アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2013年08月

ブラッド・メルドー / プログレッション:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.55

PROGRESSION:ART OF THE TRIO, VOLUME 5-1 ブラッド・メルドー,芸術音楽を究めたり! ブラッド・メルドージャズ・ピアノを究めたり! ブラッド・メルドー,「THE ART OF THE TRIO」を究めたり!

 『PROGRESSION:ART OF THE TRIO,VOLUME 5』(以下『プログレッション:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.5』)におけるピアノブラッド・メルドーベースラリー・グレナディアドラムホルヘ・ロッシィによるブラッド・メルドートリオは,キース・ジャレットの最高峰「アメリカン・カルテット」と同じ立ち位置にいた。

 もう行き着くところまで行ってしまった。後は解散するのみである。完璧な芸術性&完璧なコンビネーションから来るブラッド・メルドーの創造性が頂点に達してしまったのだ。かなり“トンガッタ”唯一無二のジャズ・ピアノの世界が完成してしまっている。
 一発勝負のライブ録音において,これ以上,何かを足したり何かを引いては絶対に完成しない領域にまで到達している。素晴らしい。

 尤もブラッド・メルドー一連の「THE ART OF THE TRIO」シリーズは発足直後から完成品だった。しかし『プログレッション:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.5』は他の4枚とは明らかに違う領域にまで踏み込んでいる。円熟というか熟成というか…。

PROGRESSION:ART OF THE TRIO, VOLUME 5-2 例えば前作『アート・オブ・ザ・トリオ 4:バック・アット・ザ・ヴァンガード』との比較で言えば,音符をひたすら速くたくさん詰め込もうとするブラッド・メルドーをサポートするラリー・グレナディアホルヘ・ロッシィのリズム隊がうるさく感じる瞬間があった。

 しかしどうだろう。『プログレッション:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.5』におけるブラッド・メルドートリオの演奏は,クールでダークで熱狂的。「抑えるべきところは抑え,行くべきところは行く」というメリハリの効いた演奏である。
 これまでのライブCDに欠けていたトータルなバランス感覚が加わり,単なる技巧的・音楽的試行を超えた普遍性が備わっている。例の“難解臭さ”が消えている。

 特に絶品バラード=【クライ・ミー・ア・リバー】【いつの頃から】の2トラックでは,無感動系から感動系のジャズ・ピアノが現われている。そうして訪れる,全てのジャズ・ファンのハートを「いただきまゆゆ」ならぬ「いただきメルドー」のクライマックス。

 これ以上,ブラッド・メルドートリオに何を求めたらよいのだろう。なにもあるまい。

PROGRESSION:ART OF THE TRIO, VOLUME 5-3 ブラッド・メルドーの芸術にしてブラッド・メルドージャズ・ピアノとは,テーマを切り取ってはつなぎ合わせ,折ったりまるめたり,破ったり燃やしたり…。そこへコンソメやソース,はたまた味噌をも配合した絶妙ブレンドの創作音楽。

 しかし,基本はジャズのルーツに則った,計算高くも瞬時に反応する美しすぎるアドリブの連打。そこへベースドラムが反応し,そのリズム隊の返しに再びピアノが反応し,最高の循環のままクライマックスに達した瞬間に必ずや放たれるアウト・フレーズの楽しさときたら…。あぁ…。

 そう。『プログレッション:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.5』はブラッド・メルドーTHE ART OF THEトリオの集大成!
 3日間の「ヴィレッジ・ヴァンガード」におけるライブ盤は,2枚組でリリースされるのも至極当然の大名盤。いいや,この質の高い演奏は2枚組では物足りない。単純に収録時間の関係で発表が見送られたお宝トラックが埋没しているはず?

 お願いワーナーさん,是非とも「THE ART OF THE TRIO」名義の『THE COMPLETE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』BOXセット〜を! 10枚組のボリューミィでも絶対購入しますから〜!

  Disc 1
  01. The More I See You
  02. Dream's Monk
  03. The Folks Who Live On The Hill
  04. Alone Together
  05. It Might As Well Be Spring
  06. Cry Me A River
  07. River Man

  Disc 2
  01. Quit
  02. Secret Love
  03. Sublation
  04. Resignation
  05. Long Ago And Far Away
  06. How Long Has This Been Going On?

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 2001年発売/WPCR-11042〜3)
(☆スリーブ・ジャケット仕様)
(CD2枚組)
(☆輸入盤国内仕様 ライナーノーツ/青木和富,ブラッド・メルドー)

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ブラッド・メルドー / プレイシズ5

PLACES-1 “超・天才”ブラッド・メルドーがその才能をいかんなく爆発させた名盤が『PLACES』と『DAY IS DONE』の2枚である。

 同じ傑作であっても『PLACES』と『DAY IS DONE』のアプローチは異なる。心を突き抜ける『PLACES』と腸を突き抜ける『DAY IS DONE』。
 同じ突き抜けるにしても,素直に突き抜けるか,ひねりまくって突き抜けるか,位の差が存在する。そしてこのどちらもが管理人のその年の指折りのヘビロになったのだから,いくら相性の良くないジャズ・ピアニストだとしても,相性を超越した部分での「ブラッド・メルドー漁り」はやめられない〜。

 そう。管理人にとってのブラッド・メルドーは“伸るか反るか”なジャズメン改めアーティストなのだ(といっても“伸ったのは『PLACES』『PROGRESSION:ART OF THE TRIO,VOLUME 5』『WHEN I FALL IN LOVE』『DAY IS DONE』の4枚だけだけど…)。

 さて,そのブラッド・メルドーの“素直な天才”ぶりが堪能できる『PLACES』(以下『プレイシズ』)の聴き所は,ブラッド・メルドー本人が完全否定するビル・エヴァンスからの影響である。

 いや〜,管理人は聴けば聴くほど「これはビル・エヴァンスの再来か?」などと思ってしまった。ブラッド・メルドーが無心でピアノの前に座っている。普段,愛聴しなくても分かるビル・エヴァンスの特徴が,普段,愛聴していないはずのブラッド・メルドーに感じるのだから,よっぽどのことであろう。
 本人がいくら否定しようとも隠せやしない。間違いなくブラッド・メルドーは“エヴァンス派”のピアニストである。

 『プレイシズ』は,ブラッド・メルドーワールド・ツアー中に書き溜めた,旅先の印象をモチーフとしたオリジナル全13トラック。
 『プレイシズ』でのワールド・ツアーは,ブラッド・メルドーの本拠地である【ロサンゼルス】を出発し【ロサンゼルス】で一時帰国し【ロサンゼルス(リプライズ)】で【ロサンゼルス】へと舞い戻ってくるロサンゼルス中心のトラヴェルズ。まあ,そういったことを考えないで聴いたとしても悪くないアルバムだと思う。

 ピアノ・トリオの6曲は小品中心で肩の力を抜いた「ブラッド・メルドートリオ」が軽くスイングして心地良いのだが,ブラッド・メルドーソロ・ピアノの7曲はブラッド・メルドービル・エヴァンス。メロディアスなのに強烈な自己主張を繊細な構成で包み込んでいく。

 そう。硬いタッチのソロ・ピアノと柔らかなピアノ・トリオが交互に聴こえてくる。繊細でリリカルなジャズ・ピアノがその土地の喧騒をイメージさせる。数日間の滞在の表情を浮かべる美メロが旅行中のBGMにもかなう名盤
 じっくり聴いても骨がある。さらっと聴いても骨がある。『プレイシズ』こそ“超・天才”ならではの心を突き抜ける快作。聴き込めば聴き込む程,楽曲の奥深さに感嘆させられてしまったものだ。

PLACES-2 管理人の結論。『プレイシズ批評

 『プレイシズ』は“アーティスティック”なブラッド・メルドーの息抜き旅行。素のブラッド・メルドーが自分の言葉で綴った「音日記」。心を真っ白にして旅先で出会ったピアノと戯れたポエム。ヨーロッパ・ジャズ調なブラッド・メルドーのルーツがためらいもなく表現されている。

 『プレイシズ』が最高に素晴らしいのは,ピアノが“歌いまくっている”ところ。こんな感覚は過去のブラッド・メルドーのアルバムにはなかった。
 軽いタッチのピアノの旋律が,インストゥルメンタルでありながらも歌詞をイメージさせるかのような印象を伴い迫ってくる。音を聴いただけで「そこには何か得体の知れないストーリーが潜んでいるのではないか?」と感じさせる雰囲気がある。

 ブラッド・メルドーのライフ・ワーク=『アート・オブ・ザ・トリオ』の特徴であった思索的な音楽姿勢が緩やかになっている。『プレイシズ』の成功は一連の『アート・オブ・ザ・トリオ』での修練があればこそなのだ。

  01. Los Angeles
  02. 29 Palms
  03. Madrid
  04. Amsterdam
  05. Los Angeles II
  06. West Hartford
  07. Airport Sadness
  08. Perugia
  09. A Walk in the Park
  10. Paris
  11. Schloss Elmau
  12. Am Zauberberg
  13. Los Angeles (Reprise)

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 2000年発売/WPCR-10785)
(ライナーノーツ/ゲーテ,リチャード・ローティ,ワルター・ベンヤミン,エマソン,ブラッド・メルドー)

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ブラッド・メルドー / アート・オブ・ザ・トリオ 4:バック・アット・ザ・ヴァンガード4

ART OF THE TRIO 4:BACK AT THE VANGUARD-1 ブラッド・メルドージャズメンではない。アーティストである。
 『ART OF THE TRIO 4:BACK AT THE VANGUARD』(以下『アート・オブ・ザ・トリオ 4:バック・アット・ザ・ヴァンガード』)を聴いて,ブラッド・メルドーをアーティストと呼ぼうと思った「パート2」。

 真に「THE ART OF THE TRIO」におけるブラッド・メルドージャズ・ピアノは,大衆音楽を超えた“芸術”の域にある。
 そう。この真意こそ「エロス」の欠如である。ライブ盤なのに「エロス」がない。ブラッド・メルドーピアノトリオは美しい。でも男はそれでは感じやしない。ブラッド・メルドーの演奏に「色気」が感じられないのだ。

 凄いか,凄くないかで論じれば『アート・オブ・ザ・トリオ 4:バック・アット・ザ・ヴァンガード』のピアノ・トリオは神レベル! 特に頭の3トラック【オール・ザ・シングス・ユー・アー】【憧れ】【ナイス・パス】の長尺なのにちっとも飽きない“変幻自在”な転調とピアノソロの連打には“唸ってしまう”。
 並みのピアニストとは格が違う。超一流のスケールの大きな大局的な即興演奏。間違いなくブラッド・メルドーは現役ジャズ・ジャイアントの大スターである。

 でも…それがどうした…。ワクワクしない。興奮もしない。アクロバティックな“左右独立メロディーの絡み合い”も,ブラッド・メルドーCDを聴くのも3枚目ともなると,ライブ盤なのに正統派の優等生的なアドリブにしか響かない。う〜む。

 ベラボウに一言で要約してしまえば「肉感的な」演奏の欠如なのだと思う。凄いことを一分の狂いもなくやってのけている。実の独創的な展開であって全ての音が連綿とつながっているように感じる瞬間がある。
 当然,一瞬の判断で作り上げた即興なのに“左右独立メロディーの絡み合い”が前振りであるがごとく,全く別種の完成形のメロディが産み落とされていく過程が実にユニークすぎて,そこに計算が見え隠れする。打算的ではないのだろうが打算的に思えてしまう。

 ブラッド・メルドーはクールなやつなのだ。大変クレイバーなやつなのだ。だから聴いていて疲れてしまう。ジャズ・ピアノを聴いて楽しみたいのに“しんどくなる”。無意識のうちに解析とか解読とかをするように脅迫された気分になる。
 そう。ブラッド・メルドージャズは重いのだ。重すぎるのだ。正座してヘッドフォンで“拝聴”しているくせして,管理人は「軽い」ジャズを楽しみたい派なのだ。

ART OF THE TRIO 4:BACK AT THE VANGUARD-2 ジャズの入門者が『アート・オブ・ザ・トリオ 4:バック・アット・ザ・ヴァンガード』を聴いたら,どう思うのか,が心配になる。何か引っ掛かるものがあるのか,が心配になる。

 すでにブラッド・メルドージャズ・ピアノの頂点を極めている。熱心なファンはブラッド・メルドーを“拝聴”し続けるであろうが,一般のジャズ・ファンには“近寄り難い”演奏だと思う。ストイックで堅実なスタイルは興味のない人にとってはどうでもよい。

 そう。アーティスト=ブラッド・メルドーが演奏しているのは芸術であって道楽ではない。決して破たんしないアドリブがインテリジェンス。こうなったら目指せ!モナリザ! とことん芸を磨き上げて,誰もが“うっとり聴き入る”演奏を究めていただきたい!

  01. All The Things You Are
  02. Sehnsucht
  03. Nice Pass
  04. Solar
  05. London Blues
  06. I'll Be Seeing You
  07. Exit Music (For A Film)

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1999年発売/WPCR-10533)
(ライナーノーツ/ブラッド・メルドー,中川燿)

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ブラッド・メルドー / ソングス:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.34

SONGS:THE ART OF THE TRIO VOLUME THREE-1 ブラッド・メルドージャズメンではない。アーティストである。
 『SONGS:THE ART OF THE TRIO VOLUME THREE』(以下『ソングス:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.3』)を聴いて,ブラッド・メルドーをアーティストと呼ぼうと思った。

 真に「THE ART OF THE TRIO」におけるブラッド・メルドージャズ・ピアノは,大衆音楽を超えた“芸術”の域にある。「静寂のリリシズム」と書くべきか「体温の低い音楽」と書くべきか…。
 そう。この真意こそ「インテリジェンス」丸出しであり,聴いていて,凄い,とは思えど,繰り返し聴こうとは思わない。今夜の『ソングス:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.3批評のために,久しぶりにCDを引っ張り出して聴いてみたが感想に変化はなかった。う〜む。

 どんなに激しく暴れても決して破たんすることのない左右独立稼働の“ストイックなメロディ・ライン”で「20世紀のジャズ・ピアノ」を駆逐してしまった“超・天才”ブラッド・メルドー
 ブラッド・メルドージャズ・ピアノの“二十面相”スタイルはハッキリ言って新しい。我武者羅にチャレンジする意気込みが伝わってくる。でもどこか「独りよがり」な感じがする。「ついて来れる人だけがついて来たらいいのさ」と突き放された感じがする。
 これってお近づきになりたいと願う管理人のブラッド・メルドーへの片思い?という表現がピッタリだと思っている。

 そう。ブラッド・メルドーは『ソングス:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.3』を置き土産として“孤高の高み”を目指すジャズメンならぬアーティスト。
 そんなブラッド・メルドーの進んだ先にはパット・メセニーが待っていた。パット・メセニーブラッド・メルドーと「両想い」である。いいなぁ。うらやましいなぁ。まぁ,お相手がパット・メセニーならしょうがない。あきらめるかぁ。お似合いだよなぁ。

SONGS:THE ART OF THE TRIO VOLUME THREE-2 管理人の結論。『ソングス:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.3批評

 『ソングス:アート・オブ・ザ・トリオ VOL.3』は“アーティスティック”なブラッド・メルドー全開な,現代ジャズの決定盤。
 小技大技のアクロバティックな演奏が計算づくで飛び出したかのような完璧なアドリブの連射に,未だブラッド・メルドーの真意が聞き取れない“迷宮”CDの決定盤である。

  01. Song-Song
  02. Unrequited
  03. Bewitched, Bothered And Bewildered
  04. Exit Music (For A Film)
  05. At A Loss
  06. Convalescent
  07. For All We Know
  08. River Man
  09. Young At Heart
  10. Sehnsucht

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1998年発売/WPCR-2098)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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ブラッド・メルドー / アート・オブ・ザ・トリオ VOL.2:ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード4

THE ART OF THE TRIO VOLUME TWO:LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD-1 さて,ブラッド・メルドーである。“天才”ジャズ・ピアニストである。現代ジャズの文脈で聴き取る限り“超・天才”である。

 なんたってブラッド・メルドーの愛称は「20世紀最後の新人ピアニスト」。雨後の筍の如く登場する新人ジャズ・ピアニストの中にあって,ブラッド・メルドーこそが,長らく空位となっていたミシェル・ペトルチアーニの後継者なのである。

 ただし,ブラッド・メルドーの“超・天才”は認めつつも,ブラッド・メルドーが演奏するジャズ・ピアノは,管理人の好きなジャズ・ピアノではない。
 絵画でも印象派は好きだけど抽象画は良く分からない。それと同じ様相でブラッド・メルドーの音楽を聴いてしまうのである。ジャズ・ピアノなんだけどクラシックの「ピアノ協奏曲」の雰囲気を感じてしまう。“高尚すぎて”たじろいでしまうのである。

 そんな“現代ジャズの抽象画”ブラッド・メルドーの原点が,ブラッド・メルドー属するエヴァンス派の“聖地”ヴィレッジ・ヴァンガードにおけるライブ盤=『THE ART OF THE TRIO VOLUME TWO:LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』(以下『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.2:ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』)。

 『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.2:ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード批評を先に進める前に,いつかは必ずや触れねばならない「ブラッド・メルドーエヴァンス派」の大論争。
 管理人は「ブラッド・メルドーエヴァンス派」支持者である。当の本人が“エヴァンス派”と呼ばれることに嫌悪感を示しているので,今回の記述を「最初で最後」にしようと思うが,音楽の構造やアプローチの手法はビル・エヴァンスとは異なれど,結局アウトプットされたジャズは「リリシズム」で「ロマンチシズム」な内省的なジャズである。
 そう。ブラッド・メルドーの発する美意識はビル・エヴァンスの発する美意識と近い。

 『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.2:ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』は,そんな“エヴァンス派”としてのブラッド・メルドーをたっぷりと味わうことができる。
 要はジャズライブではなくジャズ・ピアノの即興・展覧会。“現代ジャズの抽象画”が燦然と輝くライブ

 恐らく当日の観客たちは「THE ART OF THE TRIO」の物凄さを瞬時に理解したようで理解できていないのではなかろうか? 『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.2:ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』の演奏は,後から後から感動が湧き上がる種類のライブなのだと思う。
 この辺のニュアンスが,ブラッド・メルドーに対し“高尚すぎて”たじろいでしまう原因だと思っている。

 尤も,当のブラッド・メルドーは才能の輝きを全身全霊でピアノにぶつけている。インテリを振り捨て一瞬のアドリブに命を削っている。

THE ART OF THE TRIO VOLUME TWO:LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD-2 全6トラックの全ての演奏が10分超えの長尺集。「ブラッド・メルドーはどこへ行くのか? どこまで行くのか?」。有名スタンダードのテーマをモチーフに出口を探して暴れまくる。先の読めない“左右独立メロディーの絡み合い”が炸裂し聴衆を沸かせている。

 自由なフレージングを産み落とす右手左手の爆発度と“非スインギーな”独特のタイム感覚が素晴らしい。普通なら流れを壊してしまうようなアドリブが,絶妙なタイミングで放たれる瞬間のハーモニー。
 “エヴァンス派”共通の音選びにして,あの瞬間に顔をのぞかせる“意外にしてまっとうな”音選びの素晴らしさにブラッド・メルドーの“超・天才”が表現されている。

 ブラッド・メルドーの内面に波立つ抽象的なコンセントレーションの深さ。これが『アート・オブ・ザ・トリオ VOL.2:ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』のハイライトである。

  01. It's Alright With Me
  02. Young And Foolish
  03. Monk's Dream
  04. The Way You Look Tonight
  05. Moon River
  06. Countdown

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1998年発売/WPCR-1836)
(ライナーノーツ/ブラッド・メルドー,皸羶成)

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山中 千尋 / モルト・カンタービレ4

MOLTO CANTABILE-1 「なんでこうなるのっ」! 毎回ちーたんの新作を聴く度にそう思ってきたのだが,クラシックをも“山中千尋ジャズ”の素材として取り込んでしまう『MOLTO CANTABILE』(以下『モルト・カンタービレ』)での超絶アレンジに舌を巻く。

 ピアノトリオを聴いてのこんな経験は久々。聴きながら「うわ〜っ」て言葉を発したのは「e.s.t.」以来かも…。恐らく管理人レベルのジャズ歴30年以上のマニアであっても「椅子に黙って座っていられない」のでは? それくらいの「打ち上げ花火級」のジャズ・ピアノだと思う。ただし,第一印象は…。

 そう。正直『モルト・カンタービレ』を一聴した時の“想像を超えてしまった”感に“思考停止”してしまったのだが『モルト・カンタービレ』を繰り返し聴いていると,徐々に山中千尋の手の内が見えてきて衝撃度が沈下した。
 当然,ちーたんの全てを理解できたというわけではありません。『モルト・カンタービレ』の全てを理解できたというわけではありません。ただ自分なりに“掟破りの超絶アレンジ”の裏側にある法則が働いているのが見えてきたに過ぎません。「なんでこうなるのっ」!にも理由が隠されていたのでした。

 ゆえに山中千尋史上最高の“振り幅”『モルト・カンタービレ』の評価は普通。一聴オーバー・アレンジに聴こえるが真にオーバー・アレンジなのは『MADRIGAL』収録の【TAKE FIVE】や『FOREVER BEGINS』収録の【CHEROKEE】などであろう。

 そう。管理人が山中千尋に求めるは,クラシックをジャズに料理するのではなく,ジャズジャズに,ジャズ山中千尋流に料理した音楽なのである。
 振り幅の小さい範囲で大きく振れる山中千尋こそが最高なのである。

MOLTO CANTABILE-2 管理人の結論。『モルト・カンタービレ批評

 『モルト・カンタービレ』はクラシックも聞くジャズ・ファン向き,あるいはジャズも聞くクラシック・ファン向きであって,山中千尋ファンとしては,想定の範囲内での「なんでこうなるのっ」!的なアルバムである。

   CD
  01. No.1 in C major "Prelude" from Eight Concert Etudes
     for piano Op.40

  02. Rondo Alla Turca
  03. Hanon Twist
  04. The Fight Song for the Man Called "Napoleon"
  05. Cantabile
  06. Liebestraume No.3
  07. Apres un reve
  08. Flight of the Bumblebee
  09. Fur Elise
  10. Improvisation No.15 En Ut Mineur "Hommage a Edith
     Piaf"


   DVD
  01. No.1 in C major "Prelude" from Eight Concert Etudes
     for piano Op.40

  02. Fur Elise
  03. The Fight Song for the Man Called "Napoleon"

(ヴァーヴ/VERVE 2013年発売/UCCJ-9128)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD

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ブッカー・リトル / ブッカー・リトル・アンド・フレンド5

BOOKER LITTLE AND FRIEND-1 “伝説のトランペッターブッカー・リトルは確かに“伝説”である。しかし“伝説”は“伝説”でもトランペッターとしてではない。ブッカー・リトルの“天才”はコンポーザーとしてである。

 そういう訳で以下に書き記す『BOOKER LITTLE AND FRIEND』(以下『ブッカー・リトル・アンド・フレンド』)批評で“伝説のトランペッターブッカー・リトルについては一切語るつもりはない。

 管理人の愛聴盤=『ブッカー・リトル・アンド・フレンド』は,全7トラック中6トラックがブッカー・リトルの自作曲。この事実に気付いたのは『ブッカー・リトル・アンド・フレンド』を何十回と聴いた後のことであった。
 『ブッカー・リトル・アンド・フレンド』の全7トラックが耳に馴染む。古くから知っている感じで耳に馴染む。てっきりスタンダード集の気分で聴き続けていたのだった。

 『ブッカー・リトル・アンド・フレンド』でブッカー・リトルが取り組んだのは,独自の調和を奏でる3ホーンのアンサンブルであろう。
 ブッカー・リトルが豊かなホーン・アレンジを念頭に置いて曲を書いている。これはコンボの形をした“オーケストラ”用の作曲法だと思う。全体が“まろやかに”響くのである。

 ゆえに『ブッカー・リトル・アンド・フレンド』におけるブッカー・リトルトランペットは,エリック・ドルフィーとの『ファイブ・スポット』で聴かせる,情念の爆発みたいな“前衛”とは一線を画している。敢えてラッパのインパクトを抑えたサイドメン的な演奏が続いている。モードでもフリーでもない新しいアプローチを試みている。

 そういう意味でエリック・ドルフィーの先見性は確かであった。ブッカー・リトルを自身との双頭と認めたエリック・ドルフィーブッカー・リトルの「ジャズメンとしての総合力」を見抜いていた。ブッカー・リトルとならジャズの新時代を切り開いて行ける。エリック・ドルフィーはそう思っていたのだと思う。

 管理人も思う。ブッカー・リトルが長生きしていたならジャズの歴史は確実に変わっていた。ブッカー・リトルの「ジャズメンとしての総合力」はマイルス・デイビス並みなのだと…。

BOOKER LITTLE AND FRIEND-2 管理人の結論。『ブッカー・リトル・アンド・フレンド批評

 独自の調和を奏でる3ホーンが織り成すテキスチャーは,ジャズの伝統から逸脱することなく,それでいて極めて斬新な響きを有している。そこに“時代の息吹”が強く感じられる。

 『ブッカー・リトル・アンド・フレンド』におけるブッカー・リトルを1人の天才トランペッターとして聴くだけでは勿体ない。マイルス・クラスのジャズ・ジャイアントの演奏と心して聴いてほしい。
 管理人がそうだった。後々そう思うようになるのだから…。後悔してほしくないのだから…。絶対にいいのだから…。

  01. VICTORY AND SORROW
  02. FORWARD FLIGHT
  03. LOOKING AHEAD
  04. IF I SHOULD LOSE YOU
  05. CALLING SOFTLY
  06. BOOKER'S BLUES
  07. MATILDE
  08. MATILDE (take 4)
  09. MATILDE (take 7)

(ベツレヘム/BETHLEHEM 1961年発売/TOCJ-9350)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/大村幸則)

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大西 順子 / クルージン4

CRUSIN'-1 管理人は『CRUSIN’』(以下『クルージン』)を聴いて大西順子の本質を理解できたと思っている。
 大西順子は“オーソドックスなジャズ・ピアニスト”であって革命児ではない。大西順子J-ジャズウイントン・マルサリスであり“新伝承派”と考えてまず間違いない。

 大西順子自身はオリジナルを録音したつもりかもしれないが『クルージン』で強烈に浮かび上がる雰囲気は“新伝承派”の正にそれであった。管理人が『ワウ』で感じた“流行最先端の”スイングだったのも,これで合点がいく。
 そう。『クルージン』は『ワウ』あっての『クルージン』である。『クルージン』は『ワウ』がなければ生まれてこなかったと思う。

 この論理には音楽的な意味合いだけでなく商業的な意味合いも含まれている。なぜなら『クルージン』には『ワウ』が大ヒットしたからこそのビリー・ヒギンズとの共演盤なのだから…。

 ビリー・ヒギンズと言えば(管理人的にはパット・メセニーなのであるが)オーネット・コールマンであろう。
 あのオーネット・コールマン・カルテットの名ドラマー。そして大西順子のアイドルの1人がオーネット・コールマンである。
 そう。大西順子ビリー・ヒギンズの共演は,東芝EMIからの『ワウ』大ヒットのプレゼントであった。

 この豪華共演が当たった! ビリー・ヒギンズドラミングに乗せられて大西順子ジャズに対する「ウルトラ・オーソドックス」な演奏が露わになっている!

CRUSIN'-2 指が重い感じでゴツゴツ来るのはセロニアス・モンクばり。それでいてドライブする辺りはバド・パウエルばり。暗く深く内へと向かう演奏表現はビル・エヴァンスである。
 しかしその中心にはどっしりと大西順子が座している。

 『クルージン』で露わになった,独特の低音の使い方こそ,新伝承派=J-ジャズウイントン・マルサリス大西順子の証しである。

  01. EULOGIA
  02. THE SHEPHERD
  03. SUMMERTIME
  04. CONGENIALITY
  05. MELANCHOLIA
  06. CARAVAN
  07. ROZ
  08. SWITCHIN' IN
  09. BLUE SEVEN

(サムシンエルス/SOMETHIN'ELSE 1993年発売/TOCJ-5555)
(ライナーノーツ/児山紀芳,大西順子)
★1994年度読者人気投票【ジャズマン・オブ・ザ・イヤー】受賞
★1994年度読者人気投票【アルバム・オブ・ザ・イヤー】受賞
★1994年度読者人気投票【ピアニスト・オブ・ザ・イヤー】受賞

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小曽根 真 / パラダイス・ウィングス4

PARADISE WINGS-1 輝くようなピアノ・タッチと軽快なビートで,ジャズフュージョンボサノヴァファンクがシャッフルする『PARADISE WINGS』(以下『パラダイス・ウィングス』)だが,正直好みではない。

 『パラダイス・ウィングス』は,名盤スターライト』路線のMALTAプロデュース作であるが,MALTA自身の参加がなくなったことで『スターライト』で感じた“衝撃”と“まばゆさ”は薄くなり,イージーリスニング風の“耳馴染みの良さ”が鼻につく。

 小曽根真ビクター盤について語る際,2枚セットで語られることの多い『スターライト』と『パラダイス・ウィングス』であるが,管理人の中では“王道のスムーズ・ジャズ”を追求した『スターライト』と“オール・ジャンル・コンフュージョン”の『パラダイス・ウィングス』では全くの別物である。

PARADISE WINGS-2 『パラダイス・ウィングス』では【ホエン・アイ・フォール・イン・ラブ】だけをよく聴いています。
 
  01. BRILLIANT DAYS
  02. SPRING JOURNEY
  03. BRAZILLIAN CAFE
  04. PARADISE WINGS
  05. QUIET MOON (DEDICATED TO ANTONIO CARLOS
     JOBIM)

  06. MR. R.T.
  07. HOT CRUISING
  08. GENTLE DREAM
  09. WHEN I FALL IN LOVE
  10. LAST SUMMER

(ビクター/JVC 1991年発売/VICJ-57)

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アキコ・グレース / マンハッタン・ストーリー5

MANHATTAN STORY-1 アキコ・グレースの「ニューヨーク三部作」は,どれも甲乙付けがたい名盤であるが「ニューヨーク三部作」の中でも,管理人の手が真っ先に伸びるのが『MANHATTAN STORY』(以下『マンハッタン・ストーリー』)である。

 『マンハッタン・ストーリー』のハイライト=【パルス・フィクション】でマイルス・デイビスの【ネフェルティティ】をイメージしてしまったものだから,もう大変!
 『マンハッタン・ストーリー』の全曲で,もう何をどう聴いてもマイルス・デイビスのあの臭いがしてしまってダメだ。

MANHATTAN STORY-2 スタンダードオリジナルも,傑作と讃えられた前作『フロム・ニューヨーク』より一層の飛躍を遂げている。アキコ・グレースはどこまで行ってしまうのか?

  01. Libido〜Mediterranean Sundance
  02. That Morning
  03. Fly Me To The Moon
  04. Pulse Fiction
  05. First Song
  06. Change The World
  07. Yours Is My Heart Alone
  08. Over The Rainbow
  09. Bemsha Swing
  10. Two Thirty IN The Morning
  11. Song For Bilbao
  12. Blue Water

(サヴォイ/SAVOY 2002年発売/COCB-53025)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/岩浪洋三,アキコ・グレース,寺島靖国,菰口賢一)

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ボブ・ジェームス / グランド・ピアノ・キャニオン5

GRAND PIANO CANYON-1 『GRAND PIANO CANYON』(以下『グランド・ピアノ・キャニオン』)こそ,ボブ・ジェームスの“最高傑作”である。

 『グランド・ピアノ・キャニオン』について語る「枕言葉」に「フォープレイの原点」があるが,その調子で聴いてもいいが,できれば「フォープレイ」を脇に置いて聴いてみてほしい。実にポップでカラフルでバラエティに富んだ名曲群は,ハズレなし,である。

 ズバリ『グランド・ピアノ・キャニオン』成功の理由は『グランド・ピアノ・キャニオン』=「グランド・ピアノ」+「グランド・キャニオン」によるユーモアの“ピアノ”押し!
 そう。『グランド・ピアノ・キャニオン』におけるボブ・ジェームスは“ジャズ・ピアニスト”! 「フォープレイ」の編成で4人対等ではない,ボブ・ジェームスの“ジャズ・ピアニスト”が肝! いや,中々硬派なグランド・ピアノが流れている。

 とは言え4ビートではない。ジャズ・スタンダードでもない。16ビートのアコースティック・ジャズなのにメインでシンセサイザーも登場するフュージョン・アルバムである。
 しかし『グランド・ピアノ・キャニオン』の雰囲気は,フュージョン寄りではなくジャズの文脈で仕上げられている。ボブ・ジェームスの内で湧き上がる“創作意欲”が炸裂している。

 「フォープレイ」からギターリー・リトナーベースネーサン・イーストドラムハービー・メイソン,そしてギターエリック・ゲイルディーン・ブラウンベースエイブラハム・ラボリエルパーカッションポリーニョ・ダ・コスタトランペットランディ・ブレッカーアルト・サックスクリス・ハンターテナー・サックスマイケル・ブレッカーカーク・ウェイラムアンディ・スニッツアーシンセサイザーマックス・ライゼンフーヴァー ETC。
 勝手知ったる仲間たちと思いっきりインプロヴィゼーション楽しんでいる。そんなボブ・ジェームスが最高にカッコイイ!

 建前としてはリーダー不在の「フォープレイ」をボブ・ジェームスが実質リードする【リストレイション】【ジャスト・リッスン】と「フォープレイ」とは似ても似つかぬゴリゴリ・ジャズ系【サラの翼】。
 ユニークなホーン・アレンジに乗せられて最高に楽しげな“ジャズ・ピアニストボブ・ジェームスな【ベア・ボーンズ】。ニュー・ジャック・スイング・リング上でのボブ・ジェームスマイケル・ブレッカーの格闘技【“…ストップ・ザット!”】。リズム遊びの車窓【XRAXSE】。

 『グランド・ピアノ・キャニオン』の2大ハイライトは,エスニックな【スヴェンガリ】から同じ入りだからこそピアノシンセギターのシンクロが効きまくる【ワールド・アパート】とカエル隊の小さな合唱で忘却の彼方へ(立川に乗り換えてお店に行って)と連れてゆかれる【ファー・フロム。タートル】であろう。

GRAND PIANO CANYON-2 管理人の結論。『グランド・ピアノ・キャニオン批評

 『グランド・ピアノ・キャニオン』は「ミスター・スムーズ・ジャズ」のボブ・ジェームスだからこそ作ることの出来た至極のフュージョン・アルバム。マジで“一家に一枚クラス”の愛聴盤である。

  01. Bare Bones
  02. Restoration
  03. Wings For Sarah
  04. Svengali
  05. Worlds Apart
  06. "…stop that!"
  07. Xraxse
  08. Just Listen
  09. Far From Tutle

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1990年発売/WPCP-3598)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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ボブ・ジェームス & デヴィッド・サンボーン / ダブル・ヴィジョン4

DOUBLE VISION-1 名プロデューサー=ボブ・ジェームスは『DOUBLE VISION』(以下『ダブル・ヴィジョン』)で,なぜセルフ・プロデュースしなかったのだろう? その答えはトミー・リピューマであり,マーカス・ミラーである。

 ズバリ,宣言しよう。『ダブル・ヴィジョン』は,ボブ・ジェームスデヴィッド・サンボーン2人のコラボレーションではない。
 『ダブル・ヴィジョン』の真実は『トリプル・ヴィジョン』! ボブ・ジェームスデヴィッド・サンボーンの後ろから前に出てくるマーカス・ミラー! 『ダブル・ヴィジョン』の“上質感”はマーカス・ミラーのメロディアスなベース・ライン抜きには成立しない。

 マーカス・ミラーベース・ラインが“歌っている”から,ボブ・ジェームスデヴィッド・サンボーンも,必要以上に弾きすぎない。
 ボブ・ジェームスエレピソロは入念に譜面に書き込まれたかのように“エレガント”に響き,デヴィッド・サンボーンアルトソロは“抑えに抑えた”エモーショナルな“むせび泣き”である。
 そう。全てはマーカス・ミラーの五臓六腑の活躍にあり,全てはトミー・リピューマのお膳立てのおかげなのである。

 『ダブル・ヴィジョン』の聴き所は,ボブ・ジェームスデヴィッド・サンボーンマーカス・ミラーが意識的に残した“無音空間”にある。余韻を味わう「大人のフュージョン」の誕生である。
 ちょうどハービー・ハンコックが『処女航海』でジャズ界に「新主流派」を持ち込んだように,ボブ・ジェームスが『ダブル・ヴィジョン』でフュージョン界に“新主流派”を持ち込んだ。そんな感じ。

 だ・か・ら・正直『ダブル・ヴィジョン』は,青春真っ盛りの管理人の耳には物足りなかった。「サンボーン・フリーク」の管理人としてはデヴィッド・サンボーンに『ダブル・ヴィジョン』の“予定調和”は似合わないと思っていた。思い込んでいた。

 『ダブル・ヴィジョン』におけるデヴィッド・サンボーンは“サンボーン節”が単音の極み! デヴィッド・サンボーンアルトサックスを,静かに低域中心で芯のあるトーンを鳴らし続けている。これぞ「枯れ」であろう。
 そう。管理人SAY。「サンボーンに渋目のムード・サックスは期待していませんから〜」であった。

 管理人が『ダブル・ヴィジョン』を評価するようになったのは,近年のヴァーヴ移籍後のデヴィッド・サンボーンの変化を感じ取ってからのこと。アップ・ナンバーをやらないデヴィッド・サンボーンは評価できない,と思いつつ,耳を傾け続けたある日,近年のヴァーヴの緒作と『ダブル・ヴィジョン』がつながた。うわ〜。

DOUBLE VISION-2 管理人の結論。『ダブル・ヴィジョン批評

 聴き始めの『ダブル・ヴィジョン』は肩透かし。しかし,しっとりとした音造りが聴き込むたびに良くなってくる。作り手の“気品”が伝わってくる。まどろみのツボをじんわりと押してくれるような心地良さで満ちている。

 『ダブル・ヴィジョン』は,オーソドックスな楽曲をアレンジと演奏者のニュアンスによって色付けした「静と動」の名盤である。『ダブル・ヴィジョン』は,結構,聴き手を選ぶと思う。

  01. MAPUTO
  02. MORE THAN FRIENDS
  03. MOON TUNE
  04. SINCE I FELL FOR YOU
  05. IT'S YOU
  06. NEVER ENOUGH
  07. YOU DON'T KNOW ME

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1986年発売/WPCP-3551)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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