アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2016年07月

ヘッドフォン / SENNHEISER(ゼンハイザー) / HD800

 ヘッドフォンを新調しました。SENNHEISERゼンハイザー)の「HD800」です。

 まぁ,以前から狙っていた「HD800」なのですが,購入動機は今月,手持ちのヘッドフォンを3つまとめて処分したことと,ヤフオクで状態の良い新古品が出品されたこと。
 SENNHEISERゼンハイザー)は「HD580 PRECISON」で体験済でしたので“高音質と掛け心地”の良さは保証済。後はタイミングの問題だけ。今回の一点ものとの出会いに大感謝です。新古品とはいえ破格の安さに大満足です。

 NO! 大満足なのは“高音質と掛け心地”の良さの方!
 音質の高さは今更管理人が語るまでもありません。「アドリブログ」の「オーディオビジュアル批評」の「HD800批評は,以下の受賞歴の掲載をもってかえさせていただきます。

受賞歴
iFプロダクトデザインアワード2010
reddot design award winner2010
innovation award 2010
オーディオ銘機賞2010「ヘッドホン部門トップ賞」
ビジュアルグランプリ2010「ピュアオーディオ金賞」
ビジュアルグランプリ2013「部門金賞」
VGP 2013 SUMMER 金賞
他多数
VGP受賞歴
VGP2015 開放型オーバーヘッド型ヘッドホン(10万円以上) 金賞
VGP2014SUMMER 開放型オーバーヘッド型ヘッドホン(10万円以上) 金賞
VGP2014 オーバーヘッド型ヘッドホン(10万円以上) 金賞
VGP2013SUMMER オーバーヘッド型ヘッドホン(10万円以上) 金賞
VGP2010 オーバーヘッド型ヘッドホン(10万円以上) 金賞

 なお,もう1つの掛け心地ですが「HD580 PRECISON」よりは劣るのが残念。眼鏡はズレるほどではありませんが,若干宙に浮き気味でして,今後の課題です。「HD800」の方に眼鏡を寄り添わせることになると思います。
 今となっては「HD800S」の掛け心地が気になる今日この頃?

 現在,管理人のオーディオ熱はPCオーディオ一辺倒! 書こう書こうと思いつつヘッドフォン・アンプについて書いていませんが,ハイレゾ音源にDSDやアップコンバータで楽しんでいます。
 この“チーム・セラビー”のシステム群に「三顧の礼」で迎え入れられた,大エース「HD800」の活躍を期待しております。

PS 気になる方は気になるシリアルナンバーは2万2千番台。箱にハイレゾ・マークは印字されていません。

デヴィッド・サンボーン / パールズ4

PEARLS-1 ジャズメンにとっての“憧れのフォーマット”が「ウィズ・ストリングス」であろう。
 ジャズ畑出身のデヴィッド・サンボーンなのだから,いつかは「ウィズ・ストリングス」という野望が頭の片隅にあったのかもしれない。

 しかし,ついに登場したデヴィッド・サンボーンの「ウィズ・ストリングス」アルバム『PEARLS』(以下『パールズ』)を聴いて,これはデヴィッド・サンボーンの意思ではなく,周りの人間がデヴィッド・サンボーンにセールス目当てで作らせたアルバムだと感じた。
 管理人の直感が正しかろうと間違っていようと,今となっては関係ない。そう感じてしまったことが全てである。だから『パールズ』の演奏自体は大名演なのだけど,好きという感情以前に「踏み込めない壁」というか「違和感」を感じてしまって…。

 そう。『パールズ』が“ジャズっぽくアウトしまくる”『アナザー・ハンド』の直後であれば,管理人もそれなりに納得できたと思う。しかし『パールズ』は『アップフロント』『ヒアセイ』での“アゲアゲ・サンボーン”の大ヒット直後…。予想外だった…。
 『アップフロント』『ヒアセイ』で“GROOVE”の楽しさを知ってしまったデヴィッド・サンボーンが,今更「ウィズ・ストリングス」に興味を持つとは思えなかった。
 だ〜って,メイシオ・パーカーが「ウィズ・ストリングス」に興味を持つとは思えないでしょ?

 デヴィッド・サンボーンというアルト・サックス・プレイヤーは,オリジナルを吹くにしてもカヴァーを吹くにしても,本質は所謂メロディー吹きである。
 その意味で『パールズ』のような,バラードスタンダードな「ウィズ・ストリングス」と来れば“ピシャリ”であろう。

 そう。『パールズ』が出来すぎている。「ウィズ・ストリングス」が出来すぎている。全ては“超大物”トミー・リピューマの音楽である。『ダブル・ヴィジョン』の頃のトミー・リピューマの音楽が“君臨”している。

 ゆえに『パールズ』のデヴィッド・サンボーンの役所は「一介のアルト・サックス・プレイヤー」にすぎない。“泣きのブロー”で叫べば叫ぶほど,デヴィッド・サンボーンの個性から離れてゆき「ウィズ・ストリングス」の美しさが際立つ算段である。

 ズバリ『パールズ』とは「ムーディーすぎる」バラード集であり,ポップスやジャズスタンダードの「甘すぎる」カヴァー集。
 管理人が『パールズ』に,デヴィッド・サンボーン以外の上からの力,を感じたのは『パールズ』のこのセッティングにある。

PEARLS-2 ではなぜデヴィッド・サンボーンはセールス目当てと分かった上で『パールズ』の企画に乗ったのだろうか?
 それはデヴィッド・サンボーンなしに,この豪華企画は成立しないと感じたからではないだろうか? あるいはこのゴージャスなバック・サウンドを他の誰にも渡したくない,という欲が出たのかもしれない。

 『パールズ』は『ダブル・ヴィジョン』の大成功があっての“渋目のムード・サックス”である。こんなにも美しく豊穣な「ウィズ・ストリングス」はデヴィッド・サンボーンでなければ作れやしない。
 「商業主義」の『パールズ』を認めるのはくやしいけれど『パールズ』は数ある「ウィズ・ストリングス」ものの中でも上位に来るべき優秀作品に違いない。

 管理人の結論。『パールズ批評

 『パールズ』での「ウィズ・ストリングス」は,デヴィッド・サンボーンにとっての「夢のアルバム」ではない。トミー・リピューマにとっての「夢のアルバム」なのである。

 ただし『パールズ』の真実とはトミー・リピューマの先にある。
 つまりはバラードスタンダードな「ウィズ・ストリングス」なんて絶対に演らないだろうと思っていた“サンボーン・キッズ”にとっても,これまた「夢のアルバム」なのである。

  01. WILLOW WEEP FOR ME
  02. TRY A LITTLE TENDERNESS
  03. SMOKE GETS IN YOUR EYES
  04. PEARLS
  05. FOR ALL WE KNOW
  06. COME RAIN OR COME SHINE
  07. THIS MASQUERADE
  08. EVERYTHING MUST CHANGE
  09. SUPERSTAR
  10. NOBODY DOES IT BETTER
  11. THE WATER IS WIDE

(エレクトラ/ELEKTRA 1995年発売/WPCR-215)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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山中 千尋 / ギルティ・プレジャー5

GUILTY PLEASURE-1 『GUILTY PLEASURE』(以下『ギルティ・プレジャー』)はいいアルバムである。山中千尋の趣味の良さがストレートに実感できる。
 ついに山中千尋は,変態度を見せなくても,正攻法だけで勝負できる領域にまで到達してしまったのだと思う。

 管理人にとって山中千尋を聴く楽しみは,変態アレンジに尽きる。多くのジャズメンの「手垢のついた」有名なあんな曲こんな曲が,山中千尋の手にかかると,全く違った曲に生まれ変わる。その特異な才能,自由すぎる発想に強く惹かれてしまう。

 エレクトリック路線の『ABYSS』がそうであり“大人のジャズ・ピアニスト”路線の『BRAVOGUE』がそうであり,オリジナルのブチ壊し路線の『BECAUSE』がそうであった。好きなだけ遊び続けるちーたんに恋をしてきたのだ。

 それがどうだろう…。『ギルティ・プレジャー』の山中千尋は超真面目路線。管理人が期待していた変態チックな要素はないはずなのに,何度も繰り返し聴いてしまう。
 ズバリ『ギルティ・プレジャー』の聴き所は,ジャズ・ピアノを味付けではなく素材の良さで聴かせる,山中千尋「シェフ」の確かな腕前にある。

 メロディーの良さ,リズムの良さ,アドリブの良さ,アンサンブルの良さ,といった管理人がジャズに求める全ての要素が表現されている。
 山中千尋の緻密で繊細な表現手法が重なり合って,かつてない位に豊かな音楽性が表現されているのだ。

 元々「オールランダー」な山中千尋なのだがら『ギルティ・プレジャー』での「ザ・ジャズ・アルバム」なんかは,作ろうと思えば今回に限らずいつでも作ることができたはずである。なぜこのタイミングでの「正統派」路線なのだろうか?

 その答えは,山中千尋トリオが完成のピークに達した自信から来る“挑戦”なのだと思う。
 『ギルティ・プレジャー』のように,全体のバランスが細部までコントロールされたピアノ・トリオの完成には,相当な時間とエネルギーが必要だと思うが,そこはレギュラー・バンドのアドバンテージ!
 日々,山中千尋と“音楽で会話してきた”脇義典ベースジョン・デイヴィスドラムを“89番目と90番目の鍵盤のように”意のままに操り,山中千尋にしか表現することのできない,実にユニークで奥深いジャズ・ピアノを作り上げている。

GUILTY PLEASURE-2 こんなにもバランスの取れたアルバム作りは山中千尋にとっても初めてのことではなかろうか? 攻めでもなく受けでもなく,ひたすらジャズの「王道」で有り続けるために,己の個性と得意技全てを封印してみせたアルバム。
 そう。『ギルティ・プレジャー』は,キャリアのピークを迎えた今だから挑戦できた“左手一本で超真面目ぶった”山中千尋の,要するにいつものお遊びが存分に発揮された,正に真のちーたん・ファンのためのアルバムなのである。

 『ギルティ・プレジャー』からは「ピッカピカ」な輝かしい音が鳴っている。全身黒ずくめのはずの山中千尋が「フルカラー」で鳴っている。はたで聴いただけでは,これが“左手一本”のアルバムだとはにわかに信じられない。凄いぞっ!

 現在の山中千尋トリオは“左手一本”でも,名立たるピアノ・トリオと互角に戦うことができる。次回,山中千尋が右手も使って,あの変態の個性を爆発させる瞬間を想像するだけでヨダレが…。あぁ,ちーたん…。

 管理人の結論。『ギルティ・プレジャー批評
 …というか上原ひろみ山中千尋批評

 ミディアム・テンポ好きとしては上原ひろみではなく山中千尋こそが「日本の宝」なのだと思います!

PS1 『ギルティ・プレジャー』の成功の秘密は五十貝一氏の『EAST BROADWAY RUN DOWN』好きの影響があるのかも?
PS2 『ギルティ・プレジャー』の特典DVDに異議あり。なんでちーたんの顔出しNGなの? 横顔だけとか斜め45度では映像作品としてつまらない!

  DISC 1 CD
  01. CLUE
  02. GUILTY PLEASURE
  03. CAUGHT IN THE RAIN
  04. LIFE GOES ON
  05. THE NEARNESS OF YOU
  06. AT DAWN
  07. HEDGE HOP
  08. MOMENT OF INERTIA
  09. GUILTY PLEASURE REPRISE
  10. MEETING YOU THERE
  11. THANK YOU BABY

  DISC 2 DVD
  01. CAUGHT IN THE RAIN
  02. CLUE
  03. THE NEARNESS OF YOU
  04. AT DAWN
  05. RED DRAGONFLY

(ブルーノート/BLUE NOTE 2016年発売/UCCQ-9027)
★【初回限定盤】 SHM−CD+DVD

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デヴィッド・サンボーン / ベスト・オブ・サンボーン4

THE BEST OF DAVID SANBORN-1 サックス界のスーパー・スターとしては遅すぎる,デヴィッド・サンボーン初のベスト・アルバムが『THE BEST OF DAVID SANBORN』(以下『ベスト・オブ・サンボーン』)。

 「ベスト・アルバムは『無用の長物』。なぜならお気に入りのジャズメンのアルバムはオリジナルを全部集める主義」の管理人が『ベスト・オブ・サンボーン』を買ったのは,当時入手困難であった『夢魔』からの楽曲目的。
 『夢魔』の中から2曲選ばれた【夢魔へ】と【イッツ・ユー】は,以前から楽曲は聴いていたのだが,手元に未所有だったもので,ついつい禁断のベスト・アルバムに…。

 それにしても,なぜこのタイミングで『ベスト・オブ・サンボーン』。ワールド企画なのだが,個人的には日本市場向けのベスト・アルバムに思えて悔しかったかった。
 なぜなら『ベスト・オブ・サンボーン』のリリースが,缶コーヒー「GEORGIA」のTVCMで【ジョージア・オン・マイ・マインド】を吹くデヴィッド・サンボーンが大々的に放映されたジャストのタイミング。「便乗商法」を感じたものだから…。


THE BEST OF DAVID SANBORN-2 そしてこの選曲にも“売れ線”の色眼鏡を感じてしまいまして…。POP寄りでスムーズ系でバラード系が多く選曲された全16曲。
 微糖である。だから「GEORGIA」なのだろう。だから「TASTY」なのだろう。

 『ベスト・オブ・サンボーン』を聴きたくなくて『夢魔』のCDを後日購入させていただきました。

  01. Chicago Song
  02. The Dream
  03. Let's Just Say Goodbye
  04. Slam
  05. Lesley Ann
  06. Carly's Song
  07. Anything You Want
  08. A Tear For Crystal
  09. Over And Over
  10. It's You
  11. Hideaway
  12. Rain On Christmas
  13. Hideaway
  14. Lisa
  15. Neither One Of Us
  16. Lotus Blossom

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1994年発売/WPCR-131)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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お洒落なジャズトリオ & 海道美智恵 / ミッドナイト・ステージ4

MIDNIGHT STAGE-1 2002年11月に熊本県のとあるお店へ,山本英次ソロ・ピアノライブを数人の友人と数時間,車を飛ばして見に行った。
 自由席だったので管理人は山本英次ピアノの真横の座席を陣取った。
 そう。あの日のライブは音響など度外視して“ジャズ・ピアニスト山本英次のスーパー・テクニックを堪能するのが目的であった。

 1m以内の至近距離で観察する山本英次ピアノ・タッチは骨太であった。鍵盤をしっかりと押さえつけていた。ライブの後に山本英次と直接話する機会があったが「ピアノを鳴らしきることが大事」云々と語っていたのが,今でも記憶に残っている。

 …と山本英次の「超高音質」の秘密をのぞき見するために出掛けたソロ・ピアノライブだったのだが,途中からそんなことはどうでもよくなっていた。山本英次は“ジャズ・ピアニスト”だったのだ。

 記憶が定かではないのだが,多分,あれは何曲かをつなげたメドレーではなく,1曲の中の数小節を○○風に演奏するコーナーがあった。ジャズとかラテンとか,ノリをくるくる変えて演奏されていた。ジャズの楽しさを改めて体感して帰ってきた。

 その後の数日間は,山本英次ジャズ・アレンジが頭でくるくる〜。
 所有している『LULLABY OF PIANO MAN』『COFFEE BREAK WITH PIANO MAN』『TO FAZIOLI』のソロ・ピアノ3枚を聴き返してみたが,なんだか違う…。

 「お洒落なジャズトリオ」の『OJT IN KOBE』を聴く。ライブ盤だけあって,頭の中のモヤモヤが取れていく。うんうん。こんな感じのピアノだった。でも,ほんのちょっと違うかな。でも,もう『OJT IN KOBE』でいいや…。
 自分の中では終わった話だった。納得済の話だった。『MIDNIGHT STAGE』(以下『ミッドナイト・ステージ』)を聴くまでは…。

 『ミッドナイト・ステージ』と出会ったのは,管理人のオーディオ仲間でジャズ仲間のT君のお宅でのこと。実はT君。管理人の影響でオーディオにハマリ,ジャズにハマリ,山本英次に大ハマリ。今ではYPMCDコレクターと化している。最近はクラシックに傾倒しているようで,もはや管理人の手に届かない領域のマニアに到達している。

 そんな彼の100万円のオーディオ・システムで聴かされた『ミッドナイト・ステージ』の臨場感に,忘れていたはずの山本英次ソロ・ピアノライブを思い浮かべてしまった。胸を掻きむしられてしまった。
 今度は管理人が自宅に戻って『ミッドナイト・ステージ』をポチリ。

MIDNIGHT STAGE-2 『ミッドナイト・ステージ』の実にリアルな山本英次ピアノ吉田啓二ギター田野重松ベースの音色。この「超高音質」がなぜ無冠なの?
 そして海道美智恵ヴォーカルの生々しさ。肉声の再生能力が素晴らしい。T君のアコースティックで調整されたオーディオ・システムにKOされてしまったのだろう。

 ライブの感動を何度でも味わわせてくれるのが“オーディオの醍醐味”。『OJT IN KOBE』→『ミッドナイト・ステージ』で,山本英次ピアノを真横で聴いた『山本英次 IN 熊本』の感動が甦る。

 あっ,そう言えば『山本英次 IN 熊本』は山本英次ソロ・ピアノライブのはずだったのに,ゲストとして山本英次の息子=山本太郎クラリネットで出演していたよなぁ。
 海道美智恵ヴォーカル山本太郎クラリネットが被ってしまうのはそのせいなのかもしれないなぁ。

  01. 平成月見の舞
  02. サバ・ボサ
  03. シャイニー・ストッキング
  04. マガリバリ
  05. アズ・ロング・アイ・リブ
  06. 星に願いを
  07. バードランドの子守歌
  08. チェンジ・リズム
  09. プランツォ
  10. ミッドナイト・ステージ

(YPM/YPM 2001年発売/YPM-011)

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デヴィッド・サンボーン / ヒアセイ5

HEARSAY-1 デヴィッド・サンボーンは,基本,アルバム毎に異なるコンセプトに挑戦し続けるチャレンジャーである。
 それができるのも,絶対的な個性“泣きのブロー”を持つデヴィッド・サンボーンだからであろう。

 そんなデヴィッド・サンボーンが生涯に2枚だけ,前作と同じコンセプトの続編を制作したことがある。それが“ファンキー・サンボーン”の『A CHANGE OF HEART』を踏襲した『CLOSE−UP』と“アゲアゲ・サンボーン”の『UPFRONT』を踏襲した『HEARSAY』(以下『ヒアセイ』)である。

 この2枚の続編=『CLOSE−UP』と『ヒアセイ』の完成度が著しく高い!
 元ネタである『A CHANGE OF HEART』と『UPFRONT』が,それぞれセールス50万枚以上のゴールド・レコードを獲得した後の「これぞ“ファンキー・サンボーン”の完成版」「これぞ“アゲアゲ・サンボーン”の決定版」的な名演集なのである。素晴らしい。

 『ヒアセイ』にあって『UPFRONT』ないもの。それは「音場の拡がり」であろう。
 『UPFRONT』の“泥臭く土臭い”ジャズファンク路線は,本来のマーカス・ミラーのサウンド・カラーではなかったが『ヒアセイ』の見事なトータル・サウンドの構築力に「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の“復活”を強く感じてしまった。

 そう。『UPFRONT』の魅力が“緩さ”にあったとすれば『ヒアセイ』の魅力は“カッコ良さ”。『ヒアセイ』のデヴィッド・サンボーンが“吹きまくり”で超カッコイイ〜!
 ファンクグルーヴに乗って「俺が主役だ」と主張するデヴィッド・サンボーンアルトサックスが先行し,続編ゆえに追随のレスポンスが上がったマーカス・ミラーが完璧にサポートしてみせる!

 いいや,実際にはマーカス・ミラーが,先の先へと手を打ってデヴィッド・サンボーンファンクグルーヴの「計算されたうねりのうず」へと誘い込んでいる!
 途中でハラハラ・ドキドキさせるリッキー・ピーターソンオルガンによる演出も,最後の最後は「丸くまとまる安心感」が“痛快”である。

HEARSAY-2 管理人の結論。『ヒアセイ批評

 『ヒアセイ』のサウンド・デザインに,どんなにどっぷりと浸かりきっても“目玉”であるファンクグルーヴにやられるのは腰だけ。上半身はいたって“COOL”。
 “アゲアゲ・サンボーン”の“感情大爆発”をこんなにも冷静に楽しめるアルバムは『ヒアセイ』をおいて他にはない。

 「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の比類のないバランス感覚。『ヒアセイ』で極まりけり!

  01. Savanna
  02. The Long Goodbye
  03. Little Face
  04. Got To Give It Up
  05. Jaws
  06. Mirage
  07. Big Foot
  08. Back To Memphis
  09. Ojiji
  10. Georgia On My Mind

(エレクトラ/ELEKTRA 1994年発売/WPCR-12)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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お洒落なジャズトリオ / お洒落なジャズトリオ IN 神戸4

OJT IN KOBE-1 またまた「超高音質」の話題で申し訳ない。演奏がダメだということでは決してない。
 しかし,山本英次を,そして「お洒落なジャズトリオ」を語ろうと思うと,音楽の良さとか演奏の良さの前に,どうしても「音の良さ」にフォーカスを当ててしまうことになる。

 「お洒落なジャズトリオ」のライブ盤『OJT IN KOBE』(以下『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』)も「STEREO」誌2000年度「最優秀録音第2位」受賞の「超高音質」盤。
 管理人的にはオーディオ・マニアが部屋に遊ぶに来た時の大体の1枚目が『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』の存在意義である。

 「お洒落なジャズトリオ」とは,ピアノ山本英次ギター吉田啓二ベース田野重松による,所謂,オールド・ピアノ・トリオ
 ドラムレスゆえ,大人し目のジャズスタンダード集に聴こえるのだが,リズム楽器としてのギタースイング感に与える役割は絶大であって,偶然ではなく,山本英次の「超高音質」ピアノ・トリオにマッチした,必然のオールド・スタイルなのである。

 だ〜って,山本英次こそ「知る人ぞ知る」存在であるが,吉田啓二? 田野重松? それって誰状態の「お洒落なジャズトリオ」なのだから,ライブであってもソロが前面に突出しない,テーマ重視のピアノ・トリオ
 素直に楽器の魅力を,素直に楽曲の魅力を伝えることをモットーとしている節がある。これぞ「超高音質」録音の最適ソースなのだと思う。

 客席のざわめきなど意に介さない,楽器のすぐ隣りにセッティングしているであろうマイクが拾った音源がゾクゾクくる。ピアノの弦,ギターの弦,ベースの弦のこすれ具合がリアルすぎて,これは顕微鏡で拡大したような音である。実物以上に響かせている。

 そう。『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』の聴き所は,ピアノの弦,ギターの弦,ベースの弦の“語らい”である。
 きれいに分離した3つの楽器の音が全部ハッキリ聴き取れるから“会話のような演奏”に聞こえてしまう。インタープレイのやり取りが,手探りではなく,手に取るように見えるので,タネ明かしなしの臨場感に溢れたライブならではの迫力を感じる。
 大袈裟に言えば,セッティングされたマイク位置に設けられた,会場の最前列よりも最前列の特別豪華観覧席で生音を聴いているかのような,最高に贅沢な音楽会!

 ノン圧縮,ノンフィルター録音ゆえに,アンプのボリュームを上げて聴くのがとっても楽しい『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』。この「超高音質」がオーディオ・マニアの心をくすぐるんだよなぁ。クセのない生音とクセのない演奏を両立させてしまいたくなるんだよなぁ。
 オーディオ・マニアの友人たちは,我が家からの帰り道,早い人で当日中に『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』を注文しているんだよなぁ。

OJT IN KOBE-2 そうして自宅でオーディオ・チェックを繰り返しているうちに,友人たちも管理人と同じく「ミイラ取りがミイラになる」経験をしている。
 純粋に「音の良さ」を追い求めていただけだったのに,いつしか「超高音質」ではなく,山本英次の“音楽的なピアノ”に魅了されてしまったが最後,ピアノ中心のチューニングのせいで,全体のバランスが狂い始めてしまう。
 管理人はそれでも,そんな自分にムチ打って頑張って抵抗してきた方だと思う。でも,良い音を追及したい,という自分をついにどこかであきらめてしまった。

 「お洒落なジャズトリオ」のお三方には大変失礼な表現と思うが“個性の薄い”『お洒落なジャズトリオ IN 神戸』と出会って,オーディオ・マニアとしては後退してしまったが,デフォルメされていない“真水の”ジャズスタンダードの面白さが以前よりも分かるようになったと思う。この「心境の変化」に1人大喜び!
 だ〜って,オーディオって,音楽の楽しさを伝えるための道具じゃん!

 なお,紹介が最後になってしまったが,山本英次吉田啓二田野重松の「お洒落なジャズトリオ」は,時にオールド・ピアノ・トリオ・スタイルから,コルネットバンジョーチューバの「“変則”○○トリオ」に変身してしまう(【BASIN STREET BLUES】)。

 このコルネットバンジョーチューバの音色も最高すぎて,本職真っ青のスーパー・オーディオの世界が広がている〜っ。

  01. MILLENNIUM BLUES
  02. GIRL FROM IPANEMA
  03. AUTUMN LEAVES
  04. MISTY
  05. ELEGANT TIME
  06. THE GIFT
  07. FOREVER MORE
  08. HEARTFULL PARTY
  09. BLACK ORPHEUS
  10. BASIN STREET BLUES

(YPM/YPM 2000年発売/YPM-010)

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デヴィッド・サンボーン / アップフロント5

UPFRONT-1 ついに“アゲアゲ・サンボーン”の大登場! 「裏名盤」の『UPFRONT』(以下『アップフロント』)批評である。

 デヴィッド・サンボーンファンクグルーヴのウネリに乗って,硬派なアルトを“下品に”吹き散らかす!
 ただそれだけなのだが,ストリートに潜って,ついついコブシが回ってしまった?粘っこい“サンボーン節”は,メイシオ・パーカーとは対極の位置に座す,別種の頂点に達しているように思う。

 良しにつけ悪しきにつけ『アップフロント』は「泥臭い」。骨太でシンプルなビートとメロディー。感情の高まりをストレートに表現したノリ一発のジャズファンクに腰が動いてしまう。
 デヴィッド・サンボーンが,ひたすらファンクグルーヴを追及した演奏スタイルが強烈すぎて,緻密なバック・サウンドにまで耳が追いつき難いのだが,個人的にはデヴィッド・サンボーンの“アゲアゲ”以上に,NYシティ系の典型であったマーカス・ミラーの音楽性の変化が気になってしまった。

 マーカス・ミラーが“白いファンクネス”なら,リッキー・ピーターソンは“黒いファンクネス”である。黒人なのに「白」のマーカス・ミラーと白人なのに「黒」のリッキー・ピーターソンの共演が,南北横断で和洋折衷っぽい,ファンクグルーヴの魅力である。

 完璧主義者のマーカス・ミラーが理性を失ってしまうほど,リッキー・ピーターソンの“黒いファンクネス”にハマッテしまったのか? スティーヴ・ジョーダンSOULに憑りつかれてしまったのか?
 『アップフロント』には,そんなマーカス・ミラーについて初めて不安を感じていた鮮明な思い出がある。

 そう。マーカス・ミラーの「サラサラ」な血液とリッキー・ピーターソンの「ドロドロ」な血液が入り混じる,キレと粘りの“アゲアゲ・サンボーン”が最強! アクセルを踏みっぱなしだから見ることのできた,デヴィッド・サンボーンの「血潮のたぎり」!
 デヴィッド・サンボーンの,イっちゃった感のあるヒリヒリしたテンションのアルトサックスに,一種の腫れ物的な熱気を感じてしまう。

 小難しいことなど考えずに,ただHIPでPOPな『アップフロント』に身を委ねて聴き続けていると…。これが意外にも硬派で複雑なフレーズで埋め尽くされていることに気付くようになる。そう。いつしか,前作のジャズ・アルバム『ANOTHER HAND』からの影響を感じるようになる。

 本能の赴くままにアルトサックスを吹き散らかしても『ANOTHER HAND』に通じるアドリブの世界を感じてしまう。
 JAZZYなメタルが響き渡ることによって,ダンサブルでロマンティック度の高い『アップフロント』=「メイシオ・パーカーへの切り札」が完成したのではないだろうか?

UPFRONT-2 「蛇使い」なアドリブでヒーヒー言わす【SNAKE】。R&Bのソウルが爆発するバラード・ナンバーの【BENNY】。エリック・クラプトンの【FULL HOUSE】よりもリチャード・ティーコーネル・デュプリーの【SOUL SERENADE】。今や沼澤尚の十八番な【BANG BANG】。オーネット・コールマンの【RAMBLIN’】で跳ねまくる“アゲアゲ・サンボーン”こそが「裏名盤」!

 得意の打ち込みを控えてアナログ・メインなジャズ系の生音を可能にしたのが『アップフロント』におけるマーカス・ミラーの“緩さ”にある。
 普段では決して見せることのない「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の“緩さ”に『アップフロント』の価値がある。

 まっ,そうは言っても,マーカス・ミラーのノー・チョッパーの指弾きベースと組んだスティーヴ・ジョーダンのタイトでジャンプするドラムリッキー・ピーターソンのシンプルなハモンドオルガンの低音ビートが“グイグイ”脳内に入って来ますよ〜!

 『アップフロント』『ヒアセイ』での“アゲアゲ・サンボーン”こそが,聴いていて最高に楽しいデヴィッド・サンボーン〜!

  01. snakes
  02. benny
  03. crossfire
  04. full house
  05. soul serenade
  06. hey
  07. bang bang
  08. alcazar
  09. ramblin'

(エレクトラ/ELEKTRA 1992年発売/WMC5-493)
(ライナーノーツ/寒川光一郎)

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山本 英次 / トゥーファツィオリ5

TO FAZIOLI-1 オーディオ・システムを再び組むことが許されるのなら,アンプマッキントッシュアキュフェーズスピーカーJBLBOSEで悩むことだろう。そしてSACDプレーヤーは…。
 しかしオーディオ・チェック用CDだけは悩まない。山本英次ゴールドCD仕様盤『TO FAZIOLI』(以下『トゥーファツィオリ』)である。

 ズバリ『トゥーファツィオリ』こそが,山本英次の「超高音質盤中の超高音質盤」。ピアノの音色を聴いて,心が震えるほど感動した経験は,後にも先にも『トゥーファツィオリ』の1回きり。
 『トゥーファツィオリ』こそが,管理人の心の中の“良い音の基準”となっている。『トゥーファツィオリ』が良い音で鳴らなければ,それは良いオーディオ・システムではないのだと思う。『トゥーファツィオリ』が「“良い音の基準”のその基準」となっているのだ。

 そんな『トゥーファツィオリ』の“絶対基準”を可能としたのが,ピアニスト山本英次のテクニック,レコーディング・エンジニアの「赤坂工芸音研」の石渡義夫の「匠の技」,そして今回の主役であるイタリアの名器=ファツィオリのフルコンサート・グランド・ピアノ,F278の並外れた能力,その三大要素の「プロフェッショナルすぎる融合」にある。

 ピアノは打楽器である。右手と左手が時に別々に,時に同時に鍵盤を鳴らす。問題となるのは鍵盤を押すタイミングと押す力加減である。
 純粋にピアノの音色が美しいと思う最右翼はミシェル・ペトルチアーニである。こう書けば納得されるだろうが,ハーモニーの是非を瞬時に判断できるのが,神が授けたミシェル・ペトルチアーニの「特殊能力」の1つである。

 ミシェル・ペトルチアーニが“天賦の才”なら,山本英次は“ピアノへの愛”である。
 山本英次ピアノを聴いていると,時折,セロニアス・モンクをイメージしてしまうことがある。セロニアス・モンクは真面目にユニークな音楽を追及した巨人の1人であるが,特にピアノの響きを一日中研究していた,というエピソードが山本英次とダブルことがある。

 こんな風に叩けばこんな音が出る。こんな角度で,こんなタイミングで,こんな強さで…。
 そう。山本英次の“ピアノへの愛”が,ピアノをいかに美しく鳴らすか,のモチベーションなのであろう。ピアノの響きというか,低音だけでなく,高い音を弾いても,低音弦が共鳴してピアノのボディに響く音が伝わってくる。まるで目の前でピアノを弾いてもらっているかのような錯覚に陥る瞬間もしばしば…。
 ただし山本英次が「調律師」で決定的に異なるのは,ピアノの音は音楽となって初めて輝くことをわきまえているからと思う。大好きなジャズを表現するための道具としての「ピアノ職人」。これが“ジャズ・ピアニスト山本英次の真髄なのである。

 山本英次の「きれいなピアノ」の音を録りたい。最高の音質で記録しておきたい。そんな自然の欲求につき動かされた人物が,レコーディング・エンジニア界の「神7」の1人,石渡義夫であった。
 高音質録音といっても,単にクリアーで抜けが良く, 鮮度が高ければ高音質録音であるとは言い切れない。対象は音楽。演奏されているサウンドは最も大切な要素,そして音楽的なバランスも重要だ。アンバランスな要素は音楽を台無しにしてしまう。

 そこで石渡義夫がこだわったのが“ホールの響き”である。石渡義夫は,音の気配,空気感をどれほどに忠実に録音するか,に命を懸けている。
 ピアノという楽器は,発音体に弦と反射板とがあり,直接音は弦から,間接音は反射板から生じる。当然微妙な位相差があり,マイクセッティングによっては濁った音になる。ゆえに,一本一本のマイクの位相を念入りに確認したとのこと。左右の定位だけではなく,前後の定位をも正確に記録することで,彫りの深い音になっていると思う。

 そう。レコーディング・エンジニア=石渡義夫の24BITデジタルHDDレコーディンの“入魂の音”が『トゥーファツィオリ』のソロ・ピアノに記録されているのだ。

TO FAZIOLI-2 そんな山本英次石渡義夫の熱心な仕事ぶりに素直に反応するのが,肝心要なフルコンサート・グランド・ピアノのF278。恐らくは有名なピアノ・コンテストでしかお耳にかかれない超高級ピアノが秘められた能力を大開放。
 チェンバロのように響版に伝わる弦のハーモニーがうまく混ざり合った音色がファツィオリの特長だと思うが,この華麗な響きと余韻の芳醇さの何と豊かなことであろう。いつ果てるとも知れぬ残響にファツィオリのハイ・ポテンシャルを聴いている気分がする。

 またファツィオリの別の特徴として,本当にピアニストや調律師の手に敏感に反応してしまうようでして,15曲目と16曲目の【不思議の国のアリス(テイク1)】【不思議の国のアリス(テイク2)】は,調律だけを変えた全く同じ演奏が録音されているのだが,調律の変化が演奏に与える影響の大きさを感じとれるのも聴いていて面白いと思う。

 『トゥーファツィオリ』の「超高音質」の保証とは「STEREO」誌1998年度「最優秀録音賞」受賞のゴールドCD盤。
 ジャズはやっぱり難しい,と感じている読者の皆さん。どうですか? オーディオからジャズに入ってみませんか?

  01. Softly As In A Morning Sunrise
  02. Am Ha Arets "SUGA"
  03. Summer Time in VENICE
  04. St. Louis Blues
  05. Stella By Starlight
  06. Alice In My Dream
  07. Lullaby Of Bay YOKOHAMA
  08. Autumn Leaves
  09. If I Had You
  10. Someone To Watch Over Me
  11. Mood Indigo
  12. Sweet Georgia Brown
  13. Alice And Flowers
  14. Dinah
  15. Alice In Wonderland (take 1)
  16. Alice In Wonderland (take 2)
  17. To FAZIOLI

(YPM/YPM 1998年発売/YPM-007)
(ゴールドCD仕様)

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デヴィッド・サンボーン / アナザー・ハンド5

ANOTHER HAND-1 『A CHANGE OF HEART』『CLOSE−UP』で“絶頂を極めた”デヴィッド・サンボーン
 “最高傑作”『CLOSE−UP』でデヴィッド・サンボーンは“燃え尽きた”のだと思う。やりたいことを全部やり尽くし,金も名誉も手に入れて,次なるモチベーションが見つからなかったのだと思う。

 そこでデヴィッド・サンボーンワーナー・ブラザーズを辞めて「自分探し」の旅に出た。実に3年間も沈黙した。“サンボーン・キッズ”としては待つのが辛かった。置き土産のような『CLOSE−UP』をよく聴いていたよなぁ。

 そうして,ついに発表された『ANOTHER HAND』(以下『アナザー・ハンド』)は,デヴィッド・サンボーン初のジャズ・アルバム。
 コマーシャルな世界から離れ,内奥の自分を確認するために旅に出たデヴィッド・サンボーンが,自分のルーツであるジャズ・アルバムを携えて帰ってきた。

 これまで「好きだ,好きだ」と公言していたけれども,管理人はデヴィッド・サンボーンをみくびっていたのだと思う。こんなにもジャズに“映える”アルトサックスを吹けるとは思っていなかった。“ジャズメン”デヴィッド・サンボーンを男として見直したのだった。
 へぇ〜,ジャズを演るとこんなにも変わるものなのか? これが管理人の『アナザー・ハンド』の第一印象である。だからタイトルが『アナザー・ハンド』になったのだ…。

 ジャズと言っても『アナザー・ハンド』は,4ビートの純ジャズスタンダード集ではない。激しいアドリブの応酬系でも,フリージャズでもない。
 デヴィッド・サンボーンオリジナルコンテンポラリージャズは,なんと!ECMから発売されてもおかしくないビル・フリゼールチャーリー・ヘイデンジャック・デジョネット等の「重鎮」が集まった“COOLな”ジャズ・ブルースであった。

 そう。デヴィッド・サンボーンのルーツはジャズだけでなくR&B。デヴィッド・サンボーンジャズを演ろうとすると“ブルース魂”が出てきてしまう。

 一般にジャズを演った『アナザー・ハンド』を異色盤と言われているが,管理人にとってデヴィッド・サンボーンの異色盤は『ささやくシルエット』と『パールズ』の2枚であって『アナザー・ハンド』は,後の『アップフロント』『ヒアセイ』へと続く「ジャズファンク路線」への“伏線”となっている。

ANOTHER HAND-2 『アナザー・ハンド』が,どうしてもフォーク調に偏って聴こえてしまうのはチャーリー・ヘイデンの存在にある。『アナザー・ハンド』のは同じベーシストとして“盟友”マーカス・ミラーも参加しているのだが『アナザー・ハンド』のベーシストは,断然,チャーリー・ヘイデンである。

 『アナザー・ハンド』のハイライトはチャーリー・ヘイデンの【FIRST SONG】。パット・メセニーゴンサロ・ルバルカバを魅了した,この名曲の最高バージョンがデヴィッド・サンボーンの【FIRST SONG】。
 ビル・フリゼールギター・サウンドは,パット・メセニーとは一味違うビターなギター。この浮遊感あるビル・フリゼールと相まみれるデヴィッド・サンボーンのトーンを押さえた“泣きのブロー”が大好物なのである。

 ずっとぼけたテンションでジャズっぽくアウトしまくる『アナザー・ハンド』のアルトサックスは,サンボーン嫌いのジャズ・ファンにも,ジャズ嫌いのサンボーン・ファンにとっても必聴盤なのですよっ。

 …と今振り返れば余裕の精神状態で『アナザー・ハンド批評を書いていますが『アナザー・ハンド』発売時点でのデヴィッド・サンボーンの“激変”には,流石の管理人も慌ててしまいました。あのままジャズメインストリームに突き進むことへの期待も当然ありましたが,期待以上に恐れと不安が強かったので『アップフロント』での“アゲアゲ・サンボーン”の登場に,ほっと胸を撫で下ろしたことを思い出します。

 その意味でデヴィッド・サンボーンの『アナザー・ハンド』は本田雅人の『ILLUSION』。これが『アナザー・ハンド批評の結論で〜す。

  01. First song
  02. moniCa jane
  03. come To Me, nina
  04. hObbies
  05. another Hand
  06. Jesus
  07. weirD from one step Beyond
  08. CEE
  09. medley:
    prayers for Charlie from the devil at four O'clock
    The lonely from the Twilight zone
  08. dukes & counts

(エレクトラ/ELEKTRA 1991年発売/WPCR-27468)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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山本 英次 / コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン4

COFFEE BREAK WITH PIANO MAN-1 山本英次は超一流の“ジャズ・ピアニスト”である。そしてボチボチの作曲家であり,一流の編曲家でもある。
 ゆえに『COFFEE BREAK WITH PIANO MAN』(以下『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン』)の聴き所は,有名ジャズスタンダードを「どんなアレンジで聴かせてくれるのか」なのだが,山本英次の場合はそれだけでは終わらない。
 山本英次の場合は「曲によってどのピアノで弾くべきか」であり「このピアノに合うのはこんな曲」なのである。

 ズバリ,山本英次を超一流“ジャズ・ピアニスト”にして一流の編曲家足らしめている秘訣が「楽曲とピアノのマッチング」である。演奏とアレンジの要素に「楽曲とピアノのマッチング」の優劣が考えられている。山本英次が“ピアノマン”という愛称で知られているのも納得である。

( 「お洒落なジャズトリオ」の場合,さらに吉田啓二ギター田野重松ベースという要素が加味されている。プロ・ミュージシャンとしては当然の仕事なのかもしれないが,バランスの良さが図抜けている。 )

 『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン』で登場するのは2台のピアノ。女性的なベーゼンドルファーと男性的なスタインウェイである。
 【テンダリー】がベーゼンドルファー,【ミスターサンドマン】がベーゼンドルファー,【ハロードーリー】がスタインウェイ,【ワットアディファレントアデイメイト】がベーゼンドルファー,【イグザクトリーライクユー】がスタインウェイ,【星に願いを】がスタインウェイ,【ミスジョーンズ】がベーゼンドルファー,【ハニーサックルローズ】がベーゼンドルファー,【サンデー】がベーゼンドルファー…。

 楽器としての「ピアノ通」の読者の皆さんはどうでしょうか? 管理人はこの「楽曲とピアノのマッチング」が100%大正解の選択肢だったと思っています。

COFFEE BREAK WITH PIANO MAN-2 ベーゼンドルファースタインウェイの「聞き比べ」を可能とする,同じ録音器材,同じマイクロフォン,そしてセッティングも極力同条件でのレコーディング環境が『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン』の“売り”である2台のピアノの音色の違いを浮き上がらせている。

 『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン批評の最後に「スイングジャーナル」誌96年8月号からの引用を…。
 「これほどピアノと言う楽器の魅力を見事にとらえたジャズ・アルバムを聴いたという記憶はまったくない」。管理人も超高音質の部分については同感である。

 でも,超高音質=山本英次のブランドも,VENUSの「ハイパー・マグナム・サウンド」が出てからは興味なくしてしまったんだよなぁ…。
 そして『コーヒーブレイク・ウィズ・ピアノマン』の主役は,ピアノそのものであってジャズではないんだよなぁ…。コーヒーブレイクのBGMなんだよなぁ…。

  01. バラのささやき
  02. テンダリー
  03. ミスターサンドマン
  04. サンセットウィスパー
  05. お散歩
  06. グリーンヒルラグ
  07. 願い
  08. ハロードーリー
  09. ワットアディファレントアデイメイト
  10. イグザクトリーライクユー
  11. 星に願いを
  12. ミスジョーンズ
  13. ブルースフォーチャーリー
  14. ハニーサックルローズ
  15. 花束とドラ焼き
  16. サンデー
  17. グッドバイピアノマン
  18. グッドバイピアノマン Take 2

(YPM/YPM 1996年発売/YPM-004)

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デヴィッド・サンボーン / チェンジ・オブ・ハート5

A CHANGE OF HEART-1 デヴィッド・サンボーンの『HEART』三部作とは,名盤HEART TO HEART』 → 大名盤STRAIGHT TO THE HEART』 → 超名盤A CHANGE OF HEART』(以下『チェンジ・オブ・ハート』)。
 そう。『チェンジ・オブ・ハート』こそが『HEART』三部作の完結作! …というか(管理人は『CLOSE−UP』派なのですが)『CLOSE−UP』と人気を二分するデヴィッド・サンボーンの“最高傑作”の1枚である!

 どうですか! この豪華すぎるサポート・メンバー。ベースキーボードギターマーカス・ミラーを筆頭に,ギターハイラム・ブロックカルロス・リオスニッキー・モロキベースアンソニー・ジャクソンピアノドン・グロルニックシンセサイザーフィリップ・セスロニー・フォスターマイケル・センベロバーナード・ライトジェイソン・マイルスドラムスティーヴ・ガッドスティーヴ・フェローンジョン・ロビンソンパーカッションポウリーニョ・ダ・コスタミノ・シネルEWIマイケル・ブレッカー…。

 またまたどうですか! マイケル・コリーナマーカス・ミラーロニー・フォスターフィリップ・セスの4人が同時投入された凄腕プロデューサー陣…。

 フュージョン界のオール・スター・キャストを1人で率いるデヴィッド・サンボーン。前作『STRAIGHT TO THE HEART』から3年4か月もファンを待たせてしまうデヴィッド・サンボーン。大物である。スーパー・スターである。

 そう。『チェンジ・オブ・ハート』でのデヴィッド・サンボーンは,フュージョン・サックス・プレイヤーの「枠」を飛び越え,世界一のサックス奏者としての「絶対的な自信」が“音の表情”に表われている。

 要はイケイケで無敵の「絶頂期」のデヴィッド・サンボーン・サウンドである。4人のプロデューサーの個性豊かで「強すぎるバック・サウンド」を“サンボーン節”一発で,自分の音としてまとめ上げる高トルクでハイパワー。毎朝,体内にパワーが漲ってくるのだろう。とにかく若々しく,ギラツイタ,メタルなサックスが超カッコイイ。

A CHANGE OF HEART-2 『チェンジ・オブ・ハート』の目玉は“ファンキー・サンボーン”の代表曲【CHICAGO SONG】。“夏到来”のテーマ曲【SUMMER】。大バラード曲【THE DREAM】のビッグ3!

 詳しくは書かない。とにもかくにも【CHICAGO SONG】【SUMMER】【THE DREAM】を聴いて,踊り狂い,とめどなく続く感動に大泣きしてほしい。

 『チェンジ・オブ・ハート』からはデヴィッド・サンボーンの「ドヤ顔」が聴こえてくる。そんな愛すべきアルバムである。

  01. Chicago Song
  02. Imogene
  03. High Roller
  04. Tintin
  05. Breaking Point
  06. A Change Of Heart
  07. Summer
  08. The Dream

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1987年発売/32XD-631)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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