アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2020年01月

片山 広明 / キャトル5

QUATRE-1 片山広明テナーサックスは,深読みとか安易な決めつけを許さない奥の深さがあって「片山広明ってこんな感じだよね」と思っていると,あっさり裏切られたりする。
 ピアノレス・バンドを率いてきた片山広明が,初めてピアニストを擁した「キャトル・バンド」がそうであった。

 「キャトル・バンド」とは『QUATRE』(以下『キャトル』)の録音のために結成されたツアー・バンドだったが『キャトル』で片山広明が指名した板橋文夫のためのバンドである。
 「キャトル・バンド」での片山広明は,情念のテナー,豪快なテナーというカテゴライズを,ひょいと身軽に踏み越えている。板橋文夫さまさまである。

 板橋文夫ジャズ・ピアノ片山広明の圧倒的なパワーを受け止め,対応し,ひとつのものとして作り上げていく。
 メロディアスな部分は板橋文夫が受け持ち,片山広明アドリブに専念している。メロディーを前半,中盤,後半と繰り返す場面では,繰り返しの中でも表情を全部変えてしまうという,ジャズの素晴らしさを感じさせる名演集だと思う。

 そう。『キャトル』こそが,管理人の愛聴するフリージャズの決定盤である。力のあるメロディーと自由な即興の素晴らしいバランス。決してアンサンブルを壊すことのない「一癖も二癖もある個性あふれるアドリブ・ショー」の決定盤なのである。

 『キャトル』のハイライトは,何と!1曲目に持ってきた名バラードの【FOR YOU】である。
 板橋文夫の美しいピアノのイントロだけで全身が持って行かれるが,そこに太く暖かく鋭いテナーサックスピアノのメロディーを上書きしていくと,ため息が漏れてしまう。
 静かに盛り上がる片山広明テナーサックスが次第に熱を帯びて絶叫し始める。井野信義ベースは殆どラインを刻まない。アルコ弾きで縦横無尽にフリーキーで美しい低音を響かせている。咆哮するテナーの周りを星雲のように取り囲むベースの向こうで,ピアノがキラキラと銀河のように鳴っている。

 いや〜,美しい。聴いているだけなのに,無意識のうちに片山広明テナーサックスに合わせて絶唱している管理人に気付くのが常!
 片山広明は【FOR YOU】の美メロを捉え直して歌い上げている。情感に満ち満ちた究極のバラード演奏にアッパレ!

QUATRE-2 続くシャンソンの名曲【パリの空の下】。お洒落の雰囲気などカケラもない。片山広明が“軽くひっかけたかのような”場末の小汚く薄暗キャバレー・テナーが大絶叫!
 こんな片山広明が大好きだ。ジャンルに拘泥しないフリージャズ・サウンドでドラマを表現している。片山広明のブルース魂に一人酔いしれてしまう。板橋文夫効果が効きまくっている。

 3曲目の【MARCH】が大好き。4曲目の【QUATRE】も大好き…。解説するスペースがないので5−8曲はまとめて記すが,豪放で男臭くて人懐こく哀愁を併せ持つ,で根本はラジカル…。

 なんだかんだで『キャトル』は結構な回数聴いているのだが,聴く度に,ああ片山さんはいいなあ,と思う。美しいということは形式ではないんだ,ということが良く分かる。
 『キャトル』とはそんなアルバムである。

  01. for you
  02. sous le ciel de paris
  03. march
  04. quatre
  05. hallelujah
  06. por una cabeza
  07. improvisation
  08. nairobi star (dedicated to ishikawa akira)

(スタジオ・ウィー/STUDIO WEE 2002年発売/SW-207)
(紙ジャケット仕様)

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ゲイリー・バートン / ジェネレーションズ5

GENERATIONS-1 ゲイリー・バートン小曽根真,そうして「新星」ジュリアン・レジ
 『GENERATIONS』(以下『ジェネレーションズ』)とは,そんな三世代のスター揃い踏みの意味なのであろう。仮にそうでないとしても『ジェネレーションズ』の音造りは3者が均等にリーダーとして機能している。だから『ジェネレーションズ』で良い。

 一般的にヴィヴラフォンピアノギターって,音がぶつかり合って一緒に演奏するのは難しいと思われている。でも『ジェネレーションズ』の名手3人にとっては“おちゃのこさいさい”。すぐにハーモニー&いつでもアンサンブル!
 その意味でジュリアン・レジは凄い。というか個人的には,その意味でだけ,凄い。ジュリアン・レジは過大評価されている。本意人がかわいそうである。

 …で『ジェネレーションズ批評となると,どうしても「ヴィヴラフォンピアノギター」の超一流品「ゲイリー・バートンチック・コリアパット・メセニー」の『ライク・マインズ』と比較してしまうのだが『ライク・マインズ』が“原色キラキラ”ならば『ジェネレーションズ』は“淡いセピア色”である。

 そう。『ジェネレーションズ』を聴いていると,あの良い時代の音がよみがえってくる感じで胸がいっぱいになってしまう。特にゲイリー・バートンヴィヴラフォンが夢見るように美しい。

 「誰とでも最良の音で合わせられる」ことがゲイリー・バートンの凄さなのだが,こと『ジェネレーションズ』では,意識して音を合わせにいかなくてもよい小曽根真ジュリアン・レジとの共演で大いにリラックスして「自分のヴィヴラフォンの世界」に没入している。
 こんなにも“オレオレな”ゲイリー・バートンは久々だし,ここまで前に出るのは珍しい。

GENERATIONS-2 そんなゲイリー・バートンの“オレオレ”の理由こそ「小曽根真 THE TRIO」の存在である。
 いや〜,気持ち良い。伴奏役に回った「小曽根真 THE TRIO」が最強である。とにかく「軽いのに重い」のだ。存在感が薄いような全体のサポート役ながら,絶対になくてはならない重要なポジションを占めている。

 これはゲイリー・バートンさん。ジュリアン・レジの方は「高額な移籍金」でビッグ・クラブへ手放すことがあるとしても,小曽根真だけは「契約の延長に次ぐ延長」で生涯手放すことはしないでしょうねっ。

 ゲイリー・バートンにとっては,レギュラーが小曽根真であり,スペシャルがチック・コリアなのである。

  01. FIRST IMPRESSION
  02. EARLY
  03. GORGEOUS
  04. WHEATLAND
  05. TAKE ANOTHER LOOK
  06. SYNDROME
  07. TEST OF TIME
  08. THE TITLE WILL FELLOW
  09. LADIES IN MERCEDES
  10. HEROES SIN NOMBRE

(コンコード/CONCORD 2004年発売/VICJ-61174)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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小曽根 真 FEATURING NO NAME HORSES / ROAD5

ROAD-1 J−ジャズ界のサラブレットばかりが集まった,スーパー・ビッグ・バンドノー・ネーム・ホーセズは1stの録音時からすでに完璧に出来上がっていた。

 あの『NO NAME HORSES』から10年。2枚目『』以降は曲の良さとアレンジの良さで勝負するビッグ・バンドへとモデル・チェンジし,小曽根真の個性がノー・ネーム・ホーセズの個性に反映されるようになったと思う。

 そんなノー・ネーム・ホーセズが10周年記念として“ビッグ・バンド交響詩”なる新スタイルで演奏したのが『ROAD』である。

ROAD-2 『ROAD』の制作には,知らぬ間にクラシック界でも有名になってしまった小曽根真の音楽観が顕著に表現されている。メンバーのソロもふんだんにフィーチャーされて進行する「組曲」にはクラシックの響きが存分に感じられる。

 しかし,どこをどう切り取っても『ROAD』からは「クラシック風」しか飛び出して来ない。『ROAD』から飛び出してくるのは紛れもなくジャズビッグ・バンド

 ゆったりしたリズムで朗々としたメロディーが紡がれるかと思ったら,一転してスピーディーでスイング感あふれる展開にチェンジしたり,またその逆も。スリリングで先が読めないところは,その構成力の鋭さとツワモノたちの隙のない演奏力の成せる技なのだろう。

ROAD-1 【ROAD】も【RHAPSODY IN BLUE】も30分に及ぶ大曲ながら,創造豊かなアレンジと多彩なサウンドが聴く者の耳を惹き付けて離さない。何度聴いてもグッと来る。『ROAD』の評価が定まるには5年くらいは聴き込みに時間がかかる。

 そう。『ROAD』は小曽根真の全アルバムの中でも“屈指の名演”として指名されることであろう。
 『ROAD』にはビッグ・バンドの,そしてノー・ネーム・ホーセズの「無限の可能性」が宿っている。

  01. Big Band Symphonic Poem "ROAD"
    . Birth of a Band
    . A Miracle Fades Away
    . Embracement
    . Doubts
    . Endlwss Battle
    . "Road" to Freedom
  02. Rhapsody in Blue

(ヴァーヴ/VERVE 2014年発売/UCCJ-2118)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/小曽根真,クインシー・ジョーンズ)

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ゲイリー・バートン・ウィズ・チック・コリア/パット・メセニー/ロイ・ヘインズ/デイヴ・ホランド / ライク・マインズ5

LIKE MINDS-1 管理人がパット・メセニー・フリークだからなのだろう。オールスター・セッションの『LIKE MINDS』(以下『ライク・マインズ』)をして,これぞ,パット・メセニーを聴くためのアルバムだと感じてしまう。

 勿論,リーダーであるゲイリー・バートンヴィヴラフォンが目立っている。いいや,このレジェンド5人組の中でも最高位はチック・コリアである。チック・コリアのあの個性的なピアノが鳴り響いている。
 フロントの黄金のトライアングルを向こうに回して,老練なデイヴ・ホランドベースがいい仕事をしているし,ロイ・ヘインズドラミングがただただ素晴らしい。『ライク・マインズ』がここまでエキサイティングしているのは多分にロイ・ヘインズのおかげである。

 でもそれでも『ライク・マインズ』を聴いているとパット・メセニーギターだけが突出して聴こえてしまう。
 ヴィヴラフォンピアノベースドラムが息の合ったインタープレイを繰り広げている音場にギターが加わった瞬間,他の4つの楽器のボリュームが下がる感覚がある。

 管理人は考えた。パット・メセニーギターばかりが目立ってしまう『ライク・マインズ』の音造りの失敗は,全員が主役を張れる「ビッグネームあるある」にある。

 ゲイリー・バートンチック・コリアは「伝統芸能」デュオパット・メセニーゲイリー・バートン・バンド出身者。チック・コリアデイヴ・ホランドマイルス・デイビスのバンドの同僚にして「サークル」の結成メンバー。ロイ・ヘインズチック・コリアピアノ・トリオのメンバー。デイヴ・ホランドロイ・ヘインズパット・メセニーギター・トリオのメンバー。

 聴けば『ライク・マインズ』の10トラック中6トラックがファースト・テイクで残りの4トラックもセカンド・テイクで録り終えたそうだ。これだけ共演を重ねた相手ばかりなのだから「阿吽の呼吸」で分かり合えるのだろう。和気あいあいと楽しい雰囲気でレコーディングが進行していった様子が想像できる。

 しかし,そんな中でも“世界一の音楽バカ”パット・メセニーだけはいつも通りの真剣勝負。共演者を知り尽くし,楽曲を知り尽くして,自分自身が今できる最高のパフォーマンスを披露する。
 それでこそ管理人が愛するパット・メセニーであり,そんなメセニーゲイリー・バートンデイヴ・ホランドロイ・ヘインズも愛している。

 チック・コリアはどうなのだろう? 過去においても『ライク・マインズ』に至るまでチック・コリアパット・メセニーの共演歴はない。そして『ライク・マインズ』以降においても2人の共演歴はない。チック・コリアは相変わらずフランク・ギャンバレばかりを重用している。
 『ライク・マインズ』を聴く限りチック・コリアパット・メセニーの相性は悪くないと思うのですが,そこは大人の事情なのでしょうか?

LIKE MINDS-2 さて,パット・メセニーギターが際立つ『ライク・マインズ』。ではパット・メセニー以外の4人の演奏が凡庸なのかというとそんなことはない。
 ヴィヴラフォンは他の誰でもなくゲイリー・バートンヴィヴラフォンだし,ピアノは他の誰でもなくチック・コリアピアノだし,ベースは他の誰でもなくデイヴ・ホランドベースだし,ドラムは他の誰でもなくロイ・ヘインズドラム

 『ライク・マインズ』を聴いて思うこと。パット・メセニーの後ろで鳴っている4人の音が超一流であるということ。超一流のジャズメンとは自分の音を持っているということ。『ライク・マインズ』はとってもいいジャズ・アルバムです。

  01. QUESTION AND ANSWER
  02. ELUCIDATION
  03. WINDOWS
  04. FUTURES
  05. LIKE MINDS
  06. COUNTRY ROADS
  07. TEARS OF RAIN
  08. SOON
  09. FOR A THOUSAND YEARS
  10. STRAIGHT UP AND DOWN

(コンコード/CONCORD 1998年発売/MVCL-24011)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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SOURCE / SOURCE5

SOURCE-1 SOURCEとは,ドラム石川雅春ベース青木智仁ギター梶原順サックス小池修トランペット佐々木史郎の5人組に,キーボード小野塚晃がスーパー・サポートとして加わるJ−フュージョンの超強力バンド。

 このメンツを眺めるとバンド結成〜即アルバム・リリースかと思いきや,何と!SOURCEは1stの『SOURCE』の発売まで7年。『SOURCE』とは,もはや円熟のベテラン・フュージョン・バンドのベスト盤の趣きである。

 結成から7年ということはSOURCEの結成は1990年前後。まだDIMENSIONDIMENSIONになる前のお話。
 青木智仁石川雅春DIMENSIONの準メンバーにとどまった理由の1つとしてSOURCEの存在があったことは間違いない。
 “超絶技巧”でリズム隊抜きのDIMENSIONと“アンサンブル”でリズム隊が主役のSOURCEとでは,増崎孝司に勝ち目はない。

 『SOURCE』の完璧な演奏を聴いていると,どうしてもブレッカー・ブラザーズウェザー・リポートを意識してしまう。特に青木智仁ベースからはジャコ・パストリアスの演奏が,梶原順ギターからはマイク・スターンの演奏が想起される。

 そう。SOURCEとはJ−フュージョンのど真ん中にしてJ−フュージョンから最も遠く離れたバンドであった。J−フュージョンの中心人物が自ら,従来の手法でのJ−フュージョンの発展を否定してみせた初めてのバンドであった。
 CD帯にある通り『SOURCE』とは「これぞ,リアル・フュージョン!!」なのである。

SOURCE-2 『SOURCE』までの7年間。SOURCEの6人はJ−フュージョンをアメリカン・フュージョンの手法で再現するためにJ−フュージョンとアメリカン・フュージョンを何度行き来し何週したことであろう。

 そうして発売された青木智仁石川雅春の自慢の1枚『SOURCE』が最高にカッコイイ! もろJ−フュージョンしているのに外タレ特有の「日本人では絶対に手に届かない」雰囲気にまで到達している! ついに日本人の限界の壁を突き破っている!

 しか〜し『SOURCE』の発売は「時すでに遅し」だったか…。アメリカ本土のフュージョン・シーンはすでにスムーズジャズへと移り変わった後であった…。

  01. N.Y.C.
  02. Speed
  03. Visiones
  04. 0-GA
  05. 723 7th Heaven
  06. Float
  07. Funky Me Funky You
  08. Flags
  09. Sponge Cakes

(Pヴァイン/P-VINE 1997年発売/PVCP-9401)

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ゲイリー・バートン & 小曽根 真 / フェイス・トゥ・フェイス4

FACE TO FACE-1 ゲイリー・バートンの凄さとは誰とだって合わせられることだと思う。同じピアノヴィヴラフォンデュエットなのに,チック・コリア小曽根真はまるで違う。
 ゲイリー・バートンヴィヴラフォンとは「リトマス試験紙」!(← ぴったりの例えが浮かびません)

 ゲイリー・バートン小曽根真デュオFACE TO FACE』(以下『フェイス・トゥ・フェイス』)を聴くまでは,てっきりチック・コリア小曽根真は同じタイプのピアニストだと思っていた。
 だが『フェイス・トゥ・フェイス』には,チック・コリア小曽根真の「似て非なる個性」が記録されている。全てはチック・コリア小曽根真の個性を“炙り出す”ゲイリー・バートンの凄さである。

 チック・コリアとの『クリスタル・サイレンス』では,チック・コリアのクリティカルな才能と共演し,小曽根真との『フェイス・トゥ・フェイス』では,小曽根真の切れ味とバランス感覚と共演したゲイリー・バートン

FACE TO FACE-2 『フェイス・トゥ・フェイス』の時点では,まだまだビッグ相手に遠慮してしまう小曽根真小曽根真の類まれな才能を誰よりも知っているゲイリー・バートンが,手加減しないで自分に向かってくるよう導いていた。

 ゲイリー・バートンデビュー前から手塩にかけて育ててきた小曽根真を“世界に売り出した”のが『フェイス・トゥ・フェイス』。
 「世界のOZONE」の快進撃は,ゲイリー・バートンと“がっぷり四つに組み合った”『フェイス・トゥ・フェイス』から始まった!

  01. KATO'S REVENGE
  02. MONK'S DREAM
  03. FOR HEAVEN'S SAKE
  04. BENTO BOX
  05. BLUE MONK
  06. O GRANDE AMOR
  07. LAURA'S DREAM
  08. OPUS HALF
  09. MY ROMANCE
  10. TIMES LIKE THESE
  11. EIDERDOWN

(GRP/GRP 1995年発売/UCCU-6195)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/藤本史昭)

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富樫 雅彦+菊地 雅章 / コンチェルト4

CONCERTO-1 研ぎ澄まされ,考え抜かれた音を即興で配置するパーカッション富樫雅彦ピアノ菊地雅章
 発せられる直前まで悩み抜き,磨かれ選び抜かれた音を精妙に配置し合う。音を奏でることは音と音の間を浮き立たせることである。そう言わんとする演奏が多い。

 「J−ジャズ界の雄」にして,日本文化に魅了され日本文化に愛された富樫雅彦ジャズの本場アメリカに魅了されアメリカに愛された菊地雅章
 そんな2人が15年ぶりの再会を果たした『CONCERTO』(以下『コンチェルト』)。15年という微妙な年月が,より一層互いの音に耳を澄まさせ,昂まるテンションを単刀直入に音化させずに,考え抜いた最適な音を最適なタイミングに配置させたのだろう。

 管理人は富樫雅彦菊地雅章の“天才”を,本当は何がどう凄いのか良く分かっていないのだが,分からないなりに唸ってしまう,と言うか唸らされてしまった,という感想である。
 まっ,富樫雅彦菊地雅章デュエットだし『コンチェルト』を聴く前からマニアックなジャズを想像していた。まっ,想像の範囲内の難解ジャズなので,正直,ちょっと安心して聴き通すことができた。

 でも2枚組を聴き通すのは,正直,しんどい。『コンチェルト』は本来は富樫雅彦菊地雅章のプライベート録音で良かったと思う。2人だけの思い出として世に出す必要はなかったと思う。
 それくらいに2人だけの音世界どっぷり。外界のことなど眼中にない内向指向のデュエットである。難解でも聴いていて楽しくなる演奏もあるが『コンチェルト』の厳しすぎるデュエットは聴いていて楽しくなる種類の高度なジャズではない。

 だから『コンチェルト』のコンセプトとしては,2人が納得いくまで上手くいくまでテイクを重ねている感じ。実験の全てが本テイクという感じ。ストイックな演奏が続いているので,途中で意識が飛ぶ感じ。フリージャズの悪弊が記録された感じ。

CONCERTO-2 管理人の結論。『コンチェルト批評

 『コンチェルト』における富樫雅彦パーカッションは,リズムではなくリーダー楽器として音を出している。
 『コンチェルト』を聴いてみて,中和させるベーシスト,リズム・キープのベーシストの有難みをシミジミと感じる…。

  DISC-1
  01. Two In Silence
  02. Walking Step
  03. Pause
  04. Memories
  05. Kid's Nap
  06. All The Things You Are
  07. Misterioso

  DISC-2
  01. Riding Love's Echoes
  02. Relighting
  03. Mezame
  04. Little Eyes
  05. Passing Breeze
  06. Utviklingssang
  07. Unbalance

(日本クラウン/NIPPON CROWN 1991年発売/CRCJ-2005〜2006)
(CD2枚組)
(ライナーノーツ/内田修,清水俊彦)

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ゲイリー・バートン&フレンズ / リユニオン5

REUNION-1 『REUNION』(以下『リユニオン』)は100%パット・メセニーのためのアルバムである。
 でもこれってパット・メセニーの意志ではない。全ては“大将”ゲイリー・バートンが仕組んだ「フィーチャリングパット・メセニー」な名企画。
 ズバリ『リユニオン』の真実とは,ゲイリー・バートンパット・メセニーを“神輿に担いだ”アルバムなのである。

 ゲイリー・バートンが『リユニオン』で「フィーチャリングパット・メセニー」を制作できた理由は,ゲイリー・バートン・グループから独立した後もパット・メセニーのことを気にかけチェックしていたからに他ならない。
 …というよりもパット・メセニーの音楽を,いつしかファンの立場で追いかけてきたからに他ならない。

 元来が「ジャズ・ロック」出身のゲイリー・バートンである。『STILL LIFE(TALKING)』『LETTER FROM HOME』『THE ROAD TO YOU − RECORDED LIVE IN EUROPE』で“天下を獲った”パット・メセニーのPOPな音楽性に魅了されて「オファー・レター」に至ったように想像する。

 かつては共同で音楽を創造してきたゲイリー・バートンパット・メセニーであるが,今となっては2人の立ち位置に相当な開きが生じている。この結果は両者の音楽性の違いでもなければ,パット・メセニーの音楽の嗜好の変化が原因でもない。
 単純に方法論の違いによるものである。同じ対象物に違うベクトルでアプローチをかけている。ヴィブラフォンギターという楽器特性の違いもあることだろう。

 ただし,そんなことは重要ではない。違っているのが当然のこと。根幹にある共通イメージを擦り合わせる作業を通して,1人では到達することはできなくても2人でなら到達できる新たな音風景を見つけたい。そんな意欲が創造力を駆り立てている。実に素晴らしいパートナーシップ。実に素晴らしい師弟関係。

 『リユニオン』の「新しいのに懐かしい響き」は,あのままパット・メセニーゲイリー・バートンと活動を共にしていたのでは完成することはなかった。一旦,離れて「やっぱり好き」を再確認できたからこそ,最愛の音を奏でる歓びが爆発したのだろう。ユニゾン,ハーモニー,チェイス,どれもが良い響きで惚れ惚れする。

REUNION-2 『リユニオン』でゲイリー・バートンが選んだ「フレンズ」とは,ピアノキーボードミッチェル・フォアマンベースウィル・リードラムピーター・アースキンの面々。
 いずれもパット・メセニー・ファンなら聴いてみたいGRPだから実現できた組み合わせ。もはや公私混同レベルで“最良のパット・メセニー”をゲイリー・バートンが引き出している。

 パット・メセニーとしてもゲイリー・バートンの隣りで演奏するのが大好きなのだろう。ゲイリー・バートンとぶつからない和音を探し出すのが楽しくてたまらない感じのギターであって,パット・メセニーが「若手」に戻ったイメージがある。事実,楽曲のサビの部分で「前へ前へ」と突進してくる。美味しい部分は全てパット・メセニーが持って行っている。実に楽し気で雄弁なギターが鳴っている。

 ゲイリー・バートンパット・メセニーは「歌の恋人」。お口の恋人はロッテである。

  01. Autumn
  02. Reunion
  03. Origin
  04. Will You Say You Will
  05. House On The Hill
  06. Panama
  07. Chairs And Children
  08. Wasn't Always Easy
  09. The Chief
  10. Tiempos Felice (Happy Times)
  11. Quick And Running

(GRP/GRP 1990年発売/UCCR-9009)
(ライナーノーツ/ニール・テッサー,前田圭一,成田正,悠雅彦)

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クリティックが選ぶヴィーナス名曲名演 BEST10 ピアノ・トリオ編-3

 今日のピアノ・トリオ・ブームの立役者,ヴィーナスレコードの100枚を超えるカタログ(2002年8月現在)から,ピアノ・トリオによる極めつけの名曲名演のセレクション。
 「スイングジャーナル」誌,2002年9月号掲載「クリティックが選ぶヴィーナス名曲名演 BEST10 ピアノ・トリオ編」。
 今回は6〜10位の発表です。

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ス・ワンダフル(紙ジャケット仕様)★5.タイム・アフター・タイム
ス・ワンダフル
ビル・チャーラップ

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キエレメ・ムーチョ★4.君なしでは
キエレメ・ムーチョ
スティーブ・キューン

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恋とは何でしょう★3.ナーディス
恋とは何でしょう
リッチー・バイラーク

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アゲイン(紙ジャケット仕様)★2.アゲイン
アゲイン
エディ・ヒギンズ

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音楽がある限り(紙ジャケット仕様)★1.音楽がある限り
音楽がある限り
デニー・ザイトリン

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 エディ・ヒギンズの『アゲイン』がランクイン

 エディ・ヒギンズピアノの音は,ジャケット写真からイメージさせられる「甘口のカクテル」などではない。スッと咽喉を通った後に“ピリリと舌を刺す”辛口のジャズメンである。
 日本酒または白ワインである。軽快で繊細な演奏なのにキレがある。薄味なのにコクがある。要は原曲のイメージを薄めすぎないジャズ・ピアノなのだ。

 『アゲイン』こそが“エディ・ヒギンズ・スタイル”そのものである。いくら日本人好みに仕上げたとはいえ,ここまでツボをあてられると「参りました。おいしゅうございました」の言葉しかまず出やしない。

 【祇園小唄〜京都ブルース】のような日本人向けのオリジナル曲は言うに及ばず,あれこれと他のジャンルの人気曲を持ってきてはジャズ・アレンジしているのだが,そのどれもが,自然なアドリブ,馴染み深いアレンジで,抜群に咽喉越しが良い。
 そう。『アゲイン』は,初めてジャズ・クラブに来店した人に(初めてジャズを聴いた人に)「ジャズって素敵。スイングって楽しい」と理屈抜きに理解させてしまいそうな“エディ・ヒギンズ・トリオ”による名演集であろう。

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