アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2010年11月

塩谷 哲 / 88+∞(EIGHTY-EIGHT PLUS INFINITY)5

88+∞(EIGHTY-EIGHT PLUS INFINITY)-1 『88+∞(EIGHTY−EIGHT PLUS INFINITY)』の『88(EIGHTY−EIGHT)』とはピアノの鍵盤の数。そこへ『+∞(PLUS INFINITY)』。
 そう。『88+∞(EIGHTY−EIGHT PLUS INFINITY)』というタイトルは「一つ一つの鍵盤だけでは表わせないものも表現していく」という塩谷哲の意気込みの表われ。

 鉄壁に仕上がった「SALT BAND」を軸に,敢えて88の鍵盤だけでどこまで表現できるかにチャレンジしている。積極的に塩谷哲自身で動いている。
 結果,どうしてもピアノの音が耳に飛び込んでくる。

 その時感じた“作曲家”塩谷哲の物凄さ。塩谷哲の自虐ネタの1つに「東京芸大作曲科を優秀な成績で中退」というものがあるが,芸大で作曲を勉強したにふさわしく,塩谷哲の作る楽曲の完成度は半端ない。
 聴いたこともない難解なコードをガンガンぶつけてくるのだが,それらが全て音楽的に調和している。気軽に口ずさめるものは少ないはずなのに,自然と歌える構成となっているのが素晴らしい。

88+∞(EIGHTY-EIGHT PLUS INFINITY)-2 これが塩谷哲の代表曲“軽快なラテン・フュージョン”【あこがれのリオデジャネイロ】の誕生秘話?
 【MAGIC,DREAM,OR TRUE LOVE】【88+∞(EIGHTY−EIGHT PLUS INFINITY)】もお忘れなく。 

  01. SALT PEANUTS, Reborn -album peanuts-
  02. Watch Your Step!
  03. Magic, dream, or true love?
  04. 88+∞ (Intermezzo)
  05. あこがれのリオデジャネイロ
  06. Home-bound Train
  07. A Man in Paris (Intermezzo)
  08. Scent of Rain
  09. That's the Way Life Goes
  10. A Tree's Dream

(ファンハウス/FUN HOUSE 1998年発売/FHCF-2429)

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塩谷 哲 / SALT III5

SAIL III-1 「オルケスタ・デ・ラ・ルス」のピアニストとして語られることの多かった塩谷哲が“ジャズ・ピアニスト”として認知されるようになったのは『SALT III』からではなかろうか?
 『SALT III』で“天才”塩谷哲がついに独立。「SALT BAND」を結成しソロ活動を開始する。

 管理人も実は『SALT III』で“ジャズ・ピアニスト塩谷哲を認知した。きっかけは,起床〜通勤電車で,柴田玲目当てで聴いていた?TOKYO−FM「立花裕人のMORNING FREEWAY」。その番組のBGMとして毎朝流れる【HAPPY−GO−LUCKY】が,裏番組=BayFM「TOKYO BAY MORNING」のオープニングで流れるMALTAの【SEA WIND】と同様,その曲を聴かなければ1日のリズムが狂ってしまうほどのお気に入りに。

 【HAPPY−GO−LUCKY】。いや〜,誰の何という曲なのか調べに調べた。今のようにネットが普及しているわけではない。CDショップの店頭や音楽雑誌を頼りにスムーズ・ジャズを中心に…。海外ジャズメンを中心に…。

 そうして見つけた塩谷哲! そうして見つけた『SALT III』!
 【HAPPY−GO−LUCKY】も聴いたが,次第に【HAPPY−GO−LUCKY】“そっちのけ”で【SIDE BY SIDE】【BRAZILIAN RHYME】【ARE WE SMOKIN’ YET?】にハマッテしまった。

 塩谷哲は素ん晴らしいメロディ・メーカーである。
 【SIDE BY SIDE】の,きっちり出来上がっているにも関わらず心から歌い上げるような自然体が“天才作曲家”の証し! 好きだ〜。

 塩谷哲は素ん晴らしいアレンジャーである。
 EW&Fの大名曲【BRAZILIAN RHYME】を,最新グルーヴ・チューンに持っていく。自然と腰にくるのが“天才編曲家”の証し! カッコイイ〜。

 塩谷哲は素ん晴らしいジャズ・ピアニストである。
 【ARE WE SMOKIN’ YET?】での塩谷哲ジャズ・ピアノが「SALT BAND」=浅野“ブッチャー”祥之松原秀樹沼澤尚J&B大儀見元をリードする。ハイ・テクニックをさらりと交えたアドリブが“天才ジャズ・ピアニスト”の証し! SALT〜。

 塩谷哲自身も“有り余る才能”をどう上手にまとめあげるかにチャレンジした『SALT』三部作。バラエティに富んだノン・ジャンルの楽曲が見事にちゃんぽんされているのがSALT流である。
 そうして完成された『SALT III』の11曲が1枚のCDにブレンドされたら,もうこれはフュージョンとしか呼べそうにない不思議な統一感に目を丸くする。

SAIL III-2 『SALT III』は『SALT』三部作の中で,一番自由なのに一番隙がない。すっきりしたごちゃごちゃ感なのにピアノが主役としてきちんと前に出ている。
 『SALT III』で“SALT塩谷哲の個性が確立されたと思う。

 管理人にとって『SALT』三部作を『SALT III』から聴けたのは幸運であった。やっぱり【HAPPY−GO−LUCKY】だった。
 なぜって? 理由は「スター・ウォーズ」と同じである。先に大人として成長した姿を見せておいて,エピソードの新シリーズで遡る,幼少時代の奮闘記。
 『SALT III』で“スーパー・スター”となった塩谷哲の,爆発的才能を堪能できる『SALT II』と『SALT』。楽しみは後にとっておくものだ。

  01. JACK-IN-THE-BOX
  02. BRAZILIAN RHYME [Album Mix]
  03. HAPPY-GO-LUCKY
  04. ARE WE SMOKIN' YET?
  05. SIDE BY SIDE (WE GO)
  06. HURRY! HURRY!
  07. LOS TOREROS
  08. FOREST
  09. CHASE FOR TRUTH
  10. BOLERO
  11. A LITTLE LULLABY

(ファンハウス/FUN HOUSE 1997年発売/FHCF-2394)

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塩谷 哲 / SALT II5

SALT -1 塩谷哲は,やりたいことが山ほどたまっている,に違いない。『SALT 』を聴いてそう感じる。

 超カッコイイ【SHUFFLIN’ CITY】はラス・フリーマン系。アコギな【ON A DAY LIKE THIS】はデヴィッド・ベノア系。リズミカルな【SHE KNOCKS ME OUT】はジョー・サンプル系とスタートの3曲からしてスムーズ・ジャズCDと思えた。

 しかし続く3曲,トゥーツ・シールマンスの【FOR MY LADY】でのソロSALT & SUGARの【LET LOVE LEAD ME】のデュオ。混沌の美しさ=表現不能の大名演REFLECTIONS】のイメージが強烈で頭を整理できなくなる。“塩谷哲の凄さ”に思考が停止する。

 そして残すラスト4曲は『SALT』路線の延長で凝ったアレンジの大作続き。塩谷哲としては,自分の内に溜まったものを(全体の構成を考えずに)アウトプットしただけだろうが,1曲1曲のクオリティが恐ろしく高いのでトラック別に様々な世界に誘われてしまう。小難しいが難解ではない。もう全てを口ずさめるようになった。でもどうにも何回聴いても消化不良の感アリアリ。

SALT -2 ズバリ『SALT 』の本質は,完成と発展,安定とチャレンジ,難解とポップの“コンフュージョン”である。管理人自慢のコレクション中,指折りの大・大・愛聴盤である。

  01. SHUFFLIN' CITY
  02. ON A DAY LIKE THIS
  03. SHE KNOCKS ME OUT
  04. FOR MY LADY
  05. LET LOVE LEAD ME
  06. REFLECTIONS
  07. IN SEARCH OF YOU
  08. 凪 (NA-GI)
  09. TOGETHER AGAIN
  10. EARTH BEAT 〜 大地の鼓動

(BMGビクター/BMG VICTOR 1995年発売/BVCR-725)

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Saya / トワイライト4

TWILIGHT-1 『TWILIGHT』(以下『トワイライト』)は,Sayaお得意の“復活”R&B路線。

 しかし『トワイライト』は『UNITY』程“黒くはない”爽やかなピアノ・トリオ作。人気のR&Bの名曲が流行のクラブ・ジャズ・アレンジで心地良い刺激を与えてくれる。

 ポップな『トワイライト』を最後にSayaはメジャーでの活動を休止。やはりレコード会社の意向とSayaの目指す音楽性とのギャップに我慢ならなくなったのでは?
 こんなに才能溢れるジャズメンなのに勿体無い。世界のジャズ・ファンにとっての大損失。

TWILIGHT-2 【MY FUNNY VALENTAINE】のファンキーすぎた名演は,自身の新しい人生を歩みだした“ジャズ・ピアニストSayaからの置き土産である。

  01. My Funny Valentine
  02. Lately
  03. Flow
  04. Twilight
  05. Isn't She Lovely
  06. Day Dreamer
  07. Fields Of Gold
  08. Kiss Of Life
  09. Driving
  10. Both Sides Now

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2006年発売/PCCY-60005)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)
(ライナーノーツ/Saya)

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アジアの女神たち / WISH A WORLD4

WISH A WORLD-1 読者の皆さんは2005年の愛知万博「愛・地球博」へ行かれましたか? そしてテーマ・ソングを耳にしましたか? そう。ジャズのあの曲…。
 渡辺貞夫の【シェア・ザ・ワールド 〜こころつないで〜】と答えたあなたは大正解。やっぱり“世界のナベサダ”です。政府出展事業の総合監督です。名演でした。

 でも,もう一曲あるでしょう? ジャズのあの曲…。
 中京テレビで流れていた「愛・地球博」サポートソング【WISH A WORLD】が…。

 【WISH A WORLD】は“ジャズ・ピアニストSayaがプロデュースした,ピアノヘグム古箏ボーカルからなる4人組ユニット=「アジアの女神たち」名義による名演である。

 でも,正直「アジアの女神たち」はどうでもいい。管理人が関心を向けるは「アジアの女神」唯一人である。
 「アジアの女神たち」と来れば,韓国のヘグム奏者・コッピョルであり,中国の古箏奏者・謝雪梅であり,日本民謡の柿崎竹美であろう。しかし「アジアの女神」と来れば,一人称,日本が世界へ誇る“ジャズ・ピアニストSayaを指す。
 そう。「アジアの女神たち」名義によるオムニバスCD=『WISH A WORLD』は“Saya買い”に他ならない。

 『WISH A WORLD』には 1)Saya作曲・演奏の【WISH A WORLD(INSTRUMENTAL)】 2)Saya編曲・演奏の【】 3)Saya作曲・編曲・演奏の【BLOOM】 4)Saya作曲・編曲・演奏の【WISHING WELL】 5)Saya編曲・演奏の【赤とんば〜浜辺の歌】 6)Saya作曲・作詞・演奏の【WISH A WORLD(VOCAL VERSION)】と全10曲中全6曲収録の“Sayaづくし”!

 Saya自らがプロデュースまで行なった『WISH A WORLD』の位置づけは,安易なコンピレーションCDではなく,Sayaの準オリジナルCDだと思うのだが…。

WISH A WORLD-2 どうやらSaya本人は『WISH A WORLD』の出来に満足していないように思える。【WISH A WORLD】はライブのレパートリーからも外されているようだし,順当なら『TWILIGHT』に「ボーナス・トラック?」として収録のはずが未収録。う〜ん。

 そういうことで管理人も『WISH A WORLD』は10回聴いたくらいで放置プレイしていました。
 『WISH A WORLD』の聴き所は【】の1分45秒から始まるピアノ・ソロと【赤とんば〜浜辺の歌】の2分51秒から始まるピアノ・ソロ。
 本日は久々に上記のSayaアドリブに酔いしれました。明日からもたまには聴こう〜っと。

  01. Wish a World (Instrumental)
  02.
  03. Bloom
  04. Asian Moon
  05. 雪山春暁
  06. ションデコ (ひでこ節)
  07. アリラン
  08. Wishing Well
  09. 赤とんぼ〜浜辺の歌
  10. Wish a World (Vocal Version)

(ポニーキャニオン/LEAFAGE 2005年発売/PCCY-30071)

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Saya / BLOOM5

BLOOM-1 『BLOOM』は“可憐で清楚で優雅な”Sayaの魅力全開なCD
 ジャケット写真の雰囲気通り,暖かな日差しが降り注ぐ昼下がりのジャズ・ピアノ。耳に心地よいメロディが明るく優しい空間を生み出していく。

 『BLOOM』の象徴【HIGHER】でのSayaのいたずらっぽい笑顔が最高である。
 「天気のいい日曜日の昼下がり。男友達とどこかへ遊びに出かけた旦那の居ないリビング。気持ちいいんだけど,なんだか悲しくなってきて,時々ちょっとムカついて,でも許しちゃって…。不安になって泣きそうになりかけた夜遅く,たくさんのお土産を抱えて帰宅したご主人様の優しさに,鬱憤全てが吹き飛ぶハッピー・ライフ」。

BLOOM-2 『BLOOM』の全10トラックは,そんなSayaの一人遊びの音絵巻。
 シリアスな3曲【SHOOTING STAR】【EVERY DAY】【MIDNIGHT ROSE】は絶対名曲である。

  01. Shooting Star
  02. Flower Waltz
  03. Come Together
  04. Bloom
  05. Every Day
  06. Midnight Rose
  07. Samurai Funk
  08. Don't Know Why
  09. Higher
  10. Close to You (They long to be)

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2004年発売/PCCY-30069)
(ライナーノーツ/Saya)

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Saya / BEAUTIFUL DAY5

BEAUTIFUL DAY-1 『BEAUTIFUL DAY』はSayaの本質を見事にとらえた大傑作! 「URBAN CONTEMPORARY JAZZ」の大傑作!

 『BEAUTIFUL DAY』でのSayaピアノに加えてフェンダー・ローズを弾いている。
 生ピアノの【INTO THE SKY】で爽やかな風が吹き込み【WISHING WELL】で心洗われる。
 ローズ・ピアノの【BEAUTIFUL DAY】でウキウキして【SNOBBY CAT】でワクワクする。
 そしてトドメの【MO BETTER BLUES】!

 Sayaの【MO BETTER BLUES】がブランフォード・マルサリステレンス・ブランチャードの【MO BETTER BLUES】を超えている。爽やかさと哀愁のブレンド。美メロに託されたSayaのナイーヴな表情がより鮮明に表現されている。

BEAUTIFUL DAY-2 「URBAN CONTEMPORARY JAZZ」の“顔”であるSayaの本質は「エレガントでブルース・フィーリング」なジャズ・ピアニストである。

  01. Into the Sky
  02. I Wish
  03. Eternity
  04. Beautiful Day
  05. Pavane
  06. Mo Better Blues
  07. Snobby Cat
  08. In a Sentimental Mood
  09. What's Going On
  10. Wishing Well

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2003年発売/PCCY-30064)
(ライナーノーツ/Saya)

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Saya / ユニティ4

UNITY-1 管理人はしばし“ジャズ・ピアニストSayaの本質を勘違いしていた。
 管理人がSayaにハマッタきっかけとなった思い出の『UNITY』(以下『ユニティ』)。『ユニティ』は名盤である。スイングジャーナル誌選定【ゴールドディスク】受賞作である。『ユニティ』の出来は「折り紙つき」なのである。マジで愛聴したものだった。

 『ユニティ』は,Sayaお得意のR&B“ブラック全開な”ソウル・ジャズCD
 ドラムンベースである。【マーシー・マーシー・マーシー】&【ファンキー・ミラクル】である。ダイアナ・ロス,スティーヴィー・ワンダーロバータ・フラックである。どうだ。これでどうなんだ〜!
 『ユニティ』は,Sayaのデビュー当時,乱立していた女性ジャズ・ピアニスト界へ“殴り込み”の一枚となった。

 管理人は“名刺代わり”の『ユニティ』こそがSayaの本質だとずっと思っていた。
 なにせSayaは“黒人音楽の総帥”ネヴィル・ブラザーズ出身。グルーヴ・ミュージックには人一倍敏感なはずである。3作目にしてついに来た。そう思っていた。
 しかし『ユニティ』の中に“素顔の”Sayaはいない。まぁ,綺麗にお化粧したSaya本人もいるにはいるが『ユニティ』でのSayaは,売れ線狙いのレコード会社に作り上げられた“虚像”のSayaだったのだ。

 Sayaの全ディスコグラフィを眺めていくと『ユニティ』の異質ぶりが際立っている。
 例えば『ユニティ』の“ドッキドキな”ジャケット写真。昼間は“VENUS”しているSayaの“夜の顔”を見たようなジャケット写真。お嬢様の大変身はジャズとエロの蜜月の法則。レコード会社に“ぱっくり”背中を開けられて…。

 『SIMPLE POEM』『DANCE YOUR HEART』での「正統派ピアノ・トリオ」路線と『BEAUTIFUL DAY』『BLOOM』『TIMELESS』での「URBAN CONTEMPORARY JAZZ」路線。そして『UNITY』『TWILIGHT』でのR&Bなコマーシャル路線。

 『ユニティ』の売り=“コマーシャル仕掛け”なソウル・ジャズグルーヴ
 しかし『ユニティ』でのSayaは,売りであるリズムを,グルーヴを深追いしていない。Sayaが(自分の意思で)深追いするは,美しいアドリブなのである。
 マーク・ウィリアムズベースデゾーン・クレイボーンドラムが跳ねる中,Sayaはひたすらきれいにまとめている。そう。Sayaは“BEAUTY大好き”ジャズ・ピアニスト。つまりはメロディ重視である。

 リズム重視の『ユニティ』にあって,Sayaジャズ・ピアノが「ファンクの美メロ」を綴っていく。
 Sayaピアノは“クリスタル・タッチ”。しかし線は細くない。簡単には折れそうもない。芯の固いしっかりした音色を奏でている。どんなにリズムが跳ねようとも,瑞々しさを失わず,それでいて豊かな体験を映し込んだジャズ・ピアノが実にメロディアス。 
 ベースドラムが暴れることで,Sayaの“メロディアスな”ジャズ・ピアノが映える映える。そう。この対比のテクニックはインタープレイを特意とする,エヴァンス派の“セオリー”である。
 ただし『ユニティ』でのコントラストは「水を得た魚」になり得ていない。Sayaは基本“淡水魚”である。← 意味深トーク!?

UNITY-2 勿論『ユニティ』での“売れ線”ジャズ・ピアノ路線も悪ではない。
 そう。レコード会社の意向が働かなければ名盤ユニティ』が生まれることはなかったし,斉藤栄弥=美人=美しいジャズ・ピアノが定着することもなかったと思う。
 しかし悲しいかな。『ユニティ』のSayaは“虚像”のSaya。ずっと仮面をつけ続けるわけにはいかない。

 問題は「第二の『ユニティ』」への圧力である。もっと元ネヴィル・ブラザーズっぽく弾け。それから肌を露出しろ…。
 このレコード会社とのすれ違いが,現在の活動休止の原因なのでは? Sayaには「第二の『ユニティ』」を忘れて,本当に納得のいくCDだけを作ってほしい。結果,再びインディーズからの出発でもいい。「CLUB☆SAYA」のメンバー全員,Sayaさんの新作が届くことを祈り続けています。

PS 悪く書いてしまった『ユニティ』ですが,それはSayaの本質がゆがめられて伝えられることへの「やっかみ」です。『ユニティ』を単品で評価できれば文句なしの名盤です。でもSaya入門者の1枚目は『DANCE YOUR HEART』でお願いしま〜す。

  01. UNITY
  02. MERCY MERCY MERCY
  03. DO YOU KNOW WHERE YOU'RE GOING TO
  04. IN MY LIFE
  05. RIBBON IN THE SKY
  06. ETUDE OP.10 NO.3
  07. CORCOVADO
  08. BAG LADY
  09. CROSSWIND
  10. FEEL LIKE MAKING LOVE
  11. SOMETHING
  12. FUNKY MIRACLE

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2002年発売/PCCY-30048)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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Saya / ダンス・ユア・ハート5

DANCE YOUR HEART-1 実に清々しい。瑞々しい。(毎日聴いても何年聴いても)“真っ白な”ジャズ・ピアノ
 管理人はとうとう,Sayaの『DANCE YOUR HEART』(以下『ダンス・ユア・ハート』)に“魂を抜かれてしまった”思いがする。

 世間には音楽療法なるものがあるが,管理人はきっと『ダンス・ユア・ハート』で音楽療法を受けている。
 『ダンス・ユア・ハート』が流れると,無の自分に戻ることができる。明日の自分へリセットできる。この表現にウソ偽りはない。Sayaのエレガントなジャズ・ピアノは“真の癒し系”なのである。

 あっ,誤解のありませんように。Sayaの“癒し”はヒーリングではない。エステではなく針ツボ指向である。
 美しいものにはトゲがある。Sayaのエレガントなジャズ・ピアノにも,聴いて痛みを感じる瞬間がある。押してほしくないツボを押されたような…。
 恐らく,自分では無意識のうちにしまいこんだ,絶対に押されたくないツボ=幾重にもバリケートで囲い込んだ最悪な自分,が刺激される。“VENUSSayaの余りの美しさに羞恥心を感じてクリーンな自分を取り戻すことができるのだと思う( 我ながら冷静な自己分析。分かってるじゃん。でもどこかで外れているんだろうなぁ )。

 『ダンス・ユア・ハート』で,Sayaの指先が,管理人の深い部分にスーッと入ってくる。本当は抵抗したいはずなのに。優しく優しく撫でられるのが気持ちよい。こうなったら全てをさらけだしてしまおう。Sayaの指先に身を任せよう。指の次は口でしてもらおう。もう何度でも絶頂に達してしまう。ああ…。今夜もSayaに“魂を抜かれてしまいた〜い”!?

 『ダンス・ユア・ハート』は,全体に“ゆったりグルーヴ”。奇をてらう部分は一切ない。予定調和でスタンダードジャズ・ピアノが美しい。原曲のイメージを“崩しすぎない絶妙な崩し”がクセになるなる。
 Sayaアドリブは,ここぞという瞬間でスパークする,おいしいとこ取りのアドリブが構成美。この“白っぽい美しさ”でSayaも今後,耽美主義のエヴァンス派として鳴らすであろう。

 Sayaの個性は美しいアドリブだけではない。その1つが崩しの手法で感じる“ブルージなノリ”である。
 ソウルフルな【CHICKEN】や【WAITING IN VAIN】は勿論,ジャズ・スタンダードの【SUMMERTIME】がブルースしている。さすがは元ネヴィル・ブラザーズである。全てが「あっさり味」ではない。

 そしてもう1つ。Sayaの最大の魅力は“トータル・ミュージシャンの才”にある。
 例えばピアノのバッキング。Sayaの奏でる左手のコードのセンスが抜群である。【MY ONE AND ONLY LOVE】や【HOW MY HEART SINGS】での左指。ベーススタン・ギルバートドラムの“大御所”ハービー・メイソンの演奏をよく聴き分けた,的確なインタープレイが実に素晴らしい。

 ピアノの演奏だけではない。“トータル・ミュージシャン”Sayaの個性は,彼女の名作編曲家ぶりから窺い知れる。ハービー・ハンコックの大名曲【CHAN’S SONG(NEVER SAID)】のアレンジは,間違いなくSayaの【CHAN’S SONG(NEVER SAID)】がベストである。本家=ハービー・ハンコックを超えたSayaは世界最高峰のアレンジャーの一人だと思う。

 そしてミディアム・バラードの2曲のオリジナル。【DANCE YOUR HEART】【BELIEVE】の美メロにしばしば涙してしまう。管理人の大好きな「小さな日常の幸せ」を歌った感動系の逸品である。間違いない。

DANCE YOUR HEART-2 骨抜きにされ“魂を抜かれてしまう”程にメロメロな“Sayaの最高傑作”『ダンス・ユア・ハート』。上品な白無垢で身をまとった,清々しく瑞々しい『ダンス・ユア・ハート』。毎日「ピッカピカ」に輝いている『ダンス・ユア・ハート』。

 しかし『ダンス・ユア・ハート』の“真っ白な美しさ”は,純度100%の水ではない。異物がバリバリに混入している。Sayaの“ジャズ・ピアノへの情熱”が『ダンス・ユア・ハート』に混入した異物を全て溶解しろ過してしまった。
 『ダンス・ユア・ハート』は“美しいピアノ・トリオの典型”であるが,それだけではない。魅力的な美人にはどこか陰があるものだ。陰のない美人は3日で飽きるが,陰のある美人は男性を一生惹きつける。

 『ダンス・ユア・ハート』には陰がある。しかし今ではその跡形しか残っていない。Sayaが『ダンス・ユア・ハート』のレコーディングで何を燃やしたのか,今となっては想像することしかできない。Sayaジャズ・ピアノを聴いてあげることしかできない。
 『ダンス・ユア・ハート』の中に残された,極々わずかな負の陰影。これがはかなくも美しいクリスタル。

  01. SUMMERTIME
  02. FRAGILE
  03. MY ONE AND ONLY LOVE
  04. DANCE YOUR HEART
  05. NORWEGIAN WOOD
  06. CHAN'S SONG (NEVER SAID)
  07. HOW MY HEART SINGS
  08. BELEIVE
  09. CHICKEN
  10. WAITING IN VAIN

(ポニーキャニオン/LEAFAGE JAZZ 2001年発売/PCCY-30008)
(ライナーノーツ/高井信成)

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Saya / シンプル・ポエム5

SIMPLE POEM-1 自主制作→インディーズ→入手困難。ジャズフュージョンCDコレクターなら,いつかはこの壁にぶち当たる。
 ここに海外制作・現地限定発売という“しばり”がかかれば,ほぼ入手不可能間違いなし。ネットでの海外通販頼みに賭けるのみ。ああ,悩ましい。どうしても手に入れたい。チック・コリアポール・モチアンメデスキ,マーティン&ウッドソウライヴのファンなら海外通販の1度や2度,いや,二桁以上の経験がおありなのでは?

 そんなCDコレクターたちへのグッド・ニュース=日本国内発売盤のビッグ・ニュース。もう“狂喜乱舞”である。これでネット試聴ともおさらばできる。いや,全曲フルで聴き込める。
 しかし現実はそう甘くはない。国内盤になるインディーズ盤なんて極少数。管理人が希望していたSayaの本名「SAYA SAITO TRIO」名義の『SIMPLE POEM』(以下『シンプル・ポエム』)を手にするのはいつの日や…。

 祝! Sayaのニューオリンズ時代“幻のデビュー盤”である『シンプル・ポエム』が2005年に“日本国内正規盤”として再発されました。
 実に素晴らしい。JAZEEさん,ボウサイズさん,E−MUSICさん,本当にありがとうございます。皆さんのおかげで『シンプル・ポエム』が今,私の手元に届けられています。『シンプル・ポエム』の名盤ぶりは,一生の宝物の1つになると思っています。

 『シンプル・ポエム』は,ベースデビッド・プルファスドラムマルサリス・ファミリーの末弟,ジェイソン・マルサリスが参加した“シンプルかつゴリゴリ”なジャズ・ピアノCD

 待ちに待った『シンプル・ポエム』を一聴して,アルバムの完成度の高さに驚愕した! R&B,ソウル,ファンクをエッセンスに,Sayaオリジナルの美メロとハーモニーをブレンドした,ふくよかで繊細なジャズ・ピアノが完成している! この心地良い風,この透明感,これぞ,管理人の永遠の憧れ=Sayaスタイル全開!
 いや〜,この快作『シンプル・ポエム』が自主制作盤とは勿体無い。危うく真に“幻の名盤”と化するところ。いやいや,真の名盤は埋もれやしない。

SIMPLE POEM-2 『シンプル・ポエム』はまず,アメリカのブラック・ミュージックの雄=アーロン・ネヴィルに耳にとまった。その流れでSayaはネヴィル・ブラザーズのピアニストとして全米メジャー・デビューする。
 確かに『シンプル・ポエム』でのSayaピアノはブルージィ。【BLACK NILE】【A NEW DAY】での演奏は“メロディアスなブラック・フィーリング”で満ちている。

 『シンプル・ポエム』は次に,日本のポニーキャニオン(LEAFAGE JAZZ)のプロデューサーの耳にとまった。その流れでSayaは『DANCE YOUR HEART』にて日本メジャー・デビュー。
 確かに『シンプル・ポエム』でのSayaピアノは日本人以上に日本人っぽい音を出す。【SIMPLE POEM】【PRELUDE】での“ワビサビ+土の香り”の演奏が胸に染み入ってくる。
 『シンプル・ポエム』は,こうして管理人の耳にとまった。もはや管理人の心を掴んで離してくれない。大好き。

 『シンプル・ポエム』には“ジャズ・ピアニストSayaの原点がある。【ALICE IN WONDERLAND】【OVER THE RAINBOW】での,きどらないジャズ。しかし同時に熱い思いを伝えるジャズ。実にいい。
 『シンプル・ポエム』録音時のSayaは,アメリカでどのような道に進むべきかを迷っていたとのこと。そう。『シンプル・ポエム』は,これまでの音楽活動を通じて覚えたものを吐き出し,それを次のステップのための基にしようとする,そんなSayaの気概が鍵盤を通して伝わってくるように思う。
 「私のピアノ・スタイルはこうである」! 手探りと試行錯誤で確立した,Sayaピアノ・スタイルが形になった『シンプル・ポエム』! 『シンプル・ポエム』にSayaの原点がある。

m@yu さて,ここで管理人の『シンプル・ポエム』“推し”の真相を明かそう。
 『シンプル・ポエム』が,アーロン・ネヴィル〜LEAFAGE JAZZを通って管理人の耳に届く前に,実はもう一人の重要人物の耳に届けられている。「CLUB☆SAYA」の会長=m@yuちゃん。

 m@yuちゃんがいなければ管理人と斉藤栄弥さんはつながっていませんでした。斉藤栄弥さんのジャズ・ピアノを聴き続ける限り,m@yuちゃんへの思いが溢れ出てしまい困っています。
 是非,また一緒に斉藤栄弥さんを応援いたしましょう。副会長は今でも,新作は聴けなくとも,斉藤栄弥さんの応援を続けています。
 カムバック,m@yu! 私,セラビーはm@yuちゃんからの連絡だけを待ちわびています。この願いがm@yuちゃんの心まで届きますように。

  01. Simple Poem
  02. Black Nile
  03. Far Beyond
  04. Prelude
  05. A New Day
  06. Alice In Wonderland
  07. Words For Music Perhaps
  08. Over The Rainbow
  09. If I Fell For You

(JAZEE/JAZEE 1997年発売/JZCD-2001)
(ライナーノーツ/デイヴィッド・リッツ)

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T-SQUARE / 宝曲(たからのうた) 〜T-SQUARE PLAYS THE SQUARE〜5

TAKARANOUTA - T-SQUARE PLAYS THE SQUARE-1 「全曲・新録音による“THE SQUARE”時代の名曲コレクション!! THE SQUARE時代の超人気曲を,現T−SQUAREメンバー(安藤正容伊東たけし河野啓三坂東慧)によって再録音した究極のセルフカヴァー・アルバム」。
 T−スクェアの公式サイトに載せられた『宝曲(たからのうた) 〜T−SQUARE PLAYS THE SQUARE〜』の紹介文を読んで複雑な思いが込み上げた。

 カシオペアの『ASIAN DREAMER』である。『ASIAN DREAMER』は,カシオペアセルフカヴァー・アルバム。
 『ASIAN DREAMER』の構図はこう。「全曲・新録音による“JIMSAKU”時代の名曲コレクション!! JIMSAKU時代の超人気曲を,現CASIOPEAメンバー(野呂一生向谷実鳴瀬喜博熊谷徳明)によって再録音した究極のセルフカヴァー・アルバム」。ねっ,同じでしょ? 管理人の背中にむしずが走ったのも理解できるでしょ?

 『ASIAN DREAMER』の二の舞は絶対イヤ。過去の美しい遺産をブチ壊しにしないでほしい。それとも何? 『神曲』AKBへの便乗商法?(『宝曲』と書いて『たからのうた』と読ませちゃっています)
 それとも何? 『REFRESHEST』『MISS YOU IN NEW YORK』『T COMES BACK』には不満があるってこと? そう。スクェアセルフカヴァーはもう十分である。( ← 『時間旅行』の不出来を受けて,セルフカヴァーにうつつを抜かすな,オリジナル作りに精を出せ,の意味です )

 そう思っていた。『宝曲(たからのうた) 〜T−SQUARE PLAYS THE SQUARE〜』を聴くまでは,そう思っていた。
 しかし今では『宝曲(たからのうた) 〜T−SQUARE PLAYS THE SQUARE〜』最高! 安藤正容最高! 『宝曲』と書いて『たからのうた』と読ませたくなる気持ちが理解できる。これぞJ−フュージョン宝曲なのだ〜! 究極なのだ〜!!

 同じセルフカヴァーでも『ASIAN DREAMER』と『宝曲(たからのうた) 〜T−SQUARE PLAYS THE SQUARE〜』では,一体何が違うのか?
 その最大の違いは「リスペクト」の有無だと思う。過去のアレンジとその当時のレコーディング・メンバーへの「リスペクト」。そしてそのトラックを愛聴してきたファンへの「リスペクト」である。

TAKARANOUTA - T-SQUARE PLAYS THE SQUARE-2 「河野坂東時代」の現T−スクェアのサウンド・カラーは意外にも,伝統のスクェア・サウンド“保守”の姿勢である。この点はバンドの“革新”を目指した「松本時代」との一番の違いである。
 河野啓三坂東慧の音造りは,過去の楽曲を「完コピ」するところから始まっている。同じ音色,同じフレーズ…。彼らの引き出しの隅々に過去の歴代メンバーの手癖までもがインプットされている。その上での“自分色”なのだ。

 例えば『宝曲(たからのうた) 〜T−SQUARE PLAYS THE SQUARE〜』のオープニング・チューン【OMENS OF LOVE】。あの最初のシンセサイザーの音色に“ゾクっ”とした。
 繰り返し聴いた今となっては『R・E・S・O・R・T』と明らかに別物である。でもでも最初に聴いたあの瞬間は『R・E・S・O・R・T』の音源を再現している,いや,もっと言えば,和泉宏隆が弾いている,幻聴と思いつつもにわかにそう信じてしまった自分がうれしい。だまされてうれしい。“気持ちよくだましてくださいまして”河野くん,どうもありがとう〜。
 同じことは坂東慧にも当てはまる。坂東慧ドラミングが,時に則竹裕之に,時に長谷部徹に聞こえる瞬間がある。坂東くんも,どうもありがとう〜。

 さてさて話は続く〜。【OMENS OF LOVE】を聴き終えた直後の満足感。この満足感は,過去の再構築,の意味ではない。しっかりと現T−スクェアしている。【OMENS OF LOVE】が,生まれたばかりのあの瞬間の輝きを取り戻している。
 河野啓三坂東慧の“思い入れたっぷりの”名演につられたか,安藤正容伊東たけしの演奏がエネルギッシュ。安藤節全開,伊東節全開なアドリブが実に素晴らしい。

 元来,ジャズフュージョンインプロヴィゼーション・ミュージック。毎回がセルフカヴァーのようなもの。“ライブ・バンド”T−スクェアにとっては“お手の物”であろう。
 しかし,これがアルバム,スタジオ・レコーディングとなると微妙? ジャズメンとしてではなくアーティストとしての心理が芽生え気持ちが揺れる? きっと安藤正容も『宝曲(たからのうた) 〜T−SQUARE PLAYS THE SQUARE〜』のアレンジについて“迷いに迷った”のでは?

TAKARANOUTA - T-SQUARE PLAYS THE SQUARE-3 長年のファンにとってザ・スクェア時代の『宝曲』とは,ずっと親しみ続けてきた愛すべきオリジナル・アレンジ。それがどんなに素晴らしい新アレンジだとしても,耳に馴染むまでは違和感がどうしても先に来てしまうものだし,結果,気に入らなければオリジナルさえイメージダウンのハイリスク。

 そして安藤正容は決断した。『宝曲(たからのうた) 〜T−SQUARE PLAYS THE SQUARE〜』の新アレンジは,原曲通りで行こう。決断の決め手は,アーティスティック魂以上に大切な,スクェア・ファンへの「リスペクト」にあった。
 スクェア・ファンが喜ぶアレンジ=「原曲の良さを大事に,かつ今風のエッセンスで」。スクェア・ファンが望むのは『宝曲』のヴァージョン・アップではなくレヴィジョン・アップ盤なのだ。

 T−スクェアはこの難題に『宝曲(たからのうた) 〜T−SQUARE PLAYS THE SQUARE〜』で答えてくれた。
 結果,12曲全てで(すみません。誇張です。半分の6曲ぐらいで)オリジナルを超えている! この新アレンジがT−スクェアの代表曲。これがT−スクェアの『宝曲』。T−スクェアの新たなスタンダード・ナンバーの誕生である。

 『宝曲』での新アレンジの特徴=メンバーの誰かが新フレーズを繰り出す際,他の4人は以前の譜面通りに演奏している。この新鮮&安心感のバランスがツボ!

 この媚薬のブレンドは特に古い【LITTLE POP SUGAR】と【IT’S MAGIC】に顕著。昔の歌モノを現T−スクェアが最高音質で円熟の演奏で聴かせてくれる! これぞスクェア史上最強の【LITTLE POP SUGAR】と【IT’S MAGIC】!
 安心して乗れるし目新しさに熱狂できる。これらの最新アレンジがライブでも聴ける可能性があると思うと胸ワクワク! スクェア・ファンを続けてきて本当によかった! ただし【ハワイへ行きたい】だけはEWIではなくサックスでしょうが!!

TAKARANOUTA - T-SQUARE PLAYS THE SQUARE-4 「河野坂東時代」のT−スクェアは,ザ・スクェア時代の『宝曲』の上に存在している。逆に「河野坂東時代」のT−スクェアの活躍抜きに,ザ・スクェア時代の『宝曲』は輝けない。そのことをザ・スクェアT−スクェアの全ての時代を先頭に立って走ってきた安藤正容は熟知している。
 さすが安藤正容スクェアのリーダー。安藤正容の有する「客観的にバンドを見つめる選眼力」が野呂一生には足りなかった。

 正直に語ろう。これまで管理人は安藤正容に“スクェア愛”は感じなかった。
 しかし『宝曲(たからのうた) 〜T−SQUARE PLAYS THE SQUARE〜』を聴いて初めて,安藤正容の「河野坂東時代」のT−スクェアへの愛情を感じてしまった。
 「和泉時代」よりも「本田時代」よりも「松本時代」よりも「河野坂東時代」を愛している。そして「河野坂東時代」を愛するスクェア・ファンをも愛している。強くそう思う。

  01. OMENS OF LOVE
  02. 宝島
  03. ハワイへ行きたい
  04. LITTLE POP SUGAR
  05. TOMORROW'S AFFAIR
  06. MIDNIGHT LOVER
  07. ALL ABOUT YOU
  08. TRUTH
  09. 脚線美の誘惑
  10. DANS SA CHAMBRE
  11. IT'S MAGIC
  12. FORGOTTEN SAGA

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