アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2014年04月

チェット・ベイカー / ラヴ・ソング4

LOVE SONG-1 チェット・ベイカー“晩年の代表作”である『LOVE SONG』(以下『ラヴ・ソング』)。

 このように紹介してしまうと,枯れというか円熟というか哀愁というか,ベテランのいぶし銀的なニュアンスを欲してしまうものなのだが,チェット・ベイカーの場合は残念ながらそうではない。チェット・ベイカージャズ・トランペットは,いつ,どこで吹こうとも余り変化しないのだ。
 チェット・ベイカーの基本はワン・パターン。多少,ピッチが速くなるか,遅くなるかの差であって,遅くなる場合は運指がついていけないだけ?

 そう。晩年のチェット・ベイカーの魅力は「衰退」である。どんどんどんどん壊れていく。才能の枯渇を感じてしまう。指だけではなく頭の回転も遅れがちなのだろう。でもでも,これだけは言っておきたい。チェット・ベイカーほど,老いれば老いるほど“ジャズメン”を強烈に感じさせる男はいない。

 思うにチェット・ベイカーにとって,ジャズとは仕事であって,それ以上でもそれ以下でもなかったのではなかろうか? チェット・ベイカージャズを,ただ吹き流している。も吹くがそれは彼にとって“お遊び”であり,仕事上の“手抜き”であったように思う。
 チェット・ベイカーは自らの音楽に魂を吹き込んだりはしなかった。ジャズという音楽に媚びることがなかったのだ。

 そう。だからこそチェット・ベイカーに「瞬間芸術」であるジャズを強烈に,そして猛烈に感じてしまう。の冴えが衰え,余分なものが削ぎ落とされた結果,多用された“手癖”にジャズの“伝統芸能”を聞く思いが募ってしまう。

LOVE SONG-2 古典中の古典である【ROUND MIDNIGHT】が素晴らしい。全ジャズ史における【ROUND MIDNIGHT】の“指折りの名演”である。

 このストレートな解釈にこそ【ROUND MIDNIGHT】の魂がある。無心で奏でた【ROUND MIDNIGHT】にチェット・ベイカーの「失われた歴史」が詰まっている。才能を食いつぶした「灰の体」に“ジャズメン魂”だけが残されている。こうなるまでにはそれなりの時間を浪費する必要があったのだ。

 チェット・ベイカー“晩年の代表作”『ラヴ・ソング』の評価に異論などない。

  01. I'M A FOOL TO WANT YOU
  02. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
  03. ROUND MIDNIGHT
  04. AS TIME GOES BY
  05. YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO
  06. ANGEL EYES
  07. CARAVELLE

(ベイステイト/BAYSTATE 1987年発売/BVCJ-37548)
(ライナーノーツ/油井正一)

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チェット・ベイカー / 枯葉5

SHE WAS TOO GOOD TO ME-1 大方のジャズ・ファンにとって【枯葉】と来ればマイルス・デイビスであろう(ここをキャノンボール・アダレイ名義と呼ぶ人は真のジャズ・ファンとは認められない!)。
 しかし10人中7,8人はマイルス・デイビスであったとしても,残る2,3人にとって【枯葉】と来れば,ビル・エヴァンスであり,キース・ジャレットであり,ウィントン・ケリーである。【枯葉】はジャズの大スタンダードなのだから,至極当然の話…。

 …で,管理人にとっての【枯葉】とは? この答えが難しい。というのは日替わりで好きな【枯葉】が変わっていくのだから…。
 …で,本日取り上げる【枯葉】はチェット・ベイカーの【枯葉】。チェット・ベイカーの【枯葉】はトラック単体でも素晴らしいが,一枚のアルバムとして聴き通しても素晴らしい。
 ズバリ,チェット・ベイカーの【枯葉】の『枯葉』こそ,チェット・ベイカーの“最高傑作”であり,CTIレーベルを代表する“名盤中の名盤”である。

 ECMブルーノートには及ばないがCTIという言葉を聞くだけで胸を躍らせてしまう管理人。CTIには本当にいいアルバムが多い。イージー・リスニング調の「売れ線ジャズ」でありながらマニアをも納得させる上質のジャズフュージョンを堪能できる。その意味で『枯葉』こそがCTIの全てだと言い切ってもよいと思う。

 チェット・ベイカーが“フュージョンもどき”の【枯葉】を吹いているのだが,甘く暖かな音色の中にも枯淡の響きを持つトランペットを“盛り上げる”スティーブ・ガッドジャック・デジョネットの攻撃的な“うるさ型”ドラミングボブ・ジェームスの控え目なのに華やかなエレピロン・カーターの脈打つベースを従えた,チェット・ベイカーと同じまろやか方面のポール・デスモンドアルトサックスが「死にゆく葉っぱ」を埋葬している。ありそうでなかったこのアイディアを完璧に具現化したCTIサウンドが素晴らしい。

 テクニカルなのにズバッとハマッタ【枯葉】の大名演ジャズスタンダードフュージョンの新曲であるかのように新鮮に聞こえてしまう。今もって新鮮味が衰えない真の大名演
 思うに,引退と復帰を繰り返し,何度目かのカムバックを果たした自分自身の人生と,売れ線のフュージョンという時代とCTIドン・セベスキーとの出会い等,名演を生み出す幾つものタイミングが全てマッチしたのだろう。

 やっぱりチェット・ベイカーは「スター」だよなぁ。チェット・ベイカーこそが「千両役者」なんだよなぁ。クリード・テイラーがお膳立てした,後は吹くだけ,の大仕事をキッチリとこなした結果だと思う。打つべきところで打ってくれる「3番打者」長嶋茂雄的な名演だと思う。

SHE WAS TOO GOOD TO ME-2 しかし,この大名演の【枯葉】を抑えた『枯葉』本来のタイトル・トラック【シー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー】が「4番打者」王貞治的な大名演である。

 管理人なんかは【シー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー】のメロウなオーケストラ調のイントロが流れてくるだけで,もう涙ウルウル〜。70年代以降のチェット・ベイカーボーカルフランク・シナトラ・チックに流麗な盛り上がりを聴かせていくのだが,そのクライマックスへ来ての“可憐でキュートで甘美すぎる”間奏でのトランペットソロに,涙チョチョギレ〜。
 加えてストリングスエレピがオルゴール調でハーモニーを付けてくるのだから,た・ま・ら・な・い〜。

 悲しみの歌なのに,愛と希望そして勇気のメッセージ・シングに思えてしまって心の奥底から感動してしまう。シビれる。もうどうにでもよくなってしまう美しすぎる絶品バラード

 管理人はこの【シー・ワズ・トゥー・グッド・トゥ・ミー】を聴き続けて,ついに結婚することを決めました。はい。「人生この一曲」なのであります。
 お相手もこれまた『枯葉』のジャケット写真のような少女のようなお方です。決定的な出来事が1つと準決定的な幾つもの出来事が同時期に重なり合い10年越しの運命を感じました。こそっと?読者の皆さんへご報告させていただきます。
 独身主義の管理人。友人の皆さんは多分信じてくれない? 後日,改めて個人的にご報告させていただきます。それまではそっとしておいてくださいませ。

  01. AUTUMN LEAVES
  02. SHE WAS TOO GOOD TO ME
  03. FUNK IN DEEP FREEZE
  04. TANGERINE
  05. WITH A SONG IN MY HEART
  06. WHAT'LL I DO
  07. IT'S YOU OR NO ONE

(CTI/CTI 1975年発売/KICJ-9003)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ダグ・ラムゼイ)

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チェット・ベイカー / マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス3

CHET BAKER WITH FIFTY ITALIAN STRINGS-1 チェット・ベイカーの「ウィズ・ストリングス」。絶対に大当たり企画だと思っていたのに…。

 ハズレだハズレ。『CHET BAKER WITH FIFTY ITALIAN STRINGS』(以下『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』)は大ハズレ。これってジャズではなくイージー・リスニング?

 「ウィズ・ストリングス」に加えての木管群とホーン隊までが加わった?ゴージャスでムーディーなスタンダード集。しかし同じトランペット奏者の『クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス』とのテイストとは真逆な“軟弱”チェット・ベイカーが登場している。

 これほど甘々なものはそうはあるまい。『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』の甘ったるさは,幾ら“甘党の”ジャズ・ファンであったとしても受け入れ難いものがある。

 そう。『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』のハイライトは,チェット・ベイカーのイージー・リスニング調トランペットではなく,チェット・ベイカーの退廃感を増したボーカルにある。

 バックが甘々であるがため,普段は受け入れ難い,チェット・ベイカーの“退廃感”が丁度良い塩梅。
 『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』の“目玉”である【MY FUNNY VALENTINE】が秀逸である。定番である『CHET BAKER SINGS』収録の【MY FUNNY VALENTINE】における中性的な魅力に,今回はロマンチシズムがプラスされ“ゲテモノ”を卒業した素晴らしいジャズ・ボーカルだと思う。

 【ANGEL EYES】【FORGETFUL】【DEEP IN A DREAM】のボーカル・ナンバーも同様に“退廃感”のあるボーカルが“甘いストリングス”で中和されたジャズ・ボーカルへと昇華されている。
 特に【FORGETFUL】におけるトランペットともボーカルとも区別がつかない器楽的なアーティキュレイションはジャズ・ボーカリストのそれである。

CHET BAKER WITH FIFTY ITALIAN STRINGS-2 管理人の結論。『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス批評

 『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』は,ロマンティックという“甘味料入れすぎ”のゴージャスでムーディーなスタンダード集。ゆえにそのままで聴いたらイージー・リスニング・ジャズの「外道」であって,廃棄処分は間違いない。
 ただしトランペット抜きに“ジャズ・ボーカリストチェット・ベイカーのアルバムとして評価するなら,これはこれでアリかもしれない。

 “甘味料入れすぎ”な『マイ・ファニー・ヴァレンタイン〜チェット・ベイカー・ウィズ・ストリングス』はブラック・コーヒーを飲みながら聴いていただきたい。アルコールではダメなのです。

  01. MY FUNNY VALENTINE
  02. I SHOULD CARE
  03. VIOLETS FOR YOUR FURS
  04. THE SONG IS YOU
  05. WHEN I FALL IN LOVE
  06. GOODBYE
  07. AUTUMN IN NEW YORK
  08. ANGEL EYES
  09. STREET OF DREAMS
  10. FORGETFUL
  11. DEEP IN A DREAM

(ジャズランド/JAZZLAND 1959年発売/VICJ-2183)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ5

CHET BAKER PLAYS THE BEST OF LERNER AND LOEWE-1 『CHET BAKER PLAYS THE BEST OF LERNER AND LOEWE』(以下『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』)こそが,管理人の「愛聴盤」である。チェット・ベイカーの「裏名盤」だと思っている。

 バラードを紡いだ『チェット』の姉妹盤であり,ミュージカルのソング・ブックを紡いだ『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』は,天性の才能だけで“成り上がってきた”チェット・ベイカーが辿り着いた「ザ・リラックス」。

 『チェット』に参加していたバリトンサックスペッパー・アダムスフルートハービー・マンピアノビル・エヴァンスに加えて,アルトサックステナーサックスズート・シムズの「超VIP」級のフロント陣とピアノビル・コーウィンベースアール・メイドラムクリフォード・ジュアーヴィスの「B級」リズム隊。
 この“頭デッカチ”な異色の編成が『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』成功のミソである。

 そう。全ては「ラーナー&ロウ」の名曲をメロディアスにプレイするための布陣。リズム隊に気兼ねすることなく“朗々と”ブローする。名曲を演奏する音楽家としての幸福。ロマンティックでリラックスな“メロメロ系”の大名演である。

 「大名演だ。愛聴盤だ。裏名盤だ」。そう大声を張り上げるのがバカバカしく感じる。
 チェット・ベイカーのファンなら同じだと思うのだが『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』は,あまり人に知られてほしくはない。メディアからの取材は「ノー・サンキュー」。

 ズバリ『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』は“大人のくつろぎ”な音楽であり,大人の音楽ファンだけが一生聞き続けるであろう大事な大事な宝物の1枚なのである。

CHET BAKER PLAYS THE BEST OF LERNER AND LOEWE-2 淡々と力の抜けた演奏なのに,チェット・ベイカーらしい“華”のあるトランペットは,エコーのかけすぎで「風呂場での鼻歌?」のようである。ひたすら上下からも左右からも前後からも“甘いささやき”が響いて来る。リリカルでメロディに忠実な演奏は(風呂場だけに)「水を得た魚」のようでもある。
 チェット・ベイカーの“まろやか音色”がロマンチシズム。“繊細な優しいトーン”がリリシズム。全てを忘れてジャズに無心で「酔いしれる」のみである。

 そう。『チェット・ベイカー・プレイズ・ラーナー&ロウ』は,チェット・ベイカー・ファンだけの「隠れ家」。ジャズ・ファンだけの「隠れ家」。通だけが知っている秘密の「隠れ家」なのである。

  01. I'VE GROWN ACCUSTOMED TO HER FACE
  02. I COULD HAVE DANCED ALL NIGHT
  03. THE HEATHER ON THE HILL
  04. ON THE STREET WHERE YOU LIVE
  05. ALMOST LIKE BEING IN LOVE
  06. THANK HEAVEN FOR LITTLE GIRLS
  07. I TALK TO THE TREES
  08. SHOW ME

(リバーサイド/RIVERSIDE 1959年発売/VICJ-2205)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,岡崎正通)

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チェット・ベイカー・ウィズ・ビル・エヴァンス / チェット5

CHET-1 トランペットチェット・ベイカーピアノビル・エヴァンス“夢の共演盤”が『CHET』(以下『チェット』)。

 『チェット批評チェット・ベイカービル・エヴァンスの“化学反応”を軸にレヴューするのが筋なのだが『チェット』を聴いた感想は『チェット』=チェット・ベイカーの「リーダー名義」。「ソロCD」と称しても過言ではない。
 それくらいに『チェット』におけるチェット・ベイカートランペットが突出している。この一点でピアノビル・エヴァンスとの共演が大成功だったということだ。

 ソフトでまろやかで吹奏楽っぽいのに,これぞジャズ!としか言いようのないチェット・ベイカートランペット。この魅力をビル・エヴァンスリリシズムが見事に引き出している。
 ジム・ホールといい,キャノンボール・アダレイといい,チェット・ベイカーといい,スタンゲッツといい,トニー・ベネットといい,エディ・ゴメスといい,ビル・エヴァンスデュエット作はその全てがジャズ史に残る名盤である。
 …ということで管理人はビル・エヴァンスチェット・ベイカーと共演した『チェット』も(デュオ作ではないが)名盤に認定する。

 『チェット』は,チェット・ベイカービル・エヴァンスデュオ名義となっているが,本当はデュエット作ではない。
 トランペットチェット・ベイカーバリトンサックスペッパー・アダムスフルートハービー・マンピアノビル・エヴァンスギターケニー・バレルベースポール・チェンバースドラムフィーリー・ジョー・ジョーンズドラムコニー・ケイの超豪華メンバー。

 しかしこのクセ者の豪華メンバーが集結した『チェット』が,紛れもなくチェット・ベイカーの「ソロCD」に聴こえてしまう。他の共演者を「完全掌握」したビル・エヴァンスの“黒子役”が見事に機能しているからだ。

 ジャケット写真そのものの,王道バラード集=『チェット』ゆえビル・エヴァンスピアノリリカルにお膳立てしてからのトランペットの“入魂のテーマ”が淀みなく鳴り響く。
 バリトンサックスフルートもテーマを吹くが時間はほんの1コーラス。つまりはチェット・ベイカートランペットによる“疑似ワン・ホーン・アルバム”な音造り。この上でビル・エヴァンスピアノが“消える瞬間”が演出されている。

CHET-2 ズバリ『チェット』の聴き所は,トランペットベースドラムトランペットトリオ
 しかしこのトランペットトリオのエッセンスがビル・エヴァンス流。

 スムーズなチェット・ベイカートランペットが鳴り響く中,消えたピアノにハッキリと感じるビル・エヴァンスの陰。ビル・エヴァンスピアノを弾かずともチェット・ベイカーと共演してみせている。

  01. ALONE TOGETHER
  02. HOW HIGH THE MOON
  03. IT NEVER ENTERED MY MIND
  04. 'TIS AUTUMN
  05. IF YOU COULD SEE ME NOW
  06. SEPTEMBER SONG
  07. YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO
  08. TIME ON MY HANDS (YOU IN MY ARMS)
  09. YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC
  10. EARLY MORNING MOOD

(リバーサイド/RIVERSIDE 1959年発売/VICJ-60340)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,市川正二)

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チェット・ベイカー / チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク4

CHET BAKER IN NEW YORK-1 ウエスト・コーストジャズのトップスターであったチェット・ベイカーがイースト・コーストへ…。
 日本風に言えば「上京」した理由は,大阪芸人の東京進出よろしく「全国区を目指す」的なニュアンスに思えるのだが,その真実は悲しい。音楽的な理由ではなく単純に“麻薬からの逃亡”であった。 百歩譲って音楽的な理由を探そうにも“衰退していくウエスト・コーストジャズからの逃亡”のように思う。沈みゆく泥船から逃げ出せ〜,が“廃人”チェット・ベイカーらしく思える。

 そう。売人との縁切りと警察に逮捕される恐れ,そして仕事を失う恐れから物理的に逃れる手段としての“後ろ向きな”イースト・コースト進出なのだから,イースト・コーストのチェット・ベイカーが最高,などというレビューを読むとちゃんちゃらおかしくなってしまう。
 環境の変化がチェット・ベイカートランペットに影響を与えたことは確かであろうが,それを語るのであれば“ハードバップの洗礼”であり“共演者の交代”と述べてほしい。
 事実“大志なき”イースト・コーストのチェット・ベイカーの音楽的な変化は一過性のものであり,時間の経過と共に以前のスタイルに戻ってしまったのだから…。

 そんな「逃げの」チェット・ベイカーの真実を知らずして誉めたたえている「にわかファン」の絶賛盤が『CHET BAKER IN NEW YORK』(以下『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』)。
 「にわかファン」絶賛の理由は概ね,ゴリゴリのバッパーに扮したチェット・ベイカーの迫力,の類である。

 『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』の聴き所は,表面上耳に残るであろう“硬派な”チェット・ベイカーの迫力ではない。チェット・ベイカートランペットを強く吹こうとすると粗さが目立ってしまうように思う。ヒーローはジョニー・グリフィンの方である。
 チェット・ベイカーの聴き所はその逆であって,繊細なメロディ・ラインで紡いだアドリブ・ライン。西と東の“いい感じのブレンド感”がチェット・ベイカーのソフトな本質を浮かび上がらせている。

 『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』における“硬派な”チェット・ベイカーの響きは,新しい種類の音楽に面して新しい自分が出た,とか,対応しきれずに素の自分が出た,でだろう。
 今までの協調指向はそのままに対応しきれず吹きまくった“汗かき”の結果なのだと思う。
 
CHET BAKER IN NEW YORK-2 『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』は名盤である。しかし名盤として取り上げられる際の世評の理由は誤りである。

 チェット・ベイカーが一皮むけたわけではない。対応しきれなかったのが吉と出ただけだ。
 『チェット・ベイカー・イン・ニューヨーク』は,バランス感覚に秀でた音楽センスと天賦の才能を持て余していたチェット・ベイカーの本質を露わにした“結果オーライ”な名盤だと思っている。

  01. FAIR WEATHER
  02. POLKA DOTS AND MOONBEAMS
  03. HOTEL 49
  04. SOLAR
  05. BLUE THOUGHTS
  06. WHEN LIGHTS ARE LOW
  07. SOFT WINDS

(リバーサイド/RIVERSIDE 1958年発売/VICJ-60494)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,岡崎正通)

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スイングジャーナル読者が選ぶジャズ名盤ベスト100-3

 スイングジャーナル誌2001年1月号で実施された読者アンケート企画「21世紀に残したい読者が選ぶ名盤ベスト100」のスーパーカウントダウン。それが「スイングジャーナル読者が選ぶジャズ名盤ベスト100」。
 今回は86〜90位の発表です。

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ザ・ケリー・ダンサーズ★90.ザ・ケリー・ダンサーズ
ジョニー・グリフィン


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ジュニア★89.ジュニア
ジュニア・マンス


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The Complete Live At The Plugged Nickel 1965★88.コンプリート・ライブ・アット・プラグド・
 ニッケル 1965

マイルス・デイビス

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モントゥルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス★87.モントルー・ジャズ・フェスティバルのビル・エヴァンス
ビル・エヴァンス


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グルーヴィー★86.グルーヴィー
レッド・ガーランド


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 「スイングジャーナル読者が選ぶジャズ名盤ベスト100」の姉妹ランキング=「JAZZ PIANO BEST SELECTION TOP31」の第2位=レッド・ガーランドの『グルーヴィー』が86位でランクイン。あれれ?

 このランキング結果にレッド・ガーランドの人気没落を実感する。ランキングって恐すぎる〜。

 だ〜って今で言えば上原ひろみ級の大スターだったレッド・ガーランドが,わずか25年で「あの人は何処?」…。『グルーヴィー』のような大名盤が,わずか25年で2位→86位…。

 これだから“提灯野郎”スイングジャーナルの情報は鵜呑みにできない&信用できない。でも読者が選んだ結果なのかぁ。
 1人の元読者として,管理人はレッド・ガーランドの再評価を願っています。

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