アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2010年06月

木住野 佳子 / ユー・アー・ソー・ビューティフル / WALTZ FOR DEBBY4

 『YOU ARE SO BEAUTIFUL』の5曲目は【WALTZ FOR DEBBY】(以下【ワルツ・フォー・デビー】)。


 まずは【ワルツ・フォー・デビー】に挑戦した木住野佳子に賛辞を送りたい。木住野佳子が背負うエヴァンス派の第一人者としての押しつぶされそうなプレッシャーを払いのけ,明らかにエヴァンス派の,しかしビル・エヴァンスとは別物の,木住野佳子オリジナル【ワルツ・フォー・デビー】のお披露目である。

 そんな木住野佳子の【ワルツ・フォー・デビー】の主題はピアノ・トリオ! そう。木住野佳子アドリブもいいが,たたみかけるような5拍子の爽快感! 3分22秒で決まる岩瀬立飛の“スコーン”が肝!
 永遠の美メロをチャーミングに…。木住野佳子の【ワルツ・フォー・デビー】もいい。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MITSUAKI FURUNO : Bass
TAPPI IWASE : Drums

木住野 佳子 / ユー・アー・ソー・ビューティフル5

YOU ARE SO BEAUTIFUL-1 『YOU ARE SO BEAUTIFUL』(以下『ユー・アー・ソー・ビューティフル』)は“エヴァンス派木住野佳子が捧げるビル・エヴァンスへのオマージュである。

 『ユー・アー・ソー・ビューティフル』は,実際にはビル・エヴァンスの愛奏集というわけではない。木住野佳子ピアノ・トリオは,エヴァンスゆかりのアレンジを覆すほどのオリジナリティに溢れているのである。
 しかし,やはりと言うか,どこをどう聴いてもビル・エヴァンスの香りプンプン。木住野佳子ビル・エヴァンスと真正面から向き合っている。
 そう。『ユー・アー・ソー・ビューティフル』は“内省的な美意識に包まれた”ジャズ・スタンダード集である。

 女性ジャズ・ピアニストは,良きにつけ悪しきにつけ「女性」というだけで色眼鏡にかけられてしまう。静かにピアノを鳴らす人は「女性らしく」と形容され,ピアノを弾き倒す人は「女性なのに」と形容される。それが肯定であっても否定であっても“女性”ジャズ・ピアニストのレッテルから抜け出すのは容易ではない。

 その昔「ビル・エヴァンスは男か女か」と野暮で幼稚な論争が起こった。管理人はズバリ,ビル・エヴァンスは男説。あの強靭なピアノ・タッチは,ハードボイルドな硬派である。
 しかし,ビル・エヴァンス女説を唱える人の気持ちも理解できる。ビル・エヴァンスの演奏はいつもメロディアスで美しい。確かに女性を彷彿とさせられる瞬間がある?

 さて,木住野佳子である。木住野佳子が“エヴァンス派”と呼ばれるのは,ビル・エヴァンス女説の支持理由による。
 木住野佳子ピアノの響きが“美音のイメージ”なのだ。木住野佳子ビル・エヴァンスの特徴を正にそのように捉えている感有り有り。
 『ユー・アー・ソー・ビューティフル』は,全11曲なのに総演奏時間は46分。つまり“美音のイメージ”に無駄な贅肉を削ぎ落とし,エヴァンス流にアドリブも短くまとめられている。
 ビル・エヴァンスが,男であれ女であれ,素晴らしいジャズ・ピアニストに違いないのと同様に,木住野佳子も,女であれ女エヴァンスであれ,素晴らしいジャズ・ピアニストに違いない。

 管理人は『ユー・アー・ソー・ビューティフル』を聴く度に,木住野佳子の本作に対する“強い思い”を感じてしまう。
 敢えてビル・エヴァンスの愛奏曲を取り上げることで,木住野佳子は“エヴァンス派”としての自分と“女性”ジャズ・ピアニストとしての自分から決別しようとしている。「もうビル・エヴァンスみたいには弾かないもん」と言う木住野佳子の心の声が聞こえてくる?
 尤も,木住野佳子へのビル・エヴァンスの影響は墓場まで。どんなに遠くへ離れようともビル・エヴァンスの“磁場”から逃れることなどできやしない?

YOU ARE SO BEAUTIFUL-2 ただし,木住野佳子ビル・エヴァンスを完全に消化済。ビル・エヴァンスの音楽を創造する過程での心理や手法を理解した。単純にビル・エヴァンスの愛奏曲を愛情一杯に演奏した。それなのに,こんなにグッとくるなんて…。
 ビル・エヴァンスのオリジナルと比較して聴くと“エヴァンス派木住野佳子の理解の深さが実感できる。

 もはや“無敵”の木住野佳子GRP御用達の豪華なゲストは必要なし。
 木住野佳子トリオを組むのはライブでの共演経験も多い,古野光昭市原康組と安ヵ川大樹岩瀬立飛組の2組のリズム隊である。

 ビル・エヴァンス・トリオのメンバーであったマーク・ジョンソンエディ・ゴメスポール・モチアンの力を借りずとも,木住野佳子ビル・エヴァンスできる!
 そう。『ユー・アー・ソー・ビューティフル』は,木住野佳子の“エヴァンス派”からの“卒業宣言”である。

  01. Israel
  02. Tenderly
  03. Autumn Leaves
  04. The Days of Wine And Roses
  05. Waltz for Debby
  06. O Grande Amor
  07. Here, There And Everywhere
  08. April in Paris
  09. Here's That Rainy Day
  10. Easy To Love
  11. You Are So Beautiful

(GRP/GRP 1999年発売/MVCJ-29002)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】

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木住野 佳子 / フォトグラフ4

PHOTOGRAPH-1 ジャズピアニストとしての志に満ちた,デビューCDフェアリー・テイル』。大注目の2nd『PHOTOGRAPH』(以下『フォトグラフ』)は,一転,肩の力の抜けた“サラリ感”が魅力の名盤である。

 優しく,しなやかなに,一つ一つの音にさりげなく情感をのせて心に響いてくる。エレガントな木住野佳子ジャズ・ピアノに胸キュン。『フォトグラフ』には等身大の木住野佳子が聴こえている。

 『フォトグラフ』は『フェアリー・テイル』同様,スタンダードピアノ・トリオ作であるが,ベースドラムも“前のめりな”セッション・チックな感じがいい。

 マーク・ジョンソンポール・モチアンビル・スチュワートの“プレイズ・ビル・エヴァンス”とロメロ・ルバンボギター入りの“プレイズ・ボサノヴァ”という,木住野佳子の2大ライフ・ワークがブレンドされている。

PHOTOGRAPH-2 『フォトグラフ』での,少し遅れて情感がにじみ出てくる不思議な軽さとしなやかで伸びやかなピアノ・タッチ。感情と感性で織りあげた“七色のメロディ”が素晴らしい。

  01. NIGHT AND DAY
  02. SCARBOROUGH FAIR
  03. DESERT ISLAND
  04. ALL BLUES
  05. LONGING FOR YOU
  06. ALONE TOGETHER
  07. PHOTOGRAPH
  08. ALICE IN WONDERLAND
  09. ON GREEN DOLPHIN STREET
  10. LOVE DANCE
  11. J'S WALTZ
  12. AUTUMN

(GRP/GRP 1996年発売/MVCR-30002)
(ライナーノーツ/木住野佳子)

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木住野 佳子 / フェアリー・テイル / ONLY TRUST YOUR HEART5

 『FAIRY TALE』の7曲目は【ONLY TRUST YOUR HEART】(以下【オンリー・トラスト・ユア・ハート】)。


 【オンリー・トラスト・ユア・ハート】には,木住野佳子の“喜び”が詰まっている。
 ライナーノーツにあるように,この喜びは木住野佳子の「記念すべき初レコーディング」の喜びなのかもしれない。しかし管理人には,それ以上の,ジャズ・ピアニストとして悦に入った瞬間の“喜び”が表現されていると思う。

 これは木住野佳子1人の喜びではない。ベーシストマーク・ジョンソンの喜びでもある。そう。過去にビル・エヴァンス・トリオの一員として登りつめたピアノ・トリオの頂点に,今回は木住野佳子ピーター・アースキンを連れ添って,最高の3人で到達できた満足感!
 【オンリー・トラスト・ユア・ハート】こそ,かのビル・エヴァンスが見つめていた音世界! ついに登ることを許された,凡人には「隠されし」ピアノ・トリオの頂点へ足を踏み入れた喜びを噛みしめている。

 スローなイントロで始まる【オンリー・トラスト・ユア・ハート】が,徐々にリズムを速め,軽快にスイングしていく“変貌の展開”に,ピアノ・トリオの高みを目指す3人の姿を思い重ねることができた。木住野佳子マーク・ジョンソンが放つ“喜びのオーラ”が,聴き手を「幸福感」で包んでくれる。素晴らしい。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
PETER ERSKIN : Drums, Percussion

木住野 佳子 / フェアリー・テイル / THE ISLAND4

 『FAIRY TALE』の3曲目は【THE ISLAND】(以下【ジ・アイランド】)。


 イヴァン・リンスの代表作である【ジ・アイランド】は“垢抜け”したブラジル音楽! 土臭さを残しつつも贅肉?を大胆に削ぎ落とし,実にシャープなリズムの上を“極上”メロディ・ラインが優雅に駆け抜けていく。

 【ジ・アイランド】成功の立役者こそ,ジャズ以外にもマルチな活躍を見せているピーター・アースキンドラミングであろう。細かにリズムを刻むのではなく,波のような大きなうねりの中でリズムを打つ! もっとも彼特有の細かなパーカッションによる“味付け”も聴き所の一つである。  

 このシャープ,かつ大きなリズムの波に乗った木住野佳子ピアノが,自然と盛り上がり自然と消え去っていく…。波打ち際には,美しいメロディ・ラインの“心地良さ”だけが残される。
 この美しいピアノ・タッチに,木住野佳子の【ジ・アイランド】に対する愛情を感じてしまう。

 3分39秒からのマーク・ジョンソンアドリブは,力の入った熱いロング・ソロ。まるで自分の感情をウッド・ベースに叩きつけているかのようである。こちらも表現手法は異なるが【ジ・アイランド】への愛情表現の“発露”であろう。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
PETER ERSKIN : Drums, Percussion

木住野 佳子 / フェアリー・テイル / FAIRY TALE5

 『FAIRY TALE』の2曲目は【FAIRY TALE】(以下【フェアリー・テイル】)。


 「おとぎ話」という意味の【フェアリー・テイル】によって「おとぎの国」=木住野ワールドへの扉が開かれる! そこは実に美しいピアノの「おとぎ話」。雄大な音空間の美であり,ハーモニーの美である。

 ビル・エヴァンスを徹底的に研究してきた木住野佳子と,ビル・エヴァンス・トリオの最後のベーシストマーク・ジョンソン。【フェアリー・テイル】は,木住野佳子を介して実現した,エヴァンスジョンソンの15年振りの“仮想”夢の共演である。

 木住野佳子の繊細なピアノが清々しい。優しく身体に馴染んでくる。この灰汁のない響きこそ木住野佳子の真骨頂である。
 テーマで絡み合いながらも低音で“突き上げてくる”マーク・ジョンソンが流石である。このスコット・ラファロ風=自由な跳ね馬ぶりが好みであるが,一方でピアノ・ソロでのバックで的確にリズムを刻むチャック・イスラエル風の安定したベース・プレイも聴き逃せない。
 
 3分59秒からのマイケル・ブレッカーテナー・ソロこそ「おとぎ話」の美しさ! 【フェアリー・テイル】にゲスト参加で花を添えるつもりが,木住野佳子の快演に一歩も後へ引けなくなったという感じ? 本気で骨太の“マイケル節”が炸裂している。
 ピーター・アースキンロジャー・スキテロの控え目ながらも華やかなドラムパーカッションも存在感たっぷりで素晴らしい。

YOSHIKO KISHINO : Piano
MARK JOHNSON : Bass
PETER ERSKIN : Drums, Percussion
MICHAEL BRECKER : Tenor Saxophone
ROGER SQUITERO : Percussion

木住野 佳子 / フェアリー・テイル / BEAUTIFUL LOVE5

 『FAIRY TALE』の1曲目は【BEAUTIFUL LOVE】(以下【ビューティフル・ラヴ】)。


 【ビューティフル・ラヴ】に漂う緊張感が,心底カッコイイ! この演奏をバトル形式と読むのは簡単であるが,その一言では語り尽くせぬ興奮がある。管理人はこの演奏を“最高のピアノ・トライアングル”と呼ぼうと思う。

 【ビューティフル・ラヴ】について語るには,エディ・ゴメスは外せない。パワフルなヴァーチュオーソ&“ベロ〜ン”ベースを垂れ流す! しかし,その“ベロ〜ン”ベースを囲ってしまうピアノドラム! 木住野佳子ルイス・ナッシュの構成力がエディ・ゴメスを囲いの中で放牧する! この相関図は,長女=木住野佳子,長男=ルイス・ナッシュ,末の次男で暴れん坊のエディ・ゴメスなのである。

 早くもテーマ終わりの48秒からベースピアノの一騎打ちが始まるが,手加減なしにグイグイ押しまくるエディ・ゴメスベースに対し,スピード感と華麗さを兼ね備えたピアノ木住野佳子が応戦する! これぞ「柔よく剛を制す」。木住野佳子が主導権を握っている。
 2分55秒からはベースドラムの一騎打ちが始まるが,こちらも「相手の力を利用して投げる合気道」スタイル! ルイス・ナッシュエディ・ゴメスの垂れ流しのベースを一音一音,ブラシで掬っていく! やっぱりベースがこぼれない。
 最強の末っ子が囲いの中に“しっくり”収まる。“最高のピアノ・トライアングル”がここにある。

YOSHIKO KISHINO : Piano
EDDIE GOMEZ : Bass
LEWIS NASH : Drums

木住野 佳子 / フェアリー・テイル5

FAIRY TALE-1 木住野佳子のデビューCDFAIRY TALE』(以下『フェアリー・テイル』)が素晴らしい。

 軽く聴いても良い。じっくり聴き込んでも良い。書きたいこと,褒めちぎりたいことは山ほどあるが,良いの一言で『フェアリー・テイル批評を終えてしまいたいくらいにいい! 要は『フェアリー・テイル』は“実に出来すぎた”名盤なのである。

 当時まだ無名だったピアニストのデビューCDにして,超一流のピアニストでも“生涯に一度有るか無いか”の考え得る最高に豪華な共演者=ビル・エヴァンス・トリオのベーシストエディ・ゴメスマーク・ジョンソン。そしてルイス・ナッシュピーター・アースキンドラム。とどめはテナー・サックスマイケル・ブレッカーである。

 このGRPからのご祝儀に,足がすくむでもなく実力をいかんなく発揮している。いや,エディ・ゴメスマーク・ジョンソンを従えた“仮想”ビル・エヴァンス・トリオのリーダーとして“風格”さえ漂わせている。
 いや〜,すんごい新人がいたものだ。木住野佳子上原ひろみ以上の“肝っ玉娘”なのであろう。

 『フェアリー・テイル』は,ジャズ・ピアノの王道である。「メロディは美しく,アドリブは激しく,最後はスイング」である。ビル・エヴァンスの音楽に通じる“中身は濃いのに敷居は低い?”の王道である。

 エヴァンス派を自認する木住野佳子だが,それはインタープレイの構築方法やフレーズに関してのお話。
 木住野佳子ピアノは,ビル・エヴァンスという“フィルター”から出力されてはいるのだが,彼女のルーツはロックやポップスである。ビル・エヴァンスにはない,都会的でお洒落で生命感のある非内省的なメロディが,ほんの一瞬顔を出す。女性的な繊細で大甘なタッチなのに,ツンツンと尖がっている。
 木住野佳子は,いつでもどかでも,心の奥底でビル・エヴァンス“している”のだ。

 『フェアリー・テイル』のハイライトは,意外にも?マイケル・ブレッカーとの“静かなバトル”である。
 メラメラと青白い炎が立ち昇っている。実に美しい。2人の心の共鳴はビル・エヴァンススコット・ラファロインタープレイそのものである。

FAIRY TALE-2 『フェアリー・テイル』での木住野佳子は,自分の世界=ビル・エヴァンスの耽美主義に没入している。
 ギラギラしているのにメロディアスで美しい。ブルースファンクグルーヴとは最も遠いところで鳴っている。ジャズを聴き続けている人であっても,この透明感とはなかなか出会えないと思う。

 『フェアリー・テイル』は,最初から最後まで細部に至るまで制作チームの狙い通り。完璧である。木住野佳子が手にした幸運の奇跡に管理人からも感謝を表する。

  01. Beatiful Love
  02. Fairy Tale
  03. The Island
  04. Someday My Prince Will Come
  05. Funkallero
  06. Stella By Starlight
  07. Only Trust Your Heart
  08. You Make Me Feel Brand New
  09. Lafite '82
  10. Gone
  11. With A Little Song

(GRP/GRP 1995年発売/MVCR-30001)
(ライナーノーツ/漆崎丈,木住野佳子)
★スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】

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カシオペア + SYNCHRONIZED DNA / SIGNAL5

SIGNAL-1 カシオペアの『SIGNAL』はウェザー・リポートの『ジス・イズ・ジズ』である。

 『SIGNAL』がカシオペアの最終作ならば『ジス・イズ・ジズ』もウェザー・リポートの最終作。『SIGNAL』が「カシオペアSYNCHRONIZED DNA」のデビュー作であるならば『ジス・イズ・ジズ』もウェザー・アップデイトのデビュー作。
 何よりも「こんな名盤を残して活動休止するかっつうの」と叫びたくなる内容の充実っぷりが共通点だと思っている。

 『SIGNAL』録音時のカシオペアは,結成以来●度目かのピークを迎えていた。
 『MARBLE』で肉薄したパット・メセニー・グループ路線の「テクニック(演奏)よし,曲(メロディ)よし,アレンジ(アンサンブル)よし」のブレイクスルー。そこへきてのSYNCHRONIZED DNAとの大共演。この5人の演奏で何も起こらないはずがない。

 今までとは明らかに次元が違う。神保彰則竹裕之の“極限までシンクロされた神技”がカシオペアを覚醒させた。ツイン・ドラムが左右に振られているせいなのか,音空間の“厚み+拡がり”を強く感じる。

 ド迫力のツイン・ドラムに負けじと野呂一生向谷実が“前のめり”で演奏している。毎度“前のめり”なナルチョは天才。SYNCHRONIZED DNAとコンビを組めるベーシストナルチョしかいない。鳴瀬喜博のツイン・ドラムの音圧にも負けない“爆音歪みベース”を選択した野呂一生の先見の明,ここにあり!

 SYNCHRONIZED DNAの凄さは,並みのジャズ/フュージョン・ファンには分からないかもしれない。一聴すると“シンクロしすぎて”普通のドラミングに聴こえる危険大である。完全に1台のドラムに同化する瞬間がある。憧れのアイドル=神保彰に寄り添った則竹裕之の幸福感たるやもう!

SIGNAL-2 しかし何回も繰り返し聴いているとSYNCHRONIZED DNA特有の音楽が聴こえてくる。そう。『SIGNAL』は,カシオペア+サポート・ドラマー神保彰+ゲスト・ドラマー則竹裕之の組み合わせではない。
 『SIGNAL』は,カシオペアSYNCHRONIZED DNA名義で参加した神保彰則竹裕之CDなのである。

 フィルインを左右で振ったり,ユニゾン的なアプローチをしたり,2人で複雑なリズム・パターンを構成している。2拍4拍のスネアを交互に叩いたり,オープン OR クローズドのリムショットでの叩き分けをしたり,更にはスティックブラシを使い分けたりと“凝りに凝った”ドラミングを聴き分けるのが実に楽しい,本末転倒盤?
 そう。『SIGNAL』は,SYNCHRONIZED DNAが仕掛けたリズム・アレンジをカシオペアが紐解き,消化し,演奏している。その意味で,手数勝負のドラム・バトル盤=『4 X 4』とは随分と趣きが異なっている。

 カシオペアは,特に『LIGHT AND SHADOWS』以降のナルチョ神保彰時代に入り,奥深い楽曲を制作するようになった。じっくりと繰り返し聴くと,ジワジワと,しかし確実に良さが滲み出て来る“スルメ盤”のアレである。

 そんな“スルメ盤”路線の頂点が前作『MARBLE』であり,8部構成の【UNIVERSE】であった。そして『SIGNAL』でも,6部構成の【PAST AND FUTURE】を投入してきた。野呂一生は大丈夫なのか? もはや病気なのか? たぶん病気=大作への病みつき状態?

 【PAST AND FUTURE】も10分超。どこかで聴いたことがあるメロディ・ラインはご愛嬌。【UNIVERSE】のような壮大さは薄れているが,大曲を作り慣れたせいか,その分洗練された印象を受ける。
 他の9楽曲も全てが素晴らしい。4人の書き手全員がバンドの特徴を生かしきろうとするソング・ライティング。『SIGNAL』録音時のカシオペアはバンドとしての“創造期”に突入していた。何をやってもうまくいく。

SIGNAL-3 管理人の“カシオペア愛”が再燃していた,正にその時,突然の知らせが…。野呂さんから,そしてカシオペアから届けられた「カシオペアからの大事なお知らせ」であった。

 絶好調の『ジス・イズ・ジズ』。ジョー・ザビヌルウェザー・リポートを解散したのは間違いであった。絶好調の『SIGNAL』。野呂一生カシオペアの活動休止を決めた理由は?
 残念無念。惜しくてたまらない。

  01. AWAKEN
  02. MIST
  03. 心・奥 KOKORO-CK
  04. WILL YOU LOVE ME TOMORROW
  05. ESCALATION
  06. ASOBIにつれてって
  07. LIFE LONG SERENADE
  08. PITY
  09. ARDENT
  10. PAST AND FUTURE
     DAWN
     STRAIN
     SORROW
     TESTED
     MENTALITY
     UNLIMITED

(ジェネオン/GENEON 2005年発売/GNCL-1041)
(☆スリップ・ケース仕様)

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カシオペア / GIG254

GIG25-1 カシオペアは“記念盤”にやたらと気合を入れるバンド。

 20周年記念ライブ=『20TH』では【FRASH BACK MEDLEY】と題して,20年間を20曲は38分間のノンストップ・メドレーを演奏していた。
 今回の“25周年記念盤”『GIG25』では,25年間を1年毎に1曲を選び,年代順に演奏するという,これまたびっくりの2枚組みライブ。おまけに『GIG25』の発売日は2005年2月25日。あの【UNIVERSE】もびっくりなこだわりようである。これぞ25年の重み?

 『GIG25』は,ちょうどDISC−1がジンサク時代,DISC−2がナルチョ時代で“意図的に”編集されている。
 そう。『GIG25』の聴き所は,リズム隊の変化=サウンド・カラーの変化を一気に体感できる術。特にナルチョの“爆音歪みベース”がこんなに見事に溶け込んでしまった現実が興味深い。

 時折,ナルチョベース・ラインが桜井哲夫ベース・ラインに比べ新鮮でカシオペアが若返ったように聴こえてしまう錯覚。
 DISC−2の方がDISC−1より3曲多い現実が,カシオペアベーシストナルチョ以外には務まらないと思わせてくれる。

GIG25-2 『GIG25』は,録音のせいなのか,ミックスダウンのせいなのか,エコーの絞られた“タイトな音作り”が特徴的である。
 『サンダー・ライブ』を想起させる“ライブ・ハウスな音”がカシオペアドラマー神保彰以外には務まらないと思わせてくれる。後は選曲だけだったよなぁ。

  DISC-1
  01. BLACK JOKE
  02. EYES OF THE MIND
  03. DOMINO LINE
  04. MID MANHATTAN
  05. LOOKING UP
  06. THE SOUNDGRAPHY
  07. HALLE
  08. COAST TO COAST
  09. DO-LOO-DOO?
  10. いにしえ
  11. 太陽風

  DISC-2
  01. CYBER ZONE
  02. AKAPPACHI-ISM
  03. NEW HISTORY
  04. LIFE GOES ON
  05. SET SAIL
  06. IHILANI
  07. BLOOMING
  08. GOLDEN WAVES
  09. NIGHT BREEZE
  10. LUCKY STARS
  11. TIGHT LINE
  12. CIRCULAR DREAM
  13. CRY WITH TERRA
  14. TEATRO SAUDADE

(ジェネオン/GENEON 2005年発売/GNCL-101801-101802)
(CD2枚組)

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カシオペア / CASIOPEA VS THE SQUARE LIVE5

CASIOPEA VS THE SQUARE LIVE-1 J−フュージョンの2大巨頭,カシオペアザ・スクェアT−スクェア)。
 永遠のライバル関係にありながら“互いを認め心から尊敬し合ってきた”音楽同士たちである。もはやバンドの違いを越えたところで仲間意識を有している。
 これは同じ釜の飯を喰ってきた当人たちでないと理解できない。なにせ,この2大巨頭がJ−フュージョンを支えてきた,と言っても過言ではないのだから…。

 そんなカシオペアザ・スクェア初のジョイント・ライブが2003年に実現した。過去に某ジャズ・フェスティバル等で同じステージに立ってきた2大巨頭のオフィシャルな初共演である。

 レビューは後述するとして,まずは一言! なんで福岡は来なかったんだよぉ〜。『CASIOPEA VS THE SQUARE』のCD盤&DVD盤両方の記念写真(裏ジャケット)を見るたびに「東京厚生年金会館のバカ野郎〜」と叫びたくなる衝動を感じます。それぐらいに素晴らしい。良い悪いでは計測不能な,これぞ感動のドキュメンタリー作であろう。

 『CASIOPEA VS THE SQUARE』にも,当然?2種類ある。DVD盤『CASIOPEA VS THE SQUARE THE LIVE!!』とCD盤『CASIOPEA VS THE SQUARE LIVE』である。

 管理人はまずはCD盤『CASIOPEA VS THE SQUARE LIVE』を購入した。DVD盤『CASIOPEA VS THE SQUARE THE LIVE!!』を“スルー”した事実が期待値の表われ。内容はさておきルーティンで買ったにすぎない。

 しかしこれが良かった? 懐古趣味ではない圧巻のバトルは,新フュージョン・バンド「ザ・カシェア」の大誕生!
 大編成のカシオペアと言えば『20TH』の悪夢が脳裏をよぎる。きっちりと隙間なくアレンジされたカシオペアの曲を7人で演奏しただけで“とっ散らかり+ごちゃごちゃとしすぎ”のNGワード。しかし「ザ・カシェア」は違った。メンバーの誰かが持ち味を発揮できないような後味の悪さは一切ない。

 カシオペアザ・スクェアの2大巨頭が元来一つのバンドのようにグルーヴしている。とっても分厚くとっても繊細な音の洪水は,総勢10人の重量級ジャズメンの個性が“共鳴する”新しいバンド・サウンドを生み出している。
 正確かつフィーリングのある演奏に仕上がった秘訣は,安藤まさひろのリーダーシップ無きリーダーシップと野呂一生のリーダーシップが上手にブレンドされた結果であろう。

 さて,CD盤『CASIOPEA VS THE SQUARE LIVE』は,東京公演1日目のカシオペアザ・スクェアの共演音源のみの収録盤。
 これは「VS」とネーミングされてはいても所謂セッション・バトルではない。火花が飛び散るというよりは10人のジャズメンの個性を浮き立たせるセッションだと思う。

 特筆すべきは神保彰則竹裕之ドラムセッション。丁々発止のドラム・バトルを披露したかと思えば,次の瞬間,2人のドラムがまるで1セットのドラムに聴こえる完璧ユニゾン。
 この完成度の高さは,いつもパートナーを組んでいるナルチョの証言から明らかである。ねっ「SYNCHRONIZED DNA」しているでしょ?

 ズバリ,ジョイント・ライブのハイライトは【JAPANESE SOUL BROTHERS】をすかした【FIGHTMAN】でのソロ廻し! 10人のジャズメンの個性あふれる自己主張!
 お約束のナルチョストさんの“ベース放談”はおいといて,和泉宏隆の「エリーゼのために」や伊東たけしの「サイレン」のフレーズにニヤリである。

CASIOPEA VS THE SQUARE LIVE-2 CD盤『CASIOPEA VS THE SQUARE LIVE』にKOされ,即買いしたDVD盤『CASIOPEA VS THE SQUARE THE LIVE!!』が最高である。DVD盤があればCD盤は不要かも?

 いえいえ,CD盤が東京公演1日目でDVD盤が東京公演2日目。そう。1日目と2日目のアドリブの違いを聴き分けることができる。う〜ん。負け惜しみかも?
 あっ,CD盤はスーパーオーディオの高音質! う〜ん。DVD盤の方が高音質かも?

 最後に,管理人はその昔,ジンサク時代のカシオペア伊東たけしアルト・サックスが入った最強バンドを妄想していたものだ。
 ついに聴いた【ASAYAKE】のはずが,どうにも“やぼったい”。残念。カシオペア伊東たけしは似合わない。いや,アルト・サックスではなくEWIだったなら? これが本田雅人だったなら? 管理人の妄想はまだまだ続く〜。

  01. OMENS OF LOVE
  02. LOOKING UP
  03. KAPIOLANI
  04. JUSTICE
  05. ONCE IN A BLUE MOON
  06. MIDNIGHT CIRCLE
  07. 勇者 (YUH-JA)
  08. MID MANHATTAN
  09. ECCENTRIC GAMES
  10. NAB THAT CHAP!!
  11. JAPANESE SOUL BROTHERS
  12. FIGHTMAN
  13. TRUTH
  14. ASAYAKE

(ヴィレッジ/VILLAGE 2004年発売/VRCL-10003)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(ライナーノーツ/山本美芽)

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