アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2017年01月

櫻井 哲夫 / ブラジル・コネクション VOL.25

BRASIL CONNECTION VOL.2-1 『ブラジル・コネクション VOL.1』の続編である『BRASIL CONNECTION VOL.2』(以下『ブラジル・コネクション VOL.2』)のハイライトはライブ後半戦の大盛り上がり。

 『VOL.1』と『VOL.2』の性格の違いはこうである。『ブラジル・コネクション VOL.1』でのリスナーは会場の椅子に腰掛てしっかりと音楽を聴くライブ盤。『ブラジル・コネクション VOL.2』でのリスナーは総立ちでビートに合わせて踊っているライブ盤。

 櫻井哲夫チョッパーベースが音楽の前面に出ているわけではない。いつものテクニカル・フュージョンベースでもない。
 それなのにライブが進行するにつれ,ブラジリアン・フュージョン独特の緩やかで心地良くグルーヴするベースのウネリが『ブラジル・コネクション VOL.2』の聴き所。

 櫻井哲夫ベースフィロー・マシャードヴォーカルギターセルジオ・マシャードドラム小野塚晃キーボードが,真に一体となってリズムの渦を巻き起こしていく。
 そう。『ブラジル・コネクション VOL.2』には,ライブ当日のステージ上で,4人の意識がバッチリ・ハマッテ登り詰めてゆく過程のドキュメントの記録なのである。

 メンバー4人のコンビネーションが非常に良く,フィーチャリング櫻井哲夫でも,フィーチャリングフィロー・マシャードでもない,一つのバンドと称してもよいまとまりと密度の濃さを感じる。
 櫻井哲夫ベースが他を吸収したのか? それともベースが他に吸収されたのか? バランスの良いチョッパーベースが見事にブラジリアン・フュージョンに溶け込んでいる。
 
 これぞ櫻井哲夫の“ブラジル愛”の賜物である。『ブラジル・コネクション VOL.2』のメロディアスでネイティブなリズムに,郷愁というか哀愁というか“サウダージ”が胸にキュンとくる。

BRASIL CONNECTION VOL.2-2 櫻井哲夫ライブ盤『ブラジル・コネクション VOL.1』『ブラジル・コネクション VOL.2』を聴いていると,ジャズでもなくフュージョンでもなく,この世の音楽はMPBだけで十分のように感じてしまう。
 櫻井哲夫が“生涯のライフワーク”として「ブラジル」を公言する気持ちがうらやましい。

 管理人も(現時点で自分の将来を予想すると)順調であれば,最後の最後はセロニアス・モンクに行き着くはずだが,もしかしたらブラジールかも!?

  01. PASTEL SEA
  02. PERFUME DE CEBOLA
  03. ALISA
  04. JOGRAL
  05. COM A PAZ NO CORACAO
  06. BOCA DE LEAO
  07. RED ZONE

(サウンドバイブレーション/SAKURAVIBE 2006年発売/XQAZ-1002)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

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ドナルド・バード / ロイヤル・フラッシュ4

ROYAL FLUSH-1 『ROYAL FLUSH』(以下『ロイヤル・フラッシュ』)のジャケット写真で“ほくそ笑む”ドナルド・バードが引き当てた最後のカードはピアニストハービー・ハンコック

 前任者のデューク・ピアソンは“秀才”であった。デューク・ピアソンのハイセンスこそがドナルド・バードの黄金ハード・バップを作り上げた原動力。
 な・の・に・ハービー・ハンコックが1人加入しただけで,ドナルド・バードペッパー・アダムスクインテットの演奏がまるで違う。

 ハービー・ハンコックピアノでバッキングを付けるだけで,サウンドが一気に理知的でモードがかっていく。ハービー・ハンコックの和声の使い方,間合い,ハーモニックセンスはものが違う。
 ドナルド・バードが『ロイヤル・フラッシュ』を完成させるための最後の1枚が“天才”ハービー・ハンコックだったのだ。

 ハービー・ハンコックの上品で黒いピアノ・タッチが繊細に響く。ドナルド・バードペッパー・アダムスのバックでモダンなハーモニーを加えるハービー・ハンコックモードピアノが『ロイヤル・フラッシュ』に対する全体の印象を決定付けている。

 例えば【JORFIE’S】のイントロでミステリアスなテイストを醸し出すジャズ・ピアノには,後年,マイルス・デイビスのグループで発揮するミステリアスな響きの萌芽がすでに認められる。
 この細やかながらピリッと演奏を締める小技を効かせることが出来るハービー・ハンコックのハーモニックセンスこそが,ファンキー・テイストからの脱却を考えていたドナルド・バードペッパー・アダムスが求めていた新しい感覚なのだろう。

 ただし,個人的に『ロイヤル・フラッシュ』は,ドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソン・ラインの名盤群よりも落ちる。

 理由としてはハービー・ハンコックは,すでに「新主流派」的な響きを奏でているのだが,そのハービー・ハンコックピアノに乗るトランぺッターフレディ・ハバードだと「すり込まれて」しまっている。

 元を正せばドナルド・バードフレディ・ハバードも「ポスト・クリフォード・ブラウン」と騒がれたトランぺッター
 系統としては似ているのだろうが,どうにもフレディ・ハバードの“超絶”と比較するとドナルド・バードは分が悪い。だからハービー・ハンコックピアノに乗ったドナルド・バードは分が悪い。

ROYAL FLUSH-2 ハービー・ハンコックの目線で語ろうにも『ロイヤル・フラッシュ』は,ハービー・ハンコックブルーノートの初レコーディング。これからザックザクと名盤が誕生するわけでして…。

 管理人の結論。『ロイヤル・フラッシュ批評

 『ロイヤル・フラッシュ』は「驚異の新人」「早熟の天才」としてのハービー・ハンコックに驚愕するためのアルバムである。

 いいや,驚くのはまだ早い。ドナルド・バードペッパー・アダムスハービー・ハンコック・ラインにデューク・ピアソンがコンポーザー兼アレンジャーとして復帰した『A NEW PERSPECTIVE』で「腰を抜かすための」予習作なのである。

  01. HUSH
  02. I'M A FOOL TO WANT YOU
  03. JORGIE'S
  04. SHANGRI-LA
  05. 6 M'S
  06. REQUIEM

(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-4101)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,上田篤,ボブ・ベルデン)

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櫻井 哲夫 / ブラジル・コネクション VOL.14

BRASIL CONNECTION VOL.1-1 櫻井哲夫にはいいブレーンがいないようだ。企画が練られていないようだ。

 『GENTLE HEARTS』の後に『CARTAS DO BRASIL』。『GENTLE HEARTS TOUR 2004』の後に『BRASIL CONNECTION VOL.1』(以下『ブラジル・コネクション VOL.1』)と来た。またかよ〜。
 しかも『ブラジル・コネクション VOL.1』の3カ月後に『ブラジル・コネクション VOL.2』発売と来た。だったら初めから2枚組で発売してよ。値段は5000円でも買うんだから。中途半端だよ〜。

 事実『ブラジル・コネクション VOL.1』『ブラジル・コネクション VOL.2』の主役はフィロー・マシャードヴォーカルである。櫻井哲夫の存在感は希薄である。悔しいかな,櫻井哲夫は脇役でありサポートなのである。

 セットリストも櫻井哲夫のリーダー・アルバムには不釣り合いなオリジナル曲の少なさだし,楽しみだった櫻井哲夫ベース・プレイも2フィンガーばかり。
 櫻井哲夫はサポート・ベーシストでクレジットされるべき。若しくはナベサダみたいにプロデュースだけに専念するとか…。
 どうせなら『ブラジル・コネクション VOL.1』『ブラジル・コネクション VOL.2』は,フィロー・マシャードソロ名義で発売してほしかった…。

 そう思ったのは『ブラジル・コネクション VOL.1』発売後『ブラジル・コネクション VOL.2』発売までの3カ月の感想です。
 真に櫻井哲夫の「ブラジリアン・フュージョン」が爆発するのはライブ後半のお約束。『ブラジル・コネクション VOL.2』を聴いてみて『ブラジル・コネクション VOL.1』に対する印象が変化しました。

BRASIL CONNECTION VOL.1-2 管理人の結論。『ブラジル・コネクション VOL.1批評

 『ブラジル・コネクション VOL.1』は,櫻井哲夫が頭の中でイメージした「ブラジリアン・フュージョン」ではなく,櫻井哲夫がネイティブなブラジル人と同じステージで作り上げた「ブラジリアン・フュージョン」。

 地球の裏側同士の音楽が“混ざりあった”『BRASIL CONNECTION』。櫻井哲夫の“ブラジル愛”が結実した名盤である。

  01. SAUDADE DE VOCE
  02. UPA NEGUINHO
  03. A INDIA E O ATIRADOR DE FACAS
  04. REAL
  05. NAVEGANDO SOZINHO
  06. TERRAS DE MINAS
  07. VESTIDO LONGO

(サウンドバイブレーション/SAKURAVIBE 2006年発売/XQAZ-1001)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

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ドナルド・バード / ザ・キャット・ウォーク5

THE CAT WALK-1 ドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソン・ラインによる「リリカル・ファンキー路線」の集大成『THE CAT WALK』(以下『ザ・キャット・ウォーク』)が最高である。

 黒いファンキーではない,洗練されたファンキーだと分かっていても,それでもノッテしまうし,ノセられてしまう。ドナルド・バードデューク・ピアソンの共通する資質が気持ちよく融合し,味わい深さが増している。
 その意味でドナルド・バードを代表するファンキー・ジャズの1枚は『フュエゴ』ではなく『ザ・キャット・ウォーク』の方である。

 そう。知的な雰囲気にノセられてしまう,という「矛盾」を解決してくれるのが,フィリー・ジョー・ジョーンズドラミングレックス・ハンフリーズのPOP感覚なドラミングも,ハード・バップではなくファンキーでもない『フュエゴ』にはよく合っている。
 ただし『ザ・キャット・ウォーク』のレベルにまで,ファンキー・ジャズが洗練されてしまった今,フィリー・ジョー・ジョーンズの“豪快な太鼓の鳴り”にトドメを刺されてしまう。

 実はドナルド・バードを(デューク・ピアソンを)聴き続けていると,本当に素晴らしい曲ばかりだし,曲の質の高さに魅了されてしまって,ジャズとは言えど,音楽の楽しみはメロディーにあると思い込んでしまうのだけど『ザ・キャット・ウォーク』を聴き終わる度に「ジャズの醍醐味はリズムにある」ことを毎回思い知らされる…。

 別に管理人はフィリー・ジョー・ジョーンズの大ファンではないのだけれど『ザ・キャット・ウォーク』におけるフィリー・ジョー・ジョーンズドラミングだけは大絶賛。
 ドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソンの絶品フロントを「つまみ喰い」しながら,曲想の端々を縦横無尽に駆け巡る〜。

 チャーミングな楽曲,耳に心地よいアレンジ,まとまりの良いソロ…。綺麗にまとめ上げられたドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソンの専売特許を“豪快な太鼓の鳴り”一発で凌駕するとてつもない原始的なエネルギーの動きを感じ取る。個人の本能的センスが秀才的予定調和の世界を打ち破った瞬間の痛快さで満ちている。

ザ・キャット・ウォーク』のハイライトは,ファンキー・ジャズ史上稀に見る,デューク・ピアソンフィリー・ジョー・ジョーンズによる「知性と本能の対比」にある。

THE CAT WALK-2 基本大大好きなドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソン・ラインだけがアレンジできる楽しさ満点のテーマに魅了された瞬間,スネア一発で土台が揺り動かされるほどの“ダイナミズム”ファンキー

 ドナルド・バードミュートを吹けば吹くほど,ペッパー・アダムスバリトンサックスらしからぬ,流ちょうなテーマを奏でれば奏でるほど,デューク・ピアソンが鍵盤で8小節に区切って,曲全体をまとめればまとめ上げるほど,フィリー・ジョー・ジョーンズドラムがまるで躍動する生き物のように呼吸し,囁き,叫んでいるように聴こえてしまう。

 結果,一周回ってドナルド・バードトランペットに「叙情性」が加えられて聴こえてしまう。(以前ならこう呼ぶのに抵抗があったはずなのに)ドナルド・バードこそがファンキー・ジャズだ,と叫んでしまいたくなる。管理人の愛聴盤の1枚である。

  01. SAY YOU'RE MINE
  02. DUKE'S MIXTURE
  03. EACH TIME I THINK OF YOU
  04. THE CAT WALK
  05. CUTE
  06. HELLO BRIGHT SUNFLOWER

(ブルーノート/BLUE NOTE 1962年発売/TOCJ-7128)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,岡崎正通)

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櫻井 哲夫 / GENTLE HEARTS TOUR 20044

GENTLE HEARTS TOUR 2004-1 『CARTAS DO BRASIL』の次に『GENTLE HEARTS TOUR 2004』がリリースされることになった。

 櫻井哲夫の「ブラジル路線」が気に入った後に,イマイチだった『GENTLE HEARTS』のライブ盤を出されても…。しかもフォロー・ツアーとは呼び難い,CD発売4年後にライブ盤を出されても…。

 だから『GENTLE HEARTS TOUR 2004』は,櫻井哲夫ファンとしては初めてとなるスルー。購入したのは翌年となった。
 購入のきっかけは櫻井哲夫ではなくグレッグ・ハウの『EXTRACTION』。『EXTRACTION』とは,ギターグレッグ・ハウドラムデニス・チェンバースベースヴィクター・ウッテンを迎えて制作されたギター・トリオ

 すなわち『GENTLE HEARTS TOUR 2004』は,ベーシストヴィクター・ウッテンから櫻井哲夫に交代したグレッグ・ハウギター・トリオと見立てることもできるわけで(実際にグレッグ・ハウの【EXTRACTION】も演奏されているし)『GENTLE HEARTS TOUR 2004』1枚で,櫻井哲夫ベース・トリオグレッグ・ハウギター・トリオの2枚分を楽しめる!

 聴く前は駄盤と思っていた『GENTLE HEARTS TOUR 2004』が素晴らしい。怒涛のテクニカル・パンク・ハードロック・フュージョン名盤である。
 事実『GENTLE HEARTS TOUR 2004』を聴いた後“本家”『GENTLE HEARTS』を何度,引っ張り出して聴き直したことだろう。

 それまではイマイチだった【SAMURAI FAITH】【BRAIN STORM】【GENTLE HEARTS】【THE INVISIBLE WAY】【WONDERLAND IN THE SKY】が名曲に聴こえる。← 眠りから覚めた今は名うてのセッション・ナンバーだと思っています。

 『GENTLE HEARTS TOUR 2004』の主役は『GENTLE HEARTS』でも主役を張ったグレッグ・ハウギターである。
 早弾きのテクニックはアラン・ホールズワースばりだし,スレーズがアウトする感じはジョン・スコフィールドばり。メタル系なのに明確にジャズ・ギターを意識している。
 『GENTLE HEARTSセッションのために櫻井哲夫本人が熱望したギタリストだけのことはあると思う。

 グレッグ・ハウの脇を固める櫻井哲夫のチョッパー・ベースがメロディアスに歌う。6弦ベースの高音弦でのパンチングは“ベースギター”と呼ばれるにふさわしい。ベースでもありギターでもある。

 デニス・チェンバースの暴走するドラミングは『GENTLE HEARTS』にはなかったライブならではのグルーヴ
 グレッグ・ハウジョン・スコフィールドが乗り移った瞬間,デニス・チェンバースの中の“野獣”が顔を出している。

GENTLE HEARTS TOUR 2004-2 しか〜し『GENTLE HEARTS TOUR 2004批評を記すにあたり,どうしても書いておかねばならないのは,サポートで入った小野塚晃キーボードである。
 グレッグ・ハウギターソロは,手癖が多くて?アドリブが少なめな分,小野塚晃キーボードソロがテンションアップのボタンを押している。流石は“超絶技巧集団”DIMENSION〜。

 『GENTLE HEARTS TOUR 2004』のハイライトは【PAVANE POUR UNE INFANTE DEFUNTE】と【GENTLE HEARTS】のバラード2曲。
 小野塚晃のバッキングが“歌もの”櫻井哲夫の奥深い演奏に色彩を添えている。

 小野塚晃が仕掛けで加わった『GENTLE HEARTS TOUR 2004』は『GENTLE HEARTS』とは別物なのである。

  01. SAMURAI FAITH
  02. THE INVISIBLE WAY
  03. PAVANE POUR UNE INFANTE DEFUNTE
  04. PUNK JAZZ
  05. EXTRACTION
  06. GENTLE HEARTS
  07. BRAIN STORM
  08. WONDERLAND IN THE SKY

(ビクター/JVC 2005年発売/VICJ-61265)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

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ドナルド・バード / コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.24

AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 2-1 『AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 1批評でも書いたが『AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 2』(以下『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』)の主役は,ドナルド・バードトランペットではなく,ペッパー・アダムスバリトンサックスでもなく,デューク・ピアソンの“ファンキーな”ピアノで間違いない。

 そう。アート・ブレイキーの傍らにベニー・ゴルソンがいたように,ドナルド・バードの傍らにはデューク・ピアソンがいた。
 ドナルド・バードトランペットに絡むペッパー・アダムスバリトンサックスの相性の良さは「鉄板」なのだが,そんな「鉄板」を超えるドナルド・バードデューク・ピアソンの「新定番」が確立されたのが『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』での2枚のライブ盤なのである。

 『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』の2枚の違いについて書くとすれば,ライブ前半の1枚目はデューク・ピアソン1人が目立っているが,ライブ後半の2枚目に入ると,ドナルド・バードペッパー・アダムスデューク・ピアソンという感じに3人のコンビネーションが決まってきている。

 1枚目が「デューク・ピアソンファンキー・ジャズ」ならば,2枚目は「ドナルド・バードペッパー・アダムスの双頭コンボのファンキー・ジャズ」。ステージが進むにつれて演奏も会場も盛り上がっていく。
 「知性」と「ファンキー」。「可憐」と「野生味」がデューク・ピアソン一流の“黄金比”でブレンドされている。

 『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』の2枚で“天下を取った”三人組「ドナルド・バードペッパー・アダムスフィーチャリングデューク・ピアソン」の時代は短い。
 続く『THE CAT WALK』を最後にドナルド・バードの(右腕がペッパー・アダムスであるのなら)左腕であるデューク・ピアソンとの蜜月コラボレーションが突然終了。

 後日,この契約解消はドナルド・バード側の意向と知って更に驚いた。ドナルド・バードも『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』の2枚を繰り返し聴いて,デューク・ピアソンの真価をもっと評価できたらよかったのにぃ。

 ただし競合相手がハービー・ハンコックだったのだからデューク・ピアソンに勝ち目はなかった。デューク・ピアソンの真価はドナルド・バード以上にアルフレッド・ライオンが高く高く評価しております。

AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 2-2 管理人の結論。『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2批評

 デューク・ピアソンが,ドナルド・バードペッパー・アダムスの個性を引き出し描いた相反スケッチ。メンバー全員が突進することなく,それでいて芯があり,演奏にまとまりが感じられる。
 そう。ドナルド・バードの傍らにはデューク・ピアソンがいたのである。

 ライブ盤なのにスタジオ盤のような完璧な演奏に仕上がっている。
 この点をドナルド・バードの資質として素晴らしいと感じるか? ライブ盤っぽくないと残念だと感じるか?で『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』の評価は二分されるように思う。

  01. JEANNINE
  02. PURE D. FUNK
  03. KIMYAS
  04. WHEN SUNNY GETS BLUE
  05. BETWEEN THE DEVIL AND THE DEEP BLUE SEA
  06. THEME FROM MR. LUCKY

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-7109)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,岡崎正通)

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櫻井 哲夫 / カルタス・ド・ブラジル5

CARTAS DO BRASIL-1 櫻井哲夫“生涯のライフワーク”となる「ブラジル大好き」の1作目となる『CARTAS DO BRASIL』(以下『カルタス・ド・ブラジル』)は,櫻井哲夫の既発オリジナル曲をヴォーカル・ナンバーに仕立てたセルフ・カヴァー集。

 カシオペアジンサクへの提供曲がここまでブラジルしてしまうとは! お見事です。MPBど真ん中です。
 『カルタス・ド・ブラジル』のこの感覚はT−スクェアの『ヴォーカル・スクェア』を聴いた時と同じであって,インストのメロディー・ラインに歌詞が乗っても全く違和感がない。

 …と言うよりも元はインストなのに,初めからヴォーカル・ナンバーとして作曲されていたかのような素晴らしい出来映えである。トータルの完成度からすれば『ヴォーカル・スクェア』以上であろう。

 もしや櫻井哲夫の「ブラジル路線」はカシオペア在籍時から始まっていたのか? そう思ってオリジナル音源と聴き比べたりしたものだが,どちらも甲乙付け難い。

 ズバリ『カルタス・ド・ブラジル』で初めて,櫻井哲夫の“歌心”に開眼してしまった。テクニカルなベースを弾きながらも,インストを演奏しながらも,櫻井哲夫はいつも心の中で「歌を歌っていた」のだ。
 超絶技巧のカシオペアのアレンジでは感じなかった,櫻井哲夫の中のMPB。そう言えばカシオペアって,ブラジル公演も行なったよなぁ。

 とにかく『カルタス・ド・ブラジル』は“超絶ベーシスト櫻井哲夫を聴くアルバムではなく櫻井哲夫の“サウダージ”を聴くためのアルバムである。
 極論を書けば,櫻井哲夫は『カルタス・ド・ブラジル』で自らベースを弾かなくてもよかった。現地ブラジルのミュージシャンをコーディネイトと譜面を渡しさえすればすればよかった。もうその時点で『カルタス・ド・ブラジル』は完成したも同然だったから。後はちょちょっと最後の仕上げをするだけで「一丁上がり」!

CARTAS DO BRASIL-2 それくらいの大らかな雰囲気が『カルタス・ド・ブラジル』の中にある。MPBからの大物ゲスト・ヴォーカル陣=イヴァン・リンスジャヴァンフィロー・マシャードホーザ・パッソスタチアーナヴァレリア・オリヴェイラ,そして日本はオルケスタ・デ・ラ・ルスNORAが歌う,櫻井哲夫の“サウダージ”に心癒されてしまう。すごくいい。

 ある日,完全に脇役に徹している櫻井哲夫ベースを追いかけていて気付いたことがある。櫻井哲夫は1曲毎にベースの表情を変えてきている。
 スーパー・ウルトラ・テクニックを封印してもベースにこれほどの手間と時間をかけているのだった。

 櫻井哲夫の「ブラジル大好き」は,本物を超えた本物です!

  01. ELISA
  02. CANCAO DO CORACAO
  03. REAL
  04. VENUS
  05. COM A PAZ NO CORACAO
  06. A ESTRELA NAMORADA
  07. SAUDADE DE VOCE
  08. NAVEGANDO SOZINHO
  09. LA MADRUGADA
  10. SONHO DE VERAO
  11. TEMPLO DA ILUSAO

(ビクター/JVC 2003年発売/VICJ-61127)

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ドナルド・バード / コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.14

AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 1-1 本来ならば『AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 1』(以下『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』)は(契約上の問題で)ドナルド・バードソロ名義ではなくペッパー・アダムスソロ名義になったはずのアルバムなのだから,ドナルド・バードの傍らにはペッパー・アダムスがいた,と書くべきであろう。

 しかし『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』のサウンド・メイキングを聴く限り『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』の主役は,ドナルド・バードトランペットではなく,ペッパー・アダムスバリトンサックスでもなく,デューク・ピアソンの“ファンキーな”ピアノで間違いない。

 そう。アート・ブレイキーの傍らにベニー・ゴルソンがいたように,ドナルド・バードの傍らにはデューク・ピアソンがいた。
 ドナルド・バードトランペットに絡むペッパー・アダムスバリトンサックスの相性の良さは「鉄板」なのだが,そんな「鉄板」を超えるドナルド・バードデューク・ピアソンの「新定番」が確立されたのが『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』と『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.2』での2枚のライブ盤なのである。

 長年連れ添ってきたドナルド・バードペッパー・アダムスの双頭コンボの蜜月関係に,デューク・ピアソンが初めて割って入ったのが『FUEGO』であったが,この時点でのデューク・ピアソンはまだ駆け出しのサイドメン。

 『FUEGO』『BYRD IN FLIGHT』でベニー・ゴルソン的な役割を果たしてきたデューク・ピアソンが,ついに『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』では,自ら先頭に立って「デューク・ピアソンファンキー・ジャズ」を謳歌している。
 バップ・ラインに捉われない多様なサウンド・メイキングがノリに乗っていく。

 ズバリ『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』におけるドナルド・バードペッパー・アダムスの存在価値とは,デューク・ピアソンの「持ち駒」であろう。
 デューク・ピアソンの指揮棒通りに演じられる,ドナルド・バードペッパー・アダムスのバトルとユニゾンとの塩梅が絶妙であって,結果,ゴリゴリしていない,都会的なファンキー・ジャズ=「デューク・ピアソンファンキー・ジャズ」が完成している。
 「知性」と「ファンキー」。「可憐」と「野生味」がデューク・ピアソン一流の“黄金比”でブレンドされている。

AT THE HALF NOTE CAFE VOLUME 1-2 管理人の結論。『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1批評

 デューク・ピアソンが,ドナルド・バードペッパー・アダムスの個性を引き出し描いた相反スケッチ。メンバー全員が突進することなく,それでいて芯があり,演奏にまとまりが感じられる。
 そう。ドナルド・バードの傍らにはデューク・ピアソンがいたのである。

 ライブ盤なのにスタジオ盤のような完璧な演奏に仕上がっている。
 この点をドナルド・バードの資質として素晴らしいと感じるか? ライブ盤っぽくないと残念だと感じるか?で『コンプリート・ハーフノートのドナルド・バード VOL.1』の評価は二分されるように思う。

  01. INTRODUCTION BY RUTH MASON LION
  02. MY GIRL SHIRL
  03. SOULFUL KIDDY
  04. A PORTRAIT OF JENNIE
  05. CECILE
  06. THEME: PURE D. FUNK
  07. CHILD'S PLAY
  08. CHANT

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-7108)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,岡崎正通)

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櫻井 哲夫 / ジェントル・ハーツ4

GENTLE HEARTS-1 “超絶ベーシスト櫻井哲夫が“スーパー・ギタリスト”のグレッグ・ハウと“爆裂ドラマー”のデニス・チェンバースを迎えて制作された「フュージョン+ロック+ファンクの混血セッション大会」が『GENTLE HEARTS』(以下『ジェントル・ハーツ』)である。

 とにかく凄い。凄すぎる。弾きまくりのセッションCDのド迫力に圧倒されてしまう。確かに「パンク・ロック・フュージョン」であろう。
 しかし,冷静に聴けるようになると革新的な「パンク・ロック・フュージョン」の原動力は,櫻井哲夫ではなくグレッグ・ハウだと思ってしまう。

 『ジェントル・ハーツ』はベーシストトリオではなく,ギタリストトリオである。
 完全に櫻井哲夫グレッグ・ハウにリードされてしまっている。デニス・チェンバースの耳もベースではなくギターを聴いている節がある。

 恐らくは櫻井哲夫の紳士的で文字通りの『ジェントル・ハーツ』な人間性が,櫻井カラーを薄めてしまった原因ではなかろうか?
 いいや,カシオペア的なアンサンブルではなく,ジンサク的なアンサンブルでもなく,ジャコ・パストリアス的なアンサンブルを求めた結果,単なる“超絶バトル”で終わってしまった,というのが本音では?

 何はともあれソロ活動開始後,初めてとなる“超絶ベーシスト”としてのアルバムに歓喜したものだ。“音楽家”としての櫻井哲夫を聴き続けたいと願う反面,こうも“超絶ベーシスト”が封印され続けると「思いっきり弾いてくれ〜」とフラストレーションが溜まってしまうものですから…。

 そういう意味では『ジェントル・ハーツ』の本質は,櫻井哲夫にとっても櫻井哲夫のファンにとっても「ガス抜き」である。
 そういう意味では『ジェントル・ハーツ』の続編となる『GENTLE HEARTS TOUR 2004』や『VITAL WORLD』もアウトローな「ガス抜き」である。

GENTLE HEARTS-2 管理人の結論。『ジェントル・ハーツ批評

 「パンク・ロック・フュージョン」路線の『ジェントル・ハーツ』の真価は,メロディーの中でベースをどれだけ「弾き倒すか」で決まるのであって,高度なアンサンブルとか楽曲の完成度までは求めてはならない。

 その意味で『ジェントル・ハーツ』は今一歩。ジャケ裏に書かれた“侍”の大文字の如く,野生の本能の赴くままに感情の発露をベースに乗せてくれたなら…。

PS 【SAMURAI FAITH】を聴く度に,どこぞやにヒット曲を聴いている気分になる。ラジオの「パワープレイ」か何かで繰り返し耳にした曲に似ているだけなのだろうか? 喉元まで出てきているのに最後の最後で出てこない。【SAMURAI FAITH】を聴く度に,どうしても思い出せずに,モヤモヤさまぁ〜ず。

  01. SAMURAI FAITH
  02. BRAIN STORM
  03. PUNK JAZZ
  04. GENTLE HEARTS
  05. THE INVISIBLE WAY
  06. MAXIMUM
  07. WONDERLAND IN THE SKY
  08. DANDELION

(ビクター/JVC 2001年発売/VICJ-60735)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

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ドナルド・バード / バード・イン・フライト5

BYRD IN FLIGHT-1 『BYRD IN FLIGHT』(以下『バード・イン・フライト』)は,ジャズを聴き始めた頃から,ドナルド・バードを聴き始めた頃からずっと好きだった。

 『バード・イン・フライト』のメンバーは,トランペットドナルド・バードテナーサックスハンク・モブレーアルトサックスジャッキー・マクリーンピアノデューク・ピアソンベースタグ・ワトキンスレジー・ワークマンドラムレックス・ハンフリーズである。悪かろうはずがない。

 「ブルーノートの助さん&格さん」ハンク・モブレージャッキー・マクリーンの色彩豊かなコントラスト。どちらが上でも下でもない。どちらを取っても,サイドに回った時に実力以上の名演を残す「B級の顔」らしい,最高に素晴らしい演奏である。
 オーソドックスなクインテットというのも悪くはないが,惜しむべきはなぜ3管で来なかったのだろう?

 『バード・イン・フライト』の全6トラックは【GHANA】【LITTLE BOY BLUE】【GATE CITY】【LEX】【“BO”】【MY GIRL SHIRL】の佳曲揃い。悪かろうはずがない。

 アフリカと見せかけておいて実はアフロキューバンな【GHANA】の疾走感が最高である。ブルーノートの名曲群の中に必らず名前が挙げられる【MY GIRL SHIRL】のおフランス的なアンニュイな雰囲気が最高である。

 そう。『バード・イン・フライト』は,全ブルーノート好きが選ぶ,そして全ハード・バップ好きが選ぶ,そして全モダン・ジャズ・マニアが選んだ名盤である。管理人の昔からの愛聴盤である。

 しか〜し,管理人が『バード・イン・フライト』を,本気でここまで好きになったのは近年のことである。この好きの感情は別の次元からやってきた。山中千尋である。

 そう。山中千尋ドナルド・バードの「裏名盤」として『バード・イン・フライト』を挙げていたのだ。
 恥ずかしながら管理人には,実はこんな経験がたくさんあって,今回も自分の気になるジャズメンがいいと言うから好きになるパターン。

 今回は山中千尋の発言を取り上げたのだから,ライバルである上原ひろみの発言を例に説明しよう。
 過去に上原ひろみが「私の選ぶ10枚」だったか何かで,管理人の“フェイバリットキース・ジャレットの『スタンダーズ・イン・ノルウェイ』を挙げていた。

BYRD IN FLIGHT-2 管理人はその事実に凄く驚いた。世評における『スタンダーズ・イン・ノルウェイ』の評価はキース・ジャレットトリオの『??』の出涸らし。無論,キース・ジャレットの場合は出涸らしであっても超ド級の一級品に違いはないが,やはりキース・ジャレットの他のアルバムと比較したらワンランク落ちると管理人も思っていた。

 そうして改めて聴いた『スタンダーズ・イン・ノルウェイ』! 上原ひろみよ,あなたは何故にそんなにジャズのことが分かっているのか! 抜群にいいではないか!
 そうして改めて聴いた『バード・イン・フライト』! 山中千尋よ,あなたは何故にそんなにジャズのことが分かっているのか! 抜群にいいではないか!

 だ・か・ら『バード・イン・フライト』が以前よりもっと好きになった! ドナルド・バードが以前よりずっと好きになった! 山中千尋ももっとずっと好きになった!

 ズバリ,山中千尋が教えてくれた『バード・イン・フライト』こそがドナルド・バードの「裏名盤」である。

  01. GHANA
  02. LITTLE BOY BLUE
  03. GATE CITY
  04. LEX
  05. "BO"
  06. MY GIRL SHIRL

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-4048)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,原田和典,大西米寛)

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櫻井 哲夫 / TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS4

TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS-1 “スーパー・ベーシスト櫻井哲夫の「デビュー20周年記念」のライブ盤『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』とは,カシオペアジンサク時代の櫻井哲夫オリジナル集を“演奏しまくる”四部構成のライブ盤である。

 その四部構成の内訳とは…
・第一部は勝田一樹が入った「櫻井哲夫 & 勝田一樹 WITH カシオペア」。
・第二部は「櫻井哲夫 & 神保彰」による【FIREWATER】と【FUNKY PUNCH】でのジンサク100%』復活パート。
・第三部は「カシオペア FEATURING 櫻井哲夫」による【SAILING ALONE】。
・第四部は櫻井哲夫ベース・ソロBASS SOLO 2000】。

 ゆえに『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』のフォーメーションは“スーパー・ベーシスト櫻井哲夫が一人前へ出て,次にドラム神保彰が一人前へ出て,その次にギター野呂一生キーボード向谷実が二人前へ出て,四列目にサックス勝田一樹が控える構図であろう。

 そう。基本的には櫻井哲夫の「デビュー20周年記念」にかこつけた「第一期カシオペア」の復活祭が“狙い”である。危うくばこれを機会にカシオペアに復帰できるかも…。
 櫻井哲夫も,いいや,野呂一生向谷実神保彰も,心のどこかに否定できない“淡い期待”があったと思う。

 しか〜し『TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS』から飛び出してきた音楽は,どうにもこうにも“カシオペアっぽくない”。
 黄金期のメンバーで演奏しているのに,明らかにあの頃のカシオペアになりきれていない。

TLM20〜LIVE MEMORIES IN 20 YEARS-2 その最大の理由はサックス勝田一樹のブロウにある。
 勝田一樹サックスが鳴れば,バックがカシオペアなのにDIMENSIONに聴こえてしまう。勝田一樹は“物凄い個性”を持っている。

 もはやカシオペアには戻れない。櫻井哲夫本人も(そして野呂一生向谷実神保彰も)自覚したであろう「デビュー20周年記念」のカシオペアからの完全卒業ライブ盤である。

  01. CHAOS
  02. I'M GONNA CATCH YOU
  03. DISPENSATION
  04. ALISA
  05. FIREWATER
  06. FUNKY PUNCH
  07. SAILING ALONE
  08. RED ZONE
  09. BASS SOLO 2000
  10. YOU CAN DO IT!
  11. 45゚C

(ビクター/JVC 2000年発売/VICJ-60644)
(ライナーノーツ/櫻井哲夫)

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ドナルド・バード / フュエゴ5

FUEGO-1 ドナルド・バードの代表作にしてファンキー・ジャズ屈指の名盤と讃えられる『FUEGO』(以下『フュエゴ』)。

 『フュエゴ』の高評価に異論はない。ただし,管理人が評価する『フュエゴ』とは“踊れるハード・バップ”であり“POPなハード・バップ”としての『フュエゴ』である。
 ズバリ,ドナルド・バードファンキー・ジャズとは,アート・ブレイキーホレス・シルヴァーキャノンボール・アダレイからイメージする一般的なファンキー・ジャズとは一線を画している。

 例えば,アート・ブレイキーの【MOANIN’】。ホレス・シルヴァーの【SONG FOR MY FATHER】。キャノンボール・アダレイの【MERCY,MERCY,MERCY】。これらは躊躇せずに踊れる,と言うか本質として乗れる。

 一方,ドナルド・バードの場合はファンキーと言ってもまだまだ品の良さが漂う。
 『フュエゴ』の本質とはドナルド・バードの素朴で歌心のある演奏に,ブルーノート独特の“黒っぽい”サウンドエンジニアリングが相乗して合成されたファンキー・ジャズである。

 ズバリ『フュエゴ』の音楽監督はデューク・ピアソンである。デューク・ピアソンのゴスペル・ピアノが,デューク・ピアソンの“COOL”なソロ名義とは聞き違えるほどに乗っている。
 デューク・ピアソンの“HOTな”ピアノが『フュエゴ』を“踊れるハード・バップ”へと強烈に押し上げている。

 加えて,この流れで書いておかねばならないのは『フュエゴ』の主役は,ドナルド・バードトランペットではなくジャッキー・マクリーンアルトサックスである。
 マイナー・トーンを吹かせたら無双の強さを発揮するジャッキー・マクリーンが『フュエゴ』のアーシーな雰囲気に一役買っている。饒舌さはない。シンプルなロングトーンを多様した何とも情緒的なアルトサックスが延々と鳴り続ける。

 そんなジャッキー・マクリーンに脇役ユニゾンをとらせたテーマだけがドナルド・バードの出番である。ドナルド・バードの力強くもとっつきやすいトランペットがなかなかのもので,確かにドナルド・バードトランペットソロを聴いて「これぞ,ファンキー・ジャズの王道」と誤って思い込んでしまうマニアの気持ちも理解できる。

FUEGO-2 『フュエゴ』の全6曲のメロディー・ラインは耳に残るものばかり。キャッチーで覚えやすいテーマばかり。自然と口ずさめるのはホレス・シルヴァーベニー・ゴルソンの作曲したハーモニー・ラインに乗っている。

 ただし,ドナルド・バードの場合,この全てが天性のノリではなく計算されたノリで出来上がっている。一般的なファンキー・ジャズとの「アザトサのチラミセ」が,ハード・バップでもなくファンキーでもない“孤高の”ファンキー・ジャズたらしめる魅力なのである。

 もしかしたら『フュエゴ』というアルバムは,頭脳明晰なドナルド・バードが,当時のジャズ界の革新であったモードの楽譜を見つめながら,ああではない,こうではない,と演奏したのでは?

 管理人的には『フュエゴ』=ドナルド・バードファンキー・ジャズとして語られる風潮には反対ではありますが,まぁ,正直『フュエゴ』が,ハード・バップであろうとファンキー・ジャズであろうと,別にどっちでもいいんです。

 大切なのは『フュエゴ』を読者の皆さんにも聴くていただきたい,ということ。絶対にジャズが好きになりますよっ。

  01. FUEGO
  02. BUP A LOUP
  03. FUNKY MAMA
  04. LOW LIFE
  05. LAMENT
  06. AMEN

(ブルーノート/BLUE NOTE 1960年発売/TOCJ-7017)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,原田和典)

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