アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2016年09月

フライド・プライド / ストリート・ウォーキング・ウーマン5

STREET WALKING WOMAN-1 1stFRIED PRIDE』のような横田明紀男の「バカテク+SHIHOとのコンビネーション」を期待して買った,フライド・プライド2ndSTREET WALKING WOMAN』(以下『ストリート・ウォーキング・ウーマン』)にヤラレテしまった。

 フライド・プライドの魅力はテクニックではなかった。フライド・プライドの魅力はハートである。ソウルである。感情のアタックである。ガッツである。
 そう。フライド・プライドとは「気合いと根性」の「ジャズ・ユニット」なのである。

 もはやミス・タッチとかはお構いなし。感情の赴くままにヴォーカルギターが“シャウト”している。そして,その横田明紀男SHIHOの“シャウト”のタイミングが,時に同じく,時にバラバラでジャズを感じさせてくれる。
 なんだか突然「ヘタウマ」になった感のあるSHIHOヴォーカルが心に入ってきてヤラレテしまったのだ。

 ジャズ・ファンたるもの,メロディーよりもアドリブ目当てなのだけど,アドリブの楽しさを知るために,知識としての原曲のメロディー,そして歌ものなら歌詞も見聞きする。
 ただし,インスト・ファンにとって歌ものは何度聴いても雰囲気で終わる。細かな歌詞の意味までは気にしていない。サックスピアノが「カッコヨク歌い上げれば」それでいいのである。ジャズ・ファンにとっての元ネタはあくまで「資料」である。

 ゆえにSHIHOに限らず,基本的にジャズ・ヴォーカルとは,管理人にとっては「楽器の1つ」である。声帯を歪ませて“シャウト”する「楽器の1つ」である。
 だからSHIHOの突然の「ヘタウマ化」に戸惑った。いつもは「楽器」として聴いているジャズ・ヴォーカルが,ダイレクトに歌詞を心に届けてきた。

 記憶が定かではないのだが,個人的にライナーノーツの歌詞カードを真剣に読み返したのは『ストリート・ウォーキング・ウーマン』が初めての経験だと思う。

 たくさん聴いてきたはずの【クロス・トゥ・ユー】【イット・ドント・ミーン・ア・シング〜スイングしなけりゃ意味ないね】【エブリシング・ハプンス・トゥー・ミー】【イフ・アイ・ワー・ベル】【マイ・ファニー・バレンタイン】【ムーン・リバー】【ワッツ・ゴーイング・オン】【バーニン・アップ・ザ・カーニバル】って,実はこんな歌だったんだ〜。

STREET WALKING WOMAN-2 とにかくフライド・プライドは“リーダー”横田明紀男のワンマン・ユニットではない。フライド・プライドには“磨けば光る”SHIHOがいる。

 フラプラ贔屓としては,この認識を『ストリート・ウォーキング・ウーマン』の時点で持てたことがあとあと大きい。
 横田明紀男・偏重主義ではフライド・プライドをここまで楽しめない。ジャズ・ヴォーカル・楽器主義ではメロディーを,そしてアドリブをここまで楽しめてはいない。

  01. STREET WALKING WOMAN
  02. CLOSE TO YOU
  03. IT DON'T MEAN A THING
  04. EVERYTHING HAPPENS TO ME
  05. NORWEGIAN WOOD
  06. IF I WERE A BELL
  07. MY FUNNY VALENTINE
  08. ALMAZ
  09. MOON RIVER
  10. SUPERSTITION
  11. WHAT'S GOING ON
  12. BURNIN' UP THE CARNIVAL

(コンコード/CONCORD 2002年発売/VICJ-60965)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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チャールス・ミンガス / クンビア&ジャズ・フュージョン5

CUMBIA & JAZZ FUSION-1 フュージョンという音楽は,一般的に「ジャズとロックとの融合」を意味しているが,チャールス・ミンガスの『CUMBIA & JAZZ FUSION』(以下『クンビア&ジャズ・フュージョン』)は「ジャズクンビアとの融合」。すなわち,ジャズとアフロ・アフリカンやトロピカルでネイティヴな音楽との融合を意味する。
 そう。『クンビア&ジャズ・フュージョン』によって,真の「ジャングル・サウンド」が登場したのである。

 個人的には『クンビア&ジャズ・フュージョン』を聴いていると,どうしてもウェザー・リポートの『ブラック・マーケット』を連想してしまう。
 あのチャールス・ミンガスジョー・ザビヌルに影響されている。

 とは言え,そこはチャールス・ミンガス。ただでは終わらない。『クンビア&ジャズ・フュージョン』は『ブラック・マーケット』へのアンサー・アルバムであり,メインストリームをフュージョンに奪われたジャズ・コンボ側からのフュージョン・グループへの回答なのである。

 『クンビア&ジャズ・フュージョン』には,演奏時間27分と22分の2曲の大曲が収録されているのだが,2曲目の【MUSIC FOR“TODO MODO”】はイタリア映画「トド・モード」のテーマ曲ゆえ,本来のテーマ「クンビア」とは無関係である。

 ただし,管理人的には,この2曲が揃っての『クンビア&ジャズ・フュージョン』の“破壊力”なのである。チャールス・ミンガスの音楽実験がトロピカルに向いたのが【CUMBIA & JAZZ FUSION】であって,ロマンティックに向いたのが【MUSIC FOR“TODO MODO”】であって,どちらも同じく「ジャングル・サウンド」していると思う。

 【CUMBIA & JAZZ FUSION】も【MUSIC FOR“TODO MODO”】も共に“長尺になるべくしてなった”長編エンターテイーナー。曲の途中途中で,その前の仕掛けが利いた見事な展開で,全てに無駄がない。
 果たして,チャールス・ミンガスは,ここまで細かな楽譜を準備していたのだろうか? 曲想の変化に合わせて積み重ねられたアドリブが,リスナーを「未曾有のジャングル・サウンド」へと誘っていく。

 そうしてチャールス・ミンガスが最後に辿り着いたのは,音楽のユートピア,音の桃源郷である。まるで“心の故郷”にでも帰って来たかのような,懐かしい感動がある。
 この辺りの快感の種類がウェザー・リポートの『ブラック・マーケット』と同じ系統なのである。

 ジョー・ザビヌルのようにエレクトリック・ジャズへとは向かわずに,それでもなお,新しいジャズの形を追い求めている“孤高の”チャールス・ミンガスが最後に行き着いた音世界は,最高にHAPPYな楽園サウンドであった。

CUMBIA & JAZZ FUSION-2 チャールス・ミンガスの人生は闘争そのものであった。ウッド・ベース一本で黒人差別の世の中と闘ってきた。そんなチャールス・ミンガスが死の目前に作り上げた『クンビア&ジャズ・フュージョン』では,音楽から怒りの感情が消えている。

 『クンビア&ジャズ・フュージョン』からは,怒りではなくチャールス・ミンガスの“静かなる笑い”が聴こえてくる。怒りでも悲しみでもなく,その先にある“達観した笑い”である。
 そう。チャールス・ミンガスの「ジャングル・サウンド」が,ついに目標であったデューク・エリントンを捉えている。

 先に『クンビア&ジャズ・フュージョン』は,ジョー・ザビヌルに対するチャールス・ミンガスからの回答と書いた。この言葉に二言はない。
 しかし『クンビア&ジャズ・フュージョン』の真実とは,チャールス・ミンガスが,どうしても思いを届けられずにいた,敬愛するデューク・エリントンの「ジャングル・サウンド」への回答でもあったと思う。

 チャールス・ミンガスの晩年は幸福であった。管理人はそう思うことにしている。チャールス・ミンガスよ,永遠なれ!

  01. CUMBIA & JAZZ FUSION
  02. MUSIC FOR "TODO MODO"

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1978年発売/WPCR-27254)
(ライナーノーツ/大村幸則)

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フライド・プライド / FRIED PRIDE4

FRIED PRIDE-1 “類まれなる歌唱力”を持つヴォーカリストSHIHOと“超絶技巧派”ギタリスト横田明紀男による「日本のタック&パティ」ことフライド・プライド
( タック&パティを知らない読者の皆さんはドリカムのようなものと思ってください )

 フライド・プライドのメインは,タック&パティパティ・キャスカートで,ドリームズ・カム・トゥルーが吉田美和であるように,ヴォーカリストSHIHOである。
 とにかく,SHIHOの「尖がっているのにシルキーでソウルフルな」ジャズヴォーカルが素晴らしい。

 でもタック&パティタック・アンドレスで,ドリームズ・カム・トゥルーが中村正人であるように,フライド・プライドの音楽を裏で実際に回しているのは“リーダー”横田明紀男“その人”である。

 そもそも,ヴォーカリストギタリストによるユニットではギタリストの負担が大きい。まだポップスやロック系の弾き語りならまだしもフライド・プライドが演奏するのはジャズである。

 歌伴としてのカッティング,バッキングに,間奏でのギターソロではアドリブまで披露する。基本的にはコード楽器としてリズムをキープしつつ,それでいて歌と絡みつつ,ヴォーカリストよりも前に出ない。
 大所帯のギター・ヒーロー役よりも敷居が高いのが「ジャズ・ユニットのギタリスト」なのだと思う。

 フライド・プライド1stFRIED PRIDE』を聴いていると,横田明紀男の「苦心の跡」が色濃い。
 フライド・プライドの場合,SHIHOの表現力が,2nd3rdと成長するにつれ,横田明紀男ギターがシンプルになっていく。

FRIED PRIDE-2 その意味で『FRIED PRIDE』の横田明紀男が,テクニック的には一番であろう。SHIHOの右へ左へ,SHIHOの前へ後ろへ,大忙し!

 SHIHOヴォーカルを先導する“アクロバティックな”ギターの動きを追いかけていると,SHIHOとの連動というよりはSHIHOを置き去りにする横田明紀男の“超絶技巧”にどうしても耳が行く。
 横田明紀男の突出に「ジャズ・ユニット」というよりも,ヴォーカルギターが別々のブースでレコーディングした雰囲気を感じたりして…。辛口ですみません…。

 とにもかくにも“ジャズ・ギタリスト横田明紀男“その人”を聴きたいのなら『FRIED PRIDE』を聴け〜!
 横田明紀男の多芸ぶりには,ただただ「スゲェー」!

  01. Love For Sale
  02. If
  03. Lately
  04. The Man I Love
  05. 'Round Midnight
  06. Morning Must Come
  07. Louisiana Sunday Afternoon
  08. 'S Wonderful
  09. Jumpin' Jack Flash
  10. Calling You
  11. Paradise

(コンコード/CONCORD 2001年発売/VICJ-60820)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/悠雅彦)

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デヴィッド・サンボーン / タイム・アンド・ザ・リヴァー4

TIME AND THE RIVER-1 フュージョン時代のデヴィッド・サンボーンが大好きなファンとしては「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の15年振りとなるコラボレーションTIME AND THE RIVER』(以下『タイム・アンド・ザ・リヴァー』)にニンマリ。

 VERVEの2作とDECCAの2作が「シリアス&ヴィンテージ」路線だったから,待望の“売れ線”が聴けるとあって,フラゲでGETしたその日は『タイム・アンド・ザ・リヴァー』を10回連続で聴き続けた。
 デヴィッド・サンボーンの“泣きのブロー”にマーカス・ミラーの“ドンシャリ”なジャズベが最高に似合っている。やっぱりデヴィッド・サンボーンはこうでなくっちゃ…。
 15年振りの“ファンキー・サンボーン”の復活に一人悦に入ったものだ。数日後に『PEARLS』を聴き返してみるまでは…。

 まぁ,昔のデヴィッド・サンボーンを聴きたくなって選んだのが,デヴィッド・サンボーンの中で“一番煌びやかな”『PEARLS』だったのが運のつき。
 『タイム・アンド・ザ・リヴァー』のデヴィッド・サンボーンアルトサックスの音色が『PEARLS』と比べて,くすんでいる。濁っている。荒れている。
 フレージングが“サンボーン節”のままだったから気付かなかったが,これはデヴィッド・サンボーンの枯れではない。「栄枯盛衰」から来たすさみのように感じてしまった。

 そう。『タイム・アンド・ザ・リヴァー』における「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」復活の真実とは,デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラーに「HELP」を求めたアルバムである。
 この視点でマーカス・ミラーの『AFRODEEZIA』を聴き直してみてほしい。『タイム・アンド・ザ・リヴァー』のサウンド・スケッチは『AFRODEEZIA』のそのまんま〜。

 過去に『INSIDE』で,マーカス・ミラーに主導権を握られたのがきっかけで袂を分けたはずだったのに,あのマーカス・ミラーのサウンドがどうしても忘れらないデヴィッド・サンボーンが,マーカス・ミラーの出した意見を丸呑みしてまで「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の復活にこだわった。そんな流れ?

 デヴィッド・サンボーンにとってはモデル・チェンジを求められた15年であったが,マーカス・ミラーにとっては“天才”に磨きをかけた15年であった。
 
TIME AND THE RIVER-2 ズバリ『タイム・アンド・ザ・リヴァー』は,マーカス・ミラーが『AFRODEEZIA』で追求した「アフリカ路線」の続編である。
 極論を言えば,基本,同じサックス奏者のアレックス・ハンを「デヴィッド・サンボーンに差し替えただけ」である。

 『AFRODEEZIA』でアレックス・ハンが表現できなかったサックスを『タイム・アンド・ザ・リヴァー』でデヴィッド・サンボーンを使って表現している。
 くすんで,濁って,荒れて,すさんだ音を“苦味”としつつ,デヴィッド・サンボーンの体内に残された“旨味”を限界まで引き出している。マーカス・ミラーの「流石の仕事ぶり」である。

 そんなマーカス・ミラーが「山」と問えば,これまたデヴィッド・サンボーン的確に「川」(『TIME AND THE RIVER』)と答えている。
 「デヴィッド・サンボーンマーカス・ミラー」の夢のコラボ・アゲインは,何年間が空いたとしても,一音出した瞬間に“あの頃の2人に”戻れるんだなぁ。
 デヴィッド・サンボーンアルトサックスが「川」の流れのようにマーカス・ミラーの“心のヒダ”に流れていく。

 漢字の「川」を電話等で区別するために発音する→「三本川」→「サンボーン川」→アルバム・ジャケットがオツである。

  01. A LA VERTICALE
  02. ORDINARY PEOPLE
  03. DRIFT
  04. CAN'T GET NEXT TO YOU
  05. OUBLIE MOI
  06. SEVEN DAYS SEVEN NIGHTS
  07. WINDMILLS OF YOUR MIND
  08. SPANISH JOINT
  09. OVERTURE (from The Manchurian Candidate)
  10. DAYDREAMER
  11. LITTLE CHURCH

(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61711)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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渡辺 貞夫 / ナチュラリー4

NATURALLY-1 『NATURALLY』(以下『ナチュラリー』)が泣ける。2重の意味で泣ける。

 1つ目の涙は「絶賛の涙」である。
 渡辺貞夫アルトサックスこそが「世界一」である。こんなにも「美しく・優しく・温かい」アルトサックスは世界中を探し回っても見つからない。

 個人的には渡辺貞夫の音楽があれば何があっても生きていける。本気でそう思う。これまでのナベサダのアルバムは全部好きだ。そんな思いを持って聴いた『ナチュラリー』。1曲目の【NATURALLY】を聴いただけで涙が溢れてくる。そしてアルバムを全部聴き終えるまで,ずっと涙が止まらない。

 では読者の皆さんに『ナチュラリー』を奨めたいか,と問われればそうでもない。恐らく,他の音楽ファンの涙腺はゆるくならないかもしれないから。
 管理人と同じ経験ができる人とは,これまでの人生をずっと渡辺貞夫と共に生きてきた人だけなのだと思う。ずっとナベサダと時を過ごしてきたから,一音聴いただけで感動してしまう。渡辺貞夫の“今”が聴こえてくるからだ…。

 まだまだナベサダの体調は良さそうだ。いつもと変わらぬナベサダの音色を確認できて安心する。その上で,今までとは違ったナベサダを打ち出そうとしている姿勢に泣けてくる。
 「貞夫さん,マイペースで大丈夫ですから。そんなに飛ばさなくて大丈夫ですから。もう十分に満足していますし,心から感動しています。感謝しています」。

 2つ目の涙は「悲しみの涙」である。こちらは実際に涙することはないが“心の涙”ということで…。
 渡辺貞夫の老いを初めて,証拠として目のあたりにしてしまった。初めて直視させられてしまった。親の老いた姿を見た時の思い出とと被ることがあって…。

 管理人の知る渡辺貞夫とはオリジナル曲の制作にこだわり続ける男である。勿論,カヴァー曲も演奏する。有名スタンダード曲を取り上げ,自分の感じたままに新鮮なアレンジを施す渡辺貞夫も大好きである。

 それがどうだろう。『ナチュラリー』の【WATER COLORS】と【SPRING】に驚いた。
 何と!【WATER COLORS】は,ほぼ【MY DEAR LIFE】。【SPRING】は,ほぼ【TIMES WE SHARED】。あれ程「オリジナルオリジナル」と連呼してきた渡辺貞夫もついに…。

NATURALLY-2 だから管理人は思う。全てのナベサダ・ファンは『ナチュラリー』を聴くべきだと強く思う。
 『ナチュラリー』には,若い頃のナベサダはいない。でも今のナベサダがいる。老いを自覚し始め「自分の音と懸命に闘っている」ナベサダアルトサックスが記録されている。

 こんなにも「美しく・優しく・温かい」アルトサックス渡辺貞夫の他にはない。渡辺貞夫は命を懸けて,自分の音楽を守っている。自分の音楽を更に発展させようとしてもがいている。

 渾身のバラードSMILE】に,心が震えて止まらない。感動が止まらない。

  01. Naturally
  02. Junto Com Voce
  03. After Years
  04. Bem Agora
  05. Water Colors
  06. Na Lapa
  07. Carinhoso
  08. Bird's Song
  09. Spring
  10. Smile

(ビクター/JVC 2015年発売/VICJ-61742)
(ライナーノーツ/斉藤嘉久)

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デヴィッド・サンボーン / オンリー・エヴリシング4

ONLY EVERYTHING-1 “ニコイチ”のデヴィッド・サンボーンにふさわしく“レイ・チャールズトリビュート”の『HERE & GONE』の続編『ONLY EVERYTHING』(以下『オンリー・エヴリシング』)も“ハンク・クロフォードトリビュート”。

 所謂,デヴィッド・サンボーンの“ニコイチ”と来れば,前作の完成度を高めたものが多かったが,今回の『オンリー・エヴリシング』はいつもの続編ではない。
 『HERE & GONE』のレビジョンアップ,マイナーチェンジではなく,メジャーアップグレートでのバージョンアップ。同じブラスでも“ブラス・ロック”ではなく,R&Bにブラスが加えられた“ブルース”なのである。

 “ブルース”から出発して,カントリー,R&B,ジャズフュージョンファンクで頂点を極めたデヴィッド・サンボーンの「一周回って」演奏するオルガントリオが渋い。いい音だしている。
 ついにデヴィッド・サンボーンキャリアの初頭へ,いいや,デビュー以前の「サックス少年」にまで“原点回帰”。

 デヴィッド・サンボーンサックスを始めたエピソードのは小児麻痺のリハビリのためだが,デヴィッド・サンボーンがプロを志すようになったきっかけは,レイ・チャールズ・バンドでサックスを吹いていたハンク・クロフォードへの“憧れ”にあった。

 ただし,デヴィッド・サンボーンハンク・クロフォードのコピーは絶対にしない。と言うかレイ・チャールズの存在なしに,ハンク・クロフォードに近づくことなど出来やしない。
 ズバリ,デヴィッド・サンボーンが“憧れた”ハンク・クロフォードとは「レイ・チャールズがいてナンボ」のサックス奏者。

 『オンリー・エヴリシング』でデヴィッド・サンボーンが“仮想”レイ・チャールズに仕立て上げたは,ヴォーカルジョス・ストーンジェイムス・テイラーであり,ハモンドオルガンジョーイ・デフランセスコがキーマンである。
 ジョス・ストーンジェイムス・テイラーが歌い,ジョーイ・デフランセスコGROOVEする,レイ・チャールズばりの“ブルース”に触れて,ついに念願の“ハンク・クロフォード越え”を成し遂げている。

ONLY EVERYTHING-2 『オンリー・エヴリシング』はデヴィッド・サンボーンにとって「特別な意味を持つ」1枚になったのだと思う。ある意味,生涯の目標を初めて達成できたアルバムなのだから…。

 4ビート基調のオーセンティックなジャズをベースに,クレバーな“ブルース”が見事に融合している『オンリー・エヴリシング』。
 ジャズフュージョン・ファンの求めるデヴィッド・サンボーンのアルバムではないかもしれない。しかし,オールドスクールなジャズを演奏するデヴィッド・サンボーンを聴き込むのも,長年の“サンボーン・キッズ”にとってはオツである。

  01. THE PEEPER
  02. ONLY EVERYTHING (FOR GENEVIEVE)
  03. HARD TIMES
  04. LET THE GOOD TIMES ROLL
  05. BABY WON'T YOU PLEASE COME HOME
  06. YOU'VE CHANGED
  07. HALLELUJAH, I LOVE HER SO
  08. BLUES IN THE NIGHT
  09. SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD
  10. DAVENPORT BLUES

(デッカ/DECCA 2010年発売/UCCU-1262)
(ライナーノーツ/松下佳男)

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渡辺 貞夫 / カム・トゥデイ4

COME TODAY-1 『INTO TOMORROW』から『COME TODAY』(以下『カム・トゥデイ』)へ…。

 たかがアルバム・タイトルであるが,ここに渡辺貞夫の願いであり,祈りが込められている。そう。渡辺貞夫からのメッセージは「TOMORROW(明日)」ではなく「TODAY(今日)」である。

 明日に目を向けることは,今を見つめること以上に価値があると思っている。ただし,未来を見つめることと現実から目を背けることとは意味が違う。もっと言うと渡辺貞夫は,明日から今日を見つめている…。幸せな明日が待っているんだから,今日一日を何とか頑張んだ…。
 苦しみの真っ最中には考えられないかもしれないが,苦しみを乗り越えた先には,あんな日もあった,と笑って話せることだってある…。

 「冬の土の奥に
 芽生えのときを待つ生命があるように,
 悲しみや困難を乗り越えた先には
 希望があります。
 『痛みの度合いは 喜びの深さを知るためにある』
 これはチベットの格言ですが,
 僕のそうした想いを,このアルバムに
 感じてもらえればと願っています」。

 これは『カム・トゥデイ』のライナーノートの中に記されている渡辺貞夫の言葉である。
 ここに直接的な「頑張ろう」といった言葉はない。そうではなく渡辺貞夫は,自分のもう一つの言葉であるアルト・サックスを通じて,慰め,励まそうとしている。

 この姿勢こそが渡辺貞夫そのものだと思う。自分の音楽を通して,人々に笑顔を,人々に感動を,そしてこの度は慰めと励ましを…。
 そう。『カム・トゥデイ』とは渡辺貞夫から届けられた「東日本大震災」へのレクイエムである。渡辺貞夫自身も震災の前に,最愛の妻を亡くしたそうだ。そんな悲しみに暮れた渡辺貞夫だから“寄り添う”ことの出来たレクイエム…。

 さて,このように書くと『カム・トゥデイ』を,重いジャズ,と受け止められてしまいそうだがそうではない。
 『INTO TOMORROW』と同じく,ピアノジェラルド・クレイトンベースベン・ウィリアムスドラムジョナサン・ブレイクのNYの精鋭たちとのセッションにおいて,渡辺貞夫アルト・サックスを吹き鳴らしながら,踊り,跳びはねている。
 この“軽さ”こそが『カム・トゥデイ』の真髄だと思う。あらゆる困難を乗り越えた結果として,ついに手に入れた“軽さ”なのであろう。

COME TODAY-2 『カム・トゥデイ』の聴き所は“丁々発止とレクイエム”である。若手というより実力者の3人とのインタープレイである。
 ジェラルド・クレイトンベン・ウィリアムスジョナサン・ブレイクの演奏が『INTO TOMORROW』と比べて格段に良くなっている。

 この3人の成長の後ろに渡辺貞夫の存在あり。渡辺貞夫ジェラルド・クレイトンベン・ウィリアムスジョナサン・ブレイクの関係性が「凄腕の共演者たち」から「NYの3人の息子たち」へと変化している。
 だから渡辺貞夫アルト・サックスで徹底的に攻めているのに,穏やかな夕凪のような演奏に聴こえるのだろう。聞き流すことがもったいない“ハートフルな”ナベサダ・ミュージック。

 「TOMORROW(明日)」から見た「TODAY(今日)」は,決して悪いことばかりではないはずだ。将来から現在を見つめることができれば,つかの間の患難を忍耐できる。
 そうして忍耐して過ごした今日一日,気持ちが付いてこなくとも,明るい将来の希望を見つめ続けることができますように…。

  01. Come Today
  02. Warm Days Ahead
  03. Airy
  04. What I Should
  05. I Miss You When I Think of You
  06. Gemmation
  07. Vamos Juntos
  08. Simpatico
  09. She's Gone
  10. Lullaby

(ビクター/JVC 2011年発売/VICJ-61655)
(ライナーノーツ/渡辺貞夫,小沼純一)

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デヴィッド・サンボーン / ヒア・アンド・ゴーン

HERE & GONE-1 『TIMEAGAIN』『CLOSER』と変わらぬレコーディング・メンバーを見て「2枚で1セット」の掟を破る,デヴィッド・サンボーン初の「三部作」に突入したかと思ってしまった『HERE & GONE』(以下『ヒア・アンド・ゴーン』)であったが,そこは大丈夫。

 「名門=ヴァーヴ」から「老舗=デッカ」への電撃移籍。馴染みのメンバーを引き連れての移籍であるが,コンテンポラリージャズ路線は,しっかりと『TIMEAGAIN』『CLOSER』で終了させて『ヒア・アンド・ゴーン』では,同じメンバーでも「一味違う」新しい音楽の旅へと繰り出している。

 ズバリ,デッカのキーワードは“ブラス”である。トランペットテナーサックスバリトンサックステナートロンボーンバスクラリネット…。
 ついにブラス・バンドが投入されたデヴィッド・サンボーン流の“ブラス・ロック”なのである。だからゲストにエリック・クラプトン

 そうして『ヒア・アンド・ゴーン』のキーワードは“レイ・チャールズトリビュート”。その実,レイ・チャールズ・バンドのアルトサックス・プレイヤー“ハンク・クロフォードトリビュート”。
 そう。ハンク・クロフォードソウルジャズを鳴らすための“ブラス・ロック”アルバムなのである。

 ジャズ界随一であろう,ギターラッセル・マローンベースクリスチャン・マクブライトドラムスティーヴ・ガットによるエモーショナルにして絶対安定のリズムに乗ったブラス隊が,デヴィッド・サンボーンを前面に押し出していく。

 ブラス・バンドの“主役を張った”デヴィッド・サンボーンが絶好調。バックの細かな音の変化を見逃さず,拾っては膨らませ&拾っては膨らませできたのも,じっくりとブラス隊と向き合った賜物であろう。

 いいや,過去にデヴィッド・サンボーン自身がブラス・バンドの一員として活躍したキャリアからくる“ソロイスト”へのこだわりを感じる。
 結構ストイックなアルトソロを吹いていて,聞き流したいのに聞き流せない“サンボーン節”に「ヒイヒイ」である。

HERE & GONE-2 正直“ファンキー・サンボーン”から“アゲアゲ・サンボーン”までの黄金期が過ぎ去り「ヴィンテージ・ファンク」で延命を図ってきたデヴィッド・サンボーン名盤なんて期待していない。

 新作が出れば惰性で購入する。CDの代金は“サンボーン・キッズ”としてのお布施のようなものである。内容など確認することもなく,死ぬまで新作を買い続けることだろう。

 だから『ヒア・アンド・ゴーン』を聴いて,これが新しい“サンボーン節”なんだ。そう感じられた自分が,ちょっぴりうれしかった。
 もはやデヴィッド・サンボーンは,いい悪い,では判断できない“レジェンド”なのである。

  01. st. louis blues
  02. brother ray (featuring derek trucks)
  03. i'm gonna move to the outskirts of town
  04. basin street blues
  05. stoney lonesome
  06. i believe to my soul (featuring joss stone)
  07. what will i tell my heart
  08. please send me someone to love
  09. i've got news for you (featuring sam moore)

(デッカ/DECCA 2008年発売/UCCU-1179)
(ライナーノーツ/成田正)

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デヴィッド・サンボーン / クローサー4

<br>
CLOSER-1 『A CHANGE OF HEART』からの『CLOSE−UP』然り。『UPFRONT』からの『HEARSAY』然り。
 デヴィッド・サンボーンには前作と同じコンセプト,同じサイドメンで作られた2枚目の続編が存在する。そしてその出来がいい。荒削りのままであった細部が仕上がっている。

 ゆえに『タイムアゲイン』の続編となる『CLOSER』(以下『クローサー』)にも期待した。
 最初は「いいではないか!」と思った。でも聴き込んでいるうちに『CLOSE−UP』や『HEARSAY』では感じなかった不満が募ってきた。

 コンテンポラリージャズはやはりデヴィッド・サンボーンの音楽ではない。デヴィッド・サンボーンならではの“SOMETHING”が感じられない。
 コンテンポラリージャズという形式だけが浮かび上がって,デヴィッド・サンボーンの“SOUL”が聴こえてこない。そういう意味では『タイムアゲイン』の続編にして,遅れてきた『PEARLS』の続編のようでもある。

 要は「幸せボケ」なのだろう。特に苦労せずとも極上のサウンドが手に入る。『PEARLS』の時は「ウィズ・ストリングス」。『タイムアゲイン』『クローサー』の場合はヴァーヴの誇る「ジャズメン・オールスターズ」のバック・サウンドに“身を委ねる”デヴィッド・サンボーンの構図。

 デヴィッド・サンボーンマイ・フェイバリットものばかりを選曲して“悠悠自適に”アルトサックスを吹いている。
 だから<マイク・マイニエリ,STRONG>ラリー・ゴールディングス,ギル・ゴールドスタインラッセル・マローンクリスチャン・マクブライトスティーヴ・ガットが集結しているというのに,ほんま物のジャズではなくイージー・リスニング的なアルトサックスが鳴っている。

CLOSER-2 だから『クローサー』の第一印象は良かったのだ。でも繰り返しの視聴に耐えられる代物ではなかった。
 本来ならキャリアを積むと円熟し深みを増すものであろうが,デヴィッド・サンボーンほどの「成功者」は別のようだ。チャッチャでパッパと一丁上がり〜。

 『CLOSE−UP』と『HEARSAY』には必然性があった。だが『クローサー』には,敢えて続編を作った「大義」が見当たらない。なんとも雑な“手馴れの”2枚目である。
 「デヴィッド・サンボーン有りき」ではない,ジャズ初心者なら大いに楽しめるのではなかろうか…。

  01. Tin Tin Deo
  02. Senor Blues
  03. Don't Let Me Be Lonely Tonight
  04. Smile
  05. Enchantment
  06. Ballad of the Sad Young Men
  07. Another Time, Another Place
  08. Capetown Fringe
  09. Poinciana
  10. You Must Believe in Spring
  11. Sofia

(ヴァーヴ/VERVE 2004年発売/UCCV-1065)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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テツジーノ(櫻井 哲夫×日野“JINO”賢二) / ダブル・トラブル5

DOUBLE TROUBLE-1 かつて「ベース・マガジン」誌の発行200号記念として企画されたセッション・バトルの相手として櫻井哲夫が指名したのが日野“JINO”賢二であった。

 その時のオファーの理由は日野賢二が,日野皓正の息子だし,ジャコ・パストリアスの弟子だし,マーカス・ミラーの高校の後輩だし…。
 NO! そんな肩書以上に何よりも日野賢二が「フロム・ニューヨーク」なパンチあるベーシストだったから!
(本当はJINOが,カシオペア時代の櫻井哲夫の大ファンだった,という噂を櫻井哲夫が聞いていたから!)。

 そんなカシオペアつながりの,一度限りのスペシャル・セッションが「TETSUJINO」の結成にまでつながった。ミュージシャンとしうものは,そしてベーシストというものは,一度音を合わせたら相手のことが全て分かるみたい!?
 「TETSUJINO」名義の『DOUBLE TROUBLE』(以下『ダブル・トラブル』)を聴いてそう思った。高いレベルでの相性の良さを感じる。低音楽器=ベーシストとしての相性以上に,意外や意外,中高音での相性の良さが詰まっている。

 櫻井哲夫日野“JINO”賢二の“超絶技巧”ベースデュオが弾きまくりで弾き倒し! 期待通りのベース・バトルゆえ,まずは買って大満足!
 でも管理人はそれだけでは満足しない。“あの”櫻井哲夫と“あの”日野“JINO”賢二デュオなのだから,ベース弾きまくり以外にも仕掛けがあるはず…。

 ズバリ『ダブル・トラブル』の仕掛けとは,ベースを主役とするための「中高音の音使い」である。いや〜,これが聴けて大満足。管理人はこんなベースデュオが聴きたかったのだ。
 櫻井哲夫日野“JINO”賢二ベーシストとしての会話は「低音の密度」に表われている。チョッパーで弾いてもツーフィンガーで弾いても,低い声で「語り合っている」。それも全く違う楽器で会話をしているかのように…。

 そう。違う切り口で相手のセンスが入ってくる。ソロの掛け合いで聴かせる豊富なバリエーションは“超絶技巧”ベーシストであればこそ! ベースばかりなのに“しつこくない”。

 要は相手の良さを引き出す“裏方稼業”のベーシスト。相手のベースを引き立たせるためなら,自分はギタリスト役でもピアニスト役でも務めてみせる。そんな気概がベースの音域を離れた「中高音の音使い」に表われていると思う。

DOUBLE TROUBLE-2 この全ての原動力は日野“JINO”賢二が抱く櫻井哲夫へのリスペクトであろうし,そんな日野“JINO”賢二の「少年の憧れ」を全身で受け止める櫻井哲夫の度量の大きさなのだろう。

 『ダブル・トラブル』の基本は“重戦車”デニス・チェンバースとの即興メロディアス路線のコンセプトであるが,相当に自由度の高いセッション集であって,高速チョッパー好きには「鳥肌モノ」! ベース・バトルってここまで出来ちゃうんだっ!

  01. BROTHA
  02. AALIYAH
  03. SOME SKUNK FUNK
  04. ELEBE-TA-IMU
  05. PHANTOM LADY -INTERLUDE-
  06. U' R SMILE -INTERLUDE-
  07. ETERNAL JOURNEY
  08. S.O.S. PLANET EARTH
  09. YOU MAKE ME FEEL BRAND NEW
  10. FOR THE FOUNDATION
  11. I'M OAN
  12. DIG ET VOUS? -INTERLUDE-
  13. GOODBYE BARON
  14. WANNA SEE U

(セブンシーズ/SEVEN SEAS 2008年発売/KICJ 545)
(ライナーノーツ/坂本信)

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デヴィッド・サンボーン / タイムアゲイン4

TIMEAGAIN-1 どうした“絶対王者”デヴィッド・サンボーン? あのデヴィッド・サンボーンリッキー・ピーターソンの「ヴィンテージ・ファンク」が,ヴァーヴから“刺客”として送り込まれてきた,ヴィブラフォンマイク・マイニエリピアノギル・ゴールドスタインギターラッセル・マローンベースクリスチャン・マクブライトドラムスティーヴ・ガットの「ジャズメン・オールスターズ」に“刺されてしまっている”。

 そう。『TIMEAGAIN』(以下『タイムアゲイン』)の真実とは,ジャズの名門レーベル=ヴァーヴに主導権を握られたコンテンポラリージャズ・アルバムであって,従来のデヴィッド・サンボーンの音楽ではない。

 デヴィッド・サンボーンジャズ・アルバムと来れば『ANOTHER HAND』が連想されるのだが『ANOTHER HAND』には,デヴィッド・サンボーンの“未来”があった。気概を感じたものだった。だから“サンボーン・キッズ”も受け入れることができた。

 対する『タイムアゲイン』には,ヴァーヴの思い描く“未来”がある。ズラリと並んだ有名ヒット・チューンのカヴァーからは,デヴィッド・サンボーンのブランド力で,多くのフュージョン・ファンをコンテンポラリージャズの世界へと引き入れたい,そんなレーベルの計算高さが透けて見える…。
 まぁ,これはこれでいい。管理人は基本ヴァーヴの創るジャズが大好きだし,コンテンポラリージャズも大好きなのだし…。

 でも『タイムアゲイン』は受け入れられない。どうにも納得いかない。
 このモヤモヤとした思いはヴァーヴに対してではない。かってのデヴィッド・サンボーンであれば,自分の意に添わずに仕組まれたコマーシャルなセッティングでも,一音で“ちゃぶ台をひっくり返す”ようなカリスマがあった。

 それが今回はどうだろう。『タイムアゲイン』でのデヴィッド・サンボーンは元気なく&あっけなく「ジャズメン・オールスターズ」に寄り切られている。え〜っ,デヴィッド・サンボーンって病気なのか?

 全世界の“サンボーン・キッズ”はうすうす感じている。『タイムアゲイン』でのデヴィッド・サンボーンモデル・チェンジは,デヴィッド・サンボーン自身が望んだことであろう。
 もはや“イケイケ”では走り続けられないことをデヴィッド・サンボーン自身が一番理解している。ジャズの名門レーベル=ヴァーヴ移籍はそんな自身の衰えを隠すための「隠れ蓑」なのである。ヴァーヴ移籍は悪評は全てヴァーヴのせいにするための戦略なのである。

TIMEAGAIN-2 デヴィッド・サンボーンが『タイムアゲイン』で使った戦略とは,敢えての「盛り上げなし」。じっくりと耳をそばだてながら聴きたくなる落ち着いた演奏である。

 流石のスティーヴ・ガットである。流石のクリスチャン・マクブライトである。こんなにも「間」を聴かせられるデヴィッド・サンボーンのアルバムはこれまでなかった。ゆったりとしたGROOVEに乗った“サンボーン節”がまだまだ第一線で通用することが証明されている…。

 管理人の結論。『タイムアゲイン批評

 『タイムアゲイン』は,アルトサックス奏者=デヴィッド・サンボーンにとっての「人生の曲がり角」。
 本格派から軟投派へ。速球派から変化球投手へ。フュージョンからコンテンポラリージャズへ。

 デヴィッド・サンボーンはまだまだ現役で通用する。ローテーション投手として10勝はできる。なせならバックが凄いから!
 常勝軍団=ヴァーヴ入団へ一言! デヴィッド・サンボーンよ,伝家の宝刀“泣きのブロー”でエースを狙え!

  01. comin' home baby
  02. cristo redentor
  03. harlem nocturne
  04. man from mars
  05. isn't she lovely
  06. suger
  07. tequila
  08. little flower
  09. spider b.
  10. delia

(ヴァーヴ/VERVE 2003年発売/UCCV-1043)
(ライナーノーツ/青木和富,鈴木雄一)

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