アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2019年12月

ゲイリー・バートン / アローン・アット・ラスト5

ALONE AT LAST-1 ゲイリー・バートンの“最高傑作”が『ALONE AT LAST』(以下『アローン・アット・ラスト』)である。

 『アローン・アット・ラスト』とは,LPのA面がモントルー・ジャズ・フェスティバルにおける圧巻のソロ・パーフォーマンス。B面がこちらも“マルチ鍵盤奏者”ゲイリー・バートンとしての圧巻の一人多重録音によるカップリング盤。

 最初は完全にモントルー・ジャズ・フェスティバルライブ録音にKOされた口。A面はライブ盤だと知らずに聴き始めて「いい演奏だな」と余韻に浸っていると,直後の割れんばかりの大喝采! 大袈裟でも何でもなく「えっ,ええ〜!」と,脳天はかち割られるは,腰を抜かしそうになるはの大衝撃! 何この音楽&何こんなジャズ

 B面も一人多重録音盤だと知らずに聴き始めて,ピアノオルガンの音色が聴こえてきて「あぁ,誰かとのデュエットなのか」と思ってしまうくらい,本職顔負けのゲイリー・バートンの「一人“鍵盤群”多重録音」に魅了されてしまった。そうして聴けば聴く程好きになってしまった。

 『アローン・アット・ラスト』は曲順が進む程に“アガル”1枚である。当初はキース・ジャレットの【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】が大好きで1曲目ばかり聴き,1曲目だけを聴くためのアルバムであったのだが,次第にライブ録音の3曲を続けて聴きたくなった。そうして4曲目以降も聴くようになり,オオラスの【CHENGA DE SAUDADE(NO MORE BLUES)】にシビレルようになっていった。

 ゲイリー・バートンのハイテクニックがアクロバティックだけど最高にクールなヴィブラフォン。今にもくずれそうな氷細工のごとき繊細な表現がおとぎの国の耽美的なヴィブラフォン
 どうしても室内楽的なヴィブラフォンの音色に引っ張られてしまうが,よく聴くと音数も多いしスイングしている。
 HOTな熱量で叩かれるCOOLなヴィブラフォンが最高だ! これぞジャズの醍醐味インプロヴィゼーション

 『アローン・アット・ラスト』には,当時のゲイリー・バートンの「ジャズ・ロック」志向も見え隠れしている。
 『アローン・アット・ラスト』におけるゲイリー・バートンの「温故知新」的なニュアンスの妙に「感動が次から次へと押し寄せて来る」秘訣が隠されていると思う。

ALONE AT LAST-2 とにかく『アローン・アット・ラスト』におけるゲイリー・バートンの面持ちは,チャーリー・パーカーマイルス・デイビスソニー・ロリンズジョン・コルトレーンなど一握りのジャズ・ジャイアンツしか放つことのなかったオーラを身にまとっている。

 ゲイリー・バートンは,そんじょそこらのジャズ・ジャイアンツとは格が違う。『アローン・アット・ラスト』での「決定的な名演」に酔わないジャズ・ファンなど一人もいない。

  01. MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE
  02. GREEN MOUNTAINS/ARISE, HER EYES
  03. THE SUNSET BELL
  04. HAND BAGS AND GLAD RAGS
  05. HULLO, BOLINAS
  06. GENERAL MOJO'S WELL LAID PLAN
  07. CHENGA DE SAUDADE (NO MORE BLUES)

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1971年発売/WPCR-27085)
(ライナーノーツ/後藤誠)

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ネイティブ・サン / アクア・マリン5

AQUA-MARINE-1 ジャズフュージョン・ファンにとって「ネイティブ・サン」とは「ジャズフュージョン」期の『NATIVE SON』と『SAVANNA HOT−LINE』の2枚であろう。
 管理人もその意見に全面的に同意する。学生時代には毎日のように『NATIVE SON』と『SAVANNA HOT−LINE』を聴いたものだった。

 ただし個人的には「ネイティブ・サン」と来れば,初期の「ジャズフュージョン」のイメージではなく,中期「トロピカル・フュージョン」をイメージする。
 全ては「ネイティブ・サン」のベスト盤『AQUA−MARINE』(以下『アクア・マリン』)の影響である。

 こうなったのには理由がある。過去にも書いたが上京のせいである。上京するにあたってレコードは持参できない。カセット・テープは持参して行ったが,次第にCDだけを聴く習慣が身に付いてしまった。
 そのCDもお金がないので,どれか1枚買うとしたらベスト盤を買う。

 渡辺香津美の『PERFECT RELEASE』しかり。高中正義の『TAKANAKA’S COCKTAIL』しかり。そして「ネイティブ・サン」の『AQUA−MARINE』しかり…。

 ただし「ネイティブ・サン」の『AQUA−MARINE』の欠点は『RESORT』『CARNIVAL(LIVE AT MONTREUX)』『GUMBO』『DAYBREAK』の4枚からのセレクションであって,肝心の『NATIVE SON』と『SAVANNA HOT−LINE』からは1曲も入っていないところ。

 中期「トロピカル・フュージョン」の「ネイティブ・サン」を知らなかった管理人。『アクア・マリン』は全曲が新曲。聴いて「あぁ懐かしい」の感情はなく,峰厚介サックスからはジャズのイメージが消えている。

 でもその代わりにグレッグ・リーベース・ラインに魅了されたし,本田竹曠キーボードが“楽園”していて,今までとはまるで違う“軟派な”「ネイティブ・サン」が,これはこれで大好きになっていった。

AQUA-MARINE-2 その後,お金に余裕が出来て,って言うか,お金があればジャズフュージョンにつぎ込んでいくようになったので,渡辺香津美高中正義のアルバムはCDで買い直してきた。
 ただし「ネイティブ・サン」については,ここ最近まで買い直すことはしなかった。もはや管理人にとっての「ネイティブ・サン」とは『アクア・マリン』の「ネイティブ・サン」になったから!

 ズバリ『アクア・マリン』とは,ザ・スクェアの『R・E・S・O・R・T』以前の『リゾート』ミュージック!
 初期「ネイティブ・サン」が成し得なかった,よりソフトケイテッドされたリラックス・ムードでの黄金サウンド!

 ジャズのプライドを捨てフュージョンという実を得た,本田竹曠峰厚介の“真のジャズメン・スピリッツ”が最高に「トロピカル」なのである。

  01. Bay Street Talkin'
  02. Caribbean Manatee
  03. Fantasia Carioca
  04. Freeport To Nassau
  05. Calipso Street
  06. Evolution Of The Nights
  07. Longing
  08. Toward Summer

(ポリドール/POLYDOR 1986年発売/H32P-20071)

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ゲイリー・バートン / ゲイリー・バートン&キース・ジャレット4

GARY BURTON & KEITH JARRETT-1 ゲイリー・バートンキース・ジャレット名義の『GARY BURTON & KEITH JARRETT』(以下『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』)が1971年。
 チック・コリアゲイリー・バートン名義の『クリスタル・サイレンス』が1973年。

 1973年の時点では名前がゲイリー・バートンより先に出ているチック・コリアの方がキース・ジャレットより格上であった。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』と『クリスタル・サイレンス』を聴き比べてみるとチック・コリア優位は明白である。

 そう。キース・ジャレット命の管理人をして,若き日のキース・ジャレットには現在でも愛聴に値する演奏は多くはない。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』もそれなりの(普通の出来の)演奏集である。

 『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』のレコーディングは,実はゲイリー・バートンキース・ジャレットデュオではなく,ヴィブラフォンゲイリー・バートンギターサム・ブラウンベーススティーヴ・スワロードラムビル・グッドウィンから成るゲイリー・バートン・グループにゲスト・プレイヤーとしてキース・ジャレットが一人参加した「ジャズ・ロック」である。

 『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』レコーディング当時のキース・ジャレットの活動は,かの電化マイルスのバンドに在籍しつつ,チャーリー・ヘイデンポール・モチアンと組んだピアノ・トリオで,ロックやカントリーやアメリカン・ポップスを上手に消化した「ジャズ・ロック」期に当たる。
 そう。目指す方向性はゲイリー・バートンキース・ジャレットは“同士”であった。

 つまりゲイリー・バートンとしては,既に出来上がっていたバンド・サウンドに意気投合できるピアニストを迎えて音を分厚くしたかっただけ,マイルス・バンドのキース・ジャレットのお手並みを拝見してみたかっただけ,だったように思えてならない。気軽で興味本位が共演の理由。

 …が,しかし…。ここがゲイリー・バートンの凄さなのだと思うが,一度の音合わせをしただけで,まだ駆け出しのキース・ジャレットの才能を見抜いてしまった。
 特にコンポーザーとしてのキース・ジャレットの才能を見定めてしまった。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』で全5曲中4曲もキース・ジャレットオリジナルを採用している。ゲイリー・バートン自身も名曲を数多く書き上げてきたソングライターだというのに…。

 そう。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』の真実とは『ゲイリー・バートン・フィーチャリング・キース・ジャレット』である。ゲイリー・バートンキース・ジャレットに「花を持たせた」アルバムなのである。その後のキース・ジャレットの“花道街道”を祝福するかのように…。

GARY BURTON & KEITH JARRETT-2 ゲイリー・バートンが託したキース・ジャレットへの「裁量権」は,音楽的に大きな成功を収めている。
 その1つは,キース・ジャレットギタリストと共演したアルバムはマイルス・バンド以外では『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』のみであるが,案外相性は悪くはないという証明してくれている。サム・ブラウンパット・メセニーであったなら,もっとギタリストとの共演アルバムが増えたであろうに…。

 もう1つは【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の誕生である。「モントルー・ジャズ・フェスティバル」での超名演アローン・アット・ラスト』はキース・ジャレットとの共演なしに【MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE】の演奏なしにはグラミーは受賞できなかった。

 ゲイリー・バートンについて語るなら,パット・メセニーチック・コリア小曽根真との共演歴について語らないわけにはいかないが,個人的にはキース・ジャレットとの出会いについても大々的に語られるべきだと思っている。
 そうなれば,その話の結論はこうであろう。ゲイリー・バートンの“音楽眼”が最高に素晴らしい! 

 『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットの音楽とは,ジャズとは言ってもカントリーでフォークでゴスペルチックでアーシーなノリで突っ走るマイルス・バンドの鍵盤奏者にふさわしい音楽の演奏者であった。
 代名詞となるソロ・ピアノはまだだったし,アメリカン・カルテットヨーロピアン・カルテットスタンダーズ・トリオも当然手付かず。『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』以前のキース・ジャレットとは,ゲイリー・バートンよりもチック・コリアよりも格下な若手有望株の1人にすぎなかったという事実。

 管理人は思う。ゲイリー・バートンは“未完成の”キース・ジャレットの中に,一体何を見い出したのだろう。直接,本人に尋ねてみたい…。

  01. GROW YOUR OWN
  02. MOONCHILD/IN YOUR QUIET PLACE
  03. COMO EN VIETNAM
  04. FORTUNE SMILES
  05. THE RAVEN SPEAKS

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1971年発売/AMCY-1124)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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ゲイリー・バートン / 鼓動5

THROB-1 キース・ジャレット命の管理人。全キース・ジャレット・ファンにとって「完全コレクション」への鬼門の1枚は長らく『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』であった。
 世界最高のジャズメン,と言うより,世界最高のミュージシャン=キース・ジャレットのアルバムだと言うのに『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』がなぜCD化されないのか?

 (途中経過は省略)『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』が1994年についにCD化された。しかしキース・ジャレットのラインではなくゲイリー・バートン・サイドとしてのCD化である。
 何と!『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』単体ではなく,ゲイリー・バートンの『THROB』(以下『鼓動』)との「2in1」でのリリース。

 まぁ,不満はあるっちゃあるが,まずは待望の『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』のCD化が実現しただけでも大喜び! そしてこれが重要なのだが,オマケ程度に考えていたカップリングの『鼓動』の出来が素晴らしい。
 ここだけの話『ゲイリー・バートン & キース・ジャレット』が星4つであるならば『鼓動』は星6つ〜。

 『鼓動』が話題になっていないとはけしからん。ゲイリー・バートンの一番美味しい音楽はラリー・コリエルとではなくアトランティック移籍後に吹き込んだ「ジャズ・ロック」にあると思っている。

 ジャズってアメリカの黒人の音楽とはアフリカの音楽だと思われているが,最近優勢なジャズとは実は白人のジャズである。その始まりがちょうどゲイリー・バートンアトランティックに吹き込んだ,ポップス,ロック,クラシック,カントリー&ウェスタン,フォークとの融合の時代。ここにエレクトリックが入ってきた時代。それなのにミニマルっぽい。超面白いジャズからフュージョンへの橋渡しの時代。

 ジャズの中で細分化される全てのジャンルにマイルス・デイビスが関わっており,フュージョンにおいても『ビッチェズ・ブリュー』の評価が高いが,実はゲイリー・バートンの『鼓動』もフュージョンへ移行していくジャズ・シーンを語る上では欠かせない。
 もはやジャズとはブルースをやらないのが定番となり始めた,その走りの1枚が『鼓動』であって,聴いていてメチャメチャ面白い。

THROB-2 まっ,今聴くと「時代の名盤」の匂いが漂っているので評価は低いが,若きゲイリー・バートンのナイーブな感性と大胆な冒険スピリットが混然一体となって陶酔の世界へと誘ってくれる。

 ゲイリー・バートンのルーツとしてのカントリー・ロックとかフォークとか電化ジャズとかが『鼓動』で完璧に融合している。
 ポップでスピリチュアルな「ジャズ・ロック」のハイブリット化が『鼓動』で完成されている。

 ジャズとして,ロックとして,フュージョンとして聴いても実に面白い。『鼓動』の「ジャズ・ロック」がレトロっぽいのに五感をフルに刺激してくる。
 ゲイリー・バートンの全ディスコグラフィー中,一番エキサイティングなアルバムが『鼓動』だと思っている。あのキース・ジャレット以上に先進的なゲイリー・バートンの「ジャズ・ロック」が聴けば聴くほど面白い!

  01. HENNIGER FLATS
  02. TURN OF THE CENTURY
  03. CHICKENS
  04. ARISE, HER EYES
  05. PRIME TIME
  06. THROB
  07. DOIN THE PIG
  08. TRIPLE PORTRAIT
  09. SOME ECHOES

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1969年発売/AMCY-1124)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)

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ネイティブ・サン / サヴァンナ・ホット・ライン5

SAVANNA HOT-LINE-1 アコースティックジャズからエレクトリックジャズへの変化を体験してきた本田竹曠峰厚介村上寛の面々が,フュージョンという新しいジャズにアプローチすると『SAVANNA HOT−LINE』(以下『サヴァンナ・ホット・ライン』)のように仕上がるのだと思う。

 『サヴァンナ・ホット・ライン』のテンションは相変わらずジャズ・ベースである。ただし『サヴァンナ・ホット・ライン』がジャズではなくフュージョンとして聴こえるのは,フュージョン・チックなPOPなテーマをアドリブのネタとしてではなく“本田竹曠のHAPPYな世界観”としてバンド・メンバー全員が寄せてきている。

 そう。『サヴァンナ・ホット・ライン』はジャズ・ベースなのに幸福感で満ちている。本田竹曠キーボードが構図を作り,峰厚介サックスが色彩を付ける。
 両者ともにすでに名の売れたジャズメンとしての名声を得てはいたが「ネイティブ・サン」での活動を通して,表現の幅を広げ奥行きを深めているように思う。

 「ネイティブ・サン」で本田竹曠が追い求めていた世界観が,渡辺貞夫ナベサダフュージョンとクロスする。
 事実「ネイティブ・サン」は本田竹曠渡辺貞夫グループからの独立後,時間を置かずに結成されたフュージョン・バンド。
 渡辺貞夫がブラジルやアフリカ方面であれば,本田竹曠はもっと広範囲をカバーしておりトロピカルなワールド・ミュージック方面へと音楽を推進していく。 

SAVANNA HOT-LINE-2 峰厚介渡辺貞夫ではなくウェイン・ショーターに近い部分の表現が「ネイティブ・サン」がナベサダフュージョンと大きく区別される特徴だと思う。
 それ以外は兄弟バンドのように思える。楽器は異なれど渡辺貞夫本田竹曠エレクトリックジャズで共に感じ,共に考え,共に経験してきた音楽が「8ビートや16ビートの新しいジャズ」という同じフィルターを通ってアウトプットされている。

 『サヴァンナ・ホット・ライン』の全6曲は名曲ばかりである。1曲1曲にドラマティックなストーリー性がある。『サヴァンナ・ホット・ライン』を聴く度に「ネイティブ・サン」に訴求されてしまう。

  01. ANIMAL MARKET
  02. SEXY LADY
  03. SAVANNA HOT-LINE
  04. IN SEARCH OF BEAUTY
  05. AFRICAN FANTASY
  06. FAREWELL, MY LOVE

(ビクター/JVC 1979年発売/VICJ-77017)
(☆UHQCD仕様)
(ライナーノーツ/松下佳男,金澤寿和)

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ゲイリー・バートン / 葬送4

A GENUINE TONE FUNERAL-1 『A GENUINE TONE FUNERAL』(以下『葬送』)は,作・演出ともにカーラ・ブレイのアルバムである。
 『葬送』におけるゲイリー・バートンの役割とは,ただカーラ・ブレイを「世に売り出す」お手伝いをした。ただそれだけのことである。

 よって『葬送』は「ジャズ・ヴィブラフォン奏者」ゲイリー・バートンの音楽性とは切り離して評価されるべきでアルバムである。『葬送』の中に「ジャズ・ロック・スター」なゲイリー・バートンの音楽世界は1mmも展開されていないと思う。

 事実『葬送』の中で聴き取れる,ヴィブラフォンゲイリー・バートンギターラリー・コリエルベーススティーヴ・スワロードラムロンサム・ドラゴンによるレギュラー・カルテットの存在感は極めて薄い。

 ゲイリー・バートンヴィブラフォンソロも,ラリー・コリエルギターソロも「ジャズ・ロック」寄りではあるのだが『ダスター』の時のように跳ねていないし破綻していない。明らかに前衛などではない。
 その理由こそがカーラ・ブレイの書き上げた「構築美」の“縛り”にある。例えば,新宿にある「モード学園コクーンタワー」のような,今までにない斬新なデザインの建築物を立てている雰囲気がある。

 そう。ドラマチックでカラフルで美メロが続く「組曲」『葬送』のアルバム名を耳にして,まず思い浮かべるのは,カーラ・ブレイピアノであり,マイク・マントラートランペットであり,スティーヴ・レイシーソプラノサックスであり,ガトー・バルビエリテナーサックスであり,ジミー・ネッパートロンボーンであり,ハワード・ジョンソンチューバである。
 こちらのゲスト陣の演奏の方が,ゲイリー・バートンラリー・コリエルソロ以上に,よっぽど跳びはね破綻を聴かせてくれている。

 完全に「裏方稼業」なゲイリー・バートン・カルテットであるが,こんな異様な叙事詩的な音世界は,若者たちに支持されているゲイリー・バートン・カルテットだからこそ,そしてジャズの変革を目指していたゲイリー・バートン・カルテットでなければ発表できなかったはず。
 ゲイリー・バートンの方もカーラ・ブレイの斬新な「持ち込み企画」は「渡りに船」。WIN−WINの関係性が産んだ“時代の名盤”の誕生であった。

A GENUINE TONE FUNERAL-2 管理人は『葬送』の「死者との会話」的なイメージが嫌いだ。金管の混沌としたハーモニーがおどろおどろしい。それで『葬送』はジャズとしてではなくサウンドトラックとして楽しんでいる。『葬送』=エンターテインメント・コメディとして捉えている。

 『葬送』のメイン楽器は,実際には鳴っているはずのない“ドラ”であり“爆竹”である。そう。『葬送』のアルバム・ジャケットがイメージを指し示す,中国とかインドとか香港とかが舞台の東洋映画のアレなのである。そう言えば伊丹十三の「お葬式」という映画もあったよなぁ。

 それにしても『葬送』を初めて聴いたのは25歳ぐらいの時でして,その時は「お葬式」とは悲しいものであるはずなのに,明るく開けっぴろげな音楽性に疑問を抱いていたはずなのに,51歳になって「お葬式」に何回も実際に出席した経験を通して『葬送』のような,最初は泣いても最後は笑い合える「お葬式」が理想だよなぁ,と思ってしまった自分に成長と老いを感じてしまいました。

  01. The Opening〜Interlude:Shovels〜The Survivors〜Grave Train
  02. Death Rolls
  03. Morning (Part 1)
  04. Interlude:Lament〜Intermission Music
  05. Silent Spring
  06. Fanfare〜Mother of the Dead Man
  07. Some Dirge
  08. Morning (Part 2)
  09. The New Funeral March
  10. The New National Anthem〜The Survivors

(RCA/RCA 1968年発売/BVCJ-7330)
(ライナーノーツ/岩浪洋三)

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ネイティブ・サン / NATIVE SON4

NATIVE SON-1 「ネイティブ・サン」の音楽とはジャズではないしフュージョンでもない。正確には日本で唯一のナベサダフュージョンの後継バンドである。

 「ネイティブ・サン」の基本はジャズ・バンドである。特にフロントの峰厚介の演奏が完全にジャズサックスのまんまである。
 「ネイティブ・サン」の結成は70年代のフュージョン・ブームと無関係ではない。勿論,本田竹曠峰厚介村上寛の主要3メンバーにはフュージョン・ブームに乗ったという感覚はないことだろう。純粋にフュージョンという新しいジャズを演奏してみたかっただけなのだと思う。

 「ネイティブ・サン」にとっては,ジャズを経験したことが,有利でもあり不利でもあった。演奏中,どうしてもアドリブに突入してしまう。
 何かの雑誌で野呂一生カシオペアについて「カシオペアアドリブが苦手だったから,仕方なくアドリブをしないアンサンブル・バンドを志向した」と語った記事を読んだ記憶がある。

 そう。アドリブを経験したことがないカシオペアアドリブで世界を謳歌してきた「ネイティブ・サン」が同じようなフュージョンを演奏できるわけがない。そこで第二問が「ネイティブ・サン」の先を走ってきた渡辺貞夫である。

 「ネイティブ・サン」の主要3メンバーにとって,ナベサダフュージョンを経験したことが,有利でもあり不利でもあった。
 やっぱり渡辺貞夫はカッコイイのだ。ナベサダフュージョンはカッコイイのだ。どうしてもナベサダフュージョンが基本となり,そこを出発点としてアレンジしてしまうのだ。

 かくしてリリースされた「ネイティブ・サン」の1st『NATIVE SON』。『NATIVE SON』のハイライトは,野性味あるフュージョン・サウンドからこぼれ出してくるナベサダ譲りの「ネイティブ・サン」一流のジャズ・スピリッツ。

 ジャズサックスを吹き上げる峰厚介にとどまらず,本田竹曠にしてもエレピを弾いてはいるものの,これって絶対ジャズ・ピアノでしょう。
 完成された甘いテーマの狭間から聴こえてくるのはご機嫌なノリであり,エレガントなナベサダフュージョンであり,ハードな大人の男のロマンティシズムであろう。

NATIVE SON-2 しかし,大抵の読者の皆さんはこの論説に同意できないかもしれない。多くの人にとって『NATIVE SON』とは【SUPER SAFARI】を聴くことと同じ意味を持っている。
 『NATIVE SON』の全8曲中【SUPER SAFARI】の1曲だけがメジャー・フュージョン。一度聴いたら忘れられないフレーズ,そしてインパクトの強さがある。稀代のジャズメン=本田竹曠が「ネイティブ・サン」でフュージョンをやった意味があるというもの。大出元信ギターが常に2番手に構えて光っているのがカッコイイ。

 しかし『NATIVE SON』から発せられる熱量の強さは【SUPER SAFARI】以外の7トラックから放たれているという事実。渡辺貞夫が本当に演奏したかったフュージョンとは,実は「ネイティブ・サン」の音楽の中にあるのかもしれない。

  01. BUMP CRUSING
  02. HEAT ZONE
  03. BREEZIN' & DREAMIN'
  04. WIND SURFING
  05. WHISPERING EYES
  06. TWILIGHT MIST
  07. SUPER SAFARI
  08. WHISPERING EYES (REPRISE)

(ビクター/JVC 1978年発売/VICJ-77016)
(☆UHQCD仕様)
(ライナーノーツ/松下佳男,金澤寿和)

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ゲイリー・バートン / ダスター4

DUSTER-1 『DUSTER』(以下『ダスター』)を聴いてイメージするのは,いつもの「ジャズ・ヴィブラフォン奏者」ゲイリー・バートンではない。

 そう。巷で語られている通りデビュー当時のゲイリー・バートンの音楽性は,ヒッピーたちに熱狂的に支持されていたチャールス・ロイドのライン上にある「ジャズ・ロック・スター」なゲイリー・バートンが『ダスター』にいる。

 ただし,その後のゲイリー・バートンのディスコグラフィーを追いかけていくと『ダスター』だけが外れているわけではない。『ダスター』も確実にゲイリー・バートンジャズ・ラインで繋がっている。

 管理人が「ジャズ・ロック・スター」なゲイリー・バートンに違和感を覚えないのは“ジャズ・ピアニスト”ばりにゲイリー・バートンヴァイヴの音階を弾いているから!
 もっと言えば,あんなにもチック・コリアとシンクロできる理由はここにあったのかっ,と1人ニヤツイテみたりして…。

 ここでゲイリー・バートンの「ジャズ・ヴィブラフォン奏者」としての特徴を記すと,ゲイリー・バートンヴァイヴという楽器を打楽器としてではなくメロディー楽器として扱っている。
 例えば,ミルト・ジャクソンのようなタイプは,ヴィブラフォンという楽器以前に「タメ」と「ノリ」で聴かせようとする。ヴィブラフォンを打楽器の延長線上で演奏している。

 しかし,ゲイリー・バートンと来れば「4本マレット奏法」である。4つのマレットを同時に音板に叩きおろすことによりヴィブラフォンピアノのような和音楽器として捉えている。要はピアニスト・サイドからのアプローチ!
 これが「ジャズ・ヴィブラフォン奏者」ゲイリー・バートンの「栄光の架け橋」なのだと思っている。

 そんなピアニスト寄りのヴィブラフォン奏者=ゲイリー・バートンジャズ・ロックに魂を売った『ダスター』であるが,ベーススティーヴ・スワロウドラムロイ・ヘインズがしっかりとジャズのビートをキープしているおかげで「毒蛾」の入った変わり種ジャズとしても十分に楽しめる。

 スティーヴ・スワロウベースは今聴くと,ウェザー・リポート在籍時のミロスラフ・ヴィトウスっぽいと思うし,ロイ・ヘインズドラミングは今聴くと,チック・コリアの『ナウ・ヒー・ソングス・ナウ・ヒー・ソブス』っぽい。

DUSTER-2 要するに『ダスター』の真実とは,ゲイリー・バートンの“非ジャズ的な”ヴィブラフォンラリー・コリエルの“エッジの立った”ギタースティーヴ・スワロウロイ・ヘインズの最新型4ビートとハイブリットされた結果のジャズ・ロックという構図である。

 『ダスター』のハイライトは,8ビートの大メジャーなPOPチューンの【モジョ将軍の戦略】とフィードバック奏法によるロック・チューンの【ワン・トゥ・1−2−3−4】の2曲にある。この2曲が連続して流れる11分間だけは変革期を迎えたジャズの新しい息吹を感じる。
 新しいジャズの形というビジョンを思い描いていた4人の若手ミュージシャンのエネルギーと勢いが,時代に関係なく今でも聴く者に「新しさ」をもたらしている。この2曲だけは今でも大大好き〜!

 先に書いた『ダスター』の非異色論は,残る6曲の平凡なジャズの印象から来ているが,根底に流れるスピリッツはロックのフィーリングそのもの。
 ラリー・コリエルの最良の部分を引き出しつつ,本気でロック方面で行くのならドラマートニー・ウイリアムスという選択肢もあったのだろうに,王道のロイ・ヘインズを選んだゲイリー・バートンの高度な受容性が,後の「なんとなく,クリスタル」〜。

  01. Ballet
  02. Sweet Rain
  03. Portsmouth Figurations
  04. General Mojo's Well Laid Plan
  05. One, Two, 1-2-3-4
  06. Sing Me Softly of the Blues
  07. Liturgy
  08. Response

(RCA/RCA 1967年発売/BVCJ-37359)
(ライナーノーツ/村井康司)

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クリティックが選ぶヴィーナス名曲名演 BEST10 ピアノ・トリオ編-2

 今日のピアノ・トリオ・ブームの立役者,ヴィーナスレコードの100枚を超えるカタログ(2002年8月現在)から,ピアノ・トリオによる極めつけの名曲名演のセレクション。
 「スイングジャーナル」誌,2002年9月号掲載「クリティックが選ぶヴィーナス名曲名演 BEST10 ピアノ・トリオ編」。
 今回は6〜10位の発表です。

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ミラノ,パリ,ニューヨーク★10.アフタヌーン・イン・パリ
ミラノ,パリ,ニューヨーク
サー・ローランド・ハナ

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忍びよる恋(紙ジャケット仕様)★9.危険な関係のブルース
忍びよる恋
スティーブ・キューン

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夜のブルース(紙ジャケット仕様)★8.夜のブルース
夜のブルース
ニューヨーク・トリオ

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キス・オブ・ファイヤー★7.リカード・ボサノバ
キス・オブ・ファイヤー
ハロルド・メイバーン

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恋のダンサー★6.オーレ・テキサス
恋のダンサー
スタンリー・カウエル

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 ハロルド・メイバーンの『キス・オブ・ファイヤー』がランクイン

 ハロルド・メイバーンと来れば矢野沙織であり,エリック・アレキサンダーである。管理人の大好きなサックス・プレイヤーの傍らでピアノを弾いていたのでハロルド・メイバーンが好きになり,リーダー・アルバムを買うようにもなった。

 『キス・オブ・ファイヤー』には思い入れがある。アルバム毎にじわじわとハロルド・メイバーンピアノが心の琴線に迫ってくるのを感じる中『キス・オブ・ファイヤー』でタコメーターが振り切れた。

 『キス・オブ・ファイヤー』でソロ・アーティストとしてのハロルド・メイバーンピアノが好きになった。この人の「洗練された黒いノリ」が本当に素晴らしい。
 改めてハロルド・メイバーンの参加アルバムを聴き直す。サイドメンとして参加したのに,何なら矢野沙織よりエリック・アレキサンダーよりも目立っていたではなかろうか?

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