アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2019年02月

フォープレイ / エスプリ・ド・フォー4

ESPRIT DE FOUR-1 『LET’S TOUCH THE SKY』で「フォープレイ=活動休止中のパット・メセニー・グループ」が擦り込まれてしまった管理人。
 フォープレイパット・メセニー・グループを求めるのは間違いだと分かったはいても,パット・メセニー・グループの新作は出そうにない。パット・メセニー・グループと似たグループと言えば「e.s.t.」ぐらいだったのに,エスビョルン・スヴェンソンの不慮の事故によりこちらも新作のリリースは望みようがない。
 フォープレイに活動休止中のパット・メセニー・グループを重ねたくなるこの気持ち〜!

 多分,真っ当なフォープレイ・ファンからは一蹴されて終わるのだろうが,ボブ・ジェームスだけは管理人のこの気持ちを分かってくれた! 『ESPRIT DE FOUR』(以下『エスプリ・ド・フォー』)は,フォープレイが創り上げたパット・メセニー・グループ路線の最新作!

 ECMでの若さと清らかさ,ゲフィンでの派手でやり過ぎた下品さ,ノンサッチでのアーティスト志向がバランス良く顔を出すチャック・ローブPMG
 先代の超大物2人と比べればチャック・ローブは小粒だが,その分灰汁が出ない。こんなにも使い勝手の良いギタリストだったとは管理人的にも新発見である。

 『エスプリ・ド・フォー』では,これまでのお洒落でハイセンスな“フォープレイ・サウンド”に温かさと雄大さが加わりつつ,逆説的だが,俯瞰から眺めて冷静に計算され尽くしているようなアレンジが印象に残る。これほど長く活動してきたバンドであるにも関わらず,明らかに新しいサウンドの息吹き,方向性の模索を感じる取ることができる。
 プロデューサーとしても活躍するチャック・ローブだから,作り込まれた感が強いフォープレイとマニアで有名なパット・メセニー・サウンドにマッチしているのだと思う。

( ここで決して公には出来ない裏事情を書いておくと,フォープレイパット・メセニー・グループして聴こえる一番の理由はパット・メセニーの弟子であるチャック・ローブの参加ではありません。ズバリ,ボブ・ジェームスライル・メイズに意識的に“寄せている”からなのです。その辺りを見誤らないで! )

 さて,管理人がチャック・ローブを評価する理由は“ギタリスト”としてのチャック・ローブだけではない。リー・リトナーラリー・カールトンは持ち合わせていないかった“名コンポーザー”としてのチャック・ローブの存在である。

 フォープレイというグループはメンバーの4人全員が曲を書くことをポリシーとしている。一番の多作家でありバンドの代表曲を書き上げてきたのはボブ・ジェームスであるが,超キャッチーなキラー・チューンはハービー・メイソンの場合が多く,ネイサン・イーストも佳曲をズライと並べてくる。その部分ではリー・リトナーラリー・カールトンはあまり貢献してきたとは言えないであろう。

 そ・こ・で“名コンポーザーチャック・ローブの加入である。チャック・ローブは感動モノの曲を書く。【DECEMBER DREAM】は何度聴いても涙が止まらない。心の震えが止まらない。
 そんな“名コンポーザーチャック・ローブの加入が,他の3人の“名コンポーザー”の創作意欲を大いに刺激したのだろう。『エスプリ・ド・フォー』にはマンネリと謳われたラリー・カールトン期にはなかったヒットパレードのオンパレード。

 これまでのフォープレイは世界最高峰の演奏力でスムーズ・ジャズ界の頂点に君臨してきた。だから管理人のフォープレイに対する一つの夢とは「名曲のカヴァー・アルバム」の制作だった。ジャズっぽいものではなく,コンテンポラリーやAOR系のカヴァー演奏を聞いてみたかった。
 しかし“名コンポーザーチャック・ローブの加入でその夢は必要なくなった。それくらいに捨て曲なし。美メロばかりがザックザク〜!

ESPRIT DE FOUR-2 管理人の結論。『エスプリ・ド・フォー批評

 『エスプリ・ド・フォー』は,演奏の名手にして作曲の名手がついに4人揃った,フォープレイの理想の完成形だと思う。「絆」を表現したであろうジャケット写真通りの快作である。

 『エスプリ・ド・フォー』には【DECEMBER DREAM】【LOGIC OF LOVE】【ESPRIT DE FOUR】の神曲の3曲が入っている。特に【DECEMBER DREAM】については,チャック・ローブ時代の代表曲として指名する。
 その実,管理人のフォープレイ一番の愛聴盤が『エスプリ・ド・フォー』なのであった。

 管理人の一個人の気持ちとしては星6つの大名盤。ただし,純粋に他の人にお勧めするジャズ批評家目線で評価すると『エスプリ・ド・フォー』の総合評価は星4つ。その理由は「SEIKO MATSUDA」のヴォーカル入りにある。
 【PUT OUR HEARTS TOGETHER】はアルバム全体と調和した曲なのに【PUT OUR HEARTS TOGETHER(VOCAL TRACK)】となると,どうにも違和感を感じて気持ち悪くなる。これがボーナス・トラックだというのならご愛嬌で済んだであろうに…。
 もしやボブ・ジェームスって,隠れ“聖子ちゃん”ファンだったのか? 別に管理人は松田聖子のアンチというわけではありませんので…。

  01. DECEMBER DREAM
  02. FIREFLY
  03. VENUS
  04. SONNYMOON
  05. PUT OUR HEARTS TOGETHER
  06. ALL I WANNA DO
  07. LOGIC OF LOVE
  08. ESPRIT DE FOUR
  09. SUGOI
  10. PUT OUR HEARTS TOGETHER (VOCAL TRACK)

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2012年発売/UCCT-1241)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/フォープレイ,成田正)

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本多 俊之 ラジオクラブ / カメレオン4

CHAMELLEON-1 「本多俊之ラジオクラブ」と来れば,テレビ朝日系「ニュースステーション」のオープニング・テーマや,伊丹十三の映画「マルサの女」「ミンボーの女」のテーマ曲を連想してしまう。

 そんな中,管理人が初めて買った「本多俊之ラジオクラブ」のCDは『CHAMELLEON』(以下『カメレオン』)だった。
 『カメレオン』の衝撃たるや,イントロ一発で「本多俊之ラジオクラブ」の“音”が飛び出して来たことを覚えている。

 ズバリ「本多俊之ラジオクラブ」の“音”とは「エキゾチック・ジャズ」である。日本情緒の香りがするジャズを演奏しながらも,大きくとらえて日本もアジアや中東の一部。台湾とか東南アジアとか,当時流行っていた「電波少年」のイメージを持つ。← なんのこっちゃ。

 意味不明の読者の皆さんには【CEREZO ROSA(GOBLIN VERSION)】と【TIME IS DREAM】の2曲を聴いてもらいたい。多分,管理人の気持ちが理解できるから!?

 本多俊之の吹くソプラノサックスが“ヘビ使い”の扱う笛のように聴こえるからか,どうにもアラブとかインドの「アブラカタブラ」のイメージを抱いてしまう。
 その実,本多俊之の吹くソプラノサックスは「絶品中の絶品」であって,中東ではなく都会的なイメージに振れたなら,あのケニー・Gになれるくらいの腕前だと思っている。

CHAMELLEON-2  そんな“ヘビ使い”本多俊之がコブラの入ったザルの中から,ニュキニョキッと取り出したのが,これまた「猛獣」ばかり。以前の「本多俊之ラジオクラブ」のザルの中には,ギター是方博邦ベース鳴瀬善博ドラム東原力哉という「野獣王国」のメンバーが3人も入っていたのだから,本多俊之の“ヘビ使い”の凄さが分かるというものだろう。

 なるほど! だから本多俊之は久米宏や伊丹十三を転がすこともできたのだ。本多俊之の“音”を世間に知らしまるために,もっと「ニュースステーション」が続いたらよかったのにぃ。

 ただし『カメレオン』の時点では「本多俊之ラジオクラブ」の半導体はダイオードからトランジスタへとUPDATE。LAの凄腕ジャズメンが中心メンバーへとUPDATE。
 もはや時代はラジオの時代ではなくなっていた。本多俊之本人も「本多俊之ラジオクラブ」の時代ではなくなっていた。

  01. phantom of the earth
  02. hara-hara
  03. gimmick mask
  04. mosaic city
  05. cerezo rosa (goblin version)
  06. half mirror
  07. quiet jungle
  08. time is dream
  09. the new globe
  10. quit×enter

(東芝EMI/WHO RING 1990年発売/TOCT-5852)
(ライナーノーツ/佐藤英輔)

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フォープレイ / レッツ・タッチ・ザ・スカイ5

LET'S TOUCH THE SKY-1 新作のレコーディングが始まったわけでもないのに,ラリー・カールトンフォープレイから脱退することがアナウンスされた。『ENERGY』の発売から2年後ですよ。唐突すぎやしませんか?

 それからというものフォープレイのことを考え出すと,誰が次のギタリストを務めるのか? 個人的な第一希望&妄想はリー・リトナーの復帰であったのだが…。
 これとない大役を引き受け,のしかかるプレッシャーをはねのけて? いえいえ。こんな大チャンスをジャケット写真ばりに「天を掴んで」ものにしたフォープレイ三代目のJ−SOULギタリスト! その人の名はチャック・ローブ

 チャック・ローブは適任である。リー・リトナーラリー・カールトン・クラスの超大物ではないが,スムーズ・ジャズ界を広く見渡してもチャック・ローブ以上の人材は絶対に見つからない。
 新作を聴く前からすでに大正解のメンバー・チェンジを確信した管理人であったのだが,でもやっぱり新作が気になって気になって…。

 そんなもやもやを吹き飛ばすニュー・アルバム『LET’S TOUCH THE SKY』(以下『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』)がついに完成した。
 やっぱりチャック・ローブは「いぶし銀」な仕事人であった。これより音数が多くても少なくてもだめだろうというギター・ワークに魅了されてしまった。どこか浮ついた感じのラリー・カールトンよりもチャック・ローブの方が“しっくりくる”!

 …って,チャック・ローブにしても『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』にしても,全て後出しジャンケンだったのだから…。
 そう。チャック・ローブパット・メセニーの弟子ですよっ。『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』の【A NIGHT IN RIO】と【ABOVE AND BEYOND】はパット・メセニー・グループ調ですよっ。
 遡れば『』の【EASTERN SKY】の時点から,このシナリオが始まっていたのですよっ。この4年越しの「伏線と回収」のマジックにボブ・ジェームス恐るべし!

( もう一つの勘ぐりの裏話を。フォープレイは2008年に「ヘッズ・アップ」へ移籍したのだが,チャック・ローブも2007人に「ヘッズ・アップ」へ移籍済。これって将来のフォープレイ合流を見据えての事だった? 大人の事情ってジャズフュージョン界にもあるの? )

 おおっと『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』で,評価すべきはチャック・ローブでもパット・メセニーでもボブ・ジェームスでもなくフォープレイ。評価軸は“フォープレイ・サウンド”がどうかであろう。

LET'S TOUCH THE SKY-2 管理人の結論。『レッツ・タッチ・ザ・スカイ批評

 フォープレイとは「清く・正しく・美しい」フォープレイなので,革新的な演奏とか超弩級のスリルといった「劇薬」とは無縁である。どこまでもクリアでフォーキーで心地よく,そして非常に落ち着いた大人の音楽である。
 『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』においても,土台としての“フォープレイ・サウンド”は健在であって,スタイリッシュなチャック・ローブの個性を見事に飲み込んでいると思う。

 相変わらず相当に完成度が高い。エレガントで美しくて深い。そして新鮮でキャッチーなナンバーが続いている。
 『レッツ・タッチ・ザ・スカイ』を聴き終えてまず感じたのは,活動休止中のパット・メセニー・グループの穴を埋めるのはフォープレイである,という思いであった。
 本来ならチャック・ローブの座った椅子にはパット・メセニー? 今度こそ「4度目の正直」はパット・メセニー

 それはそれとしてチャック・ローブ新加入のキーワードは“アコースティック”である。
 “アコースティックフォープレイ”を牽引するブライトでインテリジェンスなチャック・ローブが渋い!

  01. LET'S TOUCH THE SKY
  02. 3RD DEGREE
  03. MORE THAN A DREAM
  04. PINEAPPLE GETAWAY
  05. I'LL STILL BE LOVIN' YOU
  06. GENTLE GIANT (FOR HANK)
  07. A NIGHT IN RIO
  08. LOVE TKO
  09. ABOVE AND BEYOND
  10. GOLDEN FADERS
  11. YOU'RE MY THRILL
  12. WHEN LOVE BREAKS DOWN

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2010年発売/UCCT-1225)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/原田和典)

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渋さ知らズ / 渋夜旅4

SHIBU-YOTABI-1 管理人はビッグ・バンドを始めとして大編成バンドは苦手である。たくさんの音色が混ざっていて判然としない。個人的な趣向として一つ一つの音をきちんと聴き分けたい願望がある。
 あの人の音色がどうとか,この人のフレージングがどうとか,感想を話し合って仲間内で大いに盛り上がりたいわけなのです。← ただし現実は,ほぼ一人っきりでニヤニヤしながら楽しむ毎日。淋しい〜。

 でっ,そんな管理人が渋さ知らズに手を出したのは,ズバリ,片山広明テナーサックス目当てである。
 あれっ,渋さ知らズとはベーシスト不破大輔の混成ビッグ・バンドだったのでは? それはそうなのだが,その不破大輔をして,片山広明を「渋さで言えば4番バッター」と評している。

 渋さ知らズでは,一度参加したメンバーは以後永久にメンバー扱いになる。その法則で行くと歴代の全メンバーは100名以上に及ぶそうだ。
 その100名の凄腕メンバーの中で「4番バッター」を張る片山広明の実力は「世界レベル」にして「地底レベル」。片山広明テナーサックスは完全に逝っている。

 渋さ知らズのファンの間で『渋夜旅』は不評である。その理由は渋さ知らズの真髄とはライブバンドなのであって,緻密なスタジオ録音の『渋夜旅』は渋さ知らズのお面を被ったニセの渋さ知らズという論法。
 「ニセスクェア」=『MASATO HONDA WITH VOICE OF ELEMENTS』のような感じ?

 渋さ知らズのファンの間で『渋夜旅』は不完全燃焼なアルバムなのかもしれない。しかし『渋夜旅』の購入目的が片山広明テナーサックスにあるファンとしては,これはこれでいい演奏だと満足してしまった。

 渋さ知らズの聴き所である,怒涛の音圧とリズムに圧倒される心地良さの上を走り回る片山広明テナーサックスが超カッコイイ。
 いいや,片山広明テナーサックスに踊らされて,渋さ知らズが『渋夜旅』で「昼顔」を見せていると考えるべきアルバムだと思う。

SHIBU-YOTABI-2 渋さ知らズは基本フリー・ジャズ。メンバー全員が適度なテンポの中でフリーな演奏をかっこよくキメまくっている。ホーンが勢いよく鳴り,ファンキーなリズムは強靭で奇妙な浮遊感がある。
 ただし,片山広明が参加していないトラックは,どこかスカパラっぽくもあり,どこかPE’Zっぽくもあり,確かに渋さ知らズのファンの間で『渋夜旅』が不評なのも理解できる。

 『渋夜旅』を聴き終えて,やっぱり渋さ知らズの「エース」は片山広明を実感。
 (…と書いた舌の根も乾かぬうちに)『渋夜旅』のハイライトは【HYOEI】である。室舘彩のクセのあるヴォーカルを聴いたが最後。1週間は頭の中をぐるぐる回る〜!

  01. DORAGO
  02. GONTASYL
  03. A NIJI-MUSHI IN THE WATER
  04. HYOEI
  05. ISLAND TANGO
  06. WATARI
  07. UKISHIBU
  08. A DAY IN THE LIVE

    ENCORE TRACK
  09. UKISHIBU EPILOGUE
  10. GONTA CHOPPER, PT.1

(プランクトン/PLANKTON 2010年発売/VIVO-103)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/市川正二)

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フォープレイ / エナジー4

ENERGY-1 管理人的にはフォープレイのゴールド・ディスクの中ではイマイチの低評価作『ENERGY』(以下『エナジー』)である。
 『エナジー』は本田雅人の『ACROSS THE GROOVE』直後の1枚。幾分贔屓目に聴いた1枚でもある。

 贔屓目に聴いても数年間は低評価なままだった『エナジー』。何年も『エナジー』の中で好きな曲は【THE WHISTLER】1曲しかなかった。( ただしこの【THE WHISTLER】はフォープレイの全楽曲の中でも相当に大好き! )

 『エナジー』に対する評価は『ACROSS THE GROOVE』に対する評価と一体であった。
 またしても,いつものフォープレイの演奏スタイルに安心する反面,ガッカリもする。大概はそこから入って細かな違いを発見してはニンマリするパターンである。
 フォープレイのアルバムは聴く回数を重ねるごとに良くなっていく。明確に「これだっ」と電流が走ることはないのだが,いつの間にか気がついたらハマっている…。

 『エナジー』の第一印象は「あれっ,ラリー・カールトンが元気ないかな」であった。これって『ACROSS THE GROOVE』で「ラリー・カールトン抜きの4分の3」を聴き込んだせいかと思ったのに…。
← 管理人の悪い予想は良く当たると巷で評判でして…。フォープレイの次作にはラリー・カールトン不在の悪夢。今回の『エナジー批評では詳しくは書きません。

( フォープレイギタリストとしては『エナジー』が最終作になったので,この機会に管理人の考えるラリー・カールトンについて記しておく。ラリー・カールトンの魅力とは,フォープレイの“鉄壁な”アンサンブルが破たんするかどうかのギリギリのラインでギターを弾くところにあった。安定したキーボードベースドラムと不安定なギターがひっついたり離れたりする感じが好きだった。「ちょっとクセになる」と表現するのがピッタリのギター・ワーク。そんなラリー・カールトンの「危険な寸止め」! )。

 『エナジー』の底辺に流れる「ソフト&メロー回帰」。『エナジー』にはフォープレイの新たなチャレンジを発見できずにいたのだが,例えばコード進行1つをとっても『エナジー』を聴けば聴くほど,めちゃめちゃ難しいコードワークを用いていることが分かってくる。当たり前の転調などではない。

 シンプルに聴こえて,その実,この4人でなければ余裕たっぷりに演奏できないことが分かってくる。フォープレイの音楽ってかなりマニアックな理論で出来上がっていることが容易に想像できる。
 渋い。流石は本田雅人のハイパーな譜面をGROOVYに演奏できる訳だ。フォープレイの「物の違い」にKOされて,震えが来て,後は「ハハーッ」とひれ伏すだけ…。

 ズバリ『エナジー』はフォープレイの4人が全員同時に行なった「断捨離」作。
 『エナジー』で,新たなチャレンジングが控え目になった理由こそが,過去リリースされた10枚の新作の録音時に,少しづつながら確実に“フォープレイ・サウンド”のフォーマット上に付着してきた,余分な贅肉の「削ぎ落とし」にある。

 フォープレイドラマーハービー・メイソンと「削ぎ落とし」という言葉で思い出すのが,その昔,カシオペアの『EYES OF THE MIND』をプロデュースしたハービー・メイソンによる神保彰への要求=「余分な音を削ぎ落としてシンプルに」である。
 例の“おあずけ”指示による「シンプルでパワフルなビート」&「タイトでダンサブルなグルーヴ」である。“千手観音”神保彰の“超絶技巧”をスカスカになるまで「削ぎ落とし」たことで世界への道筋を示した功績へと繋がっている。

ENERGY-2 そんなハービー・メイソンの超一流の教えを『エナジー』ではラリー・カールトンが実践したのかも? そして嫌になってしまったのかも? ラリー・カールトンのワイルドでブルージーなギターがどうにも元気がないように聴こえてしまったものでして…。

 大物と呼ばれてるジャズメンの多くは,時が経つにつれて音楽的な自我が肥大化してしまい。何を演奏しても自分の刻印をベタベタと刻みこむようなミュージシャンになってしまう傾向が強い。
 しかし,フォープレイが称賛されて然るべき点は,これだけのメンツが揃いながらもメンバー全員が完璧に「4分1」に徹し,フォープレイのバンド・サウンドを鳴らすために献身的に奉仕している点にある。

 その意味でラリー・カールトンは自己犠牲を払い続けることに疲れてしまったのかなぁ。真意は誰にも分からない。
 ただし『エナジー』でのラリー・カールトンギターには興奮を覚えない。それは恐らくリスナーだけではなく当の本人にしても他の3人のメンバーにしても…。

 ラリー・カールトン様。フォープレイからの卒業おめでとうございます。ラリー・カールトン様。12年間お疲れ様でした。

  01. FORTUNE TELLER
  02. THE WHISTLER
  03. ULTRALIGHT
  04. CAPE TOWN
  05. THE YES CLUB
  06. PRELUDE FOR LOVERS
  07. LOOK BOTH WAYS
  08. ARGENTINA
  09. COMFORT ZONE
  10. SEBASTIAN
  11. BLUES ON THE MOON

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2008年発売/UCCT-1203)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/松下佳男)

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フォープレイ / X5

X-1 『』を初めて聴いた時,ファースト・アルバム『FOURPLAY』に揺り戻ったように感じた。
 それは多分にボブ・ジェームスブラスシンセの影響だと思う。だから『』はフォープレイのいつものスムーズ・ジャズではなく,フォープレイ久々のフュージョンである。

 しかし『』はファースト・アルバム『FOURPLAY』とは明らかに異なる。
 そう。『JOURNEY』を経験したからこその「一周回ったフュージョン・アルバム」『』の誕生なのである。

 そんなフォープレイの第三章の幕開けを告げる『』のサウンドを聴いて驚いた。イメージとしてはパット・メセニー・グループと似ているのだ。【EASTERN SKY】をブラインドで聴かされたならパット・メセニー・グループの新作と間違えること必至であろう。

 そう。フォープレイが『』で「遊んでいる」。とりわけハービー・メイソンが「遊んでいる」。
 ハービー・メイソンドラミングが「擬似」リズム・マシーン化していて,生ドラムで打ち込みにどこまで寄せることができるかを意識している。スッキリとタイトなドラミングが続いている。← カシオペアの『LIGHT AND SHADOWS』風?
 この全てはハービー・メイソンなりの「ボブ・ジェームスブラスシンセフィーチャリング」なのだろう。

 このハービー・メイソンの演出,フォープレイとしての演出ゆえに,派手な音質,派手なメロディー,派手な演奏になっていて,オジサン4人のフォープレイが20歳は若返ったような感覚でPOPで煌びやかに響いている。非常にヴィヴィッドでフレッシュな仕上がりだと思う。

 セールス的制約や,音楽的な縛りとも完全に無縁のフュージョン。もう食うに困らないオジサン4人が若いもんに負けじと頑張っている。「一周回って」また作りたくなったフュージョンが超カッコイイ。
 フォープレイ持ち前の,品の良いインテリジェンス溢れるグルーヴが,徐々にワイルドになって「ライブ・バンド」化してきている。

 『』の成功の背景こそが,音楽を楽しむ余裕が生み出す「遊び心」と過去9作で積み上げてきた“フォープレイ・サウンド”への絶対的な自信の証しにあると思う。
 発想も表現もサラリと自由奔放。本当に今やりたい事を形にしている。リスナーは勘違いしてはいけない。『』は“フォープレイ・サウンド”をメンバー4人の懐の中に届けるためのアルバムである。リスナーの好みなどはほとんど考慮されていない。だから「遊べている」。

X-2 そう。真にフォープレイの音楽とはマンネリとは無縁である。彼ら4人は自分たちの“フォープレイ・サウンド”が好きで好きでたまらないのだ。だから多くの曲を作曲しては“フォープレイ・サウンド”のフォーマット上にかけることを喜びとしている。

 今回のフォープレイ批評をシリーズで書いてきたから発見できたことがある。フォープレイは実は毎回,バンド・サウンドを少しづつ変えてきている。でもいろいろと試した結果として,毎回,一番美味しい“フォープレイ・サウンド”に落ち着いている。
 「前作とほとんど変わらないけど,でもこの部分がちょっと違うよねっ」的な…。レビジョンアップを繰り返したフォープレイは『』で「バージョン3.0」になっている!?

 そんなフォープレイが『』で初めて“フォープレイ・サウンド”から離れて見せた。実験風景を初めて見せてくれた。“フォープレイ・サウンド”が完熟する一歩手前で“もぎ取って”見せた。おおっ。

 『』のリリース時点でフォープレイのオジサン4人は60歳。「もう60歳」って感覚か? でもどっこい『』のフォープレイは「まだ60歳」の感覚有り。
 人生はこれからなのだ。フォープレイの第三章もこれからなのだ。

  01. TURNABOUT
  02. CINNAMON SUGAR
  03. EASTERN SKY
  04. KID ZERO
  05. MY LOVE'S LEAVIN'
  06. SCREENPLAY
  07. TWILIGHT TOUCH
  08. BE MY LOVER
  09. SUNDAY MORNING

(ブルーバード/BLUEBIRD 2006年発売/BVCJ-31044)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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SPELLBOUNDSPELLBOUND
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木住野佳子

RETURN TO FOREVERRETURN TO FOREVER
チック・コリア

BRAINBRAIN
上原ひろみ

イン・ラインIN LINE
ビル・フリゼール

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