アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2015年12月

デイヴ・ブルーベック / デイヴ・ディグズ・ディズニー5

DAVE DIGS DISNEY-1 今や,ディズニーのアニメ主題歌は,ウォルト・ディズニーの手を離れ,映画音楽の枠を超え,世界中のジャズメンが愛する“ジャズスタンダード”としての趣きを帯びている。

 ディズニー・アニメをほとんど見ない管理人は【不思議の国のアリス】が聴こえてくるとビル・エヴァンスの【不思議の国のアリス】を思い浮かべてしまうし【いつか王子様が】が流れているとマイルス・デイビスの【いつか王子様が】と比較してしまう体質が出来上がっている。
 もはや,元ネタがディズニー映画にあることなど意識することはない。

 そんな“ジャズスタンダード”としてのディズニー・ソングの“元祖”にして“決定盤”が,デイヴ・ブルーベックの『DAVE DIGS DISNEY』(以下『デイヴ・ディグズ・ディズニー』)である。
 そう。本気ではない,企画ものの『デイヴ・ディグズ・ディズニー』が,今では「ジャズの王道」を歩んでいるのだ。

 これほどまでに“ディズニージャズ”が市民権を得たのは『デイヴ・ディグズ・ディズニー』の名演があればこそ!  耳馴染みの曲が名アレンジャーの題材とされたジャズって相当にカッコイイのだ!

 この全てはデイヴ・ブルーベック有する「POP感覚」が「火付け役」を果たしている。デイヴ・ブルーベックの「万人受けするのポピュラリティ」が“敷居の高い”ジャズを,分かりやすくも聴き応えのあるポピュラー音楽の1つとして提示している。

 これぞ,辛気臭くない,もう1つのジャズの誕生であった。『デイヴ・ディグズ・ディズニー』のジャケット写真の笑顔の如く,清く明るくほのぼのとしたジャズも聴いて楽しいものなのだ。

DAVE DIGS DISNEY-2 管理人の結論。『デイヴ・ディグズ・ディズニー批評

 『デイヴ・ディグズ・ディズニー』は,リラックスした雰囲気の中で挿し込まれてくる「原曲の夢見るような“甘さ”を,いかにギリギリまで崩せるか」な,ジャズメンの心意気を感じさせる名演集!
 ブロック・コードを多用したリズミカルなピアノに乗せられ,気付けば「キャッキャキャッキャ」と童心の頃の自分に帰っている…。

 ゆえに『デイヴ・ディグズ・ディズニー』のようなアルバムは,何分何秒のアドリブが凄い,とは聴いてはいけない。
 音楽って元来楽しむものでしたね。忘れかけていたそんな童心を思い起こさせてくれる名盤です。愛らしいアルバムです。

  01. Alice in Wonderland
  02. Give a Little Whistle
  03. Heigh-Ho
  04. When You Wish Upon a Star
  05. Someday My Prince Will Come
  06. One Song

(CBSソニー/CBS SONY 1957年発売/SRCS-9198)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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東京ザヴィヌルバッハ / A8V(ON THE EARTH)5

A8V(ON THE EARTH)-1 2015年も年の瀬である。この1年間を総括する,さまざまな章典が発表される時季である。2015年の漢字一文字は「安」。「安心してください。穿いてますよ」。とにかく明るい安村さん。

 別に管理人はこのような「年度代表馬」的な特に話題に関心があるわけではない。音楽好きとしては「レコード大賞」ぐらいである。
 そういうことではなくて,今夜の東京ザヴィヌルバッハの『A8V(ON THE EARTH)批評の主役である「M」について考えていると,ついつい「タイム誌」が選定した“マシン・オブ・ザ・イヤー”を思い出さずにはいられなかったからだ。

 そう。「タイム誌」は1982年までは「その年に最も活躍したり,話題になったりした人物」として“マン・オブ・ザ・イヤー”を毎年選定していたが,1983年には初めて“マン・オブ・ザ・イヤー”の受賞者は選定されなかった。
 なぜなら1983年に「最も活躍したり,話題になった」のは人間ではなくコンピュータ。同じ「M」でもMANではなくMACHINE。“マシン・オブ・ザ・イヤー”だったのだ。

 管理人が『A8V(ON THE EARTH)』を聴いた時の“衝撃”こそ,正しく「M」の音楽性にあった。
 これこそ“マシン・オブ・ザ・イヤー”の「M」であり“ミュージック・オブ・ザ・イヤー”の「M」を連想させてくれたのだ! 恐るべし,自動変奏シーケンス・ソフトの「M」!

 ベリー・ビンテージ・ジェネレーティブ・シーケンス・ソフト「M」の作り出す,無重力サイバー・ファンクとも多重力とも言える不定形ビートの「波形」が,菊地成孔坪口昌恭の2人のユニット=東京ザヴィヌルバッハの想像力を大いに刺激している。

 『A8V(ON THE EARTH)』こそが,ジャズアブストラクトエレクトロニカアフリカ民族音楽を消化した人間と機械が「がっぷり四つ」に組んだ生み出された,新しい無国籍グルーヴ・アルバム。
 “発熱度の高い”エレクトロジャズフュージョンを志向している。

 そう。『A8V(ON THE EARTH)』は,東京ザヴィヌルバッハ「第三のメンバー」である「M」の飛躍的な進歩と,ついに「M」を手なずけることに成功した坪口昌恭のユニークなアイデアが“ぶつかり合って”生まれた瞬時のリズムと楽器の綾が聴き所!

 普通に聴いていると「なんじゃこりゃ」なエレクトロジャズであろうが「M」の作り出す,微妙なランダム感やコラージュ感のあるリズムに乗った菊地成孔サックスがうなり,坪口昌恭が操るシンセサイザーが“妖しく輝くカッコ良さ”に惹かれてしまう。

A8V(ON THE EARTH)-2 ズバリ,管理人が長年追い求めていた“ストイックな抽象のカッコ良さ”が『A8V(ON THE EARTH)』の中にある。ミニマルで難解な音の中でメロディアスなサックスが登場したときの気持ち良さが半端ない!

 各曲の中での仕掛けられている不思議なズレや変調に新しい発見がある。「音の足し引き」が絶妙であって,音楽の中に知らず知らずの内に即興を求める“生身の人間業”を超えてきたと感じてしまった。変則拍子やポリリズムを分析なしでグイグイとノってしまった。

 かつてコンピュータを“マシン・オブ・ザ・イヤー”に選定した「タイム誌」はこう警告している。「今まで自分の頭の中で行なっていた事柄をコンピュータに頼って行なうようになると,人間の頭脳には何が起こるだろうか。コンピュータのメモリーに記録された辞書によって簡単に誤字を修正できるのなら,正しい字を学ぶことにはどんな利点があるだろうか。もし頭脳が頭を使う作業から解放されれば,人々は大切な知識を追求することに走るだろうか。それともTVゲームにだらだらと費やす時間を増やすだろうか。コンピュータは頭脳の働きを本当に刺激するのだろうか。それとも頭脳が行なう仕事のほとんどをやってしまうことによって頭脳をだめにしてしまうのだろうか」。

 「M」の登場により,現代のジャズ・シーンは「タイム誌」の警告した仮想現実の危険にさらされている。
 近未来のジャズが「M」の奴隷となりませんように…。

  01. HORIZONING
  02. WATCH
  03. BirdConduct 4
  04. INDUSTRIAL
  05. RITUAL
  06. ALIENS 8 VIEWS
  07. BirdConduct 3
  08. HOUSE

(ボディー・エレクトリック・レコーズ/BODY ELECTRIC RECORDS 2004年発売/EWBE-0010)

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カーティス・フラー / ブルースエット5

BLUES ETTE-1 世に名盤と名の付くものは数多く存在する。しかし,ジャズの初心者にも上級者にも分け隔てなく愛される名盤というのはそうあるものではないのだが,数少ない名盤の1つが『BLUES ETTE』(以下『ブルースエット』)であることに,異論の余地はないだろう。

 それくらい多くのジャズ・ファンから愛されている『BLUES ETTE』(以下『ブルースエット』)を,モダン・ジャズを代表する「古典」と呼ぶことにしよう。

 そう。『ブルースエット』は,モダン・ジャズを語る上で“絶対に外すことのできない”の名盤である。
 しかし,ジャズ名盤ランキングのTOP10に食い込むことはない。超人気盤というわけではない。ただし,間口を広げたTOP50ぐらいになると必らずランクインしてくる。『ブルースエット』は,そんな立ち位置を占めている。こんな「古典」的名盤って『ブルースエット』の他には『モーニン』ぐらいしか思いつかないよなぁ。

 『ブルースエット』の,カーティス・フラートロンボーンベニー・ゴルソンテナーサックスによる「中低域ほんわか2管」の心地良さと懐かしさは,風呂場で歌う鼻歌がエコーがかかって気持ち良い感じ? あるいは温泉の露天風呂に浸かっているような感じ?

 【FIVE SPOT AFTER DARK】の“ウォームでソウルフルな”ゴルソン・ハーモニーを口ずさんでいると,自然と腰がムズムズし始める〜。おお,こりゃいいわ〜!

BLUES ETTE-2 【FIVE SPOT AFTER DARK】の1曲の存在だけで『ブルースエット』の名盤は確定したも同然であろうが,いいや,どうしてどうして…。

 『ブルースエット』はアルバム1枚をじっくりと聴き通してほしい。そう。全曲がゴルソン・ハーモニー名演集である。モダン・ジャズが最もモダンに響いていた時代の名演集なのである。

 村上春樹が【FIVE SPOT AFTER DARK】を題材に,小説「アフターダーク」を描きたくなった気持ちも分かる気がする。
 そんなマイナーブルースでファンキーな音のブレンドに,リアル未体験世代なのに「良い時代だったなぁ」を実感する。

  01. FIVE SPOT AFTER DARK
  02. UNDECIDED
  03. BLUES-ETTE
  04. MINOR VAMP
  05. LOVE YOUR SPELL IS EVERYWHERE
  06. TWELVE-INCH

(サヴォイ/SAVOY 1959年発売/COCY-9006)
(ライナーノーツ/アラン・ステイン,小川隆夫)

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増崎 孝司 / IN AND OUT5

IN AND OUT-1 増崎孝司小野塚晃勝田一樹DIMENSIONの3人は,なかなかソロ・アルバムを出してくれない。
 その理由は,自分の演りたいことのほとんどがDIMENSIONの活動を通して実現できているからだろう。特段,ソロ・アルバムを出す意欲や目的や必要性を感じていないに違いない。

 ゆえに,増崎孝司ソロ・アルバム『IN AND OUT』は「DIMENSIONの活動とは無関係」。
 増崎孝司の『IN AND OUT』へのモチベーションは,無性に愛するギターを弾きまくりたくなった,の1点のみ。管理人にはそのように聴こえる。

 ズバリ『IN AND OUT』は「ギター・キッズ」増崎孝司としてのアルバムである。
 増崎孝司DIMENSIONのメンバーである前に“一人のギタリスト”であった。ジャムを演るのではなく丁寧に構築された“熱いギター”を前面に押し出している。

 『IN AND OUT』に,DIMENSIONの代名詞“超絶技巧”は一切出てこない。
 「ギター・キッズ」増崎孝司メロディーに合わせてトーンの異なる「ギター・七変化」を弾いている。こういう所に元スタジオ・ミュージシャンとしての増崎孝司の個性が感じられる。
 そう。『IN AND OUT』には,リード・ギター増崎孝司をサポートする,サイド・ギター増崎孝司が見え隠れしているのだ。

 ジェフ・ベック・キッズ&ラリー・カールトン・キッズとして名高いが増崎孝司であるが,個人的に『IN AND OUT』ではパット・メセニーからの影響を強く感じてしまった。
 安藤正容がそうであるように増崎孝司も“隠れ”パット・メセニー・ファンだったのか?

 『IN AND OUT』では,増崎孝司メロディーを弾いてソロも弾くのだが,パット・メセニーがそうであるように,それぞれのパートをそれぞれの気持ちで使い分けができている。ギター1本で見事にメロディーを重ねている。

IN AND OUT-2 『IN AND OUT』から伝わってくるのは「ギター職人」としての増崎孝司=「ギター・マエストロ」としての増崎孝司
 ギターという楽器を知り尽くした増崎孝司だからできる,最良のギター表現集! こんな曲はレスポール,あんな曲はストラトキャスター,アンプはこれでピックはこれでといった,選択の全てが完璧にハマッテいる。

 さて,先に「DIMENSIONの活動とは無関係」と書いてはみたが,結果として『IN AND OUT』に増崎孝司の“1人DIMENSION”を感じたりして…。
 小野塚晃キーボード・パートを増崎孝司ギターが埋める。勝田一樹サックス・パートを増崎孝司ギターが埋める。そんなDIMENSIONがお目見えする予感がしたりして…。

 うんうん。DIMENSIONの“最高傑作”『24』。『24』の大爆発の伏線が『IN AND OUT』にあると思う。

  01. Natural Spirits
  02. Let Me See Your Smile
  03. Fly Like The Wind
  04. Goodbye To You
  05. Blue Eyes
  06. In and out
  07. Flashback
  08. Shadows
  09. Voices
  10. Smash 2011

(ザイン/ZAIN RECORDS 2011年発売/ZACL-9050)

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コーネル・デュプリー / ティージン4

TEASIN'-1 スタジオ・ミュージシャンには,主役級のどんなリクエストにも応え得る“変幻自在なオーダーメイド”タイプと「俺はこれしか弾けないよ。それでもよければ弾いてあげる」的な“自分の音”で売るタイプに大別される。

 超弩級のスタジオ・ミュージシャンによるセッション・バンド=「スタッフ」の2枚看板ギタリストの1人,コーネル・デュプリーは当然後者。
 コーネル・デュプリーのブルージーなギターが楽曲の展開に大きな彩りを与えてくれる。オール・ジャンルの有名ミュージシャンが先を競って,コーネル・デュプリーの“あのギターの音”を欲した結果が,2500越えと数えられているスタジオ・ワークの参加数に表わされている。

 「スタッフ」のギタリストゆえ,コーネル・デュプリーフュージョンギタリストかと思いきや,コーネル・デュプリーほど,フュージョンギタリストのイメージから遠いフュージョンギタリストもいないと思う。
 事実「スタッフ」参加以前には,バリバリのR&B・ギタリストであり,ブルース・ギタリストであり,ソウル・ギタリストとして鳴らしていたのだ。

 コーネル・デュプリーのピックを使わない指弾きから生み出される独特のフレージングは一聴すると誰にでも簡単に真似出来そうに思えるのだが,意表をつくチョーキングとグリッサンドの組み合わせ,微妙にリズムをずらしながら小節の最後に帳尻を合わせる間の取り方,へんてこりんな和音の交え方など,コーネル・デュプリーの弾く微妙なニュアンスは絶対に誰も真似することが出来ない“リズムの権化”。

 そんな「オンリー・ワン」なカッティング・ギタリストコーネル・デュプリーソロ・アルバムがあることを知って,楽しみに聴き始めた『TEASIN’』(以下『ティージン』)に,あ・れ・れ?

 『ティージン』はコーネル・デュプリーソロ名義なのだから,当然,コーネル・デュプリーのリード・ギターが大フィーチャー!
 でも『ティージン』には,管理人の大好きなコーネル・デュプリーがいなかった。「リード・ギター」のコーネル・デュプリーにはグッと来なかった。
 そう。管理人はコーネル・デュプリーの「サイド・ギター」に惚れていただけだったのだ。その事に『ティージン』を聴いて初めて気付いてしまった。

TEASIN'-2 コーネル・デュプリーとは,たった一音のカッティングで音場全体を変えることにできる稀有な存在である。そんなコーネル・デュプリーに,長いギター・ソロは似合わない。というか,そもそもコーネル・デュプリーに長尺のギター・ソロを与える必要性などないのでは?

 『ティージン』でのコーネル・デュプリーは弾きすぎである。絶えずコーネル・デュプリーがメインで鳴っていると,有難味が薄くなる。
 管理人にとってコーネル・デュプリーとは,音の雑踏の中をかき分け無意識のうちに耳元に飛び込んでくるコーネル・デュプリーこそが「真のコーネル・デュプリー」だと思う。

 だから管理人は「スタッフ」において,エリック・ゲイルを前面に押し出し,サイドに回った時のコーネル・デュプリーに強く惹かれてしまったのだ〜。周りが大物であればあるほど輝くコーネル・デュプリーの“グルーヴしまくる”リズム・ギターが大好きだ〜。

  01. TEASIN'
  02. BLUE NOCTURNE
  03. JAMAICAN LADY
  04. FEEL ALL RIGHT
  05. HOW LONG WILL IT LAST
  06. WHAT WOULD I DO WITHOUT YOU?
  07. OKIE DOKIE STOMP
  08. PLAIN OL' BLUES

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1974年発売/WPCR-75374)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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神保 彰 / ゲット・アップ!4

GET UP!-1 神保彰ドラムエイブラハム・ラボリエルベースオトマロ・ルイーズピアノフランク・ギャンバレギターによる『FOUR COLORS』と同じメンバーによる,基本一発録りのスタジオ・ライブの第2弾『GET UP!』(以下『ゲット・アップ!』)。

 普通に考えたら『ゲット・アップ!』は『FOUR COLORS』の続編にあたるがそうではない。
 ズバリ『ゲット・アップ!』は,フランク・ギャンバレ野呂一生に見立てて作った,神保彰の「1人カシオペア」的なソロ・アルバムである。

 『ゲット・アップ!』の真実とは,活動休止中のカシオペア・ファンに捧げられた「カシオペア神保彰」が作ったソロ・アルバム。
 そう。カシオペアとして活動できない鬱憤を『ゲット・アップ!』で憂さ晴らししたソロ・アルバム。

 神保彰のスネアのロールからフランク・ギャンバレの“高速うねうね変態ギター”がリードするキメなんて,もろカシオペアしている。
 神保彰と化した神保彰野呂一生と化したフランク・ギャンバレを前にして,故郷ベネズエラでカシオペアのコピー・バンドを演っていたオトマロ・ルイーズが『FOUR COLORS』では使用しなかったシンセを意図的に取り出し向谷実と化している。凄いぞ!

 『ゲット・アップ!』のハイライトは,エイブラハム・ラボリエルベースである。櫻井哲夫ともナルチョとも異なるエイブラハム・ラボリエルが「カシオペアの三代目のベーシスト」しているのがたまらない!

 ライナーノーツの一節がとても気に入ったので引用させていただくと「ハイウェイを疾走するような都会的な洗練性を感じさせる,神保彰オトマロ・ルイーズフランク・ギャンバレの3人とは違い,泥を跳ね上げながら田んぼの中を駈けずり回るような,馬力と愛嬌を感じさせる」と書かれたエイブラハム・ラボリエルベースが,正しく泥臭さく,ちょっとやそっとじゃ折れそうにない骨太な安定感が後を引いた感じで聴き応えありあり〜。

GET UP!-2 メロディアスでPOPでキメが多いJ−フュージョンを,エイブラハム・ラボリエルオトマロ・ルイーズフランク・ギャンバレの非日本人が演奏すると,カシオペアで言えば,ハービー・メイソン・プロデュースの『EYES OF THE MIND』に近くなることが検証できた。
 神保彰ドラムがリズム・セクションの一部として,スッカスカの開放的なリズムを叩いたのは久しぶりのことであろう。

 神保さんって,カシオペアを一度辞めたはずなのに,ひょっこりとサポートとして出戻ってきたわ,活動休止中なのに「1人カシオペア」を作ってしまうわ…。
 管理人はそんなカシオペア・ラブリーな神保さんが大好きで〜す!

  01. Wicked
  02. Get Up!
  03. Where Are You Calling From?
  04. Fuse
  05. Tokyo Dreamin'
  06. Jin-Jin
  07. Promised
  08. Safari Run
  09. Silk Storm

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2008年発売/KICJ-531)
(ライナーノーツ/坂本信)

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マイケル・ブレッカー&クラウス・オガーマン / シティスケイプ5

CITYSCAPE-1 『CITYSCAPE』(以下『シティスケイプ』)とは,クラウス・オガーマン作のコンチェルトオーケストラ・アルバムである。

 全曲クラウス・オガーマンの作・編曲を鳴らすために自らタクトを振った,総勢64名のコンチェルトの客演として,キーボードウォーレン・バーンハートギタージョン・トロペイバジー・フェイトンベースエディ・ゴメスマーカス・ミラーパーカッションポウリーニョ・ダ・コスタドラムステーヴ・ガッドの主役級が多数参加しているが,ソロをとるのはクラウス・オガーマンコンチェルトの“主役”に据えられたマイケル・ブレッカーテナーサックスのみ。

 ゆえに『シティスケイプ』の聴き所は,唯一のソロイストマイケル・ブレッカーテナーサックスとなるのだが『シティスケイプ』に限っては,同じくお膳立てされたものだとしても,通常のマイケル・ブレッカーソロ・アルバムとは異なり,マイケル・ブレッカーを聴くためのアルバムではない。

 ズバリ,マイケル・ブレッカーを聴いているようで,実はクラウス・オガーマンの「頭の中のテナーサックス」を聴かされているにすぎない。クラウス・オガーマンの“影武者”としてのマイケル・ブレッカーテナーサックスを吹き上げている。

 知的で陰影に富んだクラウス・オガーマンの無調風のストリングスマイケル・ブレッカーの“COOL”なメタル・マウスピースのテナーサックスが不思議にも都会的に洗練された寂寥感を運んでくる。
 タイトなリズム隊を手なずけ,アドリブを捨て,譜面通りに吹くモダンマイケル・ブレッカーに「都会のコンクリート・ジャングル」のイメージが重なってくる。

 管理人は後日談として『シティスケイプ』録音時のマイケル・ブレッカーが気管支の問題と闘っていたことを知った。もしかしたらもう演奏出来なくなるのかも知れないという危機感の中,一音一音に魂を込めて吹き込んだそうだ。

 そんなマイケル・ブレッカーの不調を知りながらも『シティスケイプ』の重要パーツとして,自分の“メタルな音”を欲したクラウス・オガーマンを,当のマイケル・ブレッカーが従順に受け入れている。主役を演じるパーツの一つに徹している。
 クラウス・オガーマンの「頭の中のテナーサックス」を聴いていると,クラウス・オガーマンマイケル・ブレッカーのミュージシャン・シップ,その信頼関係の深さに感動してしまう。

CITYSCAPE-2 だから感動してしまう。淡々とではない。マイケル・ブレッカーが普段以上にエモーショナルであって,与えられたスコアを押さえているはずなのに,譜面から飛び出してきたように思える瞬間が幾度もある。
 “影武者”であったはずのマイケル・ブレッカーが,本物のクラウス・オガーマンと同化し,ついにはクラウス・オガーマンの思い描いた高みを超えてきている。
 クラウス・オガーマンマイケル・ブレッカーの“壮大なコラボレーション”ここに極まりたり!

 ギル・エヴァンスにしてもクインシー・ジョーンズにしても,そしてクラウス・オガーマンにしても,本物の天才アレンジャーに本気で仕事をさせたなら,最高にして最強のジャズを必らずや鳴らしてくれる。「音の錬金術」という他ない。

 マイケル・ブレッカーフィーチャリングな『シティスケイプ』のアレンジの肝は,ストリングスキーボードが織り成す“リリシズム”にあると思う。硬質なのにふんわりとした音色の温かさと人間味溢れるユニークな和音のヴォイシングが最高に素晴らしい。

 「都会のコンクリート・ジャングル」に囲まれて暮らしてはいても,人間一人一人にドラマがある。カッコよく生きるために何かと必死で闘っている。あの日のマイケル・ブレッカーがそうであったように…。

  01. CITYSCAPE
  02. HABANERA
  03. NIGHTWINGS
  04. IN THE PRESENCE AND ABSENCE OF EACH OTHER (PART 1)
  05. IN THE PRESENCE AND ABSENCE OF EACH OTHER (PART 2)
  06. IN THE PRESENCE AND ABSENCE OF EACH OTHER (PART 3)

(モザイク・コンテンポラリー/MOSAIC CONTEMPORARY 1982年発売/WPCR-27424)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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神保 彰 / フォー・カラーズ5

FOUR COLORS-1 もはや「カシオペアの元メンバー」の枕詞など必要としない“世界のスーパー・ドラマー神保彰
 なんたって神保彰は2007年「ニューズウィーク」誌選定「世界が尊敬する日本人100人」の1人なのである。

 「世界が尊敬する日本人100人」の選出理由は,ワンマン・オーケストラを可能にする“テクニカルな世界的ドラマー”としての神保彰なのであろうが,管理人としてはもう1つ,ポップな世界的メロディー・メイカーとしての神保彰の裏理由を加えてほしいと思っている。

 神保彰の“最高傑作”『FOUR COLORS』(以下『フォー・カラーズ』)を聴いてみてほしい。こんなにメロディアスなアルバムが「ドラマーソロ・アルバム」とはにわかに信じられないと思うから…。

 『フォー・カラーズ』は,神保彰ドラムエイブラハム・ラボリエルベースオトマロ・ルイーズピアノフランク・ギャンバレギターによる,基本一発録りのスタジオ・ライブ

 冒頭の【FOUR COLORS】からして,いきなり“人力ドラムンベース”による超絶16ビートで殴りこみをかけといて,あっけにとられる間もなく高速4ビート〜レゲエへのリズムの転調の波の上で繰り広げられる“超絶技巧のインタープレイ”による,叩きまくり&弾きまくりのアグレッシヴフュージョン

 ただし,ド派手な演奏は【FOUR COLORS】の1トラックのみ。2曲目以降は心洗われる,爽やかフュージョン寄りのスムーズ・ジャズ
 特に【THE LIGHT】【LANIKAI】のゆったりと雄大なスケールで展開するサビにイマジネーションを掻き立てられてしまう。

 この「振り幅の大きさ」こそが神保彰の個性である。「ハードなドラムとソフトなメロディーの2面性」が神保彰の個性を形作っていく。
 従来の神保彰はアルバムのコンセプトに沿って,ハード路線とソフト路線のどちらか一方の面に強く振れていることが多かった。
 しか〜し,ついに神保彰の内にある「超絶ドラムスムーズ・ジャズ」という「水と油」=「ハードとソフト」の両面が高次元で共存するアルバム『フォー・カラーズ』が完成したのだ。

フォー・カラーズ』における「ハードとソフト」共存の秘訣は,ドラマー特有の色を消し去った,徹底的なメロディー重視!
 J−POPというかニュー・ミュージックのカヴァー曲と言い切っても通用してしまいそうなコード進行とメロディー・ラインの流れがお見事。そんな刺激的でカラフルで,それでいて鼻歌でメロディーを歌いたくなるキャッチーな美メロを,究極のインタープレイで,ギュッと凝縮パッケージング!

FOUR COLORS-2 『フォー・カラーズ』での神保彰は,所謂「ドラマーソロ・アルバム」的なイメージを打ち破っている。スムーズすぎず,小難しすぎず,心地よくも刺激的で,書き譜を超えた“瑞々しくもアコースティックな”フュージョン・ミュージック。

 一方で純粋に「並みのドラマーでは叩くことのできない“テクニカルな世界的ドラマー”としての神保彰も混在していて,ハイハット・ワーク,スネアの一音一音に神保彰特有のドラムの“息吹”が感じられ,神保彰のハイパーなドラムだけを追いかけても十二分に楽しめる。

 そう。『フォー・カラーズ』で,ハード路線一辺倒,あるいはソフト路線一辺倒だった,神保彰自身のイメージさえも打ち破る“ハイブリッドな”神保彰が誕生している。

 ウホホッ,神保彰パット・メセニーしてくれてるじゃん! 『WATERCOLORS』なのがパット・メセニー! 『FOUR COLORS』なのが神保彰! 『FULL COLORS』なのがカシオペア

  01. Four Colors
  02. The Light
  03. Epoca Del Sol
  04. Brisa Primaveral
  05. Diamond
  06. Lanikai
  07. Co Co Ro
  08. Phantasia
  09. Banana Boat
  10. Come Shine

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2007年発売/KICJ-518)
(ライナーノーツ/富田雅之)

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クリフォード・ブラウン&ズート・シムズ / ジャズ・イモータル5

JAZZ IMMORTAL-1 「不滅のジャズ」を意味する『JAZZ IMMORTAL』(以下『ジャズ・イモータル』)とのタイトルだが,大風呂敷を広げただけのことはある。

 そう。イースト・コーストクリフォード・ブラウンが,譜面に強いウェスト・コーストの精鋭ジャズメンと共演したパシフィック・ジャズ盤の『ジャズ・イモータル』こそが,正しく「不滅のジャズ」の最右翼で間違いない。東西両海岸のベスト・エレメンツが見事な融合を聴かせている。

 『ジャズ・イモータル』の聴き所は,狭義には「典型的なウェスト・コーストの緻密なアンサンブルに身を置いたクリフォード・ブラウンのリズミックなテンション」であったであろうし,広義には「クラシックの室内楽的手法であるジャズ・アレンジへの適応とジャズの伝統的な手法であるテンションとリラクゼーションの対比」であったのだろう。

 その答えをクリフォード・ブラウンが見事な「調和」が示してくれている。時間を超え場所を超えジャンルを超えて,フロント4管の中からクリフォード・ブラウンの一本のトランペットが飛び出し“宙を舞っている”のである。

 こんなにも“豪華な”クリフォード・ブラウントランペットは『ジャズ・イモータル』の他に例を見ない。
 ピアノラス・フリーマンドラムシェリーマンを始めウェスト・コーストジャズの名手が一堂に会し,ジャック・モントローズのアレンジに乗ったズート・シムズという好敵手までが登場し,ソロアンサンブルにと“洒落た”ジャズ演奏が続いていく。

JAZZ IMMORTAL-2 管理人の結論。『ジャズ・イモータル批評

  HOTなイースト・コーストとCOOLなウェスト・コーストが,手に手を取り合って,見事な「調和」を果たしている。そのパイプ役こそがクリフォード・ブラウン

 特に【JOY SPRING】のまろやかで艶やかでほっこりするアンサンブルは,管理人が知るクリフォード・ブラウンの全ての演奏の中で最高に好き。一番好き。たまらなく好き。
 【JOY SPRING】だけは,あのウイントン・マルサリスをしても絶対に手が届かない種類の大名演である。

 『ジャズ・イモータル』の成功が次の歴史を作っていった。クリフォード・ブラウンの「不滅のジャズ」を忘れない!

  01. TINY CAPERS
  02. GONE WITH THE WIND
  03. FINDERS KEEPERS
  04. BLUEBERRY HILL
  05. JOY SPRING
  06. BONES FOR JONES
  07. BONES FOR ZOOT
  08. DAAHOUD

(パシフィック・ジャズ/PACIFIC JAZZ 1960年発売/TOCJ-90058)
(☆HQCD仕様)
(ライナーノーツ/リチャード ボック,児山紀芳)

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アントニオ・サンチェス / マイグレーション4

MIGRATION-1 ドラマーアントニオ・サンチェスの名前を聞くと,すぐにパット・メセニーの名前を想起してしまう。
 そしてアントニオ・サンチェスの『MIGRATION』(以下『マイグレーション』)と聞くと,すぐにパット・メセニーユニティバンドの『UNITY BAND』,あるいはパット・メセニーユニティグループの『KIN(←→)』を想起してしまう。

 そう。『UNITY BAND』『KIN(←→)』の原型は『マイグレーション』にある。
 アントニオ・サンチェスが準備した『マイグレーションセッションにおけるインスピレーションが,あのパット・メセニーに『80/81』以来,実に32年振りとなるサックスフィーチャリング・アルバムを制作させることになったのだ。

 『マイグレーション』の録音メンバーである,ドラムアントニオ・サンチェスギターパット・メセニーテナーサックスソプラノサックスクリスポッターの名前がそのまんま,パット・メセニーユニティグループの「メンバー表」にずらり。

 ギターパット・メセニードラムアントニオ・サンチェスが参加する2つのパット・メセニーグループであっても,パット・メセニーグループ(以下,PMG)とパット・メセニーユニティグループ(以下,PMUG)では,ルーツが異なっているのだから,POPなPMGJAZZYなPMUGでは音楽的に違って当然なのである。

 おおっと,このままではパット・メセニー批評に流れそうな勢いなので,話を『マイグレーション批評に戻すとするが,ズバリ言っておくと『マイグレーション』におけるアントニオ・サンチェスとの結びつきは,パット・メセニー以上にチック・コリアの方が強いということ! 読者の皆さんには,この衝撃の事実を踏まえてから『マイグレーション』を聴いてみてほしい,ということ!
 “ズブズブな関係”であるパット・メセニーアントニオ・サンチェスコラボレーション以上に,チック・コリアアントニオ・サンチェスコラボレーションの熱量が高いのだ。

 そうなると思い起こすのがチック・コリアアントニオ・サンチェスベースジョン・パティトゥッチを迎えてピアノ・トリオを組んだ『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』の存在である。
 録音データは『ドクター・ジョー〜ジョー・ヘンダーソンに捧ぐ』の方が後だから,チック・コリアが『マイグレーション』で“味をしめた”と判断できる。そう言えば『マイグレーション』の7曲目【INNER URGE】はジョー・ヘンダーソンオリジナルであるし…。

 アントニオ・サンチェスの何がパット・メセニーを,そしてチック・コリアを魅了するのだろうか?
 リーダーとしてプレイした『マイグレーション』におけるアントニオ・サンチェスドラミングJAZZY。PMUGJAZZYに振れているのはアントニオ・サンチェスからの影響である。

 PMGではアグレッシブにドラムを叩いていたアントニオ・サンチェスであるが,PMUG,そして『マイグレーション』では,繊細かつツボを抑えた的確で“COOL”なドラミングが気持ちいい。

MIGRATION-2 『マイグレーション』は,基本ツインテナーピアノレス・カルテットゆえ,かなり自由度の高い演奏が展開されている。
 あまり聞き馴染みのないインテリジェンスでとっつきにくい編成だと思うが,思わず引き込まれてしまったのは“ジャズドラマーアントニオ・サンチェスの決め技,小技が連続する多彩なドラミングだけが持つ独特の雰囲気にある。

 アントニオ・サンチェスは「万能型」のドラマーである。きっちりとした音楽理論をバックボーンに,共演者のスタイルに合わせつつもトリッキーなカウベル・ワークやクラーベ,自在にダイナミクスを操るスネアを駆使してインプロヴィゼーションを仕掛けている。
 そう。高次元で音楽性を拡大させるマニアックなドラミングこそが,アントニオ・サンチェスの“真骨頂”なのであろう。

 そんなアントニオ・サンチェスだから,同じ気質のチック・コリアとの相性チリバツ!
 パット・メセニーアントニオ・サンチェスワールドツアーで拘束することがなければ,恐らくはチック・コリアアントニオ・サンチェスを強奪する!と予言しておこう。

PS アドリブログの本編でも登場したのは主役のアントニオ・サンチェスと大物ゲストのパット・メセニーチック・コリアの名前だけ。『マイグレーション』のセオリーはアントニオ・サンチェスに絡むパット・メセニーチック・コリアで十分だけと思われがちだが,どうしてどうして…。アントニオ・サンチェスがパートナーに選んだスコット・コリーが素晴らしい。パット・メセニーPMUGに選んだクリス・ポッターが神懸り。レギュラー・メンバーの名演も熱く語られるべきだと思う,ということだけは書き残しておく。

  01. One for Antonio
  02. Did you get it?
  03. Arena (Sand)
  04. Challenge within
  05. Ballade
  06. Greedy Silence
  07. Inner Urge
  08. The Hummingbird
  09. Solar

(カムジャズ/CAM JAZZ 2007年発売/VACM-1317)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/成田正)

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クリフォード・ブラウン / クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム4

CLIFFORD BROWN MEMORIAL-1 ブルーノート盤の『MEMORIAL ALBUM』とは異なる,もう1枚の「メモリアル・アルバム」がプレスティッジ盤の『CLIFFORD BROWN MEMORIAL』(以下『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム』)である。

 『メモリアル・アルバム』『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム』共に,クリフォード・ブラウンの死を追悼し,クリフォード・ブラウンの死後に発売された,という点は同じだが内容に共通点はない。
 分かる人には分かるだろうが,ブルーノート盤が“黒”ならばプレスティッジ盤は“白”である。

 『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム』が“白”の理由は,スエーデンオーケストラの2つの“白”!
 そう。『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム』とは,ライオネル・ハンプトン楽団の一員としてヨーロッパ・ツアー時に行なわれた現地ジャズメンとのレコーディングとタッド・ダメロン楽団のメンバーとして参加したオーケストラとのレコーディングのカップリング。
 2つの“白”との共演で,クリフォード・ブラウンの“ブリリアントな”トランペットが圧倒的な存在感を放っている。

 この2つの“白”の立役者はクインシー・ジョーンズアート・ファーマーである。
 クインシー・ジョーンズの名アレンジが「オールスターセッション」に合っているし,アート・ファーマーとの激しい絡みとの対比が生んだ“ブリリアントな”トランペットが強調されていると思う。

CLIFFORD BROWN MEMORIAL-2 管理人の結論。『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム批評

 「白い」クリフォード・ブラウンの淀みなく流れるアドリブが“歌っている”。何よりも心から湧き上がってくる音楽の“ヒューマンな温かさ”に心揺さぶられる。

 『クリフォード・ブラウン・メモリアル・アルバム』のメモリアルが,クリフォード・ブラウンの“天才”のメモリアルである。

  01. STOCKHOLM SWEETNIN'
  02. 'SCUSE THESE BLUES
  03. FALLING IN LOVE WITH LOVE
  04. LOVER COME BACK TO ME
  05. PHILLY J.J.
  06. DIAL "B" FOR BEAUTY
  07. THEME OF NO REPEAT
  08. CHOOSE NOW (TAKE 1)
  09. CHOOSE NOW (TAKE 2)

(プレスティッジ/PRESTIGE 1956年発売/UCCO-5118)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,瀬川昌久,岡崎正通)

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坂東 慧 / HAPPY LIFE!4

HAPPY LIFE!-1 カシオペアのファン仲間,T−スクェアのファン仲間,DIMENSIONのファン仲間の方々に,バンド・メンバーのソロCDには余り興味がないことを告げると大抵の場合,驚かれてしまう。
 なんで?&どうして? こんなに熱心なファンの口からソロ活動には興味がないなんて,信じられない,とよく言われる。ファミリーではなかったのかと怒られたりして…。

 理由は単純! 管理人はフュージョン・バンドとしての,カシオペア・サウンドであり,T−スクェア・サウンドであり,DIMENSION・サウンドが大好きなだけ!
 そう。メンバーのソロCDは大概,敢えての,非カシオペアであり,非T−スクェアであり,非DIMENSIONである。意識的にバンド・サウンドとは変えてきている。そんなことぐらいはファンであなくてもお見通し。

 ソロCDなのだから,バンドでは出来ないことを演るのは当然だ。バンド以外の引き出しが多いことも知っている。実は管理人もフュージョン・バンドのソロ活動の黎明期。例えば,伊東たけし野呂一生ソロCDには,スクェアともカシオペアとも違う,管理人の全く知らないもう1人の伊東たけしやもう1人の野呂一生を期待したものだった。何も最初から「ソロ活動嫌い」ではなかった。

 でも,そういう経験をひとしきり通過して今だから思うことがある。過去にほぼ全員のハズレを体験してきた今だから思うことがある。
 管理人はソロ活動の第一目標としての「バンドと同じではありません」のコンセプトが好きではない。そんな自分の気持ちに気付いてしまった。だからメンバーのソロ活動には興味が持てなくなってしまった。そう自分自身を分析する。

 しか〜し,そんな管理人に興味を抱かせるメンバーが登場した。T−スクェアドラマーにして,今やメイン・コンポーザーでもある「Mr.T−SQUARE」こと坂東慧である。
 坂東慧なら,T−スクェアを離れても,管理人好みのスクェア・サウンドをソロCDでも聴かせてくれるだろう。そんな期待を抱かずにはいられない位に,坂東慧の書いたオリジナルが大好きになってしまった。

 買いましたよ。久々にフュージョン・バンド・メンバーのソロCDを買いましたよ。ファミリーである坂東慧ソロデビューCDHAPPY LIFE!』を買いましたよ。

 そんでもって1曲目の【BOUNDLESS SKY】に驚喜しましたよ。今度こそ「バンド・メンバーのソロ活動の呪縛」から解き放たれたと思いましたよ。【BOUNDLESS SKY】を聴いたところまでは…。

 ガーン。『HAPPY LIFE!』を聴き進めても,ついに【BOUNDLESS SKY】の“2匹目のドジョウ”は登場してくれなかった。あ〜あっ,坂東慧よ,お前もか〜。
 “秘蔵っ子”坂東慧をもってしてもダメだったとは…。『HAPPY LIFE!』は今後,管理人の心の大きな傷になるかもしれない…。

HAPPY LIFE!-2 ただし,上記の感想はT−スクェア坂東慧を「切り離しては考えられない」管理人の度量の狭さが招いた結果であり『HAPPY LIFE!』単体の評価は別物と心得よ。

 T−スクェアドラマーとしてのフィルターを外して,坂東慧が純粋なソロ・アーティストとしてデビューしていたなら『HAPPY LIFE!』のスーパー・ドラムソロに驚喜&乱舞したのかも? 『HAPPY LIFE!』の憂いを帯びたメロディーに「期待の新人」を感じたのかも?

 そう。『HAPPY LIFE!』のキャッチ・コピーは「27歳のマルチな才能が開花。新世代フュージョン!!」なのでした。
 「信じるか信じないかはあなた次第です」な,フュージョン・バンドメンバーのソロCDは駄盤なる都市伝説?

  01. Boundless Sky
  02. Every Moment
  03. Afterglow
  04. NANOHANA Wave
  05. Dawn Blue
  06. Melody Road
  07. Peace
  08. Walk On Air
  09. 十七年越しの約束
  10. Happy Life!

(ヴィレッジ/VILLAGE 2011年発売/VRCL-4016)
★音匠仕様レーベルコート

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クリフォード・ブラウン / メモリアル・アルバム4

MEMORIAL ALBUM-1 クリフォード・ブラウンの死後,哀悼の意を込めて発売された10インチ盤2枚のカップリング盤が『MEMORIAL ALBUM』(以下『メモリアル・アルバム』)。

 『メモリアル・アルバム』の共演者は,アルトサックスルー・ドナルドソンテナーサックスチャーリー・ラウズピアノジョン・ルイスエルモ・ホープベースパーシー・ヒースドラムアート・ブレイキーフィリー・ジョー・ジョーンズの「ブルーノートオールスターズ」による「ハード・バップ前夜」の「ビ・バップ」である。

 そう。基本的にはコード分解してきちんと決められたコーラスを吹く的な,1曲が3分ほどの10インチ盤仕様の小品集。若かりし頃のクリフォード・ブラウンが描いた「音のスケッチ」を見ているようなアルバムである。

 『メモリアル・アルバム』は,既発2枚のカップリング盤ゆえにアルバムとしての統一感はない。うち1枚はルー・ドナルドソンのリーダー・セッションゆえ,クリフォード・ブラウントランペットソロには山場が短く物足りなさも感じてしまう。
 しかしその分,サイドメンとしてラフに吹きまくったトランペットのブリリアントな音色と「アドリブでスケッチして見せる」即興とは思えぬ完成されたフレージングが実に素晴らしい。

 確かに初々しくも聴こえる。荒削りにも聴こえてしまう。でも“旨味がギュッと凝縮されたかのような”トランペットに「ブラウニーを聴く歓び」を感じてしまう。

MEMORIAL ALBUM-2 管理人の結論。『メモリアル・アルバム批評

 『メモリアル・アルバム』は,俗に言う「3分間芸術」を踏襲した,短くても言いたいことをズバッと物言う,クリフォード・ブラウンの“天才”を再確認するためのアルバムである。
 短い生涯,短い活動期間にして,こんなにも物おじしない「花形」トランペットによる「3分間芸術」…。

 『メモリアル・アルバム』のメモリアルが,クリフォード・ブラウンの“天才”のメモリアルである。

  01. HYMN ON THE ORIENT
  02. EASY LIVING
  03. MINOR MOOD
  04. CHEROKEE
  05. WAIL BAIT
  06. BROWNIE SPEAKS
  07. DE-DAH
  08. COOKIN'
  09. YOU GO TO MY HEAD
  10. CARVING THE ROCK

(ブルーノート/BLUE NOTE 1956年発売/TOCJ-1526)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,上条直之,石田康博)

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