アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2020年04月

ゲイリー・トーマス / エグザイルズ・ゲイト5

EXILE'S GATE-1 ゲイリー・トーマスがリードする「M−BASE」のオルガンジャズが超カッコイイ。これぞ「新しいオルガンジャズ」の誕生である。

 『EXILE’S GATE』(以下『エグザイルズ・ゲイト』)には,タイプの異なる2つのオルガン・コンボが収められている。
 オルガニストで語ればティム・マーフィーチャールス・コヴィントンの違いであるし,ギタリストで語ればマーヴィン・スウェルエド・ハワードの違いであろうが,それ以上にベース入りか?ベースレスか?の違いの方が大きい。

 すなわち,ベース入りのオルガンを「M−BASE」の文脈で鳴らすトラックと,新しいジャズサウンドの1つの核としてベースオルガンで色付したトラックの違いである。

 その点でゲイリー・トーマスの“盟友”であるティム・マーフィーが本職であるオルガニストとして参加した意義は大きい。ティム・マーフィーのイマジネーションが,そのまんま「M−BASE」の文脈で鳴り響くオルガンジャズ
 ベースラインは,これまたエド・ハワードが最高のベースラインを弾いている。「M−BASE」のティム・マーフィーだからできた“ベースが主役を張れる”オルガンジャズが超カッコイイ。

 一方のチャールス・コヴィントンオルガンは「王道」である。こちらにはゲイリー・トーマスが加入している「スペシャル・エディション」のジャック・デジョネットとの共演である。
 ジャック・デジョネットゲイリー・トーマスが組めば,それだけで「スペシャル・エディション」の音が鳴るのだが,チャールス・コヴィントンオルガンが「スペシャル・エディション」を“オルガンジャズの深み”へと誘っていく。

EXILE'S GATE-2 ゲイリー・トーマスの狙いこそが,チャールス・コヴィントンの「舵取り」を期待してのことだったと思うが,大ベテランのチャールス・コヴィントンが「M−BASE」の音選びに興味津々であって,従来のオルガンジャズの壁を「スペシャル・エディション」のパワーによってブレイクスルーできたと思う。

 ちょうど『エグザイルズ・ゲイト』の発売と同じ時期,管理人は「メデスキ,マーティン・アンド・ウッド」にハマッテいた。「メデスキ,マーティン・アンド・ウッド」の,どこからともなく“降ってきた”ジャムに相当衝撃を受けていた。
 きっとゲイリー・トーマスもその1人だったのだろう。そして「M−BASE」のオルガンジャズに可能性を感じたことだろう。

 管理人は思う。「M−BASE」の雄であるゲイリー・トーマスが,当時のオルガン・リイバイバル・ブームから外れた「新しいオルガンジャズ」を演ったからこそ,後の「メデスキ,マーティン・アンド・ウッド」「ソウライヴ」がブレイクする道筋が開けたのだと…。

  01. Exile's Gate
  02. Like Someone In Love
  03. Kulture Bandits
  04. Blues On The Corner
  05. Night And Day
  06. No Mercy Rule
  07. A Brilliant Madness

(バンブー/BAMBOO 1993年発売/POCJ-1191)
(ライナーノーツ/成田正)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

OTOMO YOSHIHIDE'S NEW JAZZ ORCHESTRA / ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ4

ONJO PLAYS ERIC DOLPHY'S“OUT TO LUNCH”-1 エリック・ドルフィーの『OUT TO LUNCH』の“痛快”全曲カヴァー集。それが大友良英ONJO」拡大路線の集大成となる『ONJO PLAYS ERIC DOLPHY’S “OUT TO LUNCH”』(以下『ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ』である。

 個人的にエリック・ドルフィーの『OUT TO LUNCH』はイマイチだと思っているからなのか,痛快パロディー盤とは認めつつも『ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ』も聴いていて楽しい演奏ではない。

 そもそも大友良英の側に『OUT TO LUNCH』完コピする気など更々なかったように思う。大友良英にとって『ONJOプレイズ・エリック・ドルフィーズ・アウト・トゥ・ランチ』とは,大友良英流・エリック・ドルフィーへのリスペクトではなくネタの1つにしかすぎない。

 「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)」脱退後,活動の中心となった「ONJO」の自慢の音。この音で菊地成孔と勝負してみたい。そして「DCPRG」を見返してみたい。
 菊地成孔が電化マイルスでいくのなら,大友良英エリック・ドルフィーでいく。エリック・ドルフィーの奇抜な音なら,電化マイルスとも十二分に戦える。あくまでもノリでありネタなのである。

 エリック・ドルフィー大友良英の『OUT TO LUNCH』の違いは,ボビー・ハッチャーソンが,いるかいないか,の違いである。
 それくらいに本家『OUT TO LUNCH』の個性の半分はボビー・ハッチャーソンの硬質で幾何学的なヴァイブが担当していた。

 大友良英が指名した『OUT TO LUNCH』のキーマンとは,SACHIKO Mの「サイン波」であろう。
 エリック・ドルフィーよりも大袈裟にアウトしてく「ONJO」の中にあって,SACHIKO Mの「サイン波」と大友良英の「ノイズ」がサウンドの核を担っている。

ONJO PLAYS ERIC DOLPHY'S“OUT TO LUNCH”-2 そう。大友良英ONJO」の個性とは「毒を以て毒を制す」音楽である。
 大友良英が意図的にチューニングを狂わせれば,バンドが一斉に補正をかけてくる。そこに複雑なアンサンブルが完成する。緊張感のあるインプロが続くが,そこにはいつでも知性を感じる。
 結果,本家『OUT TO LUNCH』で描かれていた音世界のスケール感が増している。なるほどね〜。

 菊地成孔にしても大友良英にしても,マイルス・デイビスにしてもエリック・ドルフィーにしても,適当に即興演奏しているわけではない。言わば「計算ずくめの即興演奏」なのである。

  01. Hat And Beard
  02. Something Sweet, Something Tender
  03. Gazzelloni
  04. Out To Lunch
  05. Straight Up And Down 〜 Will Be Back

(ダウトミュージック/DOUBTMUSIC 2005年発売/DMF-108)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/大友良英,殿山康司,カヒミ・カリィ)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ゲイリー・トーマス / ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ4

TILL WE HAVE FACES-1 『TILL WE HAVE FACES』(以下『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』)の真実とは『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』ではない。『ゲイリー・トーマス&テリ・リン・キャリントン・プレイ・“過激”スタンダーズ』である。

 そう。ハッキリ言って「目玉」であろうパット・メセニーは存在感なし。個人的にはあのゲイリー・トーマスとあのパット・メセニーの共演とあって超楽しみにしていたが『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズパット・メセニーに“たまにある”ハズレ盤となった。

 古くはオーネット・コールマンジョン・スコフィールド,最近でもブラッド・メルドーとの共演がそうであったように,当代随一の名前が並ぶ時に限ってパット・メセニーがコケル。これって共演者に惑わされているとしか思えない。

 パット・メセニーにとって,敵はゲイリー・トーマスだけでなかった。テリ・リン・キャリントンである。彼女のドラミングがエゲツナイ。テリ・リン・キャリントンパット・メセニーギターを切り刻んでいる。みじん切りである。

 冒頭の【ANGEL EYES】で今回の企画が終わりを迎えている。超美メロが崩壊している。これは【ANGEL EYES】ではない。【ANGEL EYES】とは認められない。
 このトラックはゲイリー・トーマステリ・リン・キャリントンの肉体派の大バトル。管理人には“拳銃の打ち合い”にしか聞こえない。

 前々作の『WHILE THE GATE IS OPEN』は素晴らしいスタンダード集であったが,その続編にあたる『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』は,非スタンダード集であり“過激”スタンダード集である。

TILL WE HAVE FACES-2 本当はそこまで悪い演奏ではないのだろう。ゲイリー・トーマステナーサックスはテクニカルでバッキバキ。いい音で鳴っている事実は認める。

 しかし「目玉」であるパット・メセニーの良さが死んでいる。「目玉」であるスタンダードの美メロが死んでいる。これではゲイリー・トーマス1人が元気であっても何ら意味がない。

 期待値が異常に高かった分,この企画はマイナスでしかない。やらない方が良かった。大物2人のキャリアに傷が付いてしまった。『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』の収穫はテリ・リン・キャリントンの大爆発だけである。

 大好きなゲイリー・トーマスと大好きなパット・メセニーの音が耳まで届いてはいるのだが,心は「上の空」状態。
 マイルス・デイビスの所のマリリン・マズールといい,女性ドラマー解放の時代到来,を感じたというのが『ゲイリー・トーマス&パット・メセニー・プレイ・スタンダーズ』を聴いた一番の感想である。

  01. Angel Eyes
  02. The Best Thing For You
  03. Lush Life
  04. Bye Bye Baby
  05. Lament
  06. Peace
  07. It's You Or No One
  08. You Don't Know What Love Is

(バンブー/BAMBOO 1992年発売/POCJ-1130)
(ライナーノーツ/成田正)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

峰 厚介−菊地 雅章 / DUO4

DUO-1 峰厚介菊地雅章によるデュエット・アルバムが『DUO』(以下『デュオ』)である。

 このデュエットは,峰厚介主導で聴くか? 菊地雅章主導で聴くか? によって印象が随分変わるように思っている。
 管理人は『MAJOR TO MINOR』が気に入ったので,その流れで『デュオ』を聴いた口。なので,何とも口寂しい印象を受けた。

 『デュオ』の基本はメイン・テーマを拠り所として,互いに互いの胸の内を探り合いながらアドリブに興じていくアルバムである。
 ズバリ『デュオ』の聴き所とは,アドリブに到達するまでの“過程を聴く”ことにある。

 全5曲が5曲とも未完成のままで終わっている。どの曲を聴いても今一歩である。盛り上がれそうで盛り上がれていない。正直『MAJOR TO MINOR』でジャズ・サックスの王道を披露した峰厚介の「中途半端」な演奏にガッカリしたことを覚えている。

 峰厚介の不調の原因は「スロー・テンポしごき」にある。静かに始まりそのまま大して盛り上がらずに終了していく。どうにも間延びした時間帯が長すぎる。
 おいおい,こんな約束じゃなかっただろう。峰厚介ジャズ・サックスってこの程度のものだったのか? そう感じてしまったが最後。峰厚介菊地雅章というビッグネーム2人の『デュオ』が「タンスの肥やし」の1枚となった。

 しかし,これがある日突然,ヘビロテとなるのだから人生分からない。その理由は菊地雅章名演にある。
 菊地雅章は管理人のフェイバリットの1人であるが,ある時期,猛烈に菊地雅章に狂っていた時期があって,菊地雅章を追いかけていたら『デュオ』の存在を思い出し,久しぶりに手に取ったらというパターン。
 あら不思議,全然いけるじゃん。…っていうか『デュオ』でのプーさん凄くねぇ?

 ノープランで“盟友”とのデュオに臨んだプーさんピアノが実に興味深い動きを聴かせている。「自然発生的なインプロヴィゼーション」への対応力が最高に素晴らしい。

 管理人は『デュオ』を当初,峰厚介がメインで菊地雅章がサブとして聴いていた。菊地雅章ピアノは終始寡黙であって,ブツブツ言いながらもメロディアスに攻めてくるテナーサックスの受け皿として,常に着地点を探っているように感じていた。

 …がっ,しかし,そうではなかったのだ。菊地雅章ピアノ峰厚介テナーサックスを音楽の中に浮かせているし,書き譜のテーマの中に飛ばしている。
 テナーサックスの落下点に先回りしていたのではなく,テナーサックスの起点をピアノが先回りして準備している。

DUO-2 菊地雅章アドリブを受けて峰厚介がジャンプしている。ただし,どこにどのように飛ぶかは峰厚介に任されている。
 菊地雅章からのお題が絶妙すぎて,峰厚介に頭の中には選択肢が何通りも浮かぶのだろう。どう飛び上がるかに迷っている節がある。だから反応が遅れて口寂しくなる。『デュオ』の構図は,この繰り返しの図式で間違いない。

 ジャズとは本来,頭とか知識とかではなく,感性とか経験とかで反応する音楽である。しかし,共演者にここまで胸の内を読まれてしまってはどうしようもない。菊地雅章の「スロー・テンポ」なライン取りに,たじたじの峰厚介は「一介のテナーマン」。前に押し出されているだけで,頭の中は終始混乱しっぱなしのようでして…。

 峰厚介さん,10年後にまた“恩師”プーさんの胸を借りましょう。今回の『デュオ』では,相手が一枚上手でした。

  01. MR.MONSTER
  02. DJANGO
  03. LITTLE ABI
  04. I REMEMBER GOKO
  05. REMEMBER

(ヴァーヴ/VERVE 1994年発売/POCJ-1240)
(ライナーノーツ/清水俊彦)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ゲイリー・トーマス / コールド・ケージ4

THE KOLD KAGE-1 1980〜90年代にムーブメントを巻き起こした「M−BASE」が,現時点ではジャズ史に登場した最後の「新しいジャズ」である。
 あれから随分と時間が経つというのに「M−BASE」の代表作を聴き直すと,未だに軽い衝撃を受けたりする。そんなぶっ飛んだ「M−BASE」の中でも,とりわけぶっ飛んでいたのがゲイリー・トーマスである。

 「スイングジャーナル」誌「ジャズ・ディスク大賞」。90年度は『バイ・エニー・ミーンズ・ネセサリー』で【銅賞】受賞。91年度は『ザ・ゲイト・イズ・オープン』で【金賞】受賞。92年度は「ジャック・デジョネット・スペシャル・エディション」の『アース・ウォーク』で【金賞】受賞。
 時代は確実に「M−BASE」であった。そしてゲイリー・トーマスの時代であった。

 そんなゲイリー・トーマスが新作では何と!ラップを取り入れていると聞くではないか! これは凄いことになっていると思い“身構えて聴いた”のが『THE KOLD KAGE』(以下『コールド・ケージ』)である。
 意外にも『コールド・ケージ』の第一印象は「落ち着いている」であった。何だか分からないがゲイリー・トーマスが一気に大人になっていた。ラップが全然邪魔していないし気にならない。

 「M−BASE」の場合,主役は大抵,高度で斬新なポリリズム。流れるようなリズムにぶつかり合う小難しいメロディーのハイセンスが聴き所!
 『コールド・ケージ』の主役は「M−BASE」の王道であって,デニス・チェンバースの正確無比な野獣のドラミングアンソニー・コックスの重厚織り交ぜたベースであろう。
 そこにピアノギターが出たり入ったりして,アクセントたっぷりのリズム隊が主張している。乗れそうなのに乗り切れない,バッキバキの変拍子が超COOL!

THE KOLD KAGE-2 しか〜し『コールド・ケージ』の主役は紛れもなくゲイリー・トーマス! リズム隊の裏を支えるサックスが,フルートが,そしてラップさえも『コールド・ケージ』の重厚で精悍で冷徹な音楽性を彩っている!
 ビートの捕まえ方,クロマティック・ラインの活用の新しいアイディアは,ここまでぶっ飛び続けてきたゲイリー・トーマスの「M−BASE」そのまんま!

 ゲイリー・トーマスがフロントから一歩引いて,アルバム全体の音楽監督を務めているのが『ザ・ゲイト・イズ・オープン』。
 管理人の嫌いなラップも入っているし,あんなにも好きだったゲイリー・トーマスから一歩引くきっかけとなったアルバムであるが,実はゲイリー・トーマスの全アルバムの中で「一番かっこええ」アルバムが『コールド・ケージ』なのである。かっちょええ。

  01. Threshold
  02. Gate of Faces
  03. Intellect
  04. Infernal Machine
  05. The Divide
  06. Peace of the Korridor
  07. First Strike
  08. Beyond the Fall of Night
  09. The Kold Kage
  10. Kulture Bandits (to be continued)

(バンブー/BAMBOO 1991年発売/POCJ-1070)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

デ・ガ・ショー / 続5

ZOKU-1 男の子が自分の父を指差して「ねぇ,見て。あの人が僕のお父さんなんだよ」と,誇らし気に紹介している場面を想像することができるか?
 その男の子にとって父親とは世界一のスーパースター。世界一強い,世界一カッコイイと心の底から思っている。自慢の父親なのだ。

 『ZOKU』(以下『』)を聴いていると,何とも誇らしい気分になる。何とも自慢したい気分になる。
 「聞け,全世界のジャズ・ファンたちよ! 日本にはこんなにもカッコイイ音楽を演奏するジャズメンたちが揃っている。何がアメリカだ,何がヨーロッパだ,ブラジルだ。日本のジャズこそが世界一で何が悪い!」と叫びたくなる。

 そう。管理人にとっては「デ・ガ・ショー」こそが冒頭に登場してきた父親のような存在である。
 「デ・ガ・ショー」こそが,ジャズの中のジャズであり,世界標準となるべきジャズだと心の底から信じている。
 ジャズは随分と芸術音楽の側に寄ってしまった。それはそれで楽しいのだが,本来のあるべきジャズとは,聴いていて笑顔になる音楽。聴いていてバカ騒ぎできる音楽。ジャズが流れている時間は,苦しみも悲しみも忘れて「凄いぞ! もっとイケー!」になる時間だと思っている。

 そんな,真剣なのに馬鹿馬鹿しさがつきまとっているのがジャズの素晴らしさだと思う。本気で命がけで行なう音遊びがジャズの素晴らしさだと思う。だからジャズとは即興のことなのだ。
 最初から最後までクタクタになるくらい襲いかかってくる音楽こそがジャズの本質だと断言する。

 林栄一片山広明にとって「デ・ガ・ショー」の2枚目は,正直,きつい録音だったことだろう。全部出し切った大傑作の後に再び大傑作を録音できるとはただ事ではない。

ZOKU-2 そう。『』は紛れもないフリージャズである。しかしフリージャズという言葉を発した瞬間に,何か違う,と感じてしまうのも事実。

 フリージャズと語るよりも,忌野清志郎ライナーノーツで記したように,ジャズではなく「デ・ガ・ショー」であり,フリージャズではなく,ビートであり,グルーヴであり,ブルースであり,ユーモアである。うん。この方がしっくりくる。

 『』には『DE−GA−SHOW!』の“出涸らし”のような部分も正直ある。でもそれがまたよかったりもする。イケイケの『DE−GA−SHOW!』には微塵もない,祭りの後の余韻,無となり灰となった充実感が『』にはある。

  01. De-ga-show, de-night
  02. Botto-suru
  03. OM
  04. Chinese surfer
  05. Suna-Kaze
  06. Blues de Show
  07. Reflecting Lane−Good-bye, Uzattai Yatsu
  08. Tsuru

(オーマガトキ/OMAGATOKI 1996年発売/SC-7111)
(ライナーノーツ/忌野清志郎,村上寛)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

ゲイリー・トーマス / ザ・ゲイト・イズ・オープン5

WHILE THE GATE IS OPEN-1 「M−BASE」の一派のくせして音楽理論などは全く考えていない。無の状態から過激なサウンドをぶつけてくる強心臓男。そのくせジャズの歴史を教養として身に着け,テナーサックスの扱いに関しても無敵の超絶テクニックを身に着けた男。
 「その男,凶暴につき」とはビートたけしのためではなくゲイリー・トーマスのためにある言葉である。そう。『BY ANY MEANS NECESSARY』までは…。

 何と優しいスタンダードなのだろう。何とも愛らしいスタンダード集なのだろう。『WHILE THE GATE IS OPEN』(以下『ザ・ゲイト・イズ・オープン』)からゲイリー・トーマスの“美意識”が伝わってくる。
 個人的にゲイリー・トーマスの本質は『BY ANY MEANS NECESSARY』の方にあるとは思うが,ゲイリー・トーマスと来れば『ザ・ゲイト・イズ・オープン』で見せた「優しい演奏家」のイメージが強い。

 それ位に『ザ・ゲイト・イズ・オープン』におけるスタンダードを紡ぐ演奏手法が秀逸である。
 スタンダードのお花畑から,草をむしり取るように荒々しい演奏もあれば,貴重なバラを一本一本丁寧に取り分けていくような演奏もある。全体としてパワフルな四気筒の農耕車がゆっくりと坂道を上っていくような演奏である。「M−BASE」らしからぬ,手作業で制作したスタンダード集。

 ただし『ザ・ゲイト・イズ・オープン』は落ち着いたバラード集ではない。基本はアップテンポなメインストリーム・ジャズ
 ゲイリー・トーマスの過去音源を知らない方や『BY ANY MEANS NECESSARY』を聴いたことがない人にとっては,ちょっと変わったメインストリーム・ジャズとして違和感なく受け入れることができるだろう。

 要は『ザ・ゲイト・イズ・オープン』が“あの”ゲイリー・トーマスのアルバムだから,である。この前置きが物議をかもす!
 まず「M−BASE」の派のジャズメンがスタンダードを取り上げる行為自体が初耳である。過去の演奏形式を取り入れることを否定した上でスタンダードの演奏などできるのだろうか?

WHILE THE GATE IS OPEN-2 ゲイリー・トーマスジャズスタンダード集のために用意した答えは,やはりリズムである。
 現代的でスマートな変拍子を繰り出すリズム隊の誘導により,全体的につんのめるようなスピード感に支配されたゲイリー・トーマス随一の名演集である。

 伝統に束縛されない自由な演奏が展開されている。ゲイリー・トーマスの音使いやリズム感は常識的なものから少しづつずれている。メインテーマで美メロを力業で吹き上げるゲイリー・トーマス特有のヒリヒリする緊張感にやられてしまう。
 ゲイリー・トーマスの底の知れないポテンシャルの高さとテーマを発展させるスケールの大きな歌心が実に素晴らしい。

 スイングに欠けるとされる「M−BASE」であるが,ジャズスタンダードを題材とした『ザ・ゲイト・イズ・オープン』ゆえに,ほんのりとしたスイング感が見え隠れしている。そんな「優等生のチラミセ」に毎回もんどり打って悶絶してしまう。

  01. STRODE RODE
  02. STAR EYES
  03. YOU STEPPED OUT OF A DREAM
  04. THE SONG IS YOU
  05. INVITATION
  06. CHELSEA BRIDGE
  07. ON THE TRAIL
  08. EPISTROPHY

(バンブー/BAMBOO 1990年発売/POCJ-1027)
(ライナーノーツ/成田正)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)

エディ・ヒギンズ・トリオで聴きたいスタンダード・ベスト10-3

 ヴィーナス・レコードの10周年記念企画。「スイングジャーナル」誌,2002年11月号掲載,読者投票による「エディ・ヒギンズ・トリオで聴きたいスタンダード・ベスト10」。

 実際にはランクインした「ベスト10」が無条件に演奏されたわけではなく,上位にランクインしたリクエスト曲の中から,原哲夫とエディ・ヒギンズの話し合いによって選ばれた14曲のスタンダード集が『懐かしのストックホルム』としてリリース。
 今回は(純粋に読者投票の結果)11〜15位の発表です。

--------------------------------------------------------------------------

DEAR OLD STOCKHOLM-1★15.イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド
懐かしのストックホルム


--------------------------------------------------------------------------

ジャズ・アダージョ★14.ムーン・リバー
ジャズ・アダージョ
リッチー・バイラーク

--------------------------------------------------------------------------

イフ・ドリームス・カム・トゥルー★13.サマータイム
イフ・ドリームス・カム・トゥルー


--------------------------------------------------------------------------

フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン★12.フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン
ジェイ・レオンハート・トリオ

--------------------------------------------------------------------------

慕情★11.慕情
慕情
ローマ・トリオ

--------------------------------------------------------------------------

 【イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド】は『懐かしのストックホルム』収録。
 【サマータイム】は『イフ・ドリームス・カム・トゥルー』収録。

 『イフ・ドリームス・カム・トゥルー』とはエディ・ヒギンズ久々となるレギュラー・トリオによるストレートなNO企画盤。

 【ムーン・リバー】をエディ・ヒギンズが演奏しなかったのは,同じくヴィーナス・レコードリッチー・バイラークロマンティック・ジャズ・トリオの大名演が存在するからであろう。
 共喰いを避ける意味合いなのだろうが,3つの名演聴き比べの相乗効果があったのたかもしれません…。

 【フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン】をが演奏しなかったのは,エディ・ヒギンズ・トリオのレギュラー・ベーシストであるジェイ・レオンハートのリーダー・アルバムが存在するからであろう。
 以心伝心のピアノ・トリオピアニストベーシストの,似て非なるアプローチを聴き比べしたかった〜。

 【慕情】をエディ・ヒギンズが演奏しなかったのは,同じくヴィーナス・レコードローマ・トリオに【慕情】の大名演が存在するからであろう。
 共喰いを避ける意味合いなのだろうが,2つの名演聴き比べの相乗効果があったのたかもしれません…。

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)
livedoor プロフィール

セラビー

記事検索
Categories      日本人は五十音順:外国人はアルファベット順
月別アーカイブ
Keith Jarrett Gallery

キース・ジャレット(真田馨子) おんがく日めくり(c) keiko sanada
Pat Metheny Gallery

パット・メセニー(野々口和仁)
(c) Kazuhito Nonoguchi
ジャズ・アフィリエイト
セラビー厳選CD

パリ・コンサートパリ・コンサート
キース・ジャレット

THE WAY UPTHE WAY UP
パット・メセニー・グループ

イン・ア・サイレント・ウェイイン・ア・サイレント・ウェイ
マイルス・デイビス

HEAVY WEATHERHEAVY WEATHER
ウェザー・リポート

BRAINCOOL STRUTTIN'
ソニー・クラーク

MINT JAMSMINT JAMS
カシオペア

HUMANHUMAN
T-スクェア

LEFT ALONELEFT ALONE
マル・ウォルドロン

フル・ハウスフル・ハウス
ウェス・モンゴメリー

ザ・シーン・チェンジズザ・シーン・チェンジズ
バド・パウエル

セロニアス・モンク・トリオセロニアス・モンク・トリオ
セロニアス・モンク

枯葉枯葉
チェット・ベイカー

MOANIN'MOANIN'
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

BLOWIN' THE BLUES AWAYBLOWIN' THE BLUES AWAY
ホレス・シルヴァー

ウィントン・マルサリスの肖像ウイントン・マルサリスの肖像
ウイントン・マルサリス

メイティング・コールMATING CALL
タッド・ダメロン

Blu-spec CD ジャコ・パストリアスの肖像ジャコ・パストリアスの肖像
ジャコ・パストリアス

ザ・キング・イズ・ゴーンザ・キング・イズ・ゴーン
マーカス・ミラー

FIRST MEETINGファースト・ミーティング
テザード・ムーン

スペシャル・エディションSPECIAL EDITION
ジャック・デジョネット

ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリングYOU MUST BELIEVE IN SPRING
ビル・エヴァンス

ヴァイアティカムVIATICUM
e.s.t.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)

STEP BY STEPSTEP BY STEP
ステップス

2424
DIMENSION

GANAESIAガネシア
渡辺香津美
カズミ・バンド

FOURPLAYFOURPLAY
フォープレイ

コンプリート・ピック・ヒッツ・ライヴPICK HITS
ジョン・スコフィールド

ニューポートの追想V.S.O.P.
ハービー・ハンコック

アス・スリーUS THREE
ホレス・パーラン

Manhattan StoryBLUE'S MOODS
ブルー・ミッチェル

AFRICAN PIANOOFF TO THE RACES
ドナルド・バード

AFRICAN PIANOAFRICAN PIANO
ダラー・ブランド

Manhattan StoryMANHATTAN STORY
アキコ・グレース

SPELLBOUNDSPELLBOUND
ジョー・サンプル

ランデヴーRENDEZ-VOUS
木住野佳子

RETURN TO FOREVERRETURN TO FOREVER
チック・コリア

BRAINBRAIN
上原ひろみ

イン・ラインIN LINE
ビル・フリゼール

ザ・サウンド・オブ・サマー・ランニングザ・サウンド・オブ・サマー・ランニング
マーク・ジョンソン

スインギン・マケドニアスインギン・マケドニア
ダスコ・ゴイコビッチ

タイム・スレッドTME THREAD
小曽根真 & ゲイリー・バートン

フルーツケーキFRUITCAKE
フルーツケーキ

THE DROPPERTHE DROPPER
メデスキ,マーチン&ウッド

Doin' SomethingDOIN' SOMETHING
ソウライヴ

SALT IISALT II
塩谷哲

Dance Your HeartDANCE YOUR HEART
Saya

地球は愛で浮かんでいる地球は愛で浮かんでいる
松永貴志
アンケートボードA

★当ブログについて望むことは?
アルバム単位で批評してほしい
同じ曲をテイク別に批評してほしい
多くのジャズメンを幅広く批評してほしい
一人のジャズメンを掘り下げて批評してほしい
超有名曲をもらさず批評してほしい
発売直後の新作を批評してほしい
初心者を意識したほんわかサイトにしてほしい
マニアを意識したニッチなサイトにしてほしい
オーディオについて批評してほしい



-Mini Vote-
アンケートボードB
How Much Is Your Blog Worth?

My blog is worth
$38,953.26

How much is your
blog worth?

最新コメント
Copyright (C) 2005-2019 アドリブログ All Rights Reserved.