アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2015年06月

チック・コリア & オリジン / チック・コリア & オリジン5

CHICK COREA AND ORIGIN-1 「エレクトリック・バンド」を解散して以来,ソロ活動に専念してきたチック・コリアがついに新しい自己のレギュラー・グループを結成した。

 その名は「チック・コリア & オリジン」! メンバーはピアノチック・コリアベースアヴィシャイ・コーエンドラムアダム・クルーズトロンボーンスティーヴ・デイビスサックスフルートボブ・シェパードサックスフルートスティーヴ・ウィルソンセクステットであった。

 チック・コリア以外の5人は全員無名。しかしそんなの関係ない。「チック・コリア & オリジン」のデビュー盤『CHICK COREA AND ORIGIN』(以下『チック・コリア & オリジン』)を聴いて,一発で「オリジン」の「とりこ」になってしまった。
 いや〜っ,いきなりのスーパー・グループの誕生である。世界TOPのジャズ・コンボの登場なのである。

 アヴィシャイ・コーエンの本当の凄さは後になって身に染みて来たのだが『チック・コリア & オリジン』の発売時点でも相当に凄いベーシストだった。印象としてはデイヴ・ホランドとかチャーリー・ヘイデンを想起してしまった。
 つまりベーシストとしても超強烈な個性が聴こえて来るのだが,それ以上に全体のサウンドに感化与えるベース・ラインの動きが素晴らしい。セクステットのアンサンブルをベース・ラインで指揮している。曲全体に“変幻自在な”編曲を施している。

 そんな「色彩豊かなベース」を手に入れたチック・コリアが「オリジン」の音楽監督の座をアヴィシャイ・コーエンに委ねている。
 「オリジン」とはアヴィシャイ・コーエン発信の“チャールス・ミンガスばりの”アイディアをフロントの3管が手足となって実践するジャズ・コンボであり,チック・コリア自身は“バンドの凄腕ピアニスト”として,それは硬派で緊張感のあるジャズ・ピアノを弾きまくっている。

CHICK COREA AND ORIGIN-2 ズバリ「オリジン」のサウンドは,日本で言えば“漆塗り”のジャズである。
 表面的に見えるもの,聴こえてくるものは,チック・コリアど真ん中なジャズ・コンボなのだが,よ〜く聴き込んでいくと,こんなところまで手が入っていたのか,と思わせる職人の技を発見する瞬間で満ちている。
 うかつにも「オリジン」の職人技に気付いてしまったが最後,残すは「のめり込む」しか道はなくなる。

 そ・う・し・て・驚愕するのが,ここまで手の込んだ音楽にして,これが「オリジン」の試験的なギグだったという衝撃の事実。次元が違いすぎる。ほぼリハーサル的な演奏にしてこの完成度と知った瞬間に腰が抜けてしまうのでご注意を!

 聴き込むにつれ,奥深い味がどんどん染み出してくる! 『チック・コリア & オリジン』は,発売から17年経過しているとはいえ,今の耳で聴いても古くは感じないし,今後も決して古くは感じないアルバムだと思っている。
 やり尽くされたはずのアコースティックジャズ表現に“襟を正して”取り組んだチック・コリアに深い敬意を表したい。

  01. Say It Again (Part 1)
  02. Say It Again (Part 2)
  03. Double Image
  04. Dreamless
  05. Molecules
  06. Soul Mates
  07. It Could Happen To You
  08. Sifu

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1998年発売/MVCL-24008)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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MALTA / MALTA DE CHOPIN4

MALTA DE CHOPIN-1 2010年は「ショパン生誕200周年」。畑違いのジャズ界においても,たくさんの「ショパン・トリビュート」が発売された。

 なぜジャズメンがクラシックのショパンを? 実は2010年に限らず,ジャズメンには結構なショパン好きが多い! ジャズメンの“本能”として「ピアノの詩人」の書いた美しいメロディーに接すると,どうしても自分の味で料理したくなるものです!?
 特にさまざまな形式,美しい旋律,半音階的和声法などによってピアノの表現様式を切り開いてきたショパン。そんな斬新なショパンだからなのか,ジャズにアレンジしても見事に様になってしまう。繊細なピアノの曲がリズミカルになり,最後まで聞き入ってしまう…。

 ただし,これって楽しい作業になると分かってはいても,ジャズメンにとって「ショパン・トリビュート」を1枚のアルバムとして完成させるには相当な勇気が必要である。
 ある意味,世間に広く知られたショパンの名曲は“手垢にまみれた”ジャズスタンダードと同列であって,敷居が高い&難易度が高い。そのままやれば全然ジャズっぽくならないし,崩し過ぎると取り上げた意味がなくなってしまう。このアレンジのサジ加減がジャズメンにとって腕のみ・せ・ど・こ・ろ…。

 『MALTA DE CHOPIN』はMALTAによる「5曲のショパン集+6曲のオリジナル集」。聴き所は当然ながら前半の「ショパン・トリビュート」の方にある。

 【ワルツ第7番】は,原曲の忠実なコピーの展開から一転しての4ビート→ブルース→ワルツ→4ビート。いきなり「こう来たか!」で掴みはOK。
 【英雄ポロネーズ】は,アフロ系一発。メロディは完全にポロネーズだけど,聴き覚えのあるMALTA・サウンドに仕上がっている。
 【ノクターン OP.9−2】は,アップ・テンポのボサ・ノヴァ。誰でも知っているあのメロディーがボサ・ノヴァに違和感なく乗っかるのには驚いた。
 【別れの曲】は,8ビートのフュージョン・サウンド。メロディーを生かしてじっくりとアルトを歌い上げている。
 【子犬のワルツ】は,MALTAにしては貴重なテナー。メロディーのフェイクから“ショパンの”ピアノ・トリオを招き入れている。

MALTA DE CHOPIN-2 実に素晴らしい。『MALTA DE CHOPIN』は,ネタとしてのショパンはあっても,全体の印象は紛れもないMALTAジャズ! ショパンが躍動している! MALTAって本当に“筋金入りの”ジャズメンだったんだなあ。

 他人に自分の曲をいじられるのが好きではなかったと言われているショパン。でもショパンさん。『MALTA DE CHOPIN』はありでしょう?

     Chopin
  01. VALSE No.7, Op.64-2
  02. POLONAISE No.6, Op.53 "Heroique"
  03. NOCTURNE No.2, Op.9-2
  04. ETUDE, Op.10-3 "Chanson De L'adieu"
  05. VALSE No.6, Op.64-1 "Petit Chien"

     Malta
  06. Chopin's Dream
  07. Feels Good
  08. A Dream of Sishphos
  09. Windcherry
  10. Scoop You Up
  11. A Letter from September 2010

(ビクター/JVC 2010年発売/VICJ-61644)

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チック・コリア & リターン・トゥ・フォーエヴァー / ライト・アズ・ア・フェザー(完全盤)4

LIGHT AS A FEATHER-1 ブラジリアン・フレイヴァーな「第1期」リターン・トゥ・フォーエヴァーの2nd『LIGHT AS A FEATHER』(以下『ライト・アズ・ア・フェザー(完全盤)』)は『完全盤』の発売当日に買い直した1枚。

 買い直しの理由は,普通であれば「好きすぎて」とか「CD聴きすぎて傷んじゃったので」などであろうが『ライト・アズ・ア・フェザー(完全盤)』の場合は「リベンジ」である。「未発表テイクの『完全盤』は,こんなはずじゃないだろう」という思いから来たモチベーション即買いであった。

 そう。管理人は,巷で名盤として名が通っているにしては『ライト・アズ・ア・フェザー』の出来に疑問が残っていた。ずっと喉仏に魚の骨が刺さっている感じ?
 あのチック・コリアが,あのリターン・トゥ・フォーエヴァーが,この程度のアルバムを作って満足したなんて信じられない,の思いに駆られてしまっていたのだった。

 しかし『ライト・アズ・ア・フェザー』は『完全盤』でもダメだった。『ライト・アズ・ア・フェザー(完全盤)』は【WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY】を聴くためだけのアルバムであった。

 ズバリ『ライト・アズ・ア・フェザー(完全盤)』の真実とは『リターン・トゥ・フォーエヴァー(完全盤)』であって,チック・コリアソロ名義『リターン・トゥ・フォーエヴァー』の別テイク集であった。

 そう。『ライト・アズ・ア・フェザー(完全盤)』は『ライト・アズ・ア・フェザー』の「リベンジ」目的で聴くアルバムではなく『リターン・トゥ・フォーエヴァー』未発表音源集として聴く方が“しっくり”くる。

LIGHT AS A FEATHER-2 話を本論の『ライト・アズ・ア・フェザー批評に戻そう。
 そもそも『ライト・アズ・ア・フェザー』が不調なのは【SPAIN】の初演の不出来にある。

 ジャズにおいてはスタンダードを除いて,初演こそが最高,というパターンが多い。テイクを重ねたりアレンジを変えたりするのもいいのだが,やっぱりオリジナルは特別なはずなのに【SPAIN】の初演がグッと来ない。
 まさかの肩透かしで,一気にグループとしてのリターン・トゥ・フォーエヴァーへの熱が冷めてしまった。あ〜あっ。

  DISC 1
  01. YOU'RE EVERYTHING
  02. LIGHT AS A FEATHER
  03. CAPTAIN MARVEL
  04. 500 MILES HIGH
  05. CHILDREN'S SONG
  06. SPAIN

  DISC 2
  01. MATRIX
  02. LIGHT AS A FEATHER (ALTERNATIVE TAKE)
  03. 500 MILES HIGH (ALTERNATIVE TAKE)
  04. CHILDREN'S SONG (ALTERNATIVE TAKE)
  05. SPAIN (ALTERNATIVE TAKE)
  06. SPAIN (ALTERNATIVE TAKE)
  07. WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY? (
     ALTERNATIVE TAKE)

  08. WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY? (
     ALTERNATIVE TAKE)

  09. WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY? (
     ALTERNATIVE TAKE)

  10. WHAT GAME SHALL WE PLAY TODAY? (
     ALTERNATIVE TAKE)


(ポリドール/POLYDOR 1998年発売/POCJ-2677/8)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/ゴンザレス鈴木,ベン・ヤング,ポール・デバロス)

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ブラザー・ジャック・マクダフ / ムーン・ラッピン5

MOON RAPPIN'-1 ジャズの楽器のお話だが,王様がトランペットであれば,横綱はオルガンであろう。
 そしてオルガンの「東の横綱」がジミー・スミスであれば「西の横綱」はブラザー・ジャック・マクダフであろう。

 「東の横綱」ジミー・スミスが“看板”として支え続けたブルーノートの屋台骨を(ジミー・スミスヴァーヴ移籍後)今度はプレスティッジの“元看板”であった「西の横綱」ブラザー・ジャック・マクダフが支えることに…。

 この状況下で下手は打てない。すでに巧なり名を馳せたブラザー・ジャック・マクダフであったが,並々ならぬ意気込みを持って「名門」ブルーノート再生へのカタログ提供に取り組んでいる。

 ズバリ,ブラザー・ジャック・マクダフブルーノート・イヤーと来れば,管理人には『MOON RAPPIN’』(以下『ムーン・ラッピン』)である。
 『ムーン・ラッピン』こそ,ブラザー・ジャックブラザー・ムーンと交信してしまっている“実況録音盤”だからである。

 そう。『ムーン・ラッピン』は聞き始めたが最後! アルバム・ジャケットのアナザー・ストーリーである「不気味なブサイク系月男」のダンゴッ鼻で逝ったような近未来サウンドが,かなりコテコテのソウルフル・グルーヴでして,月に向かって“ワォ!”と叫びたくなる〜! 

MOON RAPPIN'-2 『ムーン・ラッピン』の2枚看板=【FLAT BACKIN’】のスカスカなアーシーと【OBLIGHETTO】の妖しいコーラスからの反復するマッドなオルガンが最高にファンキー!

 『ムーン・ラッピン』は,プレスティッジブラザー・ジャック・マクダフにはなかった,ギターホーン・セクションというブルーノートの伝統を手にした“看板スター”ブラザー・ジャック・マクダフが鎮座している。

 ジャズ好きで,オルガン好きで,ブルーノート好きなら,間違いなく『ムーン・ラッピン』も好き!
 ブルーノートブラザー・ジャック・マクダフも最高なのである!

  01. FLAT BACKIN'
  02. OBLIGHETTO
  03. MOON RAPPIN'
  04. MADE IN SWEDEN
  05. LOOSE FOOT

(ブルーノート/BLUE NOTE 1970年発売/TOCJ-4334)
(ライナーノーツ/ジェフ・スマーリン,上条直之,出田圭)

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チック・コリア & ゲイリー・バートン / ネイティヴ・センス5

NATIVE SENSE-1 “ジャズの伝統芸能”チック・コリアゲイリー・バートンによるデュエット
 その17年振りとなるアルバムが(『NATIVE SENSE』(以下『ネイティヴ・センス』)である。

 『ネイティヴ・センス』までの“空白の17年間”が,チック・コリアゲイリー・バートンの“鉄壁のコンビネーション”にどう影響しているか? 完全に悪影響を想像しながら聴き始めた管理人。しかし,すぐにぶっ飛んだ! ぶっ飛ばされてしまった!

 『ネイティヴ・センス』の“鉄壁のコンビネーション”を聴かされては“空白の17年間”などなかったも同然。あるとすれば“熟成の17年間”である。
 チック・コリアゲイリー・バートンにとっては『イン・コンサート』を録音したのが,まるで昨日のことのような感触があったように思う。

 そう。一音交えれば,互いに相手の考えが分かってしまう。分かってしまうのだからどうしようもない。合わせようとしなくても自然と合ってしまうのだからしょうがない。
 ピアノチック・コリアヴィヴラフォンゲイリー・バートンの「天性の相性」が,ジャズ特有のファンキーでブルージーなノリと決別し,硬質でクラシカルな響きを前面に押し出し,ストイックに現代音楽の様なアブストラクトな面を少し覗かせながら,メロディアスで流麗な音楽を創造していく。その様が実は「ジャズの中のジャズ」している。

 管理人は『ネイティヴ・センス』を聴いていて,パートナーを超えたパートナー,との運命的な出会いに17年振りに立ち会った感覚に襲われてしまった。ある意味『ネイティヴ・センス』は『クリスタル・サイレンス』の衝撃を超えてしまったと思う。
 “燃えに燃えまくった”チック・コリアゲイリー・バートンの熱演はある意味『デュエット』の衝撃を超えてしまったと思う。

 そう。新たなる感動の波が押し寄せてくる。涙が止まらない。個人的にチック・コリアゲイリー・バートンを人に奨めるのならば『イン・コンサート』で良いと思うが,自分一人で楽しむのなら『ネイティヴ・センス』が一番かなぁ。
 勿論,チック・コリアゲイリー・バートンデュエットは,その全てが大名盤であるし,体調とか天候とかで,その日の1枚は変わるものだが,それでも『ネイティヴ・センス』を選ぶ確率が一番高い。

 昔を懐かしむでもなく,未来に思いをはせるでもない。現在進行形の“ジャズの伝統芸能”チック・コリアゲイリー・バートンの『ネイティヴ・センス』は,事の結末,ストーリーが分かっているのに聴き飽きない。

NATIVE SENSE-2 全曲素晴らしいのだが,ミーハーな管理人としては,1曲目から5曲目までの“馴染みの曲”がド頭から連続で流れ出してくるところが『ネイティヴ・センス』最大のお気に入り。チック・コリアの有名レパートリーをゲイリー・バートンデュエットでどう表現するかが最大の関心事であったが,全く期待を裏切らない素晴らしい演奏ばかりである。

 特に【LOVE CASTLE】におけるゲイル・モランスキャットをなぞったゲイリー・バートンの“ルンルンすぎる”ヴィヴラフォンが最高に可憐でキュート!

 “空白の17年間”の呪縛が解けたのか,次のリリースは感覚が狭まり『ライク・マインズ』『ランデヴー・イン・ニューヨーク』『ニュー・クリスタル・サイレンス』『ホット・ハウス』と,やや乱発気味?にリリースが続くこととなる。
 でも,もっともっと! まだまだ聴きたい! 聴き足りない! チック・コリアゲイリー・バートンによるデュエットなら商業主義の乱発であっても大歓迎なのである。

  01. Native Sense
  02. Love Castle
  03. Duende
  04. No Mystery
  05. Armando's Rhumba
  06. Bagatelle #6
  07. Post Script
  08. Bagatelle #2
  09. Tango '92
  10. Rhumbata
  11. Four in One
  12. I Love You Porgy

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1997年発売/MVCL-24003)
(ライナーノーツ/大村幸則)

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天野 清継 / ナバホ トレイル4

NAVAJO TRAIL-1 「『アズール』再び…」のCD帯を見ただけでレジへと直行した『NAVAJO TRAIL』(以下『ナバホ トレイル』)。
 そう。別所哲也が「ハムの人」なら天野清継は「【AZURE】の人」なのである。【AZURE】の12年振りの再演【AZURE IN SANTA FE】を外せるわけがないのである。

 大注目の【AZURE IN SANTA FE】は,ストリングスとのリ・アレンジな豪華なバラード。結構派手目な分厚いメロディーは,ちょっと演りすぎたかも?
 でもこんな“BGMっぽくない”【AZURE】が聴いてみたかった。コテコテに【AZURE】の世界を掘り下げてくれた【AZURE IN SANTA FE】のリ・アレンジものが好みである。

 「カシオペア育ち」の管理人だから「焼き直し」は何度でも! 次は【AZURE】のリ・アレンジのリ・アレンジも待っていま〜す!

 …という感じで【AZURE IN SANTA FE】をヘビロテしてから,アルバム全体を聴き始めた『ナバホ トレイル』が,管理人にとって“1粒で2度おいしい”愛聴盤になった。

 その秘密は,則竹裕之松本圭司河野啓三のクレジット…。
 そう。『ナバホ トレイル』が“スクェアっぽい”のはこの御三方のおかげである。天野清継が“安藤正容っぽく”聴こえる瞬間があったのだ。
 1度そう聴こえてしまったらもう大変! 天野清継安藤正容が被ってどうしようもない!

NAVAJO TRAIL-2 それも特に『NEW−S』とピンポイントで被ってしまう。『ナバホ トレイル』に大ヒット曲【AZURE IN SANTA FE】有り。『NEW−S』に大ヒット曲【MEGALITH】有り。

 『ナバホ トレイル』には【ガーティの夢】【真夏のためいき】【YOUR RESTLESS EYES】【MIDNIGHT CIRCLE】【THE SUMMER OF ’68】【ROMANTIC CITY】っぽい曲も入っている。

 これって病気? それとも「うんうん」? 安藤正容のフォロワーなら『ナバホ トレイル』を聴くべきである。

 だ・れ・か・管理人の中でループする,天野清継安藤正容天野清継,の流れを止めておくれ〜!

  01. Canyon Road
  02. AZURE in Santa Fe
  03. Someday We'll All Be Free
  04. My Cherie Amour
  05. NAVAJO TRAIL
  06. A Nightingale Sang in Berkeley Square
  07. Rumba AMO
  08. Breath Taking
  09. Shiosai
  10. KYOTO

(ブロー・ウィンド・レコード/BLOW WIND RECORDS 2003年発売/BWCP-1010)

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チック・コリア・アンド・フレンズ / バド・パウエルへの追想4

REMEMBERING BUD POWELL-1 “ジャズ・ジャイアントチック・コリアの初めてのトリビュート・アルバム。対象は同じピアノの“ジャズ・ジャイアントバド・パウエルへのトリビュートREMEMBERING BUD POWELL』(以下『バド・パウエルへの追想』)。

 バド・パウエルへのトリビュートを制作するにあたり,チック・コリアバド・パウエルと同じピアニストとしての土俵には上がらず,アレンジャーとしてのアプローチを重視している。
 そう。『バド・パウエルへの追想』のアイディアの決め手は,チック・コリアの個人名義を名乗らないという決断であろう。

 『バド・パウエルへの追想』を「チック・コリア・アンド・フレンズ名義」とすることで,チック・コリアピアノは“引き気味”のリズム・セクションの1つとして参加している。
 前に出るのはのスーパー・スター軍団の面々。トラック毎にロイ・ヘインズドラムクリスチャン・マクブライドベースケニー・ギャレットアルトサックスジョシュア・レッドマンテナーサックスウォレス・ルーニートランペットチック・コリアの“イマジネーション通りに”前に出ている。

REMEMBERING BUD POWELL-2 老練の“大御所”ロイ・ヘインズと若年寄の“大御所”クリスチャン・マクブライドのリズム隊と“同列に機能する”チック・コリアピアノがリズミック。
 メロディアスを一手に引き受けたのが,伝統派に属するジョシュア・レッドマンウォレス・ルーニーの気持ちの入ったアドリブと,ケニー・ギャレットのアバンギャルドなアドリブである。単発であっても曲全体とのハーモニーが感じられる。

 実に素晴らしい3管ブラス隊の名演である。この3人のソリストが一堂に会する機会もまたとない。これぞチック・コリアが“狙った”バド・パウエルへのトリビュート効果!
 バド・パウエルの曲を演奏するとなると,ジョシュア・レッドマンウォレス・ルーニーの温度が上がっていく! 目の前で吹き鳴らされているかのような大迫力! やっぱり情熱とスケールのケニー・ギャレット〜!

 この3管ブラス隊の一目惚れしてしまいそうな美しいアンサンブルこそが“アレンジャー”チック・コリアの大仕事であった。

REMEMBERING BUD POWELL-3 正直,管理人はこれまでチック・コリアピアノバド・パウエルからの影響を感じたことはなかったが,今回の『バド・パウエルへの追想』を聴き通してみた感想も同じであった。

 そもそもチック・コリアバド・パウエルはタイプとしては対極に位置している。その「異質な存在感」が殊の外,バド・パウエルへの興味をかきたてるのだろう。

 そう。『バド・パウエルへの追想』の真実とは“ジャズ・ピアニスト”としてのバド・パウエルを排除した「元ネタとしてのバド・パウエルの作品集」であって,チック・コリアの完全オリジナル・タッチで仕上げられている。

 ズバリ『バド・パウエルへの追想』とは,チック・コリアが,バド・パウエルを「空想」し「追想」した“フィクション”上のトリビュート
 ゆえに,実在のバド・パウエルの世界がチック・コリア流に“歪曲”されているのだが,出来上がりを眺めてみると,これこそがバド・パウエルの「亡霊」であって「追想」だと,チック・コリア唯一のオリジナル【BUD POWELL】で確信する。

REMEMBERING BUD POWELL-4 そう。バド・パウエルの曲ではない【BUD POWELL】こそが,真実のバド・パウエルの世界である!

 ただし『バド・パウエルへの追想』は,チック・コリアが「バド・パウエル研究」の成果を披露するためのアルバムであって「他のバド・パウエル研究家」との決定的な差をアピールしたかったように思える。

 世界的な権威として「バド・パウエルと来ればチック・コリア!」との名声を高めたかったんだろうなぁ…。

  01. Bouncin' With Bud
  02. Mediocre
  03. Willow Grove
  04. Dusk In Sandi
  05. Oblivion
  06. Cleopatra's Dream
  07. Bud Powell
  08. I'll Keep Loving You
  09. Glass Enclosure
  10. Tempus Fugit
  11. Celia

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1997年発売/MVCR-247)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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今田 勝 / アンダルシアの風4

ANDALUSIAN BREEZE-1 嘘か誠か?今田勝の【アンダルシアの風】に,あの勝新太郎が歌詞をつけて歌おうとした,なるウワサがあった。
 これって妙に説得力がある。信ぴょう性を感じる。実現していたら松岡直也作,中森明菜の【ミ・アモーレ】に並ぶ大ヒット曲が誕生していたのかもしれない。

 実はこのエピソードに「ジャズ・ピアノの詩人」と称された今田勝の個性が表現されていると思う。「重厚なのに軽やかな音」という意味不明な表現が“一番しっくりくる”独特なサウンドは,今田勝の作曲センスの賜物にあった。
 そんな今田勝の個性が色濃く発揮されたのが,4ビートから離れ,リズミックな可能性の拡大を目指した「今田勝&ナウイン」へと続く80年代のフュージョン路線の名盤群であろう。

 そのスタートとなる一番手こそが,上記,勝新太郎のウワサの発信源となった【アンダルシアの風】収録の『ANDALUSIAN BREEZE』(以下『アンダルシアの風』)である。

 『アンダルシアの風』は,ピアノ今田勝ベース古野光昭ドラム守新治ピアノトリオに,曲毎にゲスト参加するパーカッション今村祐司ギター渡辺香津美が加わった,ジャズでもなくフュージョンでもない“未完成のクロスオーヴァー”!

 全6曲の全てがサンバでありラテンなのだが『アンダルシアの風』の前後を聴き比べてみると,そんなリズムの変化以上に今田勝の音楽の「イ・ロ・ハ」の変化が耳に残る。
 ズバリ,今田勝が“クロスオーヴァー”で追求したのは「メロディー楽器のアンサンブル」だと思う。

ANDALUSIAN BREEZE-2 『アンダルシアの風』について語られる時,決まって今田勝以上に,渡辺香津美の【ANDALUSIAN BREEZE】【MORNING DREAM】でのアコースティックギターや【TOUCH AND GO】でのエレクトリックギターについて語られるが,それは尤もなことであって,渡辺香津美の「ノスタルジック」で「スパニッシュ」で「メランコリック」なメロディーこそが“完成されたフュージョン”なのだから…。

 渡辺香津美の“完成されたフュージョン”に刺激された,今田勝の“未完成のクロスオーヴァー”が,いかにも「ジャズとの決別宣言」のように響くあたりが“最高に美味しい”!
 今田勝の,アドリブではなくアンサンブルを重なり合わせてフュージョンさせた“未完成のクロスオーヴァー”が歌っている!

 そう。今田勝の今(NOW)+勝(WIN)=「NOWIN」!
 『アンダルシアの風』は“スペイン音階のを味方につけた”今田勝の大勝利でのエンディング〜!

  01. ANDALUSIAN BREEZE
  02. MORNING DREAM
  03. GULF STREAM
  04. TOUCH AND GO
  05. SAMBA DEL CENTAURO
  06. NOWIN

(アルファ/ALFA 1980年発売/ALCR-180)
(ライナーノーツ/山口弘滋)

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チック・コリア・エレクトリック・バンド / ライヴ・フロム・エラリオズ5

LIVE FROM ELARIO'S-1 「エレクトリック・バンド」が解散しても,管理人にとってチック・コリアと来れば「エレクトリック・バンド」のことであった。
 現在進行形のチック・コリアをフォローしつつも,特に『THE CHICK COREA ELEKTRICK BAND』『EYE OF THE BEHOLDER』『BENEATH THE MASK』の3枚を聴き続けていた。

 そんな折に届けられた「エレクトリック・バンド」の“アーカイブ音源”『LIVE FROM ELARIO’S』(以下『ライヴ・フロム・エラリオズ』)が,管理人の「エレクトリック・バンド」好きに「トドメ」を刺した! 心に突き刺さってきた! 決定的な大名演に,あ〜,出会えて良かった!

 もはや帰っては来ない「エレクトリック・バンド」との美しい思い出が『ライヴ・フロム・エラリオズ』の登場で,日に日に美化されていった。「エレクトリック・バンド」が神格化されていった。とにかくシビレた。とにかくカッコイイ。

 『ライヴ・フロム・エラリオズ』は,キーボードチック・コリアベースジョン・パティトゥッチドラムデイブ・ウェックルの3人による「エレクトリック・バンド」結成直後のファースト・ギグ!
 エレクトリックピアノトリオの「無限大の可能性」が音として現われた瞬間が記録された超・名盤である。

LIVE FROM ELARIO'S-2 こんなにも“エキサイティング”なチック・コリアキーボード・プレイは「エレクトリック・バンド」名義の緒作だけではなくチック・コリアの全ディスコグラフィを見渡しても,他に類を見ない。
 その全ては“驚異の新人”ジョン・パティトゥッチデイブ・ウェックル組みの“機械体操チックな”リズム隊に行き着く。

 ここまで正確なリズムで暴れまくるリズムにしてタイトなリズム隊も前例がない。大袈裟に表現すれば,ジョン・パティトゥッチは「ジャコパス以来の革命児」であり,デイブ・ウェックルは「スティーヴ・ガッド以来の革命児」であろう。

 「エレクトリック・バンド」登場以前のベーシストドラマーとは明らかに違う“傍若無人”なクオリティ!
 どこでどう突然変異してきたのか,正体不明の新人リズム隊に“刺激されまくった”チック・コリアの“高揚感”がモロに伝わってくる! “電化ピアノトリオ”が踊り狂っている!

LIVE FROM ELARIO'S-3 チック・コリアの“目の玉”が飛び出さんばかりの光景が目に映る! 額に汗して手に汗してエレクトリックピアノと格闘している! 世界一のキーボード・プレイヤーとしての自分自身と格闘している!

 そう。『ライヴ・フロム・エラリオズ』のハイライトは,チック・コリアの“悶絶”である! チック・コリアが,嬉々とした表情で嬉々とした声を発している!
 こんなにもフレッシュで生々しいキーボードでのアドリブは『RETURN TO FOREVER』以来の大事件なのである!

 『ライヴ・フロム・エラリオズ』の素晴らしさを語ろうにも,もはや擬音しか出てこない! くぅ〜! うっひょ〜! か〜っ!

PS 『ライヴ・フロム・エラリオズ』のおかげで,エレクトリックジャズがあんましだった『INSIDE OUT』も好きになりました。

  01. TWEEK
  02. A JAPANESE WALTSE
  03. GINKAKUJI (SILVER TEMPLE)
  04. MALLORCA
  05. MARIMBALA
  06. WHAT IS IT?
  07. MALAGUENA
  08. FUSION BLUES (GOT A MATCH?)

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1996年発売/MVCR-239)
(ライナーノーツ/チック・コリア,小川隆夫)

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宮里 陽太 / プレジャー4

PLEASURE-1 サックス界の「ニュー・スター」宮里陽太のことは知っていた。TOKYO FM系「山下達郎/サンデー・ソングブック」で知っていた。

 番組の中でツアー情報のついて語る度に,山下達郎氏が宮里陽太のことを,殊の外“絶賛”しているように感じていた。
 管理人は山下達郎の音楽は,それこそ氏のラジオでしか聞かないのだが,音楽マニアとしての山下達郎の“耳”については信頼している。山下達郎はコアな音楽マニアにしてコアなオーディオ・マニアである。

 そんな山下達郎が宮里陽太ソロデビューを前面バックアップ。エグゼクティヴ・プロデューサーを務めライナーノーツまで書いている。「1枚目はストレート・アヘッドなジャズ・アルバム」という指令を下している。こ・れ・は…。

 しかし「山下達郎/サンデー・ソングブック」でオンエアされた「売り出し中」の『PLEASURE』(以下『プレジャー』)特集に,管理人の触手は動かなかった。
 ここはサラッと書かせていただくが,管理人は『プレジャー』をプレゼントとしていただいた。某友人からの結婚祝いの品である。○久保くん,ありがとう。プレゼントとしていただかなければ,自分でお金を払って聴くことはなかったと思うよっ。

 結論から語れば『プレジャー』は聴いてよかった! 楽しめた! ただし「ストレート・アヘッドなジャズ・アルバム」としてではない。宮里陽太の本質である「スムーズ・ジャズ」寄りのアルバムとして楽しめた!

 ズバリ『プレジャー』の成功は共演した,ピアノジョン・ビーズリーデイビッド・キコスキーベースリューベン・ロジャースドラムジェフ“テイン”ワッツの,それはそれは見事なサポートのおかげである。
 ジョン・ビーズリーにしてもデイビッド・キコスキーにしてもリューベン・ロジャースにしてもジェフ“テイン”ワッツにしても,ツボを押さえた軽めの演奏で,決して宮里陽太の前には出て来ない。

PLEASURE-2 完璧にお膳立てされた宮里陽太が,オーソドックスなジャズ・サックス,を吹き鳴らしている。“生真面目に”あるいは“律儀に”バックの完璧な“振り”を拾っていく。

 ただし,宮里陽太アドリブは,ポップスとか歌もので映える「1小節での爆発型」であって,サイドメンが廻してきた長尺のロング・ソロの場面では,オーソドックスに行こうと意識した際の手癖なのだろうか? お決まりのフレージングが散見される。

 思うに,本当の宮里陽太は“ジャズの人”ではなくて“ジャズから遠い人”なのでは? 本当の宮里陽太は“ジャズもできる”オールランド・プレイヤー?
 山下達郎の狙いとは逆に『プレジャー』における,ストレート・アヘッドなジャズ・フォーマットが,かえって宮里陽太の「非ジャズ的な個性」を伝えているように思う。

 『プレジャー』で,宮里陽太が本当に演りたかったのは,ジャズスタンダード集ではなく,オリジナル集だったのでは? 宮里陽太に「ジャズが似合う」は決め付けでは? 単純に山下達郎の好みの押し付けでは?

 そう感じてしまうくらいに『プレジャー』から聴こえてくる宮里陽太のフレージングは翳りの少ないフュージョン・サックス。【ENGLISHMAN IN NEW YORK】なんかは「スムーズ・ジャズ」一発であろう。歌ものの解釈にこそ宮里陽太フュージョン・サックスの個性が輝いている。

PLEASURE-3 宮里陽太の本意ではなく用意された,当代随一のサイドメン4人。ジョン・ビーズリーデイビッド・キコスキーリューベン・ロジャースジェフ“テイン”ワッツとのレコーディングなど,世界中のサックス・プレイヤーにとっては“夢のまた夢”。このメンツは渡辺貞夫に用意されるべきサイドメンである。

 その意味で「最初にして最後のゴールを迎えてしまった」宮里陽太は不幸である。宮里陽太が山下達郎に潰されてしまった?
 いいや,宮里陽太にはフュージョン・サックスの個性がある。山下達郎のことだ。セカンド・アルバムにも『プレジャー』と同様の超ビッグなサイドメンを連れてくるに決まっている。

 その時こそが宮里陽太の「リベンジ」のチャンス。「スムーズ・ジャズ」の才能を爆発させる“男の大勝負”が迫っている!

PS 「PLEASURE-3」は(大○保くんの言葉によると)山下達郎のLIVE会場で,特典として物販されていた宮里陽太の直筆サインだそうです。大久○くん,ありがとう!

  01. Just Friends
  02. Castle Peak Hotel
  03. Soul Eyes
  04. KATS
  05. liar
  06. There Is No Greater Love
  07. Englishman In New York
  08. Four
  09. Happy Tree
  10. Good morning!
  11. mischievous
  12. horizon blue

(ムーン・レコード/MOON RECORDS 2014年発売/QYCL-10003)
(ライナーノーツ/山下達郎)

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チック・コリア・カルテット / タイム・ワープ4

TIME WARP-1 コンセプト・アルバム好きのチック・コリアであるが,その多くはチック・コリアが敬愛するL・ロン・ハバードの作品をインスピレーションの源としている。
 なんと!コンセプト・アルバムではない『EXPRESSION』でのソロ・ピアノでさえ,L・ロン・ハバードからの影響を公言する信者である。

 そんなチック・コリアが,L・ロン・ハバードではない“自力の”コンセプト・アルバムを作ったことがある。
 それがソプラノサックステナーサックスボブ・バーグウッドベースジョン・パティトゥッチドラムゲイリー・ノヴァックとのカルテット編成でレコーディングされた『TIME WARP』(以下『タイム・ワープ』)である。

 チック・コリアカルテット編成ということで『タイム・ワープ』を『フレンズ』や『スリー・クァルテッツ』と比較する輩が多いが,そんなジャズ批評家の記述は無視して構わない(まっ,管理人の意見を鵜呑みにするのもお奨めできませんけど…)。
 仮に百歩譲って『タイム・ワープ』をチック・コリアの過去の緒作と比べるとするならば,カルテット編成だからではなく,コンセプト・アルバムとしての「ファンタジー三部作」とかリターン・トゥ・フォーエヴァーの緒作と比べるのが自然な流れだと思っている。

 特に『タイム・ワープ批評の定番である『スリー・クァルテッツ』との対比は,ボブ・バーグとライバル関係にあったマイケル・ブレッカーとの比較として語られているが“見当違い”も甚だしい。
 ゆえに『タイム・ワープ批評における「マイケル・ブレッカー VS ボブ・バーグ」の論調は全てスルーさせていただきたい。あしからず。

 そう。『タイム・ワープ』の聴き所は,L・ロン・ハバード絡みではない,チック・コリア! コンポーザーでありアレンジャーであり“サウンド・クリエイター”である「裏方」としてのチック・コリアと「演者」としての“ジャズ・ピアニストチック・コリアの「プレイング・マネージャー」ぶりが最大の聴き所!
 ただし,個人的にはアーティスティックなチック・コリアは好きではないし,何よりチック・コリアの“頭の中が透けて見える”かのような「微妙なアルバム」の最右翼だとも思っている。

 さて,チック・コリアは『タイム・ワープ』と題するオリジナルの寓話を創作するに当たり「組曲」のスタイルを選択した。
 好きか嫌いかは別にして,チック・コリアは「組曲」の聴かせどころを心得ている。構成の上手さと充実したグループ・サウンド,そこへ彩りを差し込むリリカルに響くピアノがドラマティックに展開していく。
 多作であるチック・コリアのアルバム群の中にあって『タイム・ワープ』ほど全体の統一感があるアルバムは多くはない。

 それでいて『タイム・ワープ』は,ボブ・バーグのアルバムのようでもあり,ジョン・パティトゥッチのアルバムのようでもあり,ゲイリー・ノヴァックのアルバムのようでもある。
 これこそが「プレイング・マネージャー」チック・コリアとしての成功であり『タイム・ワープ』を「不思議の国のアリス」を題材とした『THE MAD HATTER』や【HUMPTY DUMPTY】の世界へと通ずる,チック・コリア版“マザー・グース”の1つと称するにふさわしいレベルにまで押し上げる原動力となっている。

TIME WARP-2 特にチック・コリア“らしさ”を感じる,難解さと美しさを行き来するメロディー・ライン。そして「組曲」と「組曲」の空間を埋める4人のソロとのバランスが素晴らしい。

 例えば,ゲイリー・ノヴァックドラムソロでラストを締める【テレイン】と【ニュー・ライフ】が,とにかく耳を傾けてみたくなる音楽的なドラミングが最高である。
 1つの独立した曲となっているボブ・バーグの【テナー・カデンツァ】に,ジョン・パティトゥッチの【ベース・イントロ・トゥ・ディスカヴァリー】に,チック・コリアの【ピアノ・イントロ・トゥ・ニュー・ライフ】がこれまた素晴らしい。全てのセクションが『タイム・ワープ』という寓話の主題と連動している。

 この卓越したバランス感覚こそが「プレイング・マネージャー」チック・コリアの“天才”の証し。個人的には『タイム・ワープ』が流れ出すと,アコースティックジャズを聴いているというよりも,古い映画を見せられているような感覚に襲われてしまう。

 だ・か・ら,いつまでたっても『タイム・ワープ』は,チック・コリア版“マザー・グース”止まりなんだよなぁ…。

  01. ONE WORLD OVER (PROLOGUE)
  02. TIME WARP
  03. THE WISH
  04. TENOR CADENZA
  05. TERRAIN
  06. ARNDOK'S GRAVE
  07. BASS INTRO TO DISCOVERY
  08. DISCOVERY
  09. PIANO INTRO TO NEW LIFE
  10. NEW LIFE
  11. ONE WORLD OVER

(ストレッチ・レコード/STRETCH RECORDS 1995年発売/MVCR-219)
(ライナーノーツ/チック・コリア,山下邦彦)

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スイングジャーナル読者が選ぶジャズ名盤ベスト100-17

 スイングジャーナル誌2001年1月号で実施された読者アンケート企画「21世紀に残したい読者が選ぶ名盤ベスト100」のスーパーカウントダウン。それが「スイングジャーナル読者が選ぶジャズ名盤ベスト100」。
 今回は16〜20位の発表です。

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ウェイ・アウト・ウエスト★20.ウェイ・アウト・ウエスト
ソニー・ロリンズ


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コンプリート・ヴィレッジ・ヴァンガードの夜 Vol.1★19.ビレッジ・バンガードの夜
ソニー・ロリンズ


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プリーズ・リクエスト★18.プリーズ・リクエスト
オスカー・ピーターソン


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処女航海★17.処女航海
ハービー・ハンコック


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コンプリート・スタジオ・レコーディングス・オン・サヴォイ・イヤーズ VOL.1★16.チャーリー・パーカー・オン・サヴォイ
VOL.1
チャーリー・パーカー


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 ソニー・ロリンズの代名詞“ピアノレス”の2枚の名盤ウェイ・アウト・ウエスト』と『ビレッジ・バンガードの夜』がランクイン

 ソニー・ロリンズライブ盤『ビレッジ・バンガードの夜』は『ウェイ・アウト・ウエスト』でのテナートリオの成果である。
 『ウェイ・アウト・ウエスト』でのチャレンジは『ビレッジ・バンガードの夜』でも続いており,1日2ステージの「昼の部と夜の部」ではベーシストドラマーも違うメンバーで演奏されている。
 やっている方向性は確信しているのに,まだまだ可能性を手探りしている。

 『ビレッジ・バンガードの夜』におけるソニー・ロリンズテナーサックスは“アドリブの天才”が爆発しており,異常に張り詰めた空気感が支配するビレッジ・バンガードの“緊張した息遣い”までが聞こえてくる。

 そう。ソニー・ロリンズと2組のリズム・セクション(特にエルヴィン・ジョーンズ)との真剣勝負のその全てが音楽的!
 やはりソニー・ロリンズは“ワンマン”である。ゆえにリズム・セクションは触媒である。
 個性の異なる2組のベースドラムの“音楽”を受け止め,その上で優しく包み込み,アンサンブルを付けていく。

 ソニー・ロリンズの代名詞“ピアノレス”は「テナーサックスの自由度」について語られるが,そうではない。
 何をやっても“音楽”に変えてくれるソニー・ロリンズの“懐に抱かれた”「ベースドラムの自由度」の方が恩恵としては大きいのである。

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