アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2016年12月

ドナルド・バード / バード・イン・ハンド5

BYRD IN HAND-1 “最高傑作”『オフ・トゥ・ザ・レイシス』を軸として,一層細かな音楽表現を意識したハード・バップの名盤。それが『BYRD IN HAND』(以下『バード・イン・ハンド』)である。
 『バード・イン・ハンド』の“落ち着き払った”アレンジは,どことなく同じ3管フロント,アート・ファーマーベニー・ゴルソンカーティス・フラーによる「ジャズテット」をイメージしてしまう。

 ドナルド・バードは『バード・イン・ハンド』で,他とは一線を画す“知的なハード・バップ”を訴求していた。美メロと物悲しい音色の絶妙の組み合わせ1。すなわち3管フロントの再編となるテナーサックスの導入である。

 ドナルド・バードの音楽を聴くと,すぐに感じる丁寧に計算されたアンサンブルの妙。管楽器の中で一番高音域のトランペットと木管楽器の中で一番低音域のバリトンサックス。その中間のサックスアルトなのか? それともテナーなのか?

 基本的にはドナルド・バードが『バード・イン・ハンド』で下した選択は正しいと思う。3管フロントが最も輝くのはトランペットバリトンアルトではなくテナーの方だろう。
 チャーリー・ラウズテナーサックスが素晴らしい。マイナー調の曲想とチャーリー・ラウズの老練でダークな持ち味がズバリ。ペッパー・アダムスとの迫力あるユニゾンがきれいにまとめ上げられている。

 しかし“まろやかな渋みのトランペッタードナルド・バードの場合は「アルト OR テナー」の選択ではなく「ジャッキー・マクリーン OR チャーリー・ラウズ」の選択である。
 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』の3管と『バード・イン・ハンド』の3管を聴き比べると,ドナルド・バードと相性がいいのはアルトサックスジャッキー・マクリーンの方であろう。

BYRD IN HAND-2 気合い一発系ながらも朴訥なジャッキー・マクリーンアルトサックスドナルド・バードの憂いを湛えたまろやかなトランペットの音色が寄り添うことで,全体の厚みを保ちながら物悲しさを滲ませるという相乗効果を発揮することにつながっている。
 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』がジャッキー・マクリーンだし『フュエゴ』もジャッキー・マクリーンだし…。

 おおっと誤解のありませんように! 『バード・イン・ハンド』を『オフ・トゥ・ザ・レイシス』より劣るトーンで,チャーリー・ラウズジャッキー・マクリーンより劣るトーンで書いているが,10回中1回は『オフ・トゥ・ザ・レイシス』よりも『バード・イン・ハンド』が素晴らしい,と思う夜が来る!

 キレイ目ハード・バップの代表的な名盤として『バード・イン・ハンド』をお忘れなく…。

  01. WITCHCRAFT
  02. HERE AM I
  03. DEVIL WHIP
  04. BRONZE DANCE
  05. CLARION CALLS
  06. THE INJUNS

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-9099)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/アイラ・ギトラー,小川隆夫)

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櫻井 哲夫 / 21世紀の扉4

A GATE OF THE 21ST CENTURY-1 カシオペアの脱退〜シャンバラの結成〜ジンサクの結成と,18年間行動を共にしてきた神保彰とのユニット活動が終了。

 晴れてソロ活動に専念することになった櫻井哲夫の13年振りとなるソロ・アルバムが『A GATE OF THE 21ST CENTURY』(以下『21世紀の扉』)である。
( 余談ですが櫻井さん。ジンサク始動前後から名前の漢字表記が桜井哲夫から櫻井哲夫になっております )

 ズバリ『21世紀の扉』の真意は『櫻井哲夫の扉』であって,櫻井哲夫のこれまで閉じられていたゲートをオープンの意!

 そのキーマンとして指名されたのが“爆裂ドラマーデニス・チェンバースであった。「世界の神保彰」と夫婦以上に“連れ添ってきた”櫻井哲夫にしてみれば,神保彰クラスの超大物=デニス・チェンバースとの共演は必然の選択であろう。

 ではデニス・チェンバースの「爆撃型」ドラム櫻井哲夫のスタイルに合うかと言われると,櫻井哲夫デニス・チェンバースの使い方を間違えたと思う。
 “猛獣”デニス・チェンバースを上手に使いこなすには,ジョン・スコフィールドゲイリー・トマスのような「ワイルドさ」がないとねっ。

 『21世紀の扉』では“紳士”を通した櫻井哲夫が“猛獣使い”へと成長するのは『VITAL WORLD』でのことである。『GENTLE HEARTS』もグレッグ・ハウに引っ張られていい感じではあるが,タイトルがまだ“紳士”していますから〜。

A GATE OF THE 21ST CENTURY-2 そう。『21世紀の扉』のハイライトはデニス・チェンバースではなく,やっぱり櫻井哲夫と来れば「歌もの」の【NEVER ENDING WORLD】である。
 何か,いつかどこかTVの主題歌として聞いたことがある感じ? 【NEVER ENDING WORLD】が流れ出すと,管理人,曲の最初から最後まで口ずさんでしまいます! 大好き!

 管理人の結論。『21世紀の扉批評

 ズバリ,デニス・チェンバースとハードなプログレ系リズム隊を組んだ『21世紀の扉』では『櫻井哲夫の扉』は開かなかった。
 ただし『櫻井哲夫の扉』には幾種類もの『』が存在することを確認できたのは収穫である。櫻井哲夫ベースだけ,フュージョンだけではない“総合的なアーティスト”である。

 個人的には『21世紀の扉』の出来のバラツキを聴く限り,櫻井哲夫ソロ活動は,温厚な「ゆるキャラ」路線がお似合いのように思う…。

  01. SHAKE YOUR HIP
  02. VITAL PEOPLE
  03. YOU CAN DO IT!
  04. ANGEL SMILE
  05. NEVER ENDING WORLD
  06. THE SUNSHINE
  07. SILENCE IN THE MOONLIGHT
  08. NOAH'S ARK
  09. A ESTRELA NAMORADA

(ガーデニアン/GARDENIAN 1999年発売/CRCI-20384)

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ドナルド・バード / オフ・トゥ・ザ・レイシス5

OFF TO THE RACES-1 『OFF TO THE RACES』(以下『オフ・トゥ・ザ・レイシス』)こそが,ドナルド・バードの“最高傑作”である。

 ブルーノートには1500番台でのサイドメンも含めてドナルド・バード名演が数多く残されている。セールス的には後年のファンキー路線の方が成功を収めている。
 でも,それでも,管理人にとってドナルド・バードと来れば,問答無用で『オフ・トゥ・ザ・レイシス』なのだ。とにかくカッコ良い。このカッコ良さは「花形」トランペッターとして活動することを許された,わずか数人だけが醸し出すことのできる“味”なのである。

 そんなジャズ・トランペット特有のカッコ良さがギッシリと詰め込まれているアルバムはブルーノートのコレクションを見渡しても,いいや,ハード・バップの歴史的名演を見回しても『オフ・トゥ・ザ・レイシス』以外には見つからない。

 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』は,アルトサックスジャッキー・マクリーンバリトンサックスペッパー・アダムスと組んだ3管フロントによる直球ハード・バップ。
 ことに3管,しかもバリトンサックスと来れば“コテコテの分厚いアンサンブル”をイメージするのだが『オフ・トゥ・ザ・レイシス』にはそれがない。3管なのに暑苦しさのかけらもない。
 ホッとできると言うか,小難しいところなんて皆無だし,軽やかにサクサクとアンサンブルが突き進んでいく。

 ズバリ,この独特なアンサンブルこそが“ジャズ・トランペッタードナルド・バード“特有の味”!
 例えば,同じクリフォード・ブラウン直系のリー・モーガンフレディ・ハバードであれば,熱くなると天井知らずのエモーションというか,トランペッターの本能ともいうべき強烈なエゴイズムを感じずにはいられないのだが,ドナルド・バードの場合は,どんなに熱く盛り上がろうとも,常に全体をクールに見つめている。
 まるでマイルス・デイビスのように…。あたかもウェイン・ショーターのように…。

 そう。ハイノートをビシビシとヒットさせるではなく,中音域を中心に組み立てられたメロディアスなフレーズが「金管」トランペットから連発する。
 感情表現だけではない“カラフルな展開と仕掛け”にこそ,ドナルド・バードの唯一無二の個性を強く感じてしまう。

 1曲目の【LOVER COME BACK TO ME】と2曲目の【WHEN YOUR LOVER HAS GONE】も相当に良い。
 しかし『オフ・トゥ・ザ・レイシス』のハイライトは3曲目の【SUDWEST FUNK】である。特に1分8秒からのハイ上がり! そこからさらにハイ上がる6分22秒からのハーモニーこそが,モダン・ジャズ史上「指折り」の“燃え&萌え”! このアンサンブル,カッコヨスギ!

 管理人は『オフ・トゥ・ザ・レイシス』は3曲目から聴き始める。憂鬱な気分も1曲聴き終える頃には吹き飛んでしまっている。
 CD時代には,3曲目から聴き始めてそのまま6曲目までで聴き終えるのが常だった。しかしリッピングを行なうようになってからは1曲目と2曲目も聴くようになった。
 それまでほとんど聴いてこなかったから急速調の【LOVER COME BACK TO ME】と美しい音色のバラードWHEN YOUR LOVER HAS GONE】がめちゃめちゃ楽しい。
 この個人的な不思議体験が『オフ・トゥ・ザ・レイシス』を「1粒で2度おいしい」“特別な1枚”へと押し上げてくれる。

OFF TO THE RACES-2 管理人の結論。『オフ・トゥ・ザ・レイシス批評

 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』は絶対名盤である。【SUDWEST FUNK】は絶対名曲である。
 ドナルド・バードを「しゃぶり尽くしたいのなら」そしてジャズ・トランペットに「酔いしれたいのなら」『オフ・トゥ・ザ・レイシス』で決まりである。

 『オフ・トゥ・ザ・レイシス』の真骨頂を味わいたいのなら【SUDWEST FUNK】からアルバム全体を聴き始めることをお奨めする。
 「ジャズ批評家」セラビーの名とプライドをかけて,絶対に満足することをここに保証する。

  01. LOVER COME BACK TO ME
  02. WHEN YOUR LOVER HAS GONE
  03. SUDWEST FUNK
  04. PAUL'S PAL
  05. OFF TO THE RACES
  06. DOWN TEMPO

(ブルーノート/BLUE NOTE 1959年発売/TOCJ-6465)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,高井信成)

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桜井 哲夫 / DEWDROPS5

DEWDROPS-1 『DEWDROPS』については,元カシオペア桜井哲夫ファーストソロと紹介するより,元シャンバラ桜井哲夫ファーストソロと紹介する方がふさわしいと思っている。

 『DEWDROPS』はテクニカルなインスト・メインではない。『DEWDROPS』のメインは歌ものである。ヴォーカルである。
 そう。桜井哲夫シャンバラで目指したのは『DEWDROPS』の“延長拡大バンド”だったと思う。『DEWDROPS』で完成させた“シティ系POPバンド”だったと思う。

 『DEWDROPS』の基本はカシオペアの16ビートではなく非カシオペアの8ビート。しかもバリバリのチョッパー・チューンはラストの1曲のみ。中にはベースを弾いていない曲もある。男女掛け合いのヴォーカル・ナンバーや和太鼓と琴のヘンテコな曲がクセになる?

 アルバムの方向性などはない。カシオペア・ファンが買いそうな内容ではない。いいんです。それでいいんです。
 なぜならば『DEWDROPS』は,桜井哲夫が仕事としてではなく,全くの“個人的な趣味”で作ったアルバムなのだから…。

 『DEWDROPS』のコンセプトは,自作のオリジナル曲を自分が弾いてもらいたい人に自由に弾いてもらう。
 例えばサックス伊東たけしジェイク・H・コンセプション高野正幹ギターシンセサイザー鳥山雄司ギター和田アキラ松下誠吉川忠英キーボード森村献井上鑑ピアノ橋本一子ドラム青山純宮崎全弘パーカッション仙波清彦浜口茂外也トランペット数原晋林研一郎トロンボーン平内保夫,そしてヴォーカリスト楠木勇有行堀口和男山川恵津子大野えりCINDYMARVINKUMI! 正に桜井哲夫の「100%趣味丸出し」なミュージシャン!

 1986年にカシオペアはバンドの充電期間の一環として,メンバー全員のソロ・アルバムをリリースすることになった。
 野呂一生の『SWEET SPHERE』。向谷実の『WELCOME TO THE MINORU’S LAND』。神保彰の『COTTON’』。桜井哲夫の『DEWDROPS』がそれである。

 この4枚「揃い踏み」を聴き比べて,1人桜井哲夫の『DEWDROPS』だけが浮いて聴こえたことを覚えている。
 桜井哲夫だけが,自分の得意技(超絶ベーシスト)を封印し,自分のカテゴラリー(フュージョンあるいはインストルメンタル)からも逸脱し“シティ系”を気取っていたが,当時は分からなかったその理由を今となっては理解できる。桜井哲夫の30年間をずっと追いかけてきたから理解できる。

 とにかく今となっては『DEWDROPS』こそが,桜井哲夫のルーツ,桜井哲夫の全てであった,と断言できる!

DEWDROPS-2 キーワードは作詞にある。当時は歌詞なんて聴いておらずヴォーカルも楽器の一部的な捉え方をしていたのだが,今では俄然,歌詞に耳が行くようになった。
 “スーパー・ベーシスト桜井哲夫が,こんなにも素直に表現していたなんて…。恥ずかしげもなく書いていたなんて…。

 桜井哲夫は「無垢な男」だと思う。桜井哲夫は「真面目な男」だと思う。桜井哲夫の真価は「歌もの」に如実に表われるのである。
 その実,ベース一本で生きていると思わせといて,それは仕事だからであって,素の桜井哲夫という男は一本の万年筆をベースに持ち替えて生きている。

 これほどまでに「歌もの」が好きななのだから,いつの日かまたシャンバラをやってほしいと思う。『DEWDROPS』バンドをやってほしいと思う。心からそう思う。

  01. REFRESH!
  02. IN THE DISTANCE
  03. NIGHT DEW
  04. KIMONO
  05. TENSION
  06. EARTH CALLING SPACE
  07. VENUS
  08. JESTER'S DANCE
  09. PROPHET VOYAGER

(ビクター/JVC 1986年発売/VDR-1181)

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ビル・チャーラップ・トリオ / ディスタント・スター5

'DISTANT STAR-1 ビル・チャーラップビル・シャーラップ。両名とも英語では「BILL CHARLAP」と書く。そう。同一人物である。
 こんなパターンはたくさんあって,思いつくままに書くと,ジャック・デジョネットジャック・ディジョネットとか,デヴィッド・サンボーンデイヴィッド・サンボーンとか,マイルス・デイビスマイルス・デイヴィスとか,その多くはレーベルとかレコード会社が変わると日本語表記が変わったりする。

 まっ,普段は“馴染みの”ビル・チャーラップ表記がビル・シャーラップ表記になっていたとしてもスルーするのだが,今回のビル・シャーラップ名義の『DISTANT STAR』(以下『ディスタント・スター』)はスルーできなかった。
 ビル・チャーラップと同一人物のビル・シャーラップが明らかに別人として響いてしまう。ここでも(よせばいいのに)書いておくとピアノビル・エヴァンスサックスビル・エヴァンスくらいに?別人として響いてしまったのだ。

 そう。ビル・シャーラップ名義の『ディスタント・スター』には,オーソドックスで“趣味の良さ”を直感させるビル・チャーラップの個性的なピアノがいない。
 ビル・シャーラップピアノベースショーン・スミスドラムビル・スチュワートを挑発している。ゆえにリスナーをも挑発している。

 あの「優等生」なビル・チャーラップが,もう1人の自分=ビル・シャーラップと対峙している。「ハードボイルド」なジャズ・ピアノの創造にチャレンジしている。
 ニューヨークトリオビル・チャーラップトリオを聴いてきた耳にはビックリである! ← 管理人のビル・チャーラップの順番はニューヨークトリオビル・チャーラップトリオビル・シャーラップトリオのROUND TRIP。

 こんなにもエキサイトしたビル・チャーラップを聴いたのは初めてである。悠々と拍を伸縮してグルーヴするショーン・スミスベース,チキリチキリとおかずを加えるビル・スチュワートのシャープなドラミングとのインタープレイが最高に素晴らしい。
 ビル・チャーラップのめちゃめちゃタイトなリズム感。そのタイミングでその音を置くのか,としか表現しようのない“ジャスト”タイプの個性炸裂の大名演

DISTANT STAR-2  丁寧なソフト・タッチで美メロを紡ぎあげさせたら当代随一のビル・チャーラップ。本当にこの人の弾くピアノは嫌味がない。
 だ・か・ら・ニューヨークトリオ名演の秘訣は,そしてビル・シャーラップトリオ名演の秘訣は,ひとえにビル・スチュワートの“やり過ぎる”ドラミングとの相性の良さにある。この2人にしか通じ合えない「調和の妙」がお見事である。

 「ソフト」なビル・チャーラップと「ハード」なビル・シャーラップの違いは,ビル・スチュワートドラムを「受けるか,攻めるか」の違いである。
 ジャズメンの個性は1つとは限らないのだから,たまには「硬派」なビル・シャーラップとしての“顔”も見せてほしいと思う。

  01. ALONG THE WAY
  02. WHILE WE'RE YOUNG
  03. LAST NIGHT WHEN WE WERE YOUNG
  04. HERE I'LL STAY
  05. DISTANT STAR
  06. BON AMI
  07. '39 WORLDS FAIR
  08. STARLIGHT
  09. THE HEATHER ON THE HILL

(クリスクロス/CRISS CROSS JAZZ 1997年発売/CRISS 1131 CD)
(☆直輸入盤仕様)
(ライナーノーツ/ビル・チャーラップ)

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マリーン meets 本田 雅人 B.B.Station / ジャズ&アウト4

JAZZ'N OUT-1 管理人的には100%=本田雅人目当てで購入した『JAZZ’N OUT』(以下『ジャズ&アウト』)だったのだが,やっぱり主役はマリーンであった。よって意図せずにサポートに回った本田雅人を聴いたことになる。

 …で,結論。本田雅人本田雅人だよなぁ。本田雅人はサイドで吹いても“存在感有り有り”なのである。

 「本田雅人B.B.STATION」はビッグ・バンドなのだから,本田雅人ソロは少ない。
 ではなぜ管理人が『ジャズ&アウト』に本田雅人を強く意識するかと言えば,このビッグ・バンド・アンサンブルこそが「本田節」の拡大版で響くから!
 そう。本田雅人のいつものフレージングが「本田雅人B.B.STATION」で完璧に表現されている。

( ただし「本田雅人B.B.STATION」名義にして,実際に「B.B.STATION」での演奏は正味5トラックのみ。残る5トラックは所謂,本田バンドでの演奏ですので,ビッグ・バンド目当てのジャズ・ファンはご注意を! )

 いつものように本田雅人一流の“凝りに凝った”アンサンブルで攻めてくると思いきや「B.B.STATION」での本田雅人は,意外にもシンプル仕上げなアンサンブル!
 「B.B.STATION」の音作りは,中低音をパワフルに鳴らす,古き良きスイングビッグ・バンドのスタイルを基本に,洗練でヒネリを効かせた都会的なアレンジなのは言わずもがな!

 なぜならば「本田雅人B.B.STATION」のソロイスト本田雅人唯一人!
 本田雅人がプレイするアルトサックスソプラノサックスフルートクラリネットの木管楽器と,トランペットフリューゲルホーントロンボーンの金管楽器が・映・え・る・か・ら・中低音をパワフルに鳴らす仕掛け。

 でもでもそんな“存在感有り有り”の本田雅人のスーパー・ソロをして,マリーンボーカルに全てを持っていかれている!
 まっ,アルバム・タイトルが『ジャズ&アウト』なのだから,本職のジャズ・ナンバーから兼業?のアウト(つまりポップスとかロック)までを網羅する人気ヒットパレードを歌う“歌姫”マリーンの独壇場!

JAZZ'N OUT-2 個人的には映画「キャバレー」の主題歌の再演となった【LEFT ALONE】と,やっぱりマリーンと来れば!の【IT’S MAGIC】を集中して聴いていたのだが,最終的に『ジャズ&アウト』のお気に入りは【SING SING SING】と【YOU’LL NEVER GET TO HEAVEN】。
 30代後半のある時期,この2曲ばかりを朝から晩までリピートして過ごしていた“メモリー”がある。

 思うに『ジャズ&アウト』の構図とは“歌姫”マリーンの生バンドとしての「本田雅人B.B.STATION」! 何となく,子供の頃見ていた「昭和歌謡の歌番組」を見て(聴いて)いるような気分がする。
 その歌番組のカット割りは7割がマリーン,2割が本田雅人でもう1割が「B.B.STATION」。

 とにかく威風堂々と歌い上げる“ジャズ・ヴォーカリストマリーンを前面に出しているようでいて,実は裏で回している「本田節」が“隠し味”として効いている。

  01. Sing Sing Sing
  02. It's Magic
  03. You'll Never Get To Heaven
  04. Can't Take My Eyes Off Of You
  05. Cafe Style
  06. Tennessee Waltz
  07. Dazzle The Night
  08. Left Alone
  09. I Was Born To Love You
  10. In The Quiet Blue

(BMG/BMG 2007年発売/BVCJ-34032)
(ライナーノーツ/岩浪洋三,佐藤大介)

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ドン・フリードマン / サークル・ワルツ5

CIRCLE WALTZ-1 「エヴァンス派」の代表格とされているドン・フリードマン本人がビル・エヴァンスからの影響を公式に否定しているらしい。ドン・フリードマンのファンなら,ドン・フリードマンの独自性を支持する気持ちも分からなくはないのだが『CIRCLE WALTZ』(以下『サークル・ワルツ』)を聴いてもなおドン・フリードマン=「エヴァンス派」を否定する気持ちは全く理解できない。

 『サークル・ワルツ』のドン・フリードマンに,ビル・エヴァンスピアノが“乗り移っている”。
 出だしの数秒間で「エヴァンス派」だと分かってしまう,知的で繊細でリリシズムの音選び。胸を締めつけられるような美しいテーマ。一転して静かに自分の音を探りにいく展開。確かめるようにゆっくりと弾かれる和音の連鎖。ベースドラムとの対等なインタープレイ…。

 『サークル・ワルツ』のピアノを聴いて,ビル・エヴァンスピアノを想起しないジャズ・ファンがいるとすれば,それこそ“モグリ”であろう。
 仮にブラインド・テストを行なったとしたら,十中八九,ビル・エヴァンスと答えてしまう人が続出するだろう。

 では,なぜにドン・フリードマンは公式に「エヴァンス派」を否定するのだろうか? それはドン・フリードマンビル・エヴァンスに“先んじた点”があるという自負から来ているのだろう。
 『サークル・ワルツ』のベーシストチャック・イスラエル。そう。スコット・ラファロの“後釜”であるチャック・イスラエル“その人”である。

 ここでスコット・ラファロについても補足しておくが,スコット・ラファロも元々はドン・フリードマントリオのレギューラー・ベーシストだったという,2代続けてかっさらいの因縁有。
 そう。スコット・ラファロチャック・イスラエルも,ビル・エヴァンスと共演したことで名声が高まっただけで,元々はドン・フリードマンに見出されたベーシストだった。

 つまりドン・フリードマンが“先んじた”ジャズ・ピアノを“後出し”で完成させたのがビル・エヴァンス,という考え方もできる。
 そう。ビル・エヴァンスのような演奏スタイルは「エヴァンス派」と称されるのではなく「フリードマン派」と称された可能性があったのだ。

 だから似ている。似ていて当然。似ていてもしょうがない。ビル・エヴァンスドン・フリードマンも同じ時代に活動していたわけだから,互いに意識したとしても意識しないとしても,現実には「互いが互いに影響を与え,影響を受けた」ジャズ・ピアニスト…。2人とも分類すると同じカテゴリーに属するジャズ・ピアニスト…。

 さて『サークル・ワルツ』の評価であるが,仮にドン・フリードマンが『サークル・ワルツ』とは別にもう1枚の名盤を録音していれば,世間の目はビル・エヴァンスではなくドン・フリードマンに目を向けたと思うほどの大名盤である。個人的には“衝撃の1枚”にカウントしたい。

CIRCLE WALTZ-2  『サークル・ワルツ』はとにかく「儚い」。『サークル・ワルツ』の「儚さ」加減は,ビル・エヴァンスの「リバーサイド4部作」をも凌駕している。

 ビル・エヴァンスドン・フリードマンは同じレーベルメイトなんだし,リバーサイド側も『サークル・ワルツ』を『ポートレイト・イン・ジャズ』『エクスプロレイションズ』『サンディ・アット・ザ・ビレッジ・バンガード』『ワルツ・フォー・デビイ』と抱き合わせて「リバーサイド5部作」として売り出したら良かったのに…。永遠のライバルではなくWIN&WINの関係になっていたはずなのに…。

 唯一『サークル・ワルツ』の「リバーサイド5部作」を阻む理由はドラマーの違いであろう。後に弁護士に転身したピート・ラロカはさすがに構築的なドラミング
 ズバリ,ドラマーの違いはベーシストの違い以上に大きい。パーカッシブポール・モチアンがいなければ,ビル・エヴァンストリオの「耽美主義」は成立しないのだ。

 ビル・エヴァンスの凶暴性は「帝王亡き後の新帝王」ポール・モチアンでなければコントロールできやしない!

  01. Circle Waltz
  02. Sea's Breeze
  03. I Hear a Rhapsody
  04. In Your Own Sweet Way
  05. Loves Parting
  06. So in Love
  07. Modes Pivoting

(リバーサイド/RIVERSIDE 1962年発売/VICJ-60025)
(ライナーノーツ/ジョー・ゴールドバーグ,野口久光)

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ドミニク・ファリナッチ / ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス5

LOVERS, TALES & DANCES-1 『LOVERS,TALES & DANCES』(以下『ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス』)は,ドミニク・ ファリナッチ初のバラード集である。

 ドミニク・ ファリナッチのような「超正統派」なトランペッターの演奏は,全てが予定調和であって,聴いていて楽しいものではないのだが,その一方で端正な演奏から来る「豊潤な音密度」が楽しくてしょうがない。殊にバラード演奏が楽しくてしょうがない。

 基本,ピアノケニー・バロンベースジェームス・ジーナスマーク・ジョンソンドラムルイス・ナッシュの“いぶし銀”を従えたドミニク・ ファリナッチの,まろやかで,ふくよかで,柔らかいトランペットフリューゲルホーンの音色が,絶妙な甘さのバラード
 ズバリ『ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス』の真髄とは,ドミニク・ ファリナッチが歌い上げる「抒情歌」なのである。

 管理人には,こんなロマンティック・バラード集を作れるトランペッターと来れば,現在のところドミニク・ ファリナッチ以外には思い浮かばない。それぐらいイメージ通りのジャズ。トランペットに“ドハマリ”している。
 ドミニク・ ファリナッチの,静かに,でも熱くほとばしるパッションが清々しくて気持ち良い。

 時に“スムーズっぽい”ドミニク・ ファリナッチのワン・ホーンを“ツボを押さえた”ケニー・バロンピアノ・トリオが完璧にサイド役に徹し,テナーサックスジョー・ロバーノヴァイヴジョー・ロックが彩りをつけていく。いい演奏である。

 『ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス』を繰り返し聴いているうちに,ふとドミニク・ ファリナッチから意識が離れて,あるトランペッターを聴いているような気分に何度も襲われた。
 そのトランペッターとは,ドミニク・ ファリナッチを見い出したウイントン・マルサリスではなく,ドミニク・ ファリナッチのアイドルであるフレディ・ハバードでもなく,恐らくはドミニク・ ファリナッチとは「正反対の男」チェット・ベイカーであった。

LOVERS, TALES & DANCES-2 同じイケメンにして,ドミニク・ ファリナッチは「インテリな貴公子」キャラ VS チェット・ベイカーは「肉欲を尽くした破滅キャラ」。
 管理人はジャズメンの私生活は「必らず音楽性に表われる派」なのだが,一周回って,どうやっても結び付きそうにない2人が重なって聴こえる瞬間がたまらなく好き!

 最後に日本盤ボーナス・トラック【崖の上のポニョ】について書く。バラード・アルバムとしての統一感からすると不要なのだが,いつしか【ドント・エクスプレイン】と【ロンリー・ウーマン】目当てに聴いていたはずの『ラヴァーズ,テイルズ,アンド・ダンス』を手に取る大目的が【崖の上のポニョ】の存在へと良い意味で変わってしまった。

 管理人の愛妻は女優やアイドルだけはなくポニョにも似ていると言われたから! ですから! ポニョドミニク・ ファリナッチも感謝!?

  01. Don't Explain
  02. Libertango
  03. Estate
  04. Vision
  05. Ne Me Quitte Pas
  06. E Lucevan Le Stelle
  07. Erghen Diago
  08. Silent Cry
  09. Love Dance
  10. Bibo No Aozora
  11. Lonely Woman
  12. The Theme from The Pawnbroker
  13. Gake no Ue no Ponyo

(ビクター/KOCH 2009年発売/VICJ-61586)
(ライナーノーツ/都並清史)

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大坂 昌彦 / ウォーキン・ダウン・レキシントン5

WALKIN' DOWN LEXINGTON-1 管理人的には「マサちゃんズドラマー」である大坂昌彦であるが,世間的には「スイングジャーナル誌読者投票ドラム部門」16年連続第1位!のドラマー
 つまり,大坂昌彦こそが超大物「日本一のジャズドラマー」なのである。

 大坂昌彦の何がそんなに凄いのか? 管理人なら「音楽的なEM>ドラマーだから」と答えよう。
 大坂昌彦の“最高傑作”『WALKIN’ DOWN LEXINGTON』(以下『ウォーキン・ダウン・レキシントン』)は,そんな“音楽的なドラマー”としての資質がよく表現された名盤である。

 『ウォーキン・ダウン・レキシントン』の基本は,ドラム大坂昌彦ピアノマルギュー・ミラーベースクリスチャン・マクドナルドとのピアノ・トリオ
 この超豪華ピアノ・トリオを“回している”のが大坂昌彦の変化に富んだドラミングである。

 ドラマーのリーダー・アルバムゆえ,どこまでドラムが前面に出るかを考えながらの演奏になるのだろうが,バラエティに富んだ楽曲に合わせてコントロールされた「音楽的」なアクセントが多彩で,どんな曲調でも大坂昌彦ドラムが「音楽のど真ん中」にドンと出る。
 それ位,大立ち回りのドラムなのに『ウォーキン・ダウン・レキシントン』の印象とは,大坂昌彦ドラムではなく,大坂昌彦オリジナル曲の方である。

 『ウォーキン・ダウン・レキシントン』にゲスト参加したのは,トランペットフリューゲルホーンダスコ・ゴイコビッチアルトサックスフィル・ウッズソプラノサックスアルトサックスマーク・グロスボーカルキム・ナザリアンという,超ビッグなジャズメンたち。
 マルギュー・ミラークリスチャン・マクドナルドも含めて,ジャズメン足るもの,こんなにも凄腕のメンバーを与えられたら,パーっと打ち上げ花火的な演奏をしたくなるものだろうが大坂昌彦はそうはしない。

 『ウォーキン・ダウン・レキシントン』のポリシーというか縛りとは,演奏ではなくメロディー・ファースト。至ってフォーマルでオーソドックスな演奏に徹している。複雑なコードで曲が進むのだが,全編破綻なく自然な流れがカッコよい。ゆえにこの凄腕メンバーが揃ったということなのだろう。
 ダスコ・ゴイコビッチフィル・ウッズを主にボーカル・ナンバーの間奏として贅沢に使う意味も理解できるというものだ。

WALKIN' DOWN LEXINGTON-2 管理人の結論。『ウォーキン・ダウン・レキシントン批評

 『ウォーキン・ダウン・レキシントン』の聴き所は,大坂昌彦の確かなドラミングとメロディーメイカーの才!

 「日本のキース・ジャレット・トリオ」=「マサちゃんズドラマー」にして「スイングジャーナル誌読者投票ドラム部門」16年連続第1位!という“音楽的なドラマー大坂昌彦のマルチな才能と持ち味が遺憾なく記録されたアルバムだと思う。

  01. CHATTE TROIS COULEURS
  02. WALKIN' DOWN LEXINGTON
  03. THE RIVER FLOWS INTO THE NIGHT
  04. CLOSE TO YOU
  05. AN ENGLISHMAN IN NEW YORK
  06. CHICK-A-DEE
  07. ONCE UPON A SUMMERTIME
  08. L-O-V-E
  09. CIRCADIAN RHYTHM
  10. UNCHAINED MELODY

(キングレコード/KING RECORD 1998年発売/KICJ-351)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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ドミニク・ファリナッチ / スマイル4

SMILE-1 ドミニク・ ファリナッチの存在を知ったのは市原ひかりの『SARA SMILE』だった。
 『SARA SMILE』でのドミニク・ ファリナッチはゲスト参加ゆえに,ドミニク・ ファリナッチの演奏は「控え目で端正でストレートな」生真面目なトランペットだった。

 気持ちとしては市原ひかりを立てる“恋女房役”を全うしていた。でもでもドミニク・ ファリナッチの“並外れた実力”は隠せない。サイドメンとして軽く吹いたつもりが剛速球。日本ハムの大谷翔平が軽く投げても140km出す感じ? 他の投手が全力で投げる147kmのストレートをフォーク・ボールで出す感じ? 
 その“並外れた実力”で市原ひかり2ndへと追いやり,リード・トランペットを吹くドミニク・ ファリナッチに一発で惹かれてしまった。

 『SMILE』(以下『スマイル』)を買ってみた。なになに。ライナーノーツを読むと,あのウイントン・マルサリスに「神童」と言わせた“お墨付き”の最高ランクと書かれている。
 やはりそうだった。ドミニク・ ファリナッチは「只者」ではなかった。ドミニク・ ファリナッチウイントン派だったとは,ちょっとイメージとは違ったのだが,とにかく素のドミニク・ ファリナッチとは“音色良しでテクニック良し”な「超正統派の本格派」であった。

 サイドメンでは感じなかった“風格”を感じる。スレート・アヘッドなジャズ・トランペットの世界観が深く,徹頭徹尾ふくよかな美しい音色と端正なフレージングでリスナーを酔わせてしまう&狂わせてしまう,ドミニク・ ファリナッチを絶賛せずにはいられない!
 「CTI時代のフレディ・ハバード」へのオマージュである【COME RAIN OR COME SHINE】が「イナセな」イナタイ8ビート。ヴィブラートの周波数がフレディ・ハバードへのオマージュである。

 サイドメンでは感じなかった“品格”を感じる。スレート・アヘッドなジャズ・トランペットの世界観が深く,こんな感じにアレンジされると「江戸っ子だねぇ。粋だねぇ」とドミニク・ ファリナッチを絶賛せずにはいられない!
 ウイントン派のルーツはクリフォード・ブラウンにあるのだが【I REMEMBER CLIFFORD】での叙情性が「イナセ」である。エレガントなバラードTHE NEARNESS OF YOU】と【SMILE】での歌心が「イナセ」である。

SMILE-2 ドミニク・ ファリナッチのポリシーとは,ギミック排除のウルトラ・オーソドックス。フレージングの個性に頼ろうとしない,さりげなく小粋な佇まいのジャズ・トランペッター

 『スマイル』でのドミニク・ ファリナッチトランペットは相当に「渋い」。クールでまろやかな音色のトランペットが決して熱くならずに美旋律を吹き切っている。

 そう。「神童」ドミニク・ ファリナッチ・クラスともなれば,ガツガツした自己主張など不要なのであろう。
 ただし,ウイントン・マルサリスには食指は伸びるが,ドミニク・ ファリナッチには食指は伸びない。ジャズ・トランペットの世界では「オール5の優等生」でも個性の差異は大きいものなのだ。

  01. WHO CARES
  02. THE NEARNESS OF YOU
  03. ESTATE
  04. JUST ONE OF THOSE THINGS
  05. I REMEMBER CLIFFORD
  06. COME RAIN OR COME SHINE
  07. THE GREY GOOSE
  08. RELAXIN' AT PETER'S
  09. SMILE

(M&I/M&I 2005年発売/MYCJ-30330)
(ライナーノーツ/都並清史)

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渡辺 香津美 / トリコ・ロール4

TRICOROLL-1 ギター渡辺香津美ベースヤネク・グウィズダーラドラムオベド・カルヴェールと,別パターンでドラムオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスと組んだ“2組のNEW・エレクトリックギター・トリオ”が『TRICOROLL』(以下『トリコ・ロール』)である。

 『トリコ・ロール』のタイトルから連想したのが,おフランスの「トリコロール・カラー」(ご丁寧にアルバム・ジャケットトリコロールしている!)だったのだが,これは渡辺香津美お得意のワルふざけのようで『TRICOROLL』のスペルが違う(おフランスの場合は「TRICOLORE」)。

 ズバリ『TRICOROLL』の真意とは「TRIO」+「ROCK’N ROLL」! 『トリコ・ロール』のタイトルに,エレクトリックギター・トリオのノリの良さや躍動感が“ミーニング”されている。

 個人的に『トリコ・ロール』のハイライトは,ベースヤネク・グウィズダーラ名演に尽きる。
 渡辺香津美ギターはいつも通り。曲ごとにインパクトを与えているのがドラムオベド・カルヴェールオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスになるのだが,自然と,知らず知らずのうちにヤネク・グウィズダーラベース・ラインばかりを追いかけてしまう。

 ヤネク・グウィズダーラのプレイ・スタイルが,音色でハッキリした主張するフィンガー・ベースであって,渡辺香津美と共演してきたベーシストでは,ジェフ・バーリンバーニー・ブルネルとイメージが被るから好みなのだと分析する。それにしてもヤネク・グウィズダーラの「キザミ」が凄い。安定したビートから「怪物」が幾度となく登場している。素晴らしい構成力は「バケモノ」である。

 『トリコ・ロール』のもう一つの“目玉”が選曲。『MOBO』収録の再演となる【上海】とYMOのサポートで弾いていた【ライディーン】。
 この2曲が大変興味深いのだが『トリコ・ロール』を【上海】と【ライディーン】目当てで聴いているうちに,その【上海】と【ライディーン】に間に挟まれた【メタボリズム】に完全KO。
 いつしか管理人の『トリコ・ロール』聴きとは【メタボリズム】を聴く行為を指すようになってしまった。

 そうしてヤネク・グウィズダーラジェフ・バーリンバーニー・ブルネルを重ねてしまうように【メタボリズム】を聴いていると,ジェフ・バーリンの『THE SPICE OF LIFE 2』(『THE SPICE OF LIFE』の方ではない)とバーニー・ブルネルの『KILOWATT』の2枚が脳裏に浮かんでくる。

TRICOROLL-2 これって何なんだろう。『トリコ・ロール』で今の渡辺香津美と昔の渡辺香津美が一気に「点ではなく線とか面とかで」つながったような感覚。
 出来としては完全に初演に負けている【上海】と【ライディーン】も,これはこれでイケテしまう感覚。

 『トリコ・ロール』がジワジワと来る。「TRIO」+「ROCK’N ROLL」の「ROLL」が来ている。

 惜しむべきは,渡辺香津美の狙いとしては曲調によって2人のドラマーを使い分けてみたのであろうが,ジワジワと来ている間に,こちらはオベド・カルヴェールではなくてオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスの方が良かった,そしてこっちはオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスではなくてオベド・カルヴェールの方が良かった,との雑念が入ってしまった。

 渡辺香津美にとっては「究極の選択」となったのかもしれないが,個人的にはオラシオ“エル・ネグロ”エルナンデスで通しても良かったかも…。

  01. SHANG-HAI
  02. METABOLISM
  03. RYDEEN
  04. ALGORITHM
  05. SEA DREAM
  06. PERFECT WATER
  07. THE SIDEWINDER
  08. AZIMUTH
  09. MOMENT'S NOTICE

(イーストワークス・エンタティンメント/EWE 2011年発売/EWBS 0184)
(☆BLUE−SPEC CD仕様)
(ライナーノーツ/石沢功治)

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ダラー・ブランド / アフリカン・ピアノ5

AFRICAN PIANO-1 ダラー・ブランドの『AFRICAN PIANO』(以下『アフリカン・ピアノ』)は,できれば紹介したくなかった。
( アドリブログは現在アルファベット順にて紹介中。ABCD…DO )

 願わくばアドリブログの全投稿の最後の記事として紹介したかった。本気でそう思う,管理人「とっておきの一枚」にして,厳選の中の厳選“秘蔵盤”なのである。

 『アフリカン・ピアノ』をまだ聴いたことのない人は「幸せ者」である。知らないのが,正直,うらやましくてたまらない。
 これから先,何千枚とジャズを聴き漁り「もうジャズなんて聴き飽きた」という日が来たとしても,それでも絶対に「脳天をカチ割られるような衝撃」を受けることであろう。

 そう。『アフリカン・ピアノ』の真髄とは「マンネリ打破の1枚」「日常を非日常でリセットしてくれる1枚」「頭の中をクリーンにしてくれる1枚」である。
 『アフリカン・ピアノ』を聴けば,また次の日からジャズが好きになる。昨日よりもっともっとジャズが好きになる。だから「最後の1枚」なのである。

 リスナーは『アフリカン・ピアノ』が流れ出すとすぐに「打楽器」としてのピアノの強さを“嫌と言うほど”思い知らされることになる。
 ダラー・ブランドの左手から繰り出される執拗なアフリカン・ビートの“バケモノ”が音符を踊り喰いしていく。メロディーがリズムに“呑み込まれていく”。メロディーが「現われては消え,現われては消え」てゆく。

 結果『アフリカン・ピアノ』は,いつまでもいつまでも,どこまでもどこまでも,同じ曲想の演奏がまるでDJによるノンストップ・ミックスのようにつながっていくと思わせて,最後の最後だけストンと落とする。突然,大きな穴に落とされてしまう。あの瞬間が「た・ま・ら・な・い・快・感」なのである。

AFRICAN PIANO-2 そう。『アフリカン・ピアノ』の真実とは“音のブラックホール”!

 書きたいことはたくさんあるが,ここから先は是非,自分自身の目で見て,耳で聞いてみてほしい。ブラックホールの中に頭と体を突っ込んでみてほしい。新しい音世界,誰も見たことのない未知の世界,深く黒い穴の中に「吸い込まれる」ことが,いかに「心地良い体験」なのかを味わってみてほしい。

 意識の全てが「失われ,消え,呑み込まれていく」。こんな体験,そう滅多に出来るものではない。これこそが『アフリカン・ピアノ』のハイライトなのである。

  01. bra joe from kilimanjaro
  02. selby that THE ETERNAL SPIRIT IS THE ONLY REALITY
  03. THE MOON
  04. xaba
  05. sunset in blue
  06. kippy
  07. jabulani - easter joy
  08. tintiyana

(ECM/ECM 1973年発売/UCCU-6122)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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