アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2013年05月

ビル・エヴァンス / パリ・コンサート 15

THE PARIS CONCERT EDITION ONE-1 ピアノビル・エヴァンスベースマーク・ジョンソンドラムジョー・ラバーベラによる,文字通り最後のビル・エヴァンストリオラスト・トリオ

 ラスト・トリオラスト・トリオたる所以。それこそビル・エヴァンスの死である。死を目前に控えたステージだからこそ,ここまで我武者羅な演奏になったのだろう。こんな演奏をもっともっと聴きたい。でもそれだとこんな熱演にはなっていない。
 そう。ラスト・トリオの本質は“幸運と不運が同居した”複雑なテキスチャーなのである。

 結論から書こう。ラスト・トリオは,これまでの“栄光の”ビル・エヴァンストリオのどれとも異なっている。従来の延長線上では語れない,管理人的には「新種の」ビル・エヴァンストリオの大登場に聴こえる。
 『THE PARIS CONCERT EDITION ONE』(以下『パリ・コンサート 1』)に耳を傾けてみてほしい。こんなに創造的なピアノ・トリオはなかなか聴けやしないと思う。“どう猛さと気品高さ”が混在しているのだ。

 『パリ・コンサート 1』は,静かなバラード3連投で幕を開ける。いかにもCDジャケットのイメージ通りの演奏である。
 しかし,4曲目の【MY ROMANCE】が静寂をブチ破る。ラスト・トリオの“本性丸出し”のステージが始まった。もう誰もラスト・トリオの突進を止めることなどできない。
 ラスト・トリオスイングしながらワルツを舞う…。この強力な推進力に宇宙の果てまで運ばれてしまう…。素晴らしく密度の高いインタープレイだけが聴こえてくる…。

 いいや,聴こえてくるのはビル・エヴァンスの圧倒的な自信である。『パリ・コンサート 1』は,基本ビル・エヴァンスの独壇場。
 ビル・エヴァンスが思うがままにピアノを打ち鳴らし,そのタッチにしなやかに反応するベースドラムの名人芸という構図。

 『パリ・コンサート 1』におけるビル・エヴァンスは,自分自身のジャズ・ピアノを心底楽しんでいる。こんなビル・エヴァンストリオは過去に例がない。
 従来,ビル・エヴァンスは真剣にベースドラムの音を聴いてきたピアニストであった。
 しかしラスト・トリオでのビル・エヴァンスピアノベースドラムの手に“委ねている”。
 そう。自身の音楽の理解者としてマーク・ジョンソンジョー・ラバーベラを絶対的に信頼しているのだ。繊細さも力強さをも…。

THE PARIS CONCERT EDITION ONE-2 マーク・ジョンソンジョー・ラバーベラビル・エヴァンスピアノにつける「新種のアンサンブル」が評価されない不運。

 原因は『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』でピアノトリオを究めたことから来る『WE WILL MEET AGAIN』での“とばっちり”にある。どうしてビル・エヴァンスの生前にラスト・トリオのアルバムがリリースされなかったのか?
 加えて,リスナーの耳が「斬新なアンサンブル」に慣れていないという不運が重なる。『パリ・コンサート 1』のインタープレイは超高度。益々モダンなアプローチであり,テンポとダイナミクスの振り幅が激しい。
 さらにはビル・エヴァンスに“叩き上げられ”急成長したマーク・ジョンソンジョー・ラバーベラとは反対に人生の下り坂に突入しているビル・エヴァンスの体内時計の不運。
 この三重苦がラスト・トリオの不運。

 しかし「新種のアンサンブル」がビル・エヴァンスの死と共に消え去るかと思われたタイミングでリリース・ラッシュされたビル・エヴァンスの「追悼盤」。特にブートまがいのライブ盤のリリース・ラッシュがラスト・トリオの音源をエヴァンス・マニアの耳に届けることになる。
 そのタイミングでビル・エヴァンスによるラスト・トリオは「スコット・ラファロポール・モチアンとの時代に比肩しうるピアノトリオ」発言が広まって…。
 これがラスト・トリオの幸運。いいや,実力である。

 紆余曲折。“幸運と不運が同居した”複雑なテキスチャーの『パリ・コンサート 1』に愛着を感じる私…。

  01. I Do It For Your Love
  02. Quiet Now
  03. Noelle's Theme
  04. My Romance
  05. I Loves You Porgy
  06. Up With The Lark
  07. All Mine (Minha)
  08. Beautiful Love
  09. Excerpts OF A Conversation Between Bill And
     Harry Evans


(エレクトラ/ELEKTRA 1983年発売/WPCR-75516)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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ビル・エヴァンス / リ・パーソン・アイ・ニュー4

RE:PERSON I KNEW-1 ビル・エヴァンスの死後,追悼盤としてリリースされた『RE:PERSON I KNEW』(以下『リ・パーソン・アイ・ニュー』)は既発公式盤=『シンス・ウィ・メット』と対を成す1974年1月に行なわれた“聖地”「ヴィレッジ・ヴァンガード」におけるライブ盤。

 そう。『シンス・ウィ・メット』と『リ・パーソン・アイ・ニュー』は1974年盤『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』と言い切ってもよい。
 「ヴィレッジ・ヴァンガード」という同じ舞台でスコット・ラファロポール・モチアン相手に繰り広げられたインタープレイが,今度はエディ・ゴメスマーティ・モレル相手に繰り広げられている。
 『シンス・ウィ・メット』と『リ・パーソン・アイ・ニュー』への低評価は「時代錯誤」なだけであろう。

 『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』がスコット・ラファロポール・モチアンラストライブであったと同じように『シンス・ウィ・メット』と『リ・パーソン・アイ・ニュー』もエディ・ゴメスマーティ・モレルラストライブ
 つまり,その時代のビル・エヴァンストリオの“完成形”が鳴っている。トリオとして「何をすばきか,何をすべきでないか」の約束事が熟成されている。それでいて3人が対等。久しぶりにメンバーの力関係が拮抗したトリオで聴き応えがある。

 『シンス・ウィ・メット』は“叙情派”としてのビル・エヴァンスの個性が色濃く表われたセットリストであったが『リ・パーソン・アイ・ニュー』は“エディ・ゴメスマーティ・モレル”の個性が色濃く表われたセットリストである。
 エディ・ゴメスも個性的な名演を繰り広げているが(エディ・ゴメスは在籍期間が長いという理由で)管理人は『リ・パーソン・アイ・ニュー』の主役にマーティ・モレルドラムを指名する。

 基本,マーティ・モレルドラムはやたらと鼻に突く。せっかちで出しゃばりすぎるきらいがある。しかしそれはスタジオ盤でのお話。ライブにおけるマーティ・モレルドラムは神!
 ポール・モチアンとは“真逆のアプローチ”でビル・エヴァンスの演奏を後押ししている。ドラムでイマジネーションを示している。
 強烈なシンバルと繊細なブラシ。神の手によるシンバル・ワークが並はずれて多弁なテクニシャン=エディ・ゴメスとシンクロした瞬間の快感はライブならではの醍醐味だと思う。

RE:PERSON I KNEW-2 ただし管理人はベタボメはできない。『リ・パーソン・アイ・ニュー』におけるビル・エヴァンストリオは「テクニック的に」は最高レベルだが「ビル・エヴァンス的に」どうかというと“らしさ”の薄い“第三次トリオ”と表現するしかないのかなぁ。

 エディ・ゴメスマーティ・モレルは2人とも「フォルテ」「フォルテシモ」であり,ビル・エヴァンスが「フォルテ」「フォルテシモ」の場合はスコット・ラファロポール・モチアンと同格であるが,ビル・エヴァンスは「ピアノ」「メゾピアノ」の達人でもあるわけだし…。

 とはいえ『シンス・ウィ・メット』と『リ・パーソン・アイ・ニュー』を『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』と『ワルツ・フォー・デビイ』より上だと主張するエヴァンス・ファンがいたとしても異論はない。高度なピアノトリオを演っている。単純に好みの問題だと思う。

  01. RE: PERSON I KNEW
  02. SUGAR PLUM
  03. ALFIE
  04. T. T. T.
  05. Except from DOLPHIN DANCE〜VERY EARLY
  06. 34 SKIDOO
  07. EMILY
  08. ARE YOU ALL THE THINGS

(ファンタジー/FANTASY 1981年発売/VICJ-60175)
(ライナーノーツ/佐藤秀樹)

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ビル・エヴァンス / ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング5

YOU MUST BELIEVE IN SPRING-1 「歴史上一番時間をかけた自殺」を遂げたビル・エヴァンスによる“死への3部作”=『I WILL SAY GOODBYE』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』『WE WILL MEET AGAIN』。

 『I WILL SAY GOODBYE』では,棺桶に片足突っ込んでいたビル・エヴァンスが『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』(以下『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』)で死んでしまった。ビル・エヴァンスが“灰”になってしまった。
 そう。『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』におけるビル・エヴァンスのイメージは,矢吹丈に勝利した直後リング上で死を遂げた力石徹。「真っ白な灰になる」まで演奏しピアノと共に“燃え尽きてしまった”。

 芸術とは真に残酷なものだと思う。『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』のレコーディングにおけるビル・エヴァンスの「精神的・地獄の苦しみ」があればこそ,稀にみる美しさにつながっている。“一切の邪念を超越した者だけだ醸し出せる美しさ”がここにある。凛としたピアノなのだ。

 ビル・エヴァンスの「命と引き換えに」残された『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』に色はない。あるのは濃淡のみ。白と黒を“無限に散りばめ”全ての音世界が表現されている。そう。「水墨画」なのである。アルバム・ジャケットのように…。

 『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』におけるビル・エヴァンスの筆使い=指使いは「一筆書き」である。つまりは出来上がりをイメージしながら濃淡のみでデザインする。跳ねや止めでの失敗をも受け入れ,ひたすら前へ前へと筆を進ませる。

 要は「一筆書き」のリズムである。ビル・エヴァンスピアノはリズムなのである。エディ・ゴメスベースビル・エヴァンスが乗り移り,エリオット・ジグモンドドラムビル・エヴァンスが乗り移っている。
 ビル・エヴァンスを聴いてキース・ジャレットを感じることはないのだが『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』ばかりはキース・ジャレットが乗り移っているようにも聞こえるから不思議だ。

 自分でも『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』だけに,なぜこれ程の愛情を抱いてしまうのかが分からないのだが,理由はきっと単純に「ビル・エヴァンスキース・ジャレットのように聴こえる」からなのだろう。
 そう。『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』は,ピアノベースドラムも“ワンマンな”ビル・エヴァンスプレイズ

 すでに気持ちは離れ離れになっていたピアノビル・エヴァンスベースエディ・ゴメスドラムエリオット・ジグムンドによる“レギュラー”トリオの3人だったが,この時ばかりは“潜在意識で語り合う”様が感動を誘う。ただただ川の流れのような3人の自然体な白と黒だけの会話がエモーショナル。

 音数は少なく力強さも感じられない。一音一音がまるで現生との別れを惜しむかのように響いている。ビル・エヴァンスにより,愛おしむように弾き放たれたピアノは今やスピリチュアルの世界に存在している。形あるものに違いないのに「無」なのである。感じるままにまどろんでいる。アルバム・ジャケットのように…。

YOU MUST BELIEVE IN SPRING-2 真のビル・エヴァンス・マニアは『ワルツ・フォー・デビイ』とは言わないはずである。
 ビル・エヴァンスの“最高傑作”は『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』である。

 管理人は,常日頃『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』を聴くことはない。
 ビル・エヴァンスを聴くという行為,それはすなわち【PEACE PIECE】を聴くことであり「リバーサイド4部作」を聴くことであるのだから…。

 しかし,いつの日か必ず訪れる死の最期の瞬間に聴きたいビル・エヴァンス。それは【PEACE PIECE】でも「リバーサイド4部作」でもなく『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』しか有り得ない。『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』は,聴き終わった後,次になんにも聴けなくなってしまうのだから…。

 生への執着も力尽き,家族の今後だけを心配しながら,自分の力ではどうしようもできない絶望の瞬間。管理人もビル・エヴァンスに,そして『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』に“すがりつこう”と思っている。

 人生の真冬の時期にあって「春の訪れを信じる」=完全に仮死した状態のまま,遺灰で「水墨画」を描いたビル・エヴァンスの復活の希望=『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』!

  01. B Minor Waltz (For Ellaine)
  02. You Must Believe In Spring
  03. Gary's Theme
  04. We Will Meet Again (For Harry)
  05. The Peacocks
  06. Sometime Ago
  07. Theme From M*A*S*H* (aka Suicide Is Painless)
  08. Without A Song
  09. Freddie Freeloader
  10. All Of You

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1981年発売/WPCR-13176)
(ライナーノーツ/中山康樹)
(☆SHM−CD仕様)
(紙ジャケット仕様)

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ビル・エヴァンス / ウィ・ウィル・ミート・アゲイン4

WE WILL MEET AGAIN-1 「歴史上一番時間をかけた自殺」を遂げたビル・エヴァンスによる“死への3部作”=『I WILL SAY GOODBYE』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』『WE WILL MEET AGAIN』。

 録音順から行けば『I WILL SAY GOODBYE』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』『WE WILL MEET AGAIN』の順であるが,リリースされたは『I WILL SAY GOODBYE』『WE WILL MEET AGAIN』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』の順となる。
 そう。『WE WILL MEET AGAIN』(以下『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』)こそが,ビル・エヴァンス「生涯最期のスタジオ録音盤」なのである。

 『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』は,ビル・エヴァンストリオ+2管のクインテット編成。余りにも有名なベースマーク・ジョンソンドラムジョー・ラバーベラを擁する通称“ラスト・トリオ”によるスタジオ録音は残されていない。

 なぜビル・エヴァンスラスト・トリオでのスタジオ録音を吹き込まなかったのか? その理由こそラスト・トリオだからこそ,となるであろう。
 ビル・エヴァンスラスト・トリオに絶対の自信があったがゆえに,敢えて“人生の宿題”であったクインテット編成での名盤を残そうと考えたように思う。

 ビル・エヴァンスの名立たる名盤は全てソロデュオトリオ・フォーマット。クインテット盤は『INTERPLAY』があるくらいだが『INTERPLAY』は「水準レベルな異色盤」にすぎなかった。
 ビル・エヴァンスの胸の内でも,前作『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』に確かな手応えを感じていたのかもしれない。
 ラスト・トリオを以てしても,恐らくは『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』は超えられない。ビル・エヴァンス“栄光の”ピアノ・トリオは『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』で終着駅へと辿り着いた。『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』でビル・エヴァンスピアノ・トリオは“灰”となったのだ。

 “死への3部作”の最終作=『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』は,廃人と化したビル・エヴァンスが,最期のエネルギーを爆発させて死へ向かう“ろうそくの炎”そのものである。消え去る前のほんの一瞬,ワッと燃え盛る“死の直前の輝き”である。

 『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』が「水墨画」であるならば『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』は「カラー写真」である。ビル・エヴァンスの「生命力」をどうにもこうにも感じてしまうのである。大袈裟に言えば,このクインテットが発散するエネルギーは,全エヴァンス作品中“最強レベル”に達している。ビル・エヴァンスが“躍動的な創造力”を完全に取り戻している。

WE WILL MEET AGAIN-2 ゆえに『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』におけるビル・エヴァンスが“ノリノリ”である。とにかく軽快でバリバリなハード・バップ。死を目前にして人生の最期を“謳歌”してみせている。ビル・エヴァンスの人生は最後の最後まで“チャレンジ”であった。

 海と空を臨む青の遺跡風のジャケットは,門の向こう側が清浄な天国で手前側が現生のようである。ビル・エヴァンスの天国へのチャレンジは『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』で完了した。
 「私はソロデュオトリオだけのピアニストではないよ。クインテットもいいものがあるんだよ」。そう言い残してビル・エヴァンスは「天国への門」を越えてしまうのであった…。

 しかし,しかしビル・エヴァンスさん,忘れ物がありますよ〜。『WE WILL MEET AGAIN』の真実は残念ながら『INTERPLAY 2』でした。
 今すぐ出でよ!表われよ! ビル・エヴァンスの生まれ変わりであるエヴァンス派の猛者たちよ! 『WE WILL MEET AGAIN 2』を制作せよ!

  01. COMRADE CONRAD
  02. LAURIE
  03. BILL'S HIT TUNE
  04. FOR ALL WE KNOW (WE MAY NEVER MEET
     AGAIN)

  05. FIVE
  06. ONLY CHILD
  07. PERI'S SCOPE
  08. WE WILL MEET AGAIN

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1980年発売/WPCR-13178)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)
(☆SHM−CD仕様)
(紙ジャケット仕様)

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ビル・エヴァンス / アイ・ウィル・セイ・グッドバイ5

I WILL SAY GOODBYE-1 「歴史上一番時間をかけた自殺」を遂げたビル・エヴァンスによる“死への3部作”=『I WILL SAY GOODBYE』『YOU MUST BELIEVE IN SPRING』『WE WILL MEET AGAIN』。

 『I WILL SAY GOODBYE』(以下『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』)の“GOODBYE”が,果たして誰に向けられた言葉なのかは定かでないが『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』は,死を明確に意識したビル・エヴァンスからのダイニング・メッセージである。そう管理人が強く思う理由がある。

 CD時代以後『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』を聴いたビル・エヴァンス・ファンには分からないかもしれないが,管理人は『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』を最初にLPで買った。
 昨今の発掘音源時代であれば特に珍しくもない別テイクであるが,非常に珍しいこととして『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』にはA面の1曲目に【I WILL SAY GOODBYE】が,そしてB面の1曲目に【I WILL SAY GOODBYE】の【TAKE 2】が入っていた。そう。敢えて【TAKE 2】もオリジナル音源の一部としての発表であった。

 管理人は2つの【I WILL SAY GOODBYE】の存在に,ビル・エヴァンスからのダイニング・メッセージを強く意識する。
 なぜなら『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』のA面をかけてもB面をかけても,リスナーは必ず【I WILL SAY GOODBYE】に耳を傾ける“仕掛け”になっている。
 つまり,ビル・エヴァンスが『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』で伝えたかった“魂の言葉”は2つの【I WILL SAY GOODBYE】の演奏の中に込められていると思うのだ。

 【I WILL SAY GOODBYE】で響くビル・エヴァンスピアノが“孤独”である。事実,長年の女房役であったエディ・ゴメスとの“すき間風”を感じさせる。
 それ位【I WILL SAY GOODBYE】におけるビル・エヴァンスは今まで以上に“内省的なピアノ”を弾きまくる。

 そう。ビル・エヴァンスからの真のダイニング・メッセージは,アルバム・タイトル=『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』でも,トラック名=【I WILL SAY GOODBYE】でもない。全ては言葉ではない。ビル・エヴァンスジャズ・ピアノの“孤高の美しさ”といったら…。
 『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』の底流に流れる淋しさや,触れれば壊れてしまいそうな“繊細な響き”が“孤独”なのである。ビル・エヴァンスはそんなどうしようもない“孤独感”から逃避するために鍵盤に向かっている。そんな趣きを感じるのである。

I WILL SAY GOODBYE-2 そう。ビル・エヴァンスピアノから牙が抜かれている。いつもの勝ち気で男勝りで攻撃的な硬質のピアノ・タッチが全て“丸味”を帯びている。粗が削られ角バリが取られている。

 ビル・エヴァンスピアノが最高度に美しい。こんな皮肉な結果があってよいものだろうか? 『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』の全ては,生へのやるせなからピアノに向かうしかなかったビル・エヴァンスの“孤独”な演奏に尽きる。

 ビル・エヴァンスさん,あなたの居場所は,誰にも邪魔されない居場所はピアノのレギュラー・シートでした。ピアノだけは決してあなたを裏切ったりしない。だから…。

  01. I WILL SAY GOODBYE
  02. DOLPHIN DANCE
  03. SEASCAPE
  04. PEAU DOUCE
  05. NOBODY ELSE BUT ME
  06. I WILL SAY GOODBYE (TAKE 2)
  07. THE OPENER
  08. QUIET LIGHT
  09. A HOUSE IS NOT A HOME
  10. ORSON'S THEME

(ファンタジー/FANTASY 1980年発売/UCCO-90131)
(ライナーノーツ/岡崎正通)
(☆SHM−CD仕様)
(紙ジャケット仕様)

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青木 智仁 / ダブル・フェイス5

DOUBLE FACE-1 日本が誇る「ワールド・クラス」な2人のベーシスト桜井哲夫と来れば“チョッパー”なのだが青木智仁と来れば“スラップ”である。同じようで同じではない。このニュアンスの違いが読者の皆さんに伝わるだろうか?

 ベーシスト青木智仁のプレイは独特である。日本にはいないタイプの「セッションベーシスト」である。そう。青木智仁こそ“日本のマーカス・ミラー”その人である。
 本職が「セッションベーシスト」だからそうなのか? 青木智仁スラップベース・ラインは「超絶技巧」で,とにかく丁寧でマジメで何でも上手に弾きこなす。もう「ちょちょいのちょい」な感じなのだ。

 テクニック的には桜井哲夫が上だと思う。あんな“トリッキー”なベース・プレイは他の日本人ベーシストには真似できない。
 「超正統派」な青木智仁は「超絶技巧」を売りにはしていない。本気で弾いたら桜井哲夫マーカス・ミラーをも超えると思ったりもするのだがこの願いは叶わない。青木智仁は決してそれをしないからだ。

 ゆえに青木智仁ソロデビューCD=『DOUBLE FACE』(以下『ダブル・フェイス』)を聴いてニンマリした。そして大満足した。
 予想通り,青木智仁ベースは前に出ていない。いつも通り,しっかりとボトムを支えている。というか,この豪華参加メンバーをして前に出る必要はない。

 ギター角松敏生梶原順松原正樹今剛浅野祥之鈴木茂キーボード小林信吾難波正司島健ドラム村上秀一渡嘉敷祐一石川雅春パーカッション斎藤ノブサックス本田雅人小池修平原まことトランペット数原晋,今回はボーカル参加の岡沢章 ETC。

 ねっ,前に出るのは不可能でしょ? この人たちを目立たせてナンボなアルバムでしょ? そう。この豪華参加メンバーを含めて全てはプロデューサー=角松敏生青木智仁の計算である。スター・フロント陣を目立たせることで「自分が目立つ」。これぞ「セッションベーシスト」のソロ・アルバムの“王道”であろう。

DOUBLE FACE-2 構図は決まった。後は伸び伸び&思いっきりENJOYするのみ。この時点で“青木智仁オールスターズ”の大名盤誕生が決まったようなもの。主眼はあくまで「楽曲の完成度」。(出番は少ないが)文句なしの“スラップ”地獄であって,これは“チョッパー”地獄ではない。←力説
 フロントが“跳ねれば跳ねるほど”青木智仁の安定した職人技が耳につく。地味でシンプルなベース・ラインなのに聴けば聴く程魅力的なスラップベース。ク〜ッ。

 あっ,分かった。だからアルバム・タイトル=『ダブル・フェイス』なんなんだぁ。
 バンドの要=裏方ベーシストとしての青木智仁と“スラップベーシスト”としてソロイスト青木智仁の2つの顔。
 あるいは表の顔が「セッションベーシスト」で裏の顔が「音楽家」だったり「作曲家」だったり…。

 管理人は青木智仁の『ダブル・フェイス』=「表の顔も裏の顔も」大好きです。

PS ここまで書き上げた後に気付きましたが「ベーシストなのにベース弾きまくりではないパターン」は青木さん以上に桜井さんやマーカスの専売特許でした。お後がよろしいようで…。

  01. Triboro Bridge〜Memories of M.K.
  02. Mr.J.F.P
  03. Forgive Me
  04. Don't Ever Hurt Me
  05. Linda
  06. Amboseli
  07. Risa
  08. 砂の女
  09. Manhattan Love Affair
  10. With A Little Help From My Friends
  11. Risa Reprise

(BMGビクター/BMG VICTOR 1989年発売/M32D-1004)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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ビル・エヴァンス / アフィニティ5

AFFINITY-1 ピアノビル・エヴァンスハーモニカトゥーツ・シールマンスベースマーク・ジョンソンドラムエリオット・ジグムンドサックスフルートラリー・シュナイダーの5人が様々な編成で演奏した『AFFINITY』(以下『アフィニティ』)であるが,印象としてはピアノハーモニカによる“デュエット”のようである。

 それくらい,ビル・エヴァンストゥーツ・シールマンスインタープレイが突出している。叙情性や情感溢れる素朴な音楽イメージを吹き飛ばす,硬いピアノと疾走するハーモニカによる“男の美学”。聞き流してもよし&聴き込んでもよし=「聴き所の玉手箱」!
 そう。『アフィニティ』はジャズの全史を見渡しても稀にみる“異色盤”にして大名盤なのである。

 『アフィニティ』の成功の理由は「1にシールマンス,2にエヴァンス」である。トゥーツ・シールマンスハーモニカビル・エヴァンス“お得意の”リリシズムをかっさらう! 筆舌に尽くし難い哀愁を伴ったハーモニカが紡ぎ出すリリシズムが本家との共演で深みを帯びている。

 対する“お株を奪われた形”のビル・エヴァンスが一歩も引いていない。いいや,いつも以上のリリシズム! ビル・エヴァンスの内に宿る秘められていたリリシズムが,トゥーツ・シールマンスの個性によって外界へと引き出されている。
 ビル・エヴァンストゥーツ・シールマンスの「ロマン主義」が“爆発した”インタープレイがここにある。事実,他の3人の演奏も素晴らしいものだが,先に述べた通り記憶には残らない。ラリー・シュナイダーの【酒バラ】だけは存在感があるかなぁ。

 それにしても「トゥーツ・シールマンス効果」は絶大である。基本ビル・エヴァンスはBGMにはならないのに『アフィニティ』だけはウィスキーをひっかけながら聞いても様になる。ボーッと聞き流してもグッと来る。緩く気楽なジャズ・アルバムの最高峰。

 『アフィニティ』の真骨頂は“癒し”であり「涙」である。ボーッと無防備にBGMとして流していると,いつしか様々な思い出が浮かび上がって「涙」が無意識のうちに“零れ落ちて”しまう。目からの「涙」ではない。心から「涙」が零れ落ちてくる。ワ〜っではなく“1粒だけがポロリ”な感じ。
 『アフィニティ』を聴き終える頃には,いろいろな心のしがらみがすっかり洗い流されている。聴いて良かった。このジンワリと温かな感覚はそう滅多に体験できるものではない。“ジャズを超えた”ジャズ・アルバムの最高峰。

 思うに,ビル・エヴァンスも管理人と同様,トゥーツ・シールマンスハーモニカを聞き流しての録音だったように思う。無心でピアノを弾いたのだと思う。メロディーがゆったりと響く雄大でロマンティックなピアノを弾いている。
 当然タッチは超強烈なのだがいつものピアノ・トリオとは何かが違う。これがトゥーツ・シールマンスハーモニカに癒された“素の”ビル・エヴァンスなのかもしれない。

AFFINITY-2 そう。『アフィニティ』に録音された“素の”ビル・エヴァンス
 ボーッと聞き流せてしまうとしても,ビル・エヴァンスエレピを弾いているとしても『アフィニティ』は,巷で語られているようなフュージョン・アルバムなどでは断じてない。

 『アフィニティ』にジャズを感じないファンは,ビル・エヴァンスピアノを聴かずに,よく知られたポップ・チューンのメロディーを聴いているからであろう。
 ズバリ『アフィニティ』の官能の美メロの聴き所は,メジャーとマイナーを行き来する瞬間の“間”にありますから〜。
 トゥーツ・シールマンスの「覚醒を産み出す」クリエイトした大仕事が超最高〜。一音で世界旅行〜。一音でタイム・トリップ〜。

  01. I Do It For Your Love
  02. Sno' Peas
  03. This Is All I Ask
  04. The Days Of Wine And Roses
  05. Jesus' Last Ballad
  06. Tomato Kiss
  07. The Other Side Of Midnight (Noelle's Theme)
  08. Blue & Green
  09. Body & Soul

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1979年発売/WPCR-13177)
(紙ジャケット仕様)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/中山康樹)

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ジャコ・パストリアス

ザ・キング・イズ・ゴーンザ・キング・イズ・ゴーン
マーカス・ミラー

FIRST MEETINGファースト・ミーティング
テザード・ムーン

スペシャル・エディションSPECIAL EDITION
ジャック・デジョネット

ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリングYOU MUST BELIEVE IN SPRING
ビル・エヴァンス

ヴァイアティカムVIATICUM
e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)

STEP BY STEPSTEP BY STEP
ステップス

2424
DIMENSION

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渡辺香津美
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FOURPLAYFOURPLAY
フォープレイ

コンプリート・ピック・ヒッツ・ライヴPICK HITS
ジョン・スコフィールド

ニューポートの追想V.S.O.P.
ハービー・ハンコック

アス・スリーUS THREE
ホレス・パーラン

Manhattan StoryBLUE'S MOODS
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AFRICAN PIANOOFF TO THE RACES
ドナルド・バード

AFRICAN PIANOAFRICAN PIANO
ダラー・ブランド

Manhattan StoryMANHATTAN STORY
アキコ・グレース

SPELLBOUNDSPELLBOUND
ジョー・サンプル

ランデヴーRENDEZ-VOUS
木住野佳子

RETURN TO FOREVERRETURN TO FOREVER
チック・コリア

BRAINBRAIN
上原ひろみ

イン・ラインIN LINE
ビル・フリゼール

ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニングザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング
マーク・ジョンソン

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