アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2016年11月

渡辺 香津美 / MOBOスプラッシュ4

MOBO SPLASH-1 総勢14名での『桜花爛漫ライブを行なうまでに拡大した「MOBOバンド」。次に渡辺香津美が向かったのは「MOBOバンド」からの“削ぎ落とし”であった。

 具体的にはベースグレッグ・リードラム村上“ポンタ”秀一だけをピックアップした「MOBO」なるギター・トリオを“磨き上げる”ことで「MOBOバンド」とは“毛色の異なる”ダイナミック・サウンドの追求へと動く。

 やはりこの背景にはギター・シンセサイザーの技術的進歩に負うところが大きい。しかしそれ以上にギター・トリオだけで「MOBOバンド」を具現化できるまでに「ザ・渡辺香津美の音楽」が成熟してきたことの方が何倍に大きい。

 「MOBO」で活動していた渡辺香津美の頭の中には,表現したい音楽を幾種類も同時にアウトプットしようと試みた節がある。それこそジャズであり,フュージョンであり,プログレであり,ロックである。そしてそこに無国籍サウンドやハードコア,でも歌謡曲っぽいエンターテイメントにもそそられている。

 ゆえに,フットワークの軽い「MOBO」をベースとして『MOBO SPLASH』(以下『MOBOスプラッシュ』)では,フロントにマイケル・ブレッカーデヴィッド・サンボーンという“超大物”を迎えての“ぶつかり稽古”を敢行!

 マイケル・ブレッカーデヴィッド・サンボーンの「猟奇的な」変態プレイが効いている! マイケル・ブレッカーが「ブチ切れる」と渡辺香津美も「ブチ切れる」! デヴィッド・サンボーンが「荒れ狂う」と渡辺香津美も「荒れ狂う」!
 管理人は『MOBOスプラッシュ』でのトラウマが,後の渡辺香津美の変態プレイに影響を及ぼしたと想像する。

 鍵盤を置かずにギター・シンセサイザーやサンプラーを駆使した「MOBOバンド」と遜色なしの「MOBO」に,マイケル・ブレッカーでもなくデヴィッド・サンボーンでもなく,渡辺香津美の“色付けの個性”が感じられる。

MOBO SPLASH-2 さて,ここまで書いてきてアレなのだが『MOBOスプラッシュ』は楽曲の出来がイマイチ。個人的には【十六夜】と【シナプス】の2曲だけである。
 この2曲がどちらもスロー・ナンバーだという事実に「MOBO」プロジェクトの“終焉”を予感させる星4つ。

 それにしても【十六夜】である。【十六夜】こそが“客演”デヴィッド・サンボーン最大の名バラードである。【ドリーム】と同じくらい大好き!

  01. AFTERNOON IN THE PARK
  02. SPLASH
  03. IZAYOI
  04. SOMETIMES WE SAY MONK
  05. CRISIS III
  06. GOURD-TOP-MOUSE
  07. SYNAPSE
  08. BUSIEST NIGHT

(ポリドール/DOMO 1985年発売/UCCJ-4116)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/池上比沙之,石沢弘治)

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ボビー・ハッチャーソン / ハプニングス5

HAPPENINGS-1 『HAPPENINGS』(以下『ハプニングス』)のCD帯に,紹介文がこのように書かれている。
 「新主流派の一方の顔となった新感覚派ヴァイヴ奏者の代表作」。「ハービー・ハンコック参加,もうひとつの《処女航海》収録」。

 そう。ジャズ史における「新主流派の一方の顔」であり「もうひとつの《処女航海》」のコピー通りな「新主流派」について語る時に“絶対に外せない”名盤の1枚が,ボビー・ハッチャーソンの『ハプニングス』なのである。

 『ハプニングス』の評価を何がそこまで高めているのか? ズバリ「新主流派」のエッセンスが凝縮された“知的で繊細でクールなジャズ”!
 ヴァイヴという楽器自体がそもそも“COOL”なのだが,ボビー・ハッチャーソンのモーダルなプレイは“透明なCOOL”。鉄琴の硬質な音色がビブラートすることでリリカルに響き,幻想的な気分に誘われる。

 ヴィブラフォンボビー・ハッチャーソンピアノハービー・ハンコックベースボブ・クランショウドラムジョー・チェンバースによる緻密なインタープレイは「鉄琴の鉄板」!

 特にピアノハービー・ハンコックが『ハプニングス』のベクトルを大きく定めているように感じる。“目玉”であるハービー・ハンコックの再演となる【処女航海】以外の楽曲はボビー・ハッチャーソンオリジナルなのだが,アルバム全てにハービー・ハンコックの雰囲気が漂っている。

 いずれもモーダルな曲想の中にドライブ感が感じられ,過度な前衛にもコマーシャルにも傾かない「クールネス」な「新主流派」の王道を貫くスタンスがお見事。
 同じヴィブラフォン奏者でもボビー・ハッチャーソンヴァイヴは“ピアノ寄り”な感じで,ミルト・ジャクソンに代表されるブルージーでソウルフルなインスピレーションとは一味違ったシステマチックな「新主流派」のヴィブラフォンが新鮮に響いている。

 そんなボビー・ハッチャーソンが演奏するハービー・ハンコックの【処女航海】が最高である。巷で新常識っぽく語られている通り,ボビー・ハッチャーソンの極上のヴァイヴが,本家『MAIDEN VOYAGE』の【処女航海】を超えている!?
( …と思う日がたまにあるのも事実。でも管理人的には【処女航海】は,やはりフレディー・ハバードジョージ・コールマンをフロントに迎えたハービー・ハンコックヴァージョンの出来が上だと思う )

HAPPENINGS-2 ボビー・ハッチャーソンの美しい単音のヴァイヴと独特のグルーヴ感が【処女航海】の曲想にマッチしている。
 ハービー・ハンコック名義の【処女航海】が,暖かな海を悠々と航海に乗り出す雰囲気だとすると,ボビー・ハッチャーソン名義の【処女航海】は,氷山が遠くに見えるような厳冬の海に緊張感をもって航海する雰囲気に満ちている。

 ハービー・ハンコックというジャズ・ピアニストは,モーダルな演奏に徹したらあまりに妥協がなくなる。バッキングと短いピアノ・ソロの内省的なアプローチが,管楽器ではなく“ヴァイヴらしい”透明感の高い名演となっている。

 とは言え『ハプニングス』は,歴史に残る問題作とも衝撃作ともほど遠い,基本「オーソドックスなモード」である。普通と違うアプローチを挙げるなら「旋律的な部分とクールな雰囲気の調和を図ったメカニカルなアルバム」ということになるだろう。
 そう。『ハプニングス』の真実とは,ボビー・ハッチャーソンが取り組んだ「モードジャズの総決算」!

 浮遊感漂う不思議なムードに乗って叩き出されるボビー・ハッチャーソンヴァイヴが,演奏全体をクールに引き締め,非常に理知的な雰囲気を醸成している。張り詰めた緊張感と透明感溢れる不思議な空間が「新主流派」の音楽法則に従って秩序正しくまとまっていく。素晴らしい。

  01. AQUARIAN MOON
  02. BOUQUET
  03. ROJO
  04. MAIDEN VOYAGE
  05. HEAD START
  06. WHEN YOU ARE NEAR
  07. THE OMEN

(ブルーノート/BLUE NOTE 1966年発売/TYCJ-81027)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,マイケル・カスクーナ,後藤雅洋)

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ディック・モーガン / ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル5

DRIVE, PASSION, UNPRE-DICTABLE-1 「あっ,見つけた」! これがジャズ・ピアニストディック・モーガンの『DRIVE,PASSION,UNPRE−DICTABLE』(以下『ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル』)を初めて聴いた時の感想である。

 素直にうれしかった。こんな「ついに,見〜つけた」的な感動こそが,ジャズを,特に「B級」ジャズを聴き続ける楽しみに違いない。

 ディック・モーガンの存在は,管理人も「初耳」であった,マイナー・シーンのジャズ・ピアニストであるが,ディック・モーガンデビューには意外や意外,キャノンボール・アダレイという“超大物”の後押しがあったと言う。
 そう。ディック・モーガンの真髄は“ファンキー・キャノンボール”が惚れ込んだ「最高にハッピーなピアニスト」!

 『ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル』でのディック・モーガンジャズ・ピアノが“ノリノリ”である。ブルージーなフィーリングと寛ぎ与えるスイング感が“快感”なのである。
 『ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル』のような「屈託のない,明るく人懐っこい」アルバムは,それこそ細かく聴き込むのは逆に勿体ない。管理人なんかも『ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル』は,得意のヘッドフォンではなくスピーカーを大音量で流している。

 ゆえに,聴き終えた後の印象は,一番のメロディでもフレーズでもなく「とにかく明るく軽快であった」という全体の印象しか残らない。
 タメの効いたブルースの持続するGROOVEに「どうでもよくなってしまう」気持ち良さがある。肩肘凝らないリラックスした演奏に“ノリノリで癒される”という矛盾が成立している。
 どうして『ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル』クラスの大名演が,もっと世間で認められないのだろうか?

 この記事はディック・モーガン称賛キャンペーン! 欲を出して『ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル』を聴き込んでみる。す・る・と・ディック・モーガンジャズ・ピアノ・スタイルが見えてくる!

 ディック・モーガンが多様するのはシングル・トーン&ブロック・コード。こう来るとレッド・ガーランドが思い浮かぶが,ディック・モーガンの一番の売りは“能天気ムードな根明なノリ”なのである。
 特にテンポの変化を多用しがちで,1曲の中にスロー〜アップ・テンポ〜ミディアムが同居する,結構な変幻自在スタイルだけで“イチコロ”なのに,そこにホレス・パーラン的でレイ・ブライアント的な“ブルース・フィーリング”を混ぜてくる。だ・か・ら・好みなのだ。

DRIVE, PASSION, UNPRE-DICTABLE-2 ところで『ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル』には“もう一人の主役”がいる。ギタースティーヴ・アブシャイアである。
 個人的に『ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル』とは,スティーヴ・アブシャイアあってのディック・モーガンであろう。

 ギターのミス・タッチが散見されるが「そんなの関係ない!」と思わせるニュアンス勝負のギターが,ディック・モーガンピアノと一緒に盛り上がる。スティーヴ・アブシャイアディック・モーガンを乗せまくり,ディック・モーガンスティーヴ・アブシャイアを乗せまくる“相乗効果”が絶大である。

 とにかく「最高にハッピーなピアノ」+「最高にハッピーなギター」=「最高にハッピーな」『ドライヴ,パッション,アンプリディクタブル』!

  01. The Boston Chicken I
  02. Alone Together
  03. How Deep Is The Ocean? / I Found My Love And It's You
  04. Honeysuckle Rose
  05. It's All Right With Me!
  06. I Never Knew At All
  07. Yesterdays / Yesterday
  08. I Will Always Love You / If Ever I Should Lose Your Love
  09. Salt Peanuts
  10. Autumn Leaves
  11. Young And Foolish
  12. The Boston Chicken II

(M&I/INTERPLAY 1994年発売/IPCD-8613)
(ライナーノーツ/白澤茂稔)

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デクスター・ゴードン / ゲッティン・アラウンド5

GETTIN' AROUND-1 『GETTIN’ AROUND』(以下『ゲッティン・アラウンド』)は名盤である。
 ただし,デクスター・ゴードン名義の名盤というわけではない。ジャズに崇高なアドリブ芸術など求めない,純粋に「リラックスして楽しむのがジャズ」と考える音楽ファンに打ってつけの名盤である。

 そう。『ゲッティン・アラウンド』には,気だるさというか,妙にフレンチっぽいというか『OUR MAN IN PARIS』以上に,ヨーロピアンな“洒落っ気”が感じられる。
 肩の力の抜けた“滋味溢れる”名演の心地良さが『ゲッティン・アラウンド』の中に詰まっている。

 ズバリ『ゲッティン・アラウンド』の「アンニュイ」の秘密は,ボビー・ハッチャーソンのお洒落なヴィブラフォンにある。
 ボビー・ハッチャーソンヴィブラフォンが,デクスター・ゴードンの「黒さ,重さ,野太さ,男気」の個性に風穴を空けている。爽やかなそよ風を吹き込んでいる。この“軽やかさ”も間違いなくジャズの魅力の醍醐味に違いない。

 ややもすればデクスター・ゴードンテナーサックスは押し付けがましくて,ぶっきらぼうなとこらがあるのだが『ゲッティン・アラウンド』では,いつになく陽気で翳りのないデクスター・ゴードンの“アンサンブル”に心躍るものがある。

 ボビー・ハッチャーソンヴィブラフォンが“開けっ広げ”なデクスター・ゴードンの丁寧なアドリブの間を取っていく。
 ヴィブラフォン特有の持続音が,感情の高まりを落ち着かせ,緩やかな演奏の波に乗せてくれる。デックスの雰囲気を“そっと”運んでくれる。

 デクスター・ゴードンが“朗々と”歌っている。ただそれだけで気だるさを超えた「忘我の境地」に入ってしまう。聴けば聴くほど“味わい”があり,くつろいだ空気感にいつでも身を置くことができる。
 そう。『ゲッティン・アラウンド』の音像とは,アルバム・ジャケットに写っているデックスの“ニヤケ顔”そのもの! 初夏の柔らかな風を受けた休日のサイクリングそのもの!

GETTIN' AROUND-2 “鼻歌を歌いながら”サイクリングにいそしむデックスという「大男」が最高にチャーミング! 管理人にとって『ゲッティン・アラウンド』とは,のどかでほのぼのとした田舎での休日で“乗り回す”サイクリングのBGM!

 気だるいことが気持ちいいと感じられるジャズ名盤群。その最右翼の1枚が『ゲッティン・アラウンド』なのである。

  01. MANHA DE CARNAVAL
  02. WHO CAN I TURN TO
  03. HEARTACHES
  04. SHINY STOCKINGS
  05. EVERYBODY'S SOMEBODY'S FOOL
  06. LE COIFFEUR

(ブルーノート/BLUE NOTE 1966年発売/TOCJ-6679)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,岡崎正通)

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渡辺 香津美 / 桜花爛漫4

OUKARANMAN-1 渡辺香津美が自慢の「MOBOバンド」を組んで,人生を謳歌(桜花)していた頃のライブ盤が『OUKARANMAN』(以下『桜花爛漫』)である。

 とにかく凄い「大宴会」である。『桜花爛漫』に『MOBO』や『MOBO倶楽部』のようなスリリングな演奏を期待してはならない。この雰囲気は「セッション大会」と言う名の「飲み会」なのだ。

 『桜花爛漫』と題された「飲み会」の参加者は,ギター渡辺香津美ベースグレッグ・リー渡辺建ドラム村上“ポンタ”秀一青山純れいち横沢龍太郎ドラムパーカッション仙波清彦キーボードヴォーカル橋本一子アルトサックスソプラニーニョ沢村満アルトサックス坂田明梅津和時テナーサックス片山広明トロンボーン向井滋春の計14名。

 14名の「音の呑み比べ」は「利き酒」なのか? 入り乱れたり分離しては,新しいジャズフュージョンの味を創造する実験の「お祭り」である(実際にステージ上には5台のドラムを支えるために櫓が組まれたそうである)。

 観客席はステージ上で咲き乱れる「満開の音桜」を見て&聴いて,最高の乱痴気騒ぎが行なわれたことであろうと予想する。こんなライブを聴かせられたら「踊らにゃソンソン〜」!

OUKARANMAN-2 …というわけで,自宅のオーディオ・ルームで,踊り狂うわけでもなく,静かにタテノリとヨコノリを堪能している管理人も早めに「お開き」。
 以下は管理人が『桜花爛漫』の打ち上げ会場で語ったであろうツイン・ベース談義…。

 スタジオ録音では違いが分からず,ただ分厚いベース・ラインに“喰いついた”だけの管理人だったが,ライブ録音を聴いてやっとツイン・ベースの意味が分かった〜。
 グレッグ・リーがフレッテッドで“リズムカル”なベース渡辺建がフレットレスで“メロディアス”なベース。全くタイプの異なるベーシストを自由自在に“ハベラカス”渡辺香津美の快感たるやMAXMAX〜!

 ただし一連の「MOBOプロジェクト」の中では,出来が散漫(爛漫)すぎ。渡辺香津美のアグレッシブを語るなら「MOBO」に限る。

  01. INTRODUCTION
  02. AMERICAN SHORT HAIR
  03. Σ
  04. 危険がいっぱい
  05. GOOD VIBRATION
  06. 遠州つばめ返し
  07. UNICORN
  08. 上海
  09. 風連

(ポリドール/DOMO 1985年発売/UCCJ-4115)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/青木誠,石沢弘治)

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デクスター・ゴードン / アワ・マン・イン・パリ5

OUR MAN IN PARIS-1 『OUR MAN IN PARIS』(以下『アワ・マン・イン・パリ』)の『OUR MAN』とはデクスター・ゴードン
 そう。『アワ・マン・イン・パリ』とはデクスター・ゴードンパリセッションのこと。

 だから『アワ・マン・イン・パリ』は,いつもの(アメリカの)デクスター・ゴードンの雰囲気とはちょっと違う。
 「芸術の都」と呼ばれるパリの空気を吸って,ジャズスタンダードを,ヨーロッパ調に?芸術っぽく?カッコヨク?吹き上げている,デクスター・ゴードンが“お上品”なのだ。

 デクスター・ゴードン・ファンからすると異色盤の『アワ・マン・イン・パリ』であるが,これがいいのだ。
 ジャズメン=アーティスト扱いのスタジオ録音で,生真面目にして弾んだ演奏&意気揚々と屈託のない演奏で,デクスター・ゴードンの「おめかしした演奏」と「リラックスした演奏」の両面が聴けるのは『アワ・マン・イン・パリ』だけである。

 良く知られたスタンダード集ゆえに,細かく途切れるように,語尾を伸ばさない“デックス節”が全開。
 テナーサックス本来の“低音の唸り”も迫力満点であるが,大らかな高音部の響きがどこまでも力強く,優しさに溢れた「ダンディな男」デックス。例の「後ノリ」が鳴りだすと「いよっ,待ってました」な「千両役者」の登場であろう。

 テナーサックスの音色についても,いつもと違う「ヨーロピアンな」雰囲気がある。いつもの豪放で男性的で野太いトーンはそのまんまにして,荒々しい感じだけが消えた「ダンディな男」デックステナーが「渋い声」で大鳴りしている。
 何とも言えない余裕というか大人の貫録というか「大物感」がある。これぞ最大の“PARIS”効果なのであろう。

 【チュニジアの夜】が最高である。本来熱いグルーヴが似合う曲なのに,デクスター・ゴードンの“ワンホーン”で延々と歌い上げられるこの演奏には,どこか透き通ったような寂しさを感じる。
 狂騒的な熱帯の夜の雰囲気はない。いい意味でムーディーでエキゾチックな夜という感じで,太くてたくましいがまろやかな音で,余裕しゃくしゃくの演奏に“うっとり”してしまう。本当に大好き。

OUR MAN IN PARIS-2 デックス自らが“最高傑作”と公言する『GO!』の中にデクスター・ゴードンの全ての魅力が詰まっているのは間違いない。
 レベル的にはデクスター・ゴードンの,というよりも,ジャズサックスを代表する,あるいはモダン・ジャズを代表する名盤の1枚であろう。

 しかし『アワ・マン・イン・パリ』での“余所行き感”を知ってしまうと,幸福そうなデクスター・ゴードンの笑顔が見えてくるように感じて,たまらない愛着を感じてしまう。
 『OUR MAN』=私たちの大男=アメリカを代表するテナーサックス奏者=デクスター・ゴードンを知って欲しいし,聴いて欲しい。

 そう。管理人が選ぶデクスター・ゴードンの愛聴盤は『GO!』ではなく『アワ・マン・イン・パリ』の方なのである。

PS 『アワ・マン・イン・パリ』に“ピンと来たら”やっぱり映画「ラウンド・ミッドナイト」を見てみないと! “俳優”デクスター・ゴードンが見事に“奇人”バド・パウエルを演じています。ベーシストピエール・ミシュロも“ちょい役”で出演しています。

  01. SCRAPPLE FROM THE APPLE
  02. WILLOW WEEP FOR ME
  03. BROADWAY
  04. STAIRWAY TO THE STARS
  05. A NIGHT IN TUNISIA

(ブルーノート/BLUE NOTE 1963年発売/TOCJ-9045)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,小川隆夫)

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デクスター・ゴードン / ゴー!5

GO!-1 デクスター・ゴードン自らが公言する“最高傑作”が『GO!』(以下『ゴー!』)である。
 デクスター・ゴードン自らが『ゴー!』を“最高傑作”と公言したくなる理由も理解できる。『ゴー!』こそがデクスター・ゴードンの“ジャズメン・シップ”の生きた証しなのだから…。

 ビ・バップからハード・バップへと移ろう50年代。第一線で活躍していたデクスター・ゴードンジャズ・シーンから突然消えた。よくある麻薬禍である。
 デクスター・ゴードンと同じパターンのジャズ・サックス・プレイヤーにアート・ペッパーがいるのだが,アート・ペッパーの場合は「前期」「後期」と呼ばれるように,麻薬休業の「以前」「以後」では音楽性がガラリと一変した。アート・ペッパーは監獄の中で聴いたジョン・コルトレーンから影響を受けてしまったから…。

 デクスター・ゴードンの場合は,麻薬休業中にハード・バップの洗礼を受けない「ガラパゴス」ジャズメン。ジャズの潮目が変わろうとも,カムバック後のデックスは引退前のデックスと同じ。
 そんな「浦島太郎」的なデックスだったから,時代がデクスター・ゴードンの“ジャズメン・シップ”に追いついた時,他の追随を許さない圧倒的な王者の演奏で輝くことができたのだ。

 基本,デクスター・ゴードンは,誰と共演しようが,ただひたすら自分のスタイルで悠然とプレイする。だからデクスター・ゴードンには,全てを受け止め,あの「ゴツゴツとした」テナーサックスを「丸く転がしてくれる」共演者を必要としている。

 『ゴー!』で共演したピアニストが“ブルーノートの秘蔵っ子”であるソニー・クラークである。主役に優しく寄り添いながらもブリリアントに響くソニー・クラークピアノが,デクスター・ゴードンテナーサックスの響きに立体感と奥行きをもたらしている。暗く“マイナー系”の独特の雰囲気が演奏に適度な粘りと黒さを与える“秀才”である。

 そう。『ゴー!』は“泰然自若”としたデクスター・ゴードンと“マイナー系”ソニー・クラークの「運命の巡り会わせ」無くしては成立することのできなかった大名盤である。
 デクスター・ゴードンが,以前と変わらぬビ・バップ気質を持ち合わせていたがゆえの「時代の巡り会わせ」というものだろう。

 デクスター・ゴードンの代表曲である【CHEESE CAKE】を聴いてほしい。哀愁溢れるマイナー・チューンが,程良くノリのいいテンポで演奏されるから余計に切なさが際立つ“切ない疾走系”の名曲である。
 ソニー・クラークピアノに「気持ち良く乗せられてしまった」デクスター・ゴードンが,軽快に駆け足するビートをバックに得意のやや遅れたタイミングで語りかけるようにブロウする。スピード感のある演奏なのに,たっぷりと息を吹き込んだデクスター・ゴードンの“可憐な”テナーサックスの音色にグッと来る。

GO!-2 デクスター・ゴードンテナーサックスが,いつにも増して朗々と伸びやかに響き渡る。ノン・ビブラートで発せられる力強い音には芯があり“大鳴り”している。

 デクスター・ゴードンの特徴である「後ノリ」が,これ以上遅れるともたついてしまうという“ギリギリの快感”を呼び起こし,一音一音に躍動感とインパクトを与えている。絶妙な「タメ」の存在がフレーズが滑らかに流れ過ぎないアクセントになっている。

 そう。デクスター・ゴードンテナーサックスを耳で追い続けるだけで,ドキドキ&ワクワクの楽しい時間があっという間に過ぎていく。
 アップ・テンポでは『ゴー!』と豪快にブロウし,スロー・テンポでは,微妙に陰りの情感を漂せて“たまらない”気分にさせてくれる大名盤である。

 ズバリ『ゴー!』の聴き所は,時代が一周回ってきた感じの「バップの雰囲気」にある。ソニー・クラーク名演とバップ期のイデオロギーへの揺るぎない確信がデックスの“無双”気分をプッシュしている。

 その実,豪快極まりない演奏なのだが,決して圧倒されることはない。奇をてらわないデクスター・ゴードンの“ジャズメン・シップ”が,これぞモダン・ジャズ的な雰囲気を持っている。大好物! 

  01. CHEESE CAKE
  02. I GUESS I'LL HANG MY TEARS OUT TO DRY
  03. SECOND BALCONY JUMP
  04. LOVE FOR SALE
  05. WHERE ARE YOU
  06. THREE O'CLOCK IN THE MORNING

(ブルーノート/BLUE NOTE 1962年発売/TOCJ-6479)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,皸羶成)

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