アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2014年03月

チェット・ベイカー / イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス4

IT COULD HAPPEN TO YOU:CHET BAKER SINGS-1 『CHET BAKER & CREW』で“脱ウエスト・コースト宣言”を予告したチェット・ベイカーが,予告通りに活動の拠点を東へと移した一発目の『IT COULD HAPPEN TO YOU:CHET BAKER SINGS』(以下『イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス』)。

 パシフィック・ジャズからリバーサイドへの移籍一発目は,レコード会社主導の『チェット・ベイカー・シングス』シリーズ・パート3でもあるかのような歌ものであった。
 しかもこの売り方がエグイ。この耳馴染みの選曲にしてこの月光メリーゴーランド風のジャケット写真。完全なる“アイドル歌手”としてのニューヨーク上陸であった。

 ズバリ『イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス』は“ポップな”スタンダード集。“ポップな”スタンダード集にふさわしく,いつもの「青白い」歌声が「甘い」歌声に押し切られている。

 そうなった最大の理由はバック・サウンドの変化にある。ピアノケニー・ドリューベースジョージ・モロウサム・ジョーンズドラムフィリー・ジョー・ジョーンズダニー・リッチモンドによる「本物のハード・バップ」にバックでこれだけ歌われてしまえば「青白い」歌声だけでは対応できない。アドリブばりのスキャットで乗り切ろう〜?

IT COULD HAPPEN TO YOU:CHET BAKER SINGS-2 『イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス』におけるチェット・ベイカーの変化はボーカルだけにとどまらずトランペットの演奏にも如実。ハードでエモーショナルなフレーズが間奏で織り交ぜられている。

 ジャズメンとしては小粒なのに“強烈な個性”で輝き続けるチェット・ベイカー。管理人はどちらかと言えば西海岸のチェット・ベイカーが好きなのだが,東海岸のチェット・ベイカーを体験したからこその「西海岸の良さ」なのである。

 ゆえにチェット・ベイカーの『シングス』シリーズを聴くお奨めのアルバム順は『チェット・ベイカー・シングス』からの『イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〜チェット・ベイカー・シングス』からの『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』! 「青白い」歌声からの「甘い」歌声からの最後はストリングス締め!

  01. DO IT THE HARD WAY
  02. I'M OLD FASHIONED
  03. YOU'RE DRIVING ME CRAZY
  04. IT COULD HAPPEN TO YOU
  05. MY HEART STOOD STILL
  06. THE MORE I SEE YOU
  07. EVERYTHING HAPPENS TO ME
  08. DANCING ON THE CEILING
  09. HOW LONG HAS THIS BEEN GOING ON?
  10. OLD DEVIL MOON
  11. WHILE MY LADY SLEEPS (take 10)
  12. YOU MAKE ME FEEL SO YOUNG (take 5)

(リバーサイド/RIVERSIDE 1958年発売/VICJ-23589)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,佐藤秀樹)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット4

QUARTET RUSS FREEMAN AND CHET BAKER-1 『QUARTET RUSS FREEMAN AND CHET BAKER』(以下『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』)におけるチェット・ベイカートランペットが“異質”である。“らしくない”のである。

 普段はふくよかな木管的な響きなのに,このアルバムだけはなぜだかカラッとした金管の音を出している。おまけにミュートまで吹いている。一体何があったのだろう?
 答えはチェット・ベイカーと“同格”へと成長したラス・フリーマンピアノ,と書けば単純なのだけど…。

 さて,なぜにトランペットの音色のことを書いているかと言うと,管理人がチェット・ベイカーのことを語る場合,大抵,彼の音色の話をしているから。
 チェット・ベイカートランペットの特徴と来れば,イチにもニにもあの音色。肩の力の抜けた「フッ」と吹き鳴らすスムーズなトランペット。大袈裟に言えばジャズとは最も遠いトランペット

 しか〜し,吹奏楽的で素直すぎるトランペットなはずなのに“強烈に”ジャズを感じさせてくれる。これって一体何だろう? チェット・ベイカートランペットの音色には,あの音色が聴こえてくるだけで“強烈に”ジャズを感じさせてくれるエモーショナルが含まれている。

 だ・か・ら,チェット・ベイカーの普段のトランペットが鳴っていない『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』に“違和感”を感じ取ってしまう。
 チェット・ベイカーが“ムキムキ・マッチョ”に変貌してトランペットを吹き鳴らしている。「中性的」なイメージのチェット・ベイカーだが,こんなにも“男”だったのかっ!

QUARTET RUSS FREEMAN AND CHET BAKER-2 基本“COOLな”ウエスト・コースト・ジャズであり,ハード・バップも吹いたけど,それでもいつでも「チェット・ベイカーチェット・ベイカー」であった。
 しかし,生涯で唯一“らしさ”を捨てた『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』における“異質”なトランペット

 曲もいい。演奏もいい。だけど,味の変わったラーメン屋へは自然と足を運ばなくなるように『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』の素晴らしさを認めつつも,自然と手が遠のいてしまっていた。
 久しぶりに聴いた『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』は,ラス・フリーマン名義の大名盤であった。

 誤解のありませんように。『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』の演奏レベルはチェット・ベイカー史上最高レベルです。個人的に“ハードボイルド”な音色のチェット・ベイカーには関心がない人間なものでして…。

  01. LOVE NEST
  02. FAN TAN
  03. SUMMER SKETCH
  04. AN AFTERNOON AT HOME
  05. SAY WHEN
  06. LUSH LIFE
  07. AMBLIN'
  08. HUGO HURWHEY

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1957年発売/TOCJ-6872)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー・シングス4

CHET BAKER SINGS-1 “歌うトランペッター”としてのチェット・ベイカーが格別である。なぜならボーカルが独特であり,尚且つトランペットも独特な「唯一無二」なジャズそのものを演奏しているからである。

 いいや,もう一つ書かなければならない。チェット・ベイカーボーカルトランペットを吹くように聞こえ,チェット・ベイカートランペットボーカルを歌うように聞こえる。もはや“楽器と声が一体化している”ように感じてしまう瞬間に何度も襲われてしまう。

 この「唯一無二」なジャズ体験が,チェット・ベイカーボーカルが「中性的」と表現される理由なのだろう(管理人的には「中性的」ではなく「青白い」と呼んでいる!)。
 チェット・ベイカーボーカル=「青白い」の呼称はこれから来ると思っているが?一般論の「中性的」の世評は“楽器と声が一体化している”の言葉足らずの結果生まれたものだと分析する。

 そんな“歌うトランペッター”の多重録音盤にして,ボーカルに軸足を置いたアルバムが『CHET BAKER SINGS』(以下『チェット・ベイカー・シングス』)である。
 “ヘタウマ”なボーカルで見事に感情を表現している! トランペットなしでも十分に“サムシング”が伝わってくる! 

CHET BAKER SINGS-2 『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』と『チェット・ベイカー・シングス』は姉妹盤であるのだが『チェット・ベイカー・シングス』にあって『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』にないもの,それは「閉鎖的な空間」である。

 どうにもレンジの狭い音作りがチェット・ベイカーの意識を「内へ内へ」と向かわせている。その結果,退廃的で気怠い雰囲気のボーカルが耳元でささやいてくる。

 チェット・ベイカー“生涯の代表曲”【MY FUNNY VALENTINE】における,原曲を崩すことなく歌い込む無表情で無機質で世紀末的なジャズボーカル。マイクへ向かったあの瞬間のチェット・ベイカーの胸中は如何ばかり…。

  01. THAT OLD FEELING
  02. IT'S ALWAYS YOU
  03. LIKE SOMEONE IN LOVE
  04. MY IDEAL
  05. I'VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE
  06. MY BUDDY
  07. BUT NOT FOR ME
  08. TIME AFTER TIME
  09. I GET ALONG WITHOUT YOU VERY WELL
  10. MY FUNNY VALENTINE
  11. THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU
  12. THE THRILL IS GONE
  13. I FALL IN LOVE TOO EASILY
  14. LOOK FOR THE SILVER LINING

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1956年発売/TOCJ-6802)
(ライナーノーツ/岡崎正通)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ4

CHET BAKER SINGS AND PLAYS-1 “歌うトランペッター”としてのチェット・ベイカーが格別である。なぜならボーカルが独特であり,尚且つトランペットも独特な「唯一無二」なジャズそのものを演奏しているからである。

 いいや,もう一つ書かなければならない。チェット・ベイカーボーカルトランペットを吹くように聞こえ,チェット・ベイカートランペットボーカルを歌うように聞こえる。もはや“楽器と声が一体化している”ように感じてしまう瞬間に何度も襲われてしまう。

 この「唯一無二」なジャズ体験が,チェット・ベイカーボーカルが「中性的」と表現される理由なのだろう(管理人的には「中性的」ではなく「青白い」と呼んでいる!)。
 チェット・ベイカーボーカル=「青白い」の呼称はこれから来ると思っているが?一般論の「中性的」の世評は“楽器と声が一体化している”の言葉足らずの結果生まれたものだと分析する。

 そんな“歌うトランペッター”の多重録音盤にして,トランペットに軸足を置いたアルバムが『CHET BAKER SINGS AND PLAYS』(以下『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』)である。
 “ヘタウマ”なトランペットで見事に感情を表現している! 歌なしでも十分に“サムシング”が伝わってくる!

CHET BAKER SINGS AND PLAYS-2 『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』と『チェット・ベイカー・シングス』は姉妹盤であるのだが『チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ』にあって『チェット・ベイカー・シングス』にないもの,それは4曲でストリングスが入っているところ。

 ストリングスが入ると違うよなぁ。一気にスタジオを飛び出し,コンサートホールでチェット・ベイカーが歌っているような華やかさが感じられる。

 甘さと儚さが隣り合わせな【LET’S GET LOST】の世紀末的な退廃感は,チェット・ベイカーのドキュメンタリー映画「レッツ・ゲット・ロスト」の主題歌にふさわしい“怪演”である。

  01. LET'S GET LOST
  02. THIS IS ALWAYS
  03. LONG AGO AND FAR AWAY
  04. SOMEONE TO WATCH OVER ME
  05. JUST FRIENDS
  06. I WISH I KNEW
  07. DAYBREAK
  08. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
  09. GREY DECEMBER
  10. I REMEMBER YOU

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1955年発売/TOCJ-6811)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チェット・ベイカー / ジャズ・アット・アン・アーバー5

JAZZ AT ANN ARBOR-1 アメリカはアン・アーバー大学におけるチェット・ベイカーの貴重なレギュラー・コンボ編成でのライブ盤が『JAZZ AT ANN ARBOR』(以下『ジャズ・アット・アン・アーバー』)。

 「レコードライブは別物」とよく評される。“天賦の才能の持ち主”ゆえ,いつでも余力を残している感じの,絶対に全力ではやらない感じのチェット・ベイカーであるが,ライブになるともしや豹変するのではないか,との淡い期待を抱いて聴いた『ジャズ・アット・アン・アーバー』。
 果たして,チェット・ベイカーの真実とは如何に?

 ズバリ,チェット・ベイカーは,あくまでも「己の道を突き進む」ラッパ吹きであった。真に“アンニュイな”ラッパ吹きであった。
 そう。チェット・ベイカートランペッターではなく“ラッパ吹き”。このニュアンスの違いを理解していただけるのであれば,ここから先の『ジャズ・アット・アン・アーバー批評を読む必要はない。おやすみなさい。

 チェット・ベイカーは,喉を潰すかの如くハイノート一発で観客を魅了させようとするトランペッターたちとは一番遠い場所に位置している。要は“手抜き”のトランペットなのだ。
 まったりしたMCの曲紹介&メンバー紹介。緊張感のない&熱演しないライブ演奏。最初から最後までハイライトなしの「巡航速度」での演奏が続いている。でもなぜなんだろう? 小さく吹き流されたフレージングが後々まで耳に残る。あの緩さがクセになる。不思議である。

 アスリートが最高のパフォーマンスを発揮するにはリラックスすることが不可欠。もしや“手抜き”のチェット・ベイカーは最高のジャズ・アスリートなのではないか? それができるがゆえの“天才”なのではないか?
 『ジャズ・アット・アン・アーバー』におけるチェット・ベイカーラッパを聴いていると,こんな考えなくてもいいことを考えてしまいたくなるのだから不思議である。

JAZZ AT ANN ARBOR-2 管理人の結論。『ジャズ・アット・アン・アーバー批評

 『ジャズ・アット・アン・アーバー』は,本人も多少は気をよくしていたであろう人気絶頂時のライブ盤ゆえ,いつものあきらめ気分とか退廃気分の薄い“危険ではない”チェット・ベイカーをお探しのジャズ入門者へのお奨め盤の最右翼である。
 アツアツの熱風ではなく温風ヒーター的なトランペットが気持ち良いと思いますよっ。

 最後に『ジャズ・アット・アン・アーバー』と来れば,やっぱりラス・フリーマンピアノに触れないわけにはいきません。「名参謀にして名サイドメン」なラス・フリーマン抜きに『ジャズ・アット・アン・アーバー』の成功は語れません。

  01. LINE FOR LYONS
  02. LOVER MAN
  03. MY FUNNY VALENTINE
  04. MAID IN MEXICO
  05. STELLA BY STARLIGHT
  06. MY OLD FLAME
  07. HEADLINE
  08. RUSS JOB

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1955年発売/TOCJ-6372)
(ライナーノーツ/都並清史)

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チェット・ベイカー / トランペットの芸術4

THE TRUMPET ARTISTRY OF CHET BAKER-1 管理人の持論であるが(と言ってもこれはMALTAの受け売りなのだが)音楽には,殊に管楽器は「人間性が音に出る」。
 この持論は揺るがない。管理人個人の所有データと経験値をこれまで幾度となく試してきた。だから「人間性は音楽を裏切らない」し,その逆もしかり…。

 と言うことになると“破滅型人間”チェット・ベイカーには自然と足が遠のいてしまう。だから人並みには聴いているがチェット・ベイカーを殊更愛聴してはいない。

 だが,そんな聴き方をしているから,たまに聴くと「エラクイイ」と思う瞬間にブチ当たる。
 『THE TRUMPET ARTISTRY OF CHET BAKER』(以下『トランペットの芸術』)の場合がそうであった。

 『トランペットの芸術』は,チェット・ベイカーウエストコーストジャズの「スター街道」を歩み始めた頃の「寄せ集め作品集」である。
 “天才”と未来を嘱望されていた時代のチェット・ベイカーは意外にもハイノート連発のトランペットであり,中低域中心のまろやかなトランペットの印象からは外れる演奏であって,これをブラインドで聞かされたらチェット・ベイカーだとは分からない。外す自信満々である?

 それくらい,いつもの印象とは異なる『トランペットの芸術』を聴いて「人間性が音に出る」「人間性は音楽を裏切らない」を改めて実感した。
 チェット・ベイカーは「廃人」である。しかし,チェット・ベイカーのディスコグラフィには,彼が「廃人」になる以前の“天才”の音楽も多く残されている。

THE TRUMPET ARTISTRY OF CHET BAKER-2 初期「パシフィックジャズ」レーベルのアルバムはどれも好きだ。チャーリー・パーカーマイルス・デイビスが絶賛した時代のチェット・ベイカートランペットには,かなり惹かれるものがある。

 『トランペットの芸術』は,こじつけではなく『トランペットの芸術』だと思う。

  01. I'M GLAD THERE IS YOU
  02. MOON LOVE
  03. MOONLIGHT BECOMES YOU
  04. IMAGINATION
  05. LITTLE MAN YOU'VE HAD A BUSY DAY
  06. GOODBYE
  07. ALL THE THINGS YOU ARE
  08. NO TIES
  09. HAPPY LITTLE SUNBEAM
  10. BEA'S FLAT
  11. RUSS JOB
  12. TOMMY HAWK

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1955年発売/TOCJ-6371)
(ライナーノーツ/都並清史)

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チャーネット・モフェット / チャーネット・モフェット4

NET MAN-1 ジャズ界にも“早熟の天才”は何人もいるが“早熟の天才”を語る際に絶対に外せないのがベーシストチャーネット・モフェットであろう。

 なんたって,こちらも“早熟の天才”の代名詞的なウィントン・マルサリスが大絶賛したことで火がついて,そのウィントン・マルサリスを発掘したハービー・ハンコック,そのウィントン・マルサリスの兄=ブランフォード・マルサリス,そして中学生の管理人にとってジャズの全てであった渡辺貞夫とその周辺から上がる絶賛の嵐。
 事実「ブラバス・クラブ’85」の主役は,渡辺貞夫を“喰った”チャーネット・モフェットであったのだから衝撃的!

 パンチの効いた野太いライン。流れるようなランニング。粒の揃った音色のチャーネット・モフェットデビュー当時16歳とか17歳。にわかに信じられない“新人類(この意味分かるかな?)”ジャズベーシストの登場であった。
 チャーネット・モフェットの資質を語る際にポール・チェンバースが引き合いに出されることが多いようだが,管理人が引き合いに出すならスコット・ラファロである。“早熟の天才”スコット・ラファロチャーネット・モフェット。いつかこのテーマで「チャーネット・モフェット批評」を書きたいと思う。

 チャーネット・モフェットデビュー・アルバム『NET MAN』(以下『チャーネット・モフェット』)は, チャーネット・モフェットアドリブが“徹頭徹尾”フィーチャリングされた“一発もの”の夢のアルバムである。

 思わず「おおっ」と声が漏れてしまう。エレクトリック風味が混入されたエレアコ・ベースをガンガンに弾きまくる“あの時代”特有の大音量ベースが気持ち良すぎる。
 『チャーネット・モフェット』における,全体のバランスを崩すほどに重心の低いベース・サウンドに快感を覚える理由は,複雑にして単純な“スイング”にある。

 そう。チャーネット・モフェットの放つ,強烈なスイング感。この強烈なスイング感にウィントン・マルサリスが,ハービー・ハンコックが,ブランフォード・マルサリスが,渡辺貞夫が魅了された理由なのだ。

NET MAN-2 現在でもチャーネット・モフェットの演奏スタイルは変わらない。チャーネット・モフェットは“一発もの”を生涯追い続けている。
 ゆえに「絶対君主」のウィントン・マルサリスは当然として,名アレンジャー=デヴィッド・マシューズ擁するマンハッタン・ジャズ・クインテットであってもチャーネット・モフェットを一時期手放さざるを得なかった。

 そうこうしている間にチャーネット・モフェットと同タイプの,こちらも天才ベーシストクリスチャン・マクブライドが登場。
 頑ななチャーネット・モフェットは「お役御免」とばかりに,チャーネット・モフェットと入れ替わったクリスチャン・マクブライドに美味しいところを根こそぎ持って行かれてしまった。

 かっての“早熟の天才”も現在では“あの人は何処?”。
 ベース・ラインが突出したバランスの悪さが足を引っ張り,あれだけの才能を持て余しているようで残念でならない。これも“時代”なのだろう。

  01. MIZZOM
  02. SWING BASS
  03. ONE LEFT OVER
  04. MONA LISA
  05. THE DANCE
  06. NETT MAN
  07. SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE
  08. FOR YOU

(ブルーノート/BLUE NOTE 1987年発売/CJ32-5001)
(ライナーノーツ/中山康樹)

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チャーリー・パーカー / ジャズ・アット・マッセイ・ホール4

JAZZ AT MASSEY HALL, VOL.1-1 ビ・バップを創造し,牽引し,発展させてきた5人のビッグ・ネームが一堂に会したベリー・ベリー・スペシャル・ライブ盤が『JAZZ AT MASSEY HALL,VOL.1』(以下『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』)。

 その「栄光の5人」とは,トランペットディジー・ガレスピーピアノバド・パウエルベースチャールス・ミンガスドラムマックス・ローチアルト・サックスチャーリー・チャン
 えっ? チャーリー・チャン?のクレジットを2度見しましたか?

 そう。チャーリー・チャンとはチャーリー・パーカーのことである。この当時も?借金まみれの?チャーリー・パーカーは借金取りから印税が持って行かれないように偽名の別口座持ちで参戦したのだとか? 『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』のジャケット写真もアルト奏者1人だけが顔面カットされていますし…。
 偽名の真相はよく知りませんが『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』のアルト・サックスを聴けば,チャーリー・チャンチャーリー・パーカー本人であることは管理人が保証します。この音は紛れもないパーカー・フレーズで相違ありません。

 余談ですが,この音から演奏者を当てるという手法はピアノバド・パウエルには当てはまりません。こちらも事の真相はよく知りませんが,この夜のバド・パウエルは酒に酔っていたらしいのです。酒をひっかけてステージに上がることはバド・パウエルにとって特段珍しいことではないのでしょうが,う〜む。この日のバド・パウエルは明らかに不調。
 『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』で偽名を使っているのはチャーリー・パーカーではなくバド・パウエルではありませんか?

 余談の余談なのですが,こんな超ヘビー級の5人が集結したコンサートだというのに,客席はガ〜ラガラだったらしいのです。なぜなら同じ夜にボクシング・ヘビー級のタイトル・マッチが開かれたらしいのです。正真正銘のヘビー級にジャズ界の重鎮たちが5人がかりで完敗したというわけです。

 さらに余談の余談の余談なのですが,チャーリー・パーカーはこの日手ぶらで会場入りし,借り物の白いプラスチック製のアルト・サックスを吹いたとの逸話まであるのです。

JAZZ AT MASSEY HALL, VOL.1-2 う〜む。眉唾ものだ。事実『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』は,曲の頭が少し切れている。「栄光の5人」と呼ばれてはいても一人一人の力量は確実にピークを過ぎた凡庸さを感じ取ってしまう。

 そう。『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』は,聴いていて気になるところばかりな「迷盤」なのだが,ビ・バップには『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』のような「破天荒なアウトロー」スタイルが断然似合うから受け入れちゃう!

  01. PERDIDO
  02. SALT PEANUTS
  03. ALL THE THINGS YOU ARE/52ND STREET THEME
  04. WEE (ALLEN'S ALLEY)
  05. HOT HOUSE
  06. A NIGHT IN TUNISIA

(デビュー/DEBUT 1953年発売/VICJ-23062)
(ライナーノーツ/油井正一)

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チャーリー・マリアーノ / チャーリー・マリアーノと渡辺貞夫4

CHARLIE MARIANO & SADAO WATANABE-1 管理人の中でチャーリー・マリアーノと来れば,何となく「G.I.ジョー」を連想してしまう。
 最大の理由はチャーリー・マリアーノの“彫りの深い顔立ち”が「G.I.ジョー」の人形顔に思えたのがきっかけなのだが,後付かもしれないが,チャーリー・マリアーノ=「G.I.ジョー」説,が我ながら気に入っている。

 アメリカの軍人さんが日本女性を娶る(by 秋吉敏子)。アメリカの軍人さんが日本人を指導する(by 渡辺貞夫)。その結果,親日家さんの象徴「G.I.ジョー」! ねっ,なかなかでしょう?(自画自賛)。

 チャーリー・マリアーノの影響力は,チャーリー・パーカーマイルス・デイビスアート・ブレイキー等のGHQクラスには及ばないが,チャーリー・マリアーノの「G.I.ジョー」としての現場主義の活動が,確実に日本ジャズ発展の“底上げ”に貢献している。チャーリー・マリアーノこそが,日本ジャズ発展の“影の功労者”の1人なのだ。

 そんなチャーリー・マリアーノが,かって強弁を振るった渡辺貞夫との共演盤が『CHARLIE MARIANO & SADAO WATANABE』(以下『チャーリー・マリアーノと渡辺貞夫』)。

 バークリーでの師弟関係そのままに『チャーリー・マリアーノと渡辺貞夫』における渡辺貞夫チャーリー・マリアーノの従者としての共演である。
 …が,そこがまた格別の存在感たらしめているわけであって,渡辺貞夫がこんなにもフルートを吹きまくっているのは『チャーリー・マリアーノと渡辺貞夫』だけであろう。
 こんなにもノリのいいフルートを聴かせられたら,もっとナベサダフルートを聴いてみたくなる〜!

CHARLIE MARIANO & SADAO WATANABE-2 渡辺貞夫アルトサックスの音色を“世界一”と認める管理人に,アルトサックスではなくフルートを意識させてくれるのは『チャーリー・マリアーノと渡辺貞夫』だけ。
 フルート・メインのナベサダは『チャーリー・マリアーノと渡辺貞夫』だけ。

 共にチャーリー・パーカーに心酔しきっているチャーリー・マリアーノ渡辺貞夫のグッド・バイブレーション。
 チャーリー・マリアーノ渡辺貞夫チャーリー・パーカーばりの「リラックスした心地よさ」。軽さと飛翔のブラジル・ナンバー。

 とにかく楽しい。とにかくごきげん。占領下にあった日本ジャズがアメリカの大衆芸術の影響下から抜け出し独自の成長ゾーンに入っている。「G.I.ジョー」がフィギュアの元祖なのです。

  01. Comin' Home Baby
  02. Black Orpheus
  03. One Note Samba
  04. Work Song
  05. Oh Lord Don't Let Them Drop That Atomic Bomb On
     Me

  06. The Shadow Of Your Smile
  07. Goin' Home
  08. On The Trail
  09. My Romance
  10. Secret Love

(ビクター/JVC 1967年発売/VICJ-61367)
(ライナーノーツ/本多俊夫)
(紙ジャケット仕様)

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セシル・テイラー / エアー・アボーブ・マウンテンズ(ビルディングス・ウィズイン)3

AIR ABOVE MOUNTAINS (BUILDINGS WITHIN)-1 “フリージャズの鬼軍曹”セシル・テイラーに関しては「好き」というより「興味本位」という感じで近づいていた。だから「好き嫌い」に関係なく,彼のディスコグラフィーを片っ端から聴き漁った時期があった。

 …が,やっぱり「好き」ではなかったので,ある時,手持ちのコレクションの3枚(セシル・テイラー批評に登場した『LOOKING AHEAD!』『UNIT STRUCTURES』『CONQUISTADOR!』)だけを残して売り払ってしまった。
 結局,管理人のレベルでは前衛音楽は理解できない。『UNIT STRUCTURES批評の中でも書いたのだがセシル・テイラーフリージャズには「現代アート」に通じるものがある。

 福岡市在住の管理人の周りには幾つもの美術館がある。結構,美術館にも通っている方だと思う。久留米には“世界のブリヂストン”運営の「石橋美術館」があって年に数度は足を運ぶ。
 「石橋美術館」と来れば「現代アート」である。あのオブジェ,あの抽象画を見ていると頭の中でセシル・テイラーフリージャズが流れ出す。…と同時に思考停止…。でもそれが良かったりするのだから前衛はやめられない?

 そんな理解不能と分かっているのに,やっぱり見たくなってしまう謎のパターンで手を出したのがセシル・テイラーソロ・ピアノライブ盤『AIR ABOVE MOUNTAINS』(以下『エアー・アボーブ・マウンテンズ(ビルディングス・ウィズイン)』)。

 そう。買い直しである。何度聴いても理解不能で手離したにも関わらず「耳の肥えた今なら楽しめる」という甘い期待と,24BITリマスタリング&紙ジャケット仕様というマニア向けにバージョンアップしての再発にそそられてしまった私がバカだった。
 学習能力なし? 記憶力なし? 約20年振りに聴く『エアー・アボーブ・マウンテンズ(ビルディングス・ウィズイン)』の印象はあの当時のまま。トホホ。

 しかも若さ溢れる20代なら耐えられた『エアー・アボーブ・マウンテンズ(ビルディングス・ウィズイン)』の厳しい演奏が40代の身体には堪える。疲れる。エネルギーが吸い取られるような感覚がある。それ位の圧倒的なセシル・テイラーのパワーに完敗してしまったのだ。

 セシル・テイラーの集中力に観客の集中力が合わさり,呼吸するのさえ憚られる。この時期のセシル・テイラーは統制の利いた構造美よりも無秩序な破壊のテイストが先行しているので,どこで息を吸ってどこで息をはいたらよいのかさえ分からない。ポイントが分からないので聴いていて苦しくなってしまうのだろう。

AIR ABOVE MOUNTAINS (BUILDINGS WITHIN)-2 『エアー・アボーブ・マウンテンズ(ビルディングス・ウィズイン)』を,たった1人のセシル・テイラーが弾いていると考えるのは「発想の飛躍」である。
 ピアノには連弾という奏法があるではないか! 『エアー・アボーブ・マウンテンズ(ビルディングス・ウィズイン)』は,セシル・テイラー“その人”が幾十人も並んで連弾しているに違いない! 「現代アート」が理解できない者にはそうとしか思えやしない!

 そう。『エアー・アボーブ・マウンテンズ(ビルディングス・ウィズイン)』は,紛れもない前衛である。
 ゆえに44分30秒もの時間をかけて作り上げたオブジェと31分44秒もの時間をかけて作り上げた抽象画からなる長時間即興演奏を解説しようとする行為には無理がある。

 セシル・テイラーは何をイメージしながら演奏したのか? セシル・テイラーは長時間演奏のグランド・デザインを描いた上で本番に臨んだのか? セシル・テイラー本人にも着地点が分からないまま演奏が進行したのか?

 「現代アート」が分からない。前衛以降のセシル・テイラーが分からない。再発を買っても20年振りに聴いても『エアー・アボーブ・マウンテンズ(ビルディングス・ウィズイン)』が一向に分からない2014年の春寒であった。

  01. AIR ABOVE MOUNTAINS (buildings within) PART
     ONE

  02. AIR ABOVE MOUNTAINS (buildings within) PART
     TWO


(エンヤ/ENJA 1973年発売/TKCW-32190)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)
(紙ジャケット仕様)

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セシル・テイラー / コンキスタドール4

CONQUISTADOR!-1 前作『ユニット・ストラクチャーズ』で,フリージャズの頂点に達したセシル・テイラーがすぐさま動いた!
 『CONQUISTADOR!』(以下『コンキスタドール』)で,自らの手で完成させたフリージャズの“黄金スタイル”を自らの手でぶっ壊す!

 『CONQUISTADOR!』(以下『コンキスタドール』)には『ユニット・ストラクチャーズ』の名残のかけらもない。
 『ユニット・ストラクチャーズ』の“構造美”に対して『コンキスタドール』の真実とは“破壊の果ての混沌”である。何かが“轟音を立てて崩れていく音楽”なのである。

 『コンキスタドール』におけるセシル・テイラージャズ・ピアノは,見事な調和を聴かせた次の瞬間,バラバラになって砕け散ってゆく。そしてまた次の瞬間,表情の異なる見事な調和を聴かせては消えてゆく“音のスライム”!
 作っては消し→分裂→作っては消し→再生…。この一連の「スライムの陶器師」であるかのような“おまじない”に一体どんな意味があるのだろう?

 管理人には分からない。『コンキスタドール』を何十回と聴いてみたが分からない。多分100回聴いても分からないように思う。
 管理人に分かることがあるとすれば,それはセシル・テイラーが感じていたであろう“快楽”である。とにかく気持ちいい。このカオスに浴しているのが気持ちいいのだ。

 セシル・テイラーは『コンキスタドール』で,バンドを支配することを意識的に止めている。自分が作った枠だけが残る音の修羅場に,頭真っ白で,裸エプロンで乗り込んでいる。全てを知っているはずなのに,違う自分と共演してしまうような妙な感覚…。
 緻密で厳格で理知的,でも意外に軽やかで,壮大な緊張感に支配される集団即興演奏の領域にセシル・テイラーが初めて足を踏み入れている。

CONQUISTADOR!-2 ただし『コンキスタドール』におけるセシル・テイラーの破壊は,事前に計算された破壊であった。
 そう。ブルーノート名物のリサーサル! 初演のインパクトを取るか? テイク2の完成度を取るか?
 どちらにしてもセシル・テイラーは,冷静に理性的に,集団即興演奏を破壊へとリードしていく。
 
 分裂と再生を繰り返しながら崩壊を続ける,静から動へのダイナミクスの相当難解なアドリブ地獄を前にして,それでもあなたは『コンキスタドール』を言葉で説明しろと言いますか!

  01. CONQUISTADOR
  02. WITH (EXIT)

(ブルーノート/BLUE NOTE 1966年発売/TOCJ-4260)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,原田和典,エイヴリー・シャープ)

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セシル・テイラー / ユニット・ストラクチャーズ5

UNIT STRUCTURES-1 『UNIT STRUCTURES』(以下『ユニット・ストラクチャーズ』)は,印象的なジャケット通りの「音絵巻」。
 『ユニット・ストラクチャーズ』の「音絵巻」にはセシル・テイラーのこれまでの鍛錬の全てが,そしてフリージャズの歴史の全てが「巻かれている」!

 そう。『ユニット・ストラクチャーズ』こそが「THIS IS FREE JAZZ」なのである。フリージャズを語るには避けて通ることのできない名盤中の名盤だと思っている。

 一般にフリージャズとは“自由”の意味が歪曲されてか,あるいは“デタラメな演奏”が強調されてか,即興的な演奏をイメージしがちだが,実はそうではない。
 フリージャズは突然変異のごとく自然発生的に生まれたジャズではなく,ハード・バップの限界をブレイクスルーするために,いわば必然的に,ハード・バップの延長線上に生まれたジャズフリージャズはモードの右腕なのだ。

 セシル・テイラーフリージャズに接すると,常にあるルール上で音楽が展開されていることが理解できる。ただし理解できるのは,適当にやっていないな,ということだけであって,明快に批評できるだけのまとまりを発見するには至らない。

 その特徴は『ユニット・ストラクチャーズ』に顕著であって『ユニット・ストラクチャーズ』を聴いていると「現代アート」を見せられているような感覚を抱く。抽象画とかオブジェとかを見せられた時の「これが一体何なのか…。これが果たして芸術なのか…」。この意味でセシル・テイラーこそ「真の前衛」なのである。

 セシル・テイラーの音楽には,常に枠みたいなものがあって,基本的にどの楽器もこの枠を出ることはない。この枠とは作曲部分であるとも言えるが,むしろセシル・テイラーの指示,と捉えた方が分かりやすい。
 先に『ユニット・ストラクチャーズ』を「音絵巻」と記したが『ユニット・ストラクチャーズ』の全4曲が組曲であるかのように構成されている。しかしそう単純な話ではない。その4曲とも曲の中にドラマがあって1曲1曲が組曲であるかのように構成されている。

 トラック毎にソロ・オーダーがあるのだが,フレージングは従来のバップの延長線にあるもので目新しいものではない。しかし,その使いまわされていたフレージングの組み合わせが革新的。
 通常であればソロ・オーダーは先のソロイストのフレージングにつながっていくものだが,セシル・テイラーは決してそれをやらない。敢えて先のフレージングとは異質なソロをオーダーしている。ブツ切りのソロを切り絵にし,張り絵にまとめ上げている。

 そう。『ユニット・ストラクチャーズ』の真実とは,セシル・テイラーの手による「コラージュ」。
 『ユニット・ストラクチャーズ』は,メンバー“絶唱”のソロに気を取られてはいけない。トラック毎に聴いてもいけない。なぜなら「木を見て森を見ず」になってしまうから。
 ナスカの地上絵を見るが如く,天空から地上を見渡すようなスケールの大きな感受性が必要なのだ。

UNIT STRUCTURES-2 管理人の結論。『ユニット・ストラクチャーズ批評

 事前に入念に書き記された,メロディでもなく,リズムでもない“断片的な音の奇声”が整然と迫ってくる。『ユニット・ストラクチャーズ』ほど“不自由な”フリージャズはない。ここにあるのはセシル・テイラーの掌の内における“自由”だけである。

 めくるめくアコースティック楽器の「コラージュ」=「音絵巻」を眺めるだけ。蜃気楼で出来た巨大な建造物=「音絵巻」を眺めるだけ。リスナーにできるのはただそれだけ。
 『ユニット・ストラクチャーズ』はリスナーを選ぶ。上記のような聴き方の出来るジャズ・ファンにとって『ユニット・ストラクチャーズ』以上にフリージャズしているアルバムはない。
 『ユニット・ストラクチャーズ』こそが「THIS IS FREE JAZZ」。フリージャズ名盤中の名盤であろう。

  01. STEPS
  02. ENTER, EVENING (SOFT LINE STRUCTURE)
  03. UNIT STRUCTURES〜AS OF A NOW〜SECTION
  04. TALES (8 WHISPS)

(ブルーノート/BLUE NOTE 1966年発売/TOCJ-6672)
(ライナーノーツ/セシル・テイラー,小川隆夫)

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セシル・テイラー / ルッキング・アヘッド5

LOOKING AHEAD!-1 セシル・テイラーが前衛に走る前の代表作が『LOOKING AHEAD!』(以下『ルッキング・アヘッド』)。

 とにかく聴きやすい。アール・グリフィスヴィブラフォンがメインを張っているせいもあろうが,セシル・テイラーピアノがメロディアス。ハーモニクスに聴こえるジャズ・ピアノ名盤である。

 『ルッキング・アヘッド』は,オーソドックスな展開の“ギリギリの”フリージャズ
 「今,俺はセシル・テイラーを聴いている。今,俺はフリージャズを聴いている」的な“先入観としての難解”を意識しなければ,悶絶ものであろう。

 “フリージャズの鬼軍曹”セシル・テイラーは,キャリアの初めからイノベーダーとしてフリージャズ・スタイルに突き進んでいたわけではない。
 セシル・テイラーが,イノベーダーとして『ルッキング・アヘッド』で成し得たのは“音塊”としてのジャズ・ピアノであり“パーカッシブ”なジャズ・ピアノである。

 そう。前衛以前の『ルッキング・アヘッド』における,セシル・テイラーのトレードマーク=「過激な演奏」はピアノ単体のレベルであって,後の集団即興演奏的な「過激な演奏」の予兆はない。「昔の前衛は今の古典?」の典型例?

 『ルッキング・アヘッド』で,セシル・テイラーが取り組んだジャズ・ピアノの革新とは“第2のセロニアス・モンク”路線。
 ピアノのテンションの高い音圧とヴィブラフォンのクールな響きが相性チリバツ。新鮮なハーモニクスに“癒し”すら感じられる。

LOOKING AHEAD!-2 セシル・テイラーオーネット・コールマンも問題作はあるのはあるが,基本,分かりやすくて聴きやすい。
 セシル・テイラーオーネット・コールマンも“デタラメではなく計算された破綻”としてのフリージャズを演奏している。

 『ルッキング・アヘッド』は,是非,頭や知識で聴くのではなく,素直に音から入ってほしい。絶対いいから!

  01. LUYAH! THE GLORIOUS STEP
  02. AFRICAN VIOLETS
  03. OF WHAT
  04. WALLERING
  05. TOLL
  06. EXCURSION ON A WOBBLY RAIL

(コンテンポラリー/CONTEMPORARY 1959年発売/VICJ-2168)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,青木和富)

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スイングジャーナル読者が選ぶジャズ名盤ベスト100-2

 スイングジャーナル誌2001年1月号で実施された読者アンケート企画「21世紀に残したい読者が選ぶ名盤ベスト100」のスーパーカウントダウン。それが「スイングジャーナル読者が選ぶジャズ名盤ベスト100」。
 今回は91〜95位の発表です。

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ディッピン★95.ディッピン
ハンク・モブレイ


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ソニー・クラーク・トリオ★94.ソニー・クラーク・トリオ
ソニー・クラーク


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アンダーカレント★93.アンダー・カレント
ビル・エヴァンス & ジム・ホール


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フュエゴ★92.フュエゴ
ドナルド・バード


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アガルタ★91.アガルタ
マイルス・デイビス


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 「アガパン」のアガである『アガルタ』がランクイン
 なんで『アガルタ』が91位。なんで「アガパン」のパンである『パンゲア』がランク外?

 電化マイルス信者の神通力が落ちてきた2001年のランキング。このまま地盤沈下していくと「ゴンドワナ大陸」が顔を出す。

 『アガルタ』のマグマ! これぞ大名盤のマグマ!
 フジテレビのパンで好きなのはミオパンでした。陣内〜。

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