』は,小曽根真塩谷哲2人きりの『デュエット』に違いないのだが,実は隠された大勢の共演者が存在する。

 そう。ピアノ・デュオの極意を知るオーディエンスが,耳を澄ませば,時に聞き入り,時に拍手喝さいを送っている。その聴衆の反応が小曽根真塩谷哲アドリブをさえ導いている。完全なる“触媒役”を果たしている。
 仮に『デュエット』が,同じ選曲でスタジオで録音されたとしても,ここまでエキサイティングなピアノ・デュオとはならなかったことと思う。

 『デュエット』の真意は,演奏者と演奏者の『デュエット』であると同時に,演奏者と観客との『デュエット』でもあった。一心同体と化した2人のピアニストが観客と一体となって『デュエット』する。この“2重構造”が小曽根真塩谷哲の『デュエット』である。

  01. あこがれのリオデジャネイロ
  02. Cat Dance
  03. Valse
  04. Passage - Satoru Shionoya Solo
  05. Pray - Makoto Ozone Solo
  06. Something's Happening
  07. Heroes sin Nombre
  08. Misty

(ヴァーヴ/VERVE 2005年発売/UCGJ-7006)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/塩谷哲)

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小林 香織 / ファイン / WHAT'S GOING ON3

 『FINE』の9曲目は【WHAT’S GOING ON】(以下【ホワッツ・ゴーイン・オン】。


 小林香織の【ホワッツ・ゴーイン・オン】は「フィーチャリング・さかいゆう」で“バック・ボーカリスト小林香織を楽しめる。

 さかいゆうとの掛け合いや間奏でのアルト・ソロは“実力派”小林香織の証しである。しかしリード・ボーカルはゲスト・ボーカル。リーダーとしてさかいゆうと対等に渡り合ってほしかった。
 音では追いついた“和製キャンディ・ダルファー小林香織。あとはキャンディ・ダルファーばりの貫禄と小林香織なりの存在感を打ち出せれば異名で紹介されることも少なくなる?

KAORI KOBAYASHI : Alto Sax
MASANORI SASAJI : Keyboards, Percussions
TAKAYUKI HIJIKATA : Guitar
KENJI HINO : Bass
SHUICHI "PONTA" MURAKAMI : Drums
CARLOS KANNO : Percussion
YU SAKAI : Vocal
MASATSUGU SHINOZAKI STRINGS

エディ・ヒギンズ・トリオ / アゲイン / HOW INSENSITIVE4

 『AGAIN』の2曲目は【HOW INSENSITIVE】(以下【ハウ・インセンシティブ】。


 エディ・ヒギンズの【ハウ・インセンシティブ】は,原曲通りの“悲しいボッサ”。ボッサのリズムが“悲しく鳴り響く”名演である。

 【ハウ・インセンシティブ】の歌詞を知っているからそう感じるのだろうか? いや,これぞ“ヒギンズ・マジック”! ← 注「ヒディング・マジック」ではありませぬ。
 いや,ヒギンズジャズ界のヒディング! レイ・ドラモンドベースベン・ライリードラムをまとめ上げ,ジャズボサノヴァを融合させる。しかも歌詞の意味まで演奏にねじこむとはさすがである。
 メンバーの個性と原曲の個性を生かしつつ,きっちりと自分色に仕立ててみせる。エディ・ヒギンズ恐るべし!

EDDIE HIGGINS TRIO
EDDIE HIGGINS : Piano
RAY DRUMMOND : Bass
BEN RILEY : Drums

ゲイリー・ピーコック,キース・ジャレット,ジャック・ディジョネット / テイルズ・オブ・アナザー / MAJOR MAJOR5

 『TALES OF ANOTHER』の3曲目は【MAJOR MAJOR】(以下【メイジャー・メイジャー】)。


 【メイジャー・メイジャー】こそ,キース・ジャレット・トリオによるフリー・インプロヴィゼーションのようなインタープレイの“象徴”である。
 しかし【メイジャー・メイジャー】は,後の『チェンジズ』『チェンジレス』『インサイド・アウト』『オールウェイズ・レット・ミー・ゴー』の原型ではない。

 そう。『テイルズ・オブ・アナザー』録音時のゲイリー・ピーコックベースは,ポール・ブレイ菊地雅章と日本で座禅組んでいた頃の“シリアスなフリー・ジャズ”度が濃厚であって『スタンダーズ』のゲイリー・ピーコックとは別人である。

 【メイジャー・メイジャー】は“シリアスなフリー・ジャズ・ベーシストゲイリー・ピーコックが,ピアノ・トリオのリーダーとしてキース・ジャレットを主導している!
 このゲイリー・ピーコックの“お膳立て”にキース・ジャレットが飛びついた! キース・ジャレットの好みに完璧にハマッタのである。

 【メイジャー・メイジャー】のシンプルなメロディが,キース・ジャレットの好む“反復を繰り返しながら頂点に達する演奏手法”によって想定外の大爆発を生んでいる。ここでのキース・ジャレットの喜びようといったら…。ファンながら恥ずかしい。2分8秒から始まり中盤までずっとあえいでいる。これは子供が大好きなおもちゃを与えられた時の反応そのものである。

 このキース・ジャレットの大爆発が,3分15秒からのジャック・デジョネットの大爆発を導き,それがまた6分19秒からのゲイリー・ピーコックの“キース・ジャレットばりの”反復の連弾で構成されるベースソロへと導いている。

 キース・ジャレットゲイリー・ピーコックジャック・デジョネットの3人が好き放題にやりながらも,ピアノ・トリオを組みながら同じゴールを目指しパスを出し合う,これぞ完璧なインタープレイである。

GARY PEACOCK : Bass
KEITHJARRETT : Piano
JACK DeJOHNETTE : Drums

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