アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2018年02月

エディ・ヒギンズ・トリオ / 懐かしのストックホルム4

DEAR OLD STOCKHOLM-1 『DEAR OLD STOCKHOLM』(以下『懐かしのストックホルム』)が実に悩ましい。
 演奏良しの選曲良し。これぞジャズ・ピアノが長年追い求め続けてきた理想の具現化であろう。

 ただし手放しでは喜べないのだ。エディ・ヒギンズ・クラスなら『懐かしのストックホルム』クラスの名盤を放っておいて演奏できる。
 なのにエディ・ヒギンズがやらされてしまっている。スイングジャーナル誌とヴィーナス・レコードにやらさえてしまったのだ。そこがどうにも歯がゆいのだ。

 そう。『懐かしのストックホルム』とは,スイングジャーナル誌の「エディ・ヒギンズ・トリオで聴きたいスタンダード・ベスト10」から産まれた企画盤である。どうやらVENUSの10周年記念企画盤だとか…。

 VENUSエディ・ヒギンズが「持ちつ持たれつの間柄」であることは周知の事実。ゆえに『懐かしのストックホルム』の制作は当然の成り行きだったのかもしれない。
 しかし『懐かしのストックホルム』の中に,エディ・ヒギンズの魂はあるのか?と問われれば,管理人は「ない」と答えよう。

 管理人には『懐かしのストックホルム』でのエディ・ヒギンズは,どうにも「よそ行き」のジャズ・ピアノに聴こえてしまう。「どこぞのカクテル・ピアニスト」のジャズ・ピアノに聴こえてしまう。

 そう。『懐かしのストックホルム』でのエディ・ヒギンズは,いつもより軽めに鍵盤を弾いている。『HAUNTED HEART』や『AGAIN』の頃の硬めのタッチが消えている。

 管理人は『懐かしのストックホルム』の前作までエディ・ヒギンズをずっと支持してきたが,それは“売れ線”を弾いてはみても,心はずっと硬派なジャズメンのままだったからだ。商業主義とは一線を引いた「カクテル・ピアノ」職人のエディ・ヒギンズが大好きだった。

DEAR OLD STOCKHOLM-2 だからこそ『懐かしのストックホルム』で感じた軽めのピアノ・タッチに嫌悪感を覚えてしまった。エディ・ヒギンズが悪魔に魂を売ってしまった気がして嫌気がさした。
 1番期待していたのに,甘い【NARDIS】という音選びの決定的な失敗が『懐かしのストックホルム』全体の不必要な甘さへとつながったように思う。

 ズバリ,管理人の大好きだった“エヴァンス派”のエディ・ヒギンズは『懐かしのストックホルム』という大名盤を残して死んでしまった。
 『懐かしのストックホルム』は「どこぞのカクテル・ピアニスト」による名演集なのである。

 個人的には『懐かしのストックホルム』以降のエディ・ヒギンズは評価していない。批評の対象としてはどうでもいい。

  01. Moonlight Becomes You
  02. More Than You Know
  03. Nardis
  04. Over The Rainbow
  05. Dear Old Stockholm
  06. I Remember Clifford
  07. You And The Night And The Music
  08. If You Could See Me Now
  09. Again
  10. We Will Be Together Again
  11. Witchcraft
  12. It Never Entered My Mind
  13. Stella By Starlight
  14. Blame It On My Youth

(ヴィーナス/VENUS 2002年発売/VHCD-4077)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/児山紀芳)

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ザ・スフィアーズ / ライヴ・イン大阪3

LIVE IN OSAKA!!-1 「ザ・スフィアーズ」とは山中千尋の“覆面バンド”である。
 「ザ・スフィアーズ」のデビュー盤『LIVE IN OSAKA!!』(以下『ライヴ・イン大阪』)のどこを見渡しても山中千尋の文字はない。アルバム・ジャケットにも,いつもの美形の顔出しなし。
 おいおい,ドル箱の山中千尋ブランドを隠してセールス的には大丈夫なのかぁ〜。

 しか〜し『ライヴ・イン大阪』を聴けばすぐに分かる。「ザ・スフィアーズ」が発する山中千尋特有のジャズ・ピアノの香り。
 これには原因があって,ちーたんのエレピがバランス的に飛び抜けているのは,ダナ・ロスエレクトリックベースカレン・テバーバーグドラムが少々貧弱。
 結果として,いつもの脇義典ウッドベースジョン・デイヴィスドラムとの「山中千尋トリオ」以上に「山中千尋・ワンマン・バンド」と化している。

 つまり『ライヴ・イン大阪』は,山中千尋とその他2名によるライブ盤ゆえクオリティは二段落ちている。山中千尋ピアノにしても,せっかくの「ワンマン・バンド」なのだから,もっと自由に大暴れしても良いのに「ザ・スフィアーズ」全体のまとめ役に徹している感じがする。

 「ザ・スフィアーズ」に不満に感じてしまう最大要因はダナ・ロスエレクトリックベースである。せっかくのエレクトリックベースなのにリズム・キープがほとんどで,エレクトリックベースの代名詞=スラップなどは皆無。

 要するに「ザ・スフィアーズ」は山中千尋の「アコベだけではなくエレベも使ってみました」的な実験作。エレベエレピが乗っているにも関わらず,印象としてはアコベから何にも変化なし。

LIVE IN OSAKA!!-2 管理人はアルバム数枚おきに数曲だけ聴かせてくれる山中千尋の“狂喜のエレピ”が大好きなもので「ザ・スフィアーズエレクトリック・ガールズ・バンド」に大いに期待していたのだが,3回聴いてお蔵入り決定。
 自他共に認めるちーたん・マニアの管理人をして駄盤の烙印を押してしまおう。

 そう。「ザ・スフィアーズエレクトリック・ガールズ・バンド」の看板は偽りであって,聴き所はフェンダー・ローズではなくアコースティックピアノの方であった。
 『ライヴ・イン大阪』は【八木節】の名演1曲に救われているよなぁ。【八木節】ばかりは山中千尋がニッコニコ〜!

  01. RAIN, RAIN AND RAIN
  02. LIVING TIME:EVENT V
  03. YAGIBUSHI
  04. BEMSHA SWING
  05. HIMAWARI MUSUME
  06. TAXI
  07. THE ENTERTAINER
  08. EVIDENCE
  09. INSIGHT FORESIGHT

(ブルーノート/BLUE NOTE 2015年発売/UCCQ-1050)

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エディ・ヒギンズ & スコット・ハミルトン / マイ・フーリッシュ・ハート4

MY FOOLISH HEART-1 『煙が目にしみる』で十分に理解していたはずなのに『MY FOOLISH HEART』(以下『マイ・フーリッシュ・ハート』)で改めてスコット・ハミルトンテナーの響きに速攻でやられてしまった。

 タイトル・チューンにしてオープナーの【MY FOOLISH HEART】のエロいこと。とにもかくにも生々しいタンギングやブレスやビブラートをエロスと表現するしか他にない。ただし清潔感があって潔い「芸術性のエロスの香り」。そこのところを読み間違えないでいただきたい。

 だから管理人としては『マイ・フーリッシュ・ハート』はエディ・ヒギンズスコット・ハミルトンの共演盤とは考えていない。
 『マイ・フーリッシュ・ハート』はスコット・ハミルトンテナーサックスを聴くべきアルバムだと断言しよう。

 ズバリ『マイ・フーリッシュ・ハート』とは,マル・ウォルドロンの『レフト・アローン』と同じ立ち位置に位置するアルバムである。
 マル・ウォルドロンのリーダー作『レフト・アローン』。しかし真の主役はマル・ウォルドロンピアノではなくジャッキー・マクリーンアルトサックスの方である。

 ジャッキー・マクリーンの『レフト・アローン』を聴いている時,そしてスコット・ハミルトンの『マイ・フーリッシュ・ハート』を聴いている時,マル・ウォルドロンピアノエディ・ヒギンズピアノも消えている。
 要は完全にサイドメンとしての伴奏に徹している。

MY FOOLISH HEART-2 マル・ウォルドロンと来ればビリー・ホリデイの伴奏者として余りにも有名である。そしてエディ・ヒギンズも『懐かしのストックホルム』のライナーノーツを読むと,氏のワイフであるメレディス・ダンブロジオを始めとして「私はありとあらゆる歌手の伴奏をやってきた」との記載がある。やっぱり!

 『マイ・フーリッシュ・ハート』はスコット・ハミルトンテナーサックスを聴くべきアルバムであるが,そこには名手=エディ・ヒギンズジャズ・ピアノが常に寄り添っている。

 エディ・ヒギンズスコット・ハミルトンの2枚目の共演盤『マイ・フーリッシュ・ハート』の内容が真に上質。ただし『煙が目にしみる』を聴いた時のようなインパクトは薄い。

 『マイ・フーリッシュ・ハート』は【MY FOOLISH HEART】の超名演を聴いて満足すればそれでよろしい。
 何となく予定調和的な,まぁ,それだけ完璧な出来ということで…。

  01. My Foolish Heart
  02. Russian Lullaby
  03. What Is There To Say
  04. That Old Black Magic
  05. Skylark
  06. Night And Day
  07. Embraceable You
  08. Am I Blue
  09. These Foolish Things
  10. The More I See You
  11. The Song Is You
  12. This Love Of Mine

(ヴィーナス/VENUS 2003年発売/TKCV-35316)
(ライナーノーツ/馬場啓一)

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松武 秀樹,乾 裕樹,渡辺 香津美,深町 純,村上 秀一,岡沢 茂,江夏 健二 / SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY4

SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY-1 日本のトップ・ミュージシャンが「宇宙」をテーマに「宇宙戦艦ヤマト」「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」「火の鳥」「2001年宇宙の旅」のテーマ・ソングを演奏したスタジオ盤+ライブ盤のオムニバスが『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』である。

 『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』のリーダーはサウンド・デザインを担当した松武秀樹。アレンジャーは乾裕樹
 松武秀樹乾裕樹シンセサイザーを演奏するのだが,実際の演奏は深町純に任せている。

( ここで後日談。深町純は『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』のサウンド・デザインやアレンジが気に入らなかったのだろう。自分で『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』の焼き直しに当たる『宇宙戦艦ヤマト〜シンセサイザー・ファンタジー』なるアルバムを制作している )

 要するに『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』の時点では,深町純の参加はシンセサイザー・プレイヤーとしての評価であって,音楽全体のイメージは松武秀樹乾裕樹のものだということ。
 個人的にはその方が良い。深町純のファンとしては,迷盤『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』を深町純の音だと勘違いしたくないから…。

 そういうことでここからは深町純への感情を除いた『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』の評価について書く。

 そもそも『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』というアルバムは“シンセサイザー有き”の企画盤である。
 シンセサイザー=宇宙的・未来的なイメージが連想される時代があった。管理人は『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』のリリース後,数年経過してからYMOの洗礼を受けた世代である。

 とは言え,シンセサイザーを強烈に意識したのはYMOではなく喜多郎である。もっと言えば喜多郎というよりFM東京系「サントリー・サウンド・マーケット」のBGMが全てである。

 「サントリー・サウンド・マーケット」の“天にも昇る感じ”の音イメージはオーケストラシンセサイザーあってのこと! 壮大な未来。すっごいことが起こりそうな未来。今まで聴いたことのないサウンドの広がりはシンセサイザーであればこそ!
 「スター・ウォーズ」が今でも爆発的な人気を拡げている現状と比較すると,現状では,なぜシンセサイザーがここまで廃れてしまったのか不思議である。

SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY-2 その答えは『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』を聴いて感じる「古臭さ」にあるように思う。

 『SPACE FANTASY + LIVE SPACE FANTASY』斬新だったのは「未来志向のシンセサイザー・ミュージック」というカテゴリーだけであって,肝心の音楽自体はクリエイトされていない。

 テクノロジーの実験の場だったから,有名曲をシンセサイザーで演奏するとこんな感じ,で面白かったのだと思う。この企画ものを一番面白がっているのはドラマー村上秀一であろう。ビシビシと決まるリズムが一級品です。

 若き日の野呂一生渡辺香津美の両雄が“エレキ”って感じのギターを弾いています。これもアナログ・シンセのおかげだと思います。

  DISC-1 SPACE FANTASY
  01. 序曲―宇宙戦艦ヤマト
  02. 深夜の追跡
  03. イスカンダル
  04. 白い朝
  05. 真っ赤なスカーフ
  06. 宇宙戦艦ヤマト
  07. 飛行中隊
  08. エンジェルダスト
  09. 未知との遭遇
  10. 明日への希望―夢

  DISC-2 LIVE SPACE FANTACY
  01. プロローグ〜イスカンダル〔宇宙戦艦ヤマト〕
  02. マーメード ブールヴァード
  03. “スターウォーズ”のテーマ
  04. ザ・バランス
  05. “火の鳥”のテーマ
  06. ザ・スカードロン
  07. “2001年宇宙の旅”のテーマ ツァラトストラはかく語りき

(フォーライフレコード/FOR LIFE RECORDS 1978年発売/FLCF5027)
(CD2枚組)
(紙ジャケット仕様)
(☆BLU−SPEC CD仕様仕様)
(ライナーノーツ/松武秀樹)

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エディ・ヒギンズ / あなたは恋を知らない5

YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS-1 『YOU DON’T KNOW WHAT LOVE IS』(以下『あなたは恋を知らない』)こそが,エディ・ヒギンズの“最高傑作”である。

 『あなたは恋を知らない』は,エディ・ヒギンズ自らソロ・ピアノに合うと選曲した既発表曲の再演集。エディ・ヒギンズ好きとしては,王道のピアノ・トリオとの既発テイクとの聴き比べも楽しみの1つと購入前は思っていたのだが,未だに聴き比べはしていない。

 もう,何て言うか,エディ・ヒギンズの圧倒的に美しい小品集を聴いていると,ピアノ・トリオだから云々,ソロ・ピアノだから云々などは不毛の作業に思えてしまう。
 とにかく,エディ・ヒギンズジャズ・ピアノが“語りかけてくる”。警戒していないと一発で心の中に入ってくる。ハートを盗まれるとは正にこのことだ。

 “手垢のついた”有名スタンダードのオンパレードなのに,これほど素直な魅力に満ちているアルバムは余りないと思う。それは達観したエディ・ヒギンズの愛が込められているから…。← ロマンティック風?
 とにかくイントロからAメロに入るまでが最高で,その後のアドリブの麗しい歌いっぷり! 1つ1つのフレーズが日々の喧騒を忘れさせてくれるような,本当に美しいピアノが頭の中で鳴り響く…。← ロマンティック風2?

 おおっと,つい褒めすぎてしまった。『あなたは恋を知らない』の本質は“大仰な”アルバムなどではないところ。『あなたは恋を知らない』の魅力を文章で表現するなら「子犬のようなかわいらしさ」という感じかなぁ。

 優雅で穏やかに,時折ユーモアを交えたような軽快なタッチもあり,エディ・ヒギンズの“懐の深さ”を感じずにはいられない。シンプルで暖かく優しい音に包まれていく。巧みなピアノで表現される詩的情緒の世界にどっぷりと耽てしまう。
 心に突き刺さる演奏ではないが,これだけは伝えたい,と言うパッションが感じられる。聴けば聴くほどメロメロに魅了されてしまう。思わず小さなガッツポーズをとってしまう。

YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS-2 管理人は「好きなピアニスト・MY TOP10」に入れてしまうくらいに“飾らない”エディ・ヒギンズの演奏が大好きなのだが,それもこれも『あなたは恋を知らない』で完全KOされてしまった経験による。
 正直『あなたは恋を知らない』と出会ってから,熱心にエディ・ヒギンズを聴き直す日々。すなわち「宝探し」に没頭したものだ。

 最近,あんまりエディ・ヒギンズを聴かなくなっていたのだが『あなたは恋を知らない』を聴いてから,久しぶりに“エディ・ヒギンズ漬け”の毎日を送っている今日この頃です。

  01. When You Wish Upon A Star
  02. My Funny Valentine
  03. Detour Ahead
  04. Beautiful Love
  05. Dance Only With Me
  06. Danny Boy
  07. All This And Heaven Too
  08. Yellow Days
  09. Skylark
  10. Again
  11. You Don't Know What Love Is
  12. Over The Rainbow

(ヴィーナス/VENUS 2003年発売/TKGV-1001)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)
(☆SACDハイブリッド盤仕様)

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神保 彰 / ジンボ・デ・ジンボ 80's4

JIMBO DE JIMBO 80's-1 結論を書けば,神保彰の『JIMBO DE JIMBO 80’s』(以下『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』)も,カシオペアスクェアの多くのカヴァー・アルバム同様,オリジナル・アルバムを超えることはできなかった。

 ただしそんなの関係ない。『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』は曲がいいのだ。最初から最後までただ聴き流していれば気分が上がる。そんなカヴァー・アルバムの最右翼である。

 「カヴァー・アルバムには良いものが少ない」説を支持する管理人。そんな中で『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』の評価が高いのはオリジナルとフォーマットを変えたのが成功要因としては大きいと思う。
 カシオペア時代はギターキーボードベースドラムで演奏されていたが『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』はキーボードベースドラムである。

 つまりはカシオペアからのギター・マイナスワン。ただし単なるギターレスではない。カシオペアのメインはギター1本。野呂一生抜きのカシオペアカシオペアではなくなるのだ。
 この全てを分かった上で神保さんは,いつもの仲良しギタリストアレン・ハインズを外してきた。それが『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』の“狙い”であろう。

 オトマロ・ルイーズが“歌う”ためのアレンジは,肝となるメロディーさえも微妙に変えてきている。個人的には【ミッド・マンハッタン】はイジッテほしくなかったなぁ。
 実は目立たないが神保さん。今回リズムをかなりイジッテきている。35年かけて『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』のリズムに辿り着いたのだろう。素晴らしいドラミングである。

 特筆すべきはエイブラハム・ラボリエルベースである。『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』のオリジナルは全て桜井哲夫が弾いてきた。
 桜井哲夫ベースはメロディアスなのが特徴的だが,エイブラハム・ラボリエルベースはメロディアス+ファンク

JIMBO DE JIMBO 80's-2 神保彰の名曲が,最初にタイトなドラムが耳に入り,次にファンクベースが腰を浮かし,最後に上物メロディーが遅れて入ってくる。
 そうすると「甦る青春」ではなく「青春」が現在進行形している気分でうれしくなる。だから『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』は,ただ聴き流しているだけで楽しくなれるのだ。

 35年前の名曲は現在でも名曲であった。神保彰の「ルンルン」系はファンキー・ビートで“爽やかさ”プラス&“爽やかさ”UP!
 『ジンボ・デ・ジンボ 80’s』を聴いた翌日は,新アレンジで鼻歌を歌ってしまいます。

  01. Ripple Dance
  02. Sunnyside Feelin'
  03. Mid Manhattan
  04. Fruit Salad Sunday
  05. Street Performer
  06. After Glow
  07. In the Pocket
  08. Touch the Rainbow
  09. Frou Frou

(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 2016年発売/KICJ-746)
(ライナーノーツ/神保彰)

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エディ・ヒギンズ & スコット・ハミルトン / 煙が目にしみる5

SMOKE GETS IN YOUR EYES-1 エディ・ヒギンズと来れば“ピアノ・トリオの人”である。『魅せられし心』〜『アゲイン』〜『愛の語らい〜ジョビン作品集』〜『魅惑のとりこ』と,いずれも趣味の良いピアノ・トリオを引っさげて,VENUSの“看板”として快進撃を続けてきた。

 そんなエディ・ヒギンズが「オハコ」を捨てて,趣向を変えたワンホーン・アルバムが『SMOKE GETS IN YOUR EYES』(以下『煙が目にしみる』)である。
 しかし,主役を管楽器に譲りサイドマンとして音楽の全体を支える『煙が目にしみる』を聴いても,不思議とエディ・ヒギンズの印象は変わらない。自分の音楽が変わらない自信があったがゆえのワンホーン・アルバムの制作だったように思う。

 エディ・ヒギンズが『煙が目にしみる』のホーン奏者として指名したのが,これらも“いぶし銀”のテナーサックス・プレイヤー=スコット・ハミルトンであった。
 スコット・ハミルトンと来れば“スイングテナーの人”としてはなはだ有名な名手。エレガントなエディ・ヒギンズピアノの上にスコット・ハミルトンスイングテナーが“しっとりと鳴った”「オールド・アメリカン・スタイル」再現の音楽性が眩しすぎる。

 そう。エディ・ヒギンズがワンホーンで表現したかったのは,自分の中の別の一面,別の引き出しなどではなく,従来のピアノ・トリオ路線の拡大版である。
 スコット・ハミルトンテナーの響きが最高にゴージャスでエロい。そんなスコット・ハミルトンと音を重ねるエディ・ヒギンズの“小躍りするピアノ”に“いぶし銀”のテナーサックスへの満足感が表われている。

 そう。エディ・ヒギンズの心の機微が手に取るように分かるのも,VENUSが誇る「HYPER MAGNUM SOUND」のおかげである。
 エディ・ヒギンズの鍵盤へのタッチが上品なのが分かる。スコット・ハミルトンの息遣いとタンギングが生々しくリアルである。

 ピアノテナーサックスの絶妙なバランスが心を打つ。有名ジャズ・スタンダードの連続なのにどれも新鮮に響く。
 両者とも控えめに演奏しているものの,所々にジャズメンとしてのプライド,自己主張が垣間見られる。

SMOKE GETS IN YOUR EYES-2 ズバリ『煙が目にしみる』はそこがいいのだ。そこが聴き飽きないのだ。エディ・ヒギンズスコット・ハミルトンも優雅に演奏しているようでいて,沸々とメラメラと闘志を燃やし続けている。
 その対象は互いに向けられているようで,その実,内面の自分自身に向けられている。

 そう言えばエディ・ヒギンズと同じ“ピアノ・トリオの人”であるビル・エヴァンスも「オハコ」から外れた管入りアルバムを何枚も制作しているが,そのどれもが「ザ・ビル・エヴァンス」して聴こえていた。

 ホーンを上手に聴かせるべく表面上はソフト・タッチなのに,自分の音楽の創造といつも以上に格闘していたビル・エヴァンス
 そんな自分の音楽に対するこだわりがエディ・ヒギンズビル・エヴァンスを感じさせる最大の理由なのだと思っている。

  01. Melancholy Rhapsody
  02. It's A Lonesome Old Town
  03. You Don't Know What Love Is
  04. By Myself
  05. Smoke Gets In Yours Eyes
  06. Lullaby Of The Leaves
  07. When The Sun Comes Out
  08. Love Letters
  09. When You Wish Upon A Star
  10. All This And Haven Too
  11. You're My Everything

(ヴィーナス/VENUS 2002年発売/TKCV-35100)
(ライナーノーツ/皸羶成)

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