アドリブログ 〜JAZZ/FUSION批評〜

ジャズ/フュージョン批評ブログ CD, DVD, ALBUM REVIEW, TRACK REVIEW and more

2020年10月

アイアート・モレイラ / アイデンティティー4

IDENTITY-1 1970年代のフュージョン・シーンの台頭を切り開いた3グループがある。それが“電化”マイルスウェザー・リポートリターン・トゥ・フォーエヴァーである。

 この3グループは「マイルス・スクール」のメンバーが重なり合い,互いに刺激し合い,それぞれが異なるアイディアを形にするために別の道を歩むことになったわけだが,そんな3グループ全てに在籍した“唯一の”ジャズメンがいる。それがブラジリアン・パーカッショニストアイアート・モレイラである。

 アイアート・モレイラマイルス・デイビスによるフュージョン立ち上げの1枚である『ビッチェズ・ブリュー』から参加し,その後の“電化”マイルスの黄金期を駆け抜けた人物である。
 ウェザー・リポートにしてもリターン・トゥ・フォーエヴァーにしても,立ち上げメンバーとして名を連ねた人物である。つまりはマイルス・デイビスジョー・ザビヌルウェイン・ショーターチック・コリアたちと同列に位置するフュージョンの創生に深く関与した重要人物の1人なのである。

 マイルス・デイビスジョー・ザビヌルウェイン・ショーターチック・コリアアイアート・モレイラをなぜ必要としたのか? それこそがアイアート・モレイラの「アイデンティテイー」である。アイアート・モレイラの放つ,本物のブラジルのリズムなのだ。

 暴言を承知で書くならば,本物のブラジリアン・パーカッションは日本人には演奏できないし,アメリカ人にも演奏できない。本物のブラジリアン・パーカッションを演奏できるのは本場のブラジル人だけなのである。
 ここでいうブラジリアン・パーカッションとはリズム・キープ役としてのドラマーではなく,音楽に奥行きと色彩,果ては香りさえをも与える「空間構成家」としてのパーカッショニストのことである。

 この能力を欲していたマイルス・デイビスジョー・ザビヌルウェイン・ショーターチック・コリアにとってアイアート・モレイラが「抜きん出ていた」というわけである。それがゆえの3大グループへの“オリジナル・メンバー”入り!

 そんなアイアート・モレイラの「アイデンティテイー」がストレートに表現されたのが,ブラジリアン・クロスオーヴァーの名盤として名高い『IDENTITY』(以下『アイデンティテイー』)である。

IDENTITY-2 「キワモノ」一歩手前の雰囲気で,躍動的なメロディーが連続する“ブラジリアン・フレーバー推し”が徹底された『アイデンティテイー』で,アイアート・モレイラの「アイデンティテイー」であるブラジリアン・パーカッショニストの妙技が爆発している。

 ただし,そこは“スーパー・パーカッショニスト”のアイアート・モレイラである。マイルス・デイビスジョー・ザビヌルウェイン・ショーターチック・コリアのように1人では主役は張れない。
 「盟友」エグベルト・ジスモンチとの共作でメロディーをしたためている。

 最後に『アイデンティテイー』のジャケット写真の表面には,アイアート・モレイラの指紋が黒塗りされた写真が用いられ,ジャケット写真の裏面には,アイアート・モレイラのIDカード,証明書,パスポート写真が用いられている。
 このジャケット写真には「自分はブラジル人であり,どの国にも属さない」と言うアイアート・モレイラの主張であり「この音楽こそが自分自身であり,アイデンティテイーそのものだ」というメッセージなのであろう。

 いいや,アイアート・モレイラの“ハンドパワー”ポージング!? アイアート・モレイラが「きてます!」。

 
01. THE MAGICIANS (BRUXOS)
02. TALES FROM HOME (LENDAS)
03. IDENTITY
04. ENCOUNTER (ENCONTRO NO BAR)
05. WAKE UP SONG (BAIAO DO ACORDAR/CAFE)
06. MAE CAMBINA
07. FLORA ON MY MIND

 
AIRTO MOREIRA : Drums, Percussion, Vocals
WAYNE SHORTER : Soprano Saxophone
HERBIE HANCOCK : Synthesizer
FLORA PURIM : Vocals
DAVID AMARO : Guitar
EGBERTO GISMONTI : Piano
RAUL DESOUZA : Trombone
ROBERT : Drums, Percussion
TED LO : Organ
JOHN HEARD : Bass
JOHN WILLIAMS : Bass
LOUIS JOHNSON : Bass

(アリスタ/ARISTA 1975年発売/BVCJ-37116)
(ライナーノーツ/中原仁)

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タイガー 大越 / フェイス・トゥ・フェイス4

FACE TO FACE-1 1970〜1980年代のこと,TVCMをJ−フュージョンが席巻した時期があった。
 資生堂の渡辺貞夫やサントリーの伊東たけしはスターになった。しかし,数あるCM群の中でも語られるべきはJTであろう。
 マイルドセブン系のPRISM角松敏生,ピース系の天野清継中川昌三,そしてキャビン系のMALTAである。
 MALTAの時代は長く【SCRAMBLE AVENUE】【HIGH PRESSURE】【ZOOM】が流されていた。

 管理人は特にMALTAのCMが大好きだった。MALTAのTVCMはBVDとかでも流れていたが,松本恵二や星野一義というレーシング・ドライバーと組んだもので,同時期のF−1の大ヒット・テーマであるザ・スクェアの【TRUTH】と張り合っていた。

 そんな“カッコイイ”MALTAのCMが終わった。タイガー大越に変わった。…でっ,タイガー大越って誰?

 タイガー大越のことはCMで初めて知った。そしてCM曲【FACE TO FACE】が気に入った。あのMALTAの後釜なのだからカッコ良くて当然なのだ。
 待望久しいJ−フュージョンの人気トランぺッターの誕生であった。

 …でっ,2。【FACE TO FACE】収録のアルバム『FACE TO FACE』(以下『フェイス・トゥ・フェイス』)を購入した。

 タイガー大越トランぺットの個性とはセクシー将軍の響きであろう。金管特有のいやらしさでなく木管のそれである。タイガー大越もその点を自覚しているのか,トランぺットシンセサイザーを組み合わせた楽曲が多い。個人的には【WHO CAN I TURN TO】が白眉である。

 ただし『フェイス・トゥ・フェイス』は,清水興ベース東原力哉ドラムというナニワ・エキスプレス勢が引っ張っているアルバムである。
 MALTAのところにも元ナニワ・エキスプレス岩見和彦がいるが,そこはあくまで「MALTAMALTA」。タイガー大越はまだその域までは届いていない。

FACE TO FACE-2 ズバリ『フェイス・トゥ・フェイス』は,トランぺットではなくベースドラムを聴くべきアルバムである。タイガー大越がテクニカルなトランぺットで脇を固めて,クリエイティブなリズム隊がドーンと“歌っている”。

 そういうことでナニワ・エキスプレスに引っ張られた“バブル人気”のタイガー大越のTVCMは【FACE TO FACE】の1曲で終わった。
 ただし【FACE TO FACE】の大インパクトは,バブル末期の“打ち上げ花火”だ〜。

PS 【FACE TO FACE】という楽曲名はMALTAにもありますし,何ならMALTAの【FACE TO FACE】の方が有名なのでは? MALTAタイガー大越はなぞの共通点多すぎです。

 
01. FACE TO FACE
02. ONE NOTE SAMBA
03. SUMMERTIME
04. A MAN WITH 20 FACES
05. WHEN THE MOON GOES DEEP
06. DON'T TELL ME NOW
07. SENTIMENTAL JOURNEY
08. WHO CAN I TURN TO
09. BUBBLE DANCE
10. EYES
11. FISHERMAN'S SONG
12. OVER THE RAINBOW

 
TIGER OKOSHI : Trumpet, Voices
GERRY ETKINS : All Keyboards, Synthesizer Programings, Acoustic Piano
TAKAYUKI HIJIKATA : Electric Guitar, Acoustic Guitar
KOH SHIMIZU : Electric Bass, Synthesizer Bass
RIKIYA HIGASHIHARA : Drums

(ビクター/JVC 1989年発売/VDJ-1198)

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アーニー・ワッツ / アイ・ヒア・ア・ラプソディ4

REACHING UP-1 アーニー・ワッツと来ればリー・リトナーの「ジェントル・ソウツ」や菊池ひみことのコラボレーションで活躍した「フュージョンサックスの巨人」のイメージが強かったのだが,実はアーニー・ワッツというテナー奏者は“ゴリゴリのジャズの人”である。
 アーニー・ワッツソロ・アルバムはそのほとんどがジャズ・アルバムである。

 管理人がアーニー・ワッツを“ジャズサックスの人”として捉えるようになったのは,チャーリー・ヘイデンの「カルテット・ウエスト」から。
 「カルテット・ウエスト」でのアーニー・ワッツの演奏は,フリージャズ以前のジョン・コルトレーンっぽさが感じられるいい演奏で,チャーリー・ヘイデンが自分のバンドのフロントマンとして,よくぞ指名してくれた,と感心したものだった。

 それでアーニー・ワッツジャズサックスを求めて,ジョン・コルトレーン所縁のストレートなジャズ・アルバム『REACHING UP』(以下『アイ・ヒア・ア・ラプソディ』)を買ってみた。
 『アイ・ヒア・ア・ラプソディ』のアーニー・ワッツに驚いた。やっぱりコルトレーン・チルドレン!

 この時受けた衝撃は「ジェントル・ソウツ」から「カルテット・ウエスト」への隔たり以上! ゲ・ゲ・ゲ!
 その最大の理由は,ピアノマルグリュー・ミラーベースチャールス・ファンブロードラムジャック・デジョネットとのセッションなのに「アーニー・ワッツの音」が鳴っているからであり,アーニー・ワッツのリーダー・バンドのようなまとまりを感じたからである。

 アーニー・ワッツにとって『アイ・ヒア・ア・ラプソディ』は,一介のレコーディング・セッションなどではなかった。
 もう何年もジャズサックスに専念してきたかのようなグループ・サウンドが展開されている。頭の中は「ジャズジャズジャズ」であってフュージョンなんかは片隅にもない感じ。アーニー・ワッツが,どっぷりと“ジャズに浸かっている”様子に心底驚いてしまった。

REACHING UP-2 ただし『アイ・ヒア・ア・ラプソディ』のサウンド・スケッチの中にアーニー・ワッツテナーサックスだけが溶け込めていない。サックスだけがゴスペル系の鳴りで軽い。
 ピアノマルグリュー・ミラーベースチャールス・ファンブロードラムジャック・デジョネットのリズム隊はしなやかで重い。だから余計にアーニー・ワッツテナーサックスの軽さに「物足りなさ」を覚えてしまう。

 個人的にアーニー・ワッツを“ゴリゴリのジャズの人”として認めることはやぶさかではないが,アーニー・ワッツの個性が色濃いのはフュージョンサックスの方だと思う。
 アーニー・ワッツの個性である,独特の軽さ,に向いている音楽はフュージョンサックスの方であると,アーニー・ワッツジャズ・アルバムを聴いたからこそ断言できる。

 チャーリー・ヘイデンの人選力って凄いよなぁ。“フュージョン以上ジャズ未満”なアーニー・ワッツジャズサックスは「カルテット・ウエスト」ぐらいがちょうどよい。
 ジャズに力を入れすぎると,モーダルなフレーズに隠れて「ゴスペル・アーニー・ワッツ」の顔がどうしても出てしまう。

 
01. REACHING UP
02. MR. SYMS
03. I HEAR A RHAPSODY
04. TRANSPARENT SEA
05. THE HIGH ROAD
06. INWARD GLANCE
07. YOU LEAVE ME BREATHLESS
08. SWEET LUCY
09. ANGEL'S FLIGHT
10. SWEET SOLITUDE
11. SWEET SOLITUDE (ALTERNATE TAKE)

 
ERNIE WATTS : Saxophones
JACK DeJOHNETTE : Drums
CHARLES FAMBROUGH : Acoustic Bass
MULLGREW MILLER : Piano
ARTURO SANDOVAL : Trumpet

(ビクター/JVC 1994年発売/VICJ-188)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,小川隆夫)

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松岡 直也 feat. トゥーツ・シールマンス & 松木 恒秀 / カレイドスコープ5

KALEIDOSCOPE-1 出発が他社に対抗するためのワーナー・グループによる「高音質盤」の作成のためにあった『KALEIDOSCOPE』(以下『カレイドスコープ』)だが,当の松岡直也にとって「高音質盤」なんて眼中なし。目指したのは,ただただお盛り上がりのセッション大会!

 『カレイドスコープセッションにおいて,プロデューサーより“フィーリング”として指名されたのがハーモニカトゥーツ・シールマンスギター松木恒秀であった。
 この主役の2人をサポートするために“御大”松岡直也が招集したメンバーが,ギター安川ひろし杉本喜代志土方隆行ドラム村上“ポンタ”秀一ベース高橋ゲタ夫長岡道夫パーカッションペッカーソプラノサックス土岐英史
テナーサックス清水靖晃トロンボーン向井滋春シンセサイザー助川宏という超豪華な面々である。

 そんな「WESING」と「KYLYN」が合体したような凄腕メンバーたちが「デジタル2トラック1発録り」という最高にシビレル演奏で燃え上がらないわけがない!
 『カレイドスコープ』の全5トラックは松岡直也作編曲の,本来はロック色やエレクトリック色を抑えた,すこぶるスムースでメロウなナチュラル・フュージョンであるが,そこに「デジタル2トラック1発録り」の興奮なのか,出来上がったのは“ジャズ寄りのフュージョン”である。

 ジャズの醍醐味であるインプロヴィゼーションが“生々しく”記録されている。特に主役格であるトゥーツ・シールマンス松木恒秀ソロ・パートが長めで,燃えに燃えたアドリブが“生々しく”記録されている。

 これは後日談であるが“御大”松岡直也トゥーツ・シールマンスと共演する前までは「大のハーモニカ嫌い」だったようで,実はトゥーツ・シールマンスソロ・パートはそれなりにしか準備していなかった。ただしリハーサルで聴いたトゥーツ・シールマンスハーモニカが“圧巻”で,松岡直也が急遽スコアを書き直してソロ・パートを伸ばしたとのこと。

 でも【FALL FOREVER】と【FANCY PRANCE】を聴き終わった感想は,もっとトゥーツ・シールマンスハーモニカを聴きた〜い,であった。
 全ての楽器がトゥーツ・シールマンスハーモニカと有機的に絡み合い,音楽の最も美味しい部分を抽出されたような明るく楽しい演奏に仕上がっている。実に素晴らしい。

 もう1人の“フィーリング”である松木恒秀ギターもいい。マイルドでありながらスパイシーなギターの独創的なリフが素晴らしく個人的に色香を感じる。
 『カレイドスコープ』で共演する4人のギタリスト松木恒秀安川ひろし杉本喜代志土方隆行は「横並び」かと思いきや,この4人の演奏を聴き比べてみると確かに松木恒秀ギターが“抜きん出ている”。
 松岡直也松木恒秀に合わせたのか,それとも松木恒秀松岡直也に合わせたのかは不明であるが,松岡直也フィーリング松木恒秀の音楽性が即興なのに充実感で満ちている。

KALEIDOSCOPE-2 多重録音で失われたフュージョン即興性を取り戻すべく,当時の最新技術「デジタル2トラック1発録り」が企画されたのだったが「高音質」企画の産物である“生々しさ”が臨場感を伝えている。
 でも大切なのは音楽性である。「デジタル2トラック1発録り」だから実現したライブ感。これである。

 『カレイドスコープ』とは,ただただお盛り上がりのセッション大会! 管理人が選ぶ“勝者”は村上“ポンタ”秀一だと思う。村上“ポンタ”秀一ドラムを耳で追いかけながら聴くのが最高に楽しい!

 最後に,1回限りの『カレイドスコープセッションだったはずが『LIVE AT MONTREUX FESTIVAL』でのトゥーツ・シールマンスとの再演が実現した。
 松岡直也トゥーツ・シールマンスを気に入ったばかりか,トゥーツ・シールマンス松岡直也を気に入ったという事実が『カレイドスコープセッションの成功を裏付けている。

 
01. FALL FOREVER
02. DRIED FLOWER & DRIED LOVE
03. IVORY ISLANDS
04. CADILLAC
05. FANCY PRANCE

 
NAOYA MATSUOKA : Piano, Keyboards
TOOTS THIELEMANS : harmonica
TSUNEHIDE MATSUKI : Guitar
HIROSHI YASUKAWA : Guitar
KIYOSHI SUGIMOTO : Guitar
TAKAYUKI HIJIKATA : Guitar
SHUICHI "PONTA" MURAKAMI : Drums
MICHIO NAGAOKA : Bass
GETAO TAKAHASHI : Bass
PECKER : Percussion
HIDEFUMI TOKI : Soprano Saxophone
YASUAKI SHIMIZU : Tenor Saxophone
SHIGEHARU MUKAI : Trombone
HIROSHI SUKEGAWA : Synthesizer

(ワーナー・ブラザーズ/WARNER BROTHERS 1979年発売/32XL-55)
(ライナーノーツ/山口弘滋)

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ボビー・ハッチャーソン / エンジョイ・ザ・ビュー5

ENJOY THE VIEW-1 ボビー・ハッチャーソンが37年振りにブルーノートへ復帰したことが話題となった『ENJOY THE VIEW』(以下『エンジョイ・ザ・ビュー』)であるが,管理人にはボビー・ハッチャーソンではなく“デヴィッド・サンボーン買い”であった。

 『TIMEAGAIN』の再演となる【DELIA】と【LITTLE FLOWER】収録。『TIMEAGAIN』のヴィブラフォン奏者がマイク・マイニエリだったから,別のヴィブラフォン奏者との共演を聴いてみたくなった。
 そのヴィブラフォン奏者が「たまたま」ボビー・ハッチャーソンだったというわけで,個人的にボビー・ハッチャーソンに有難みは感じていない。

 加えて“デヴィッド・サンボーン買い”2つ目の理由は,オルガン奏者のジョーイ・デフランセスコである。
 デヴィッド・サンボーンジョーイ・デフランセスコは『ONLY EVERYTHING』で共演済だし『HEARSAY』『CLOSER』『HERE & GONE』でのオルガン奏者との共演盤も脳裏によぎる。
 しばらくデヴィッド・サンボーンソロ・アルバムも出ていないことだし,これは絶対に買いでしょう…。

 でっ,ヴィブラフォンボビー・ハッチャーソンオルガンジョーイ・デフランセスコと組んだジャズサックスデヴィッド・サンボーンが素晴らしい。
 最近の不調がウソのようなデヴィッド・サンボーンの野太い鳴り! その秘密こそがセッション・リーダーであるボビー・ハッチャーソンの硬質なヴィブラフォンにあると思う。

 特に期待などしていなかったボビー・ハッチャーソンの存在感がとてつもなく大きいと思う。休止の時間帯でも「重し」として利いている。あれだけ騒がれるだけのことはある。
 ボビー・ハッチャーソンの“クールな”ヴィブラフォンが,デヴィッド・サンボーンの闘志に火をつけている。ボビー・ハッチャーソンと来れば「新主流派」の人であるが,どうしてどうして。
 ブルーノートボビー・ハッチャーソンと来れば『HAPPENINGS』ともう1枚が『OUT TO LUNCH』。そう。あのエリック・ドルフィーを“喰った”人だったのだ。

ENJOY THE VIEW-2 ボビー・ハッチャーソンの表情を伺いながら,デヴィッド・サンボーンジョーイ・デフランセスコが素晴らしいソロを取っている。ボビー・ハッチャーソンの音を聴き,ヴィブラフォンを邪魔することなく,きっちりと自分の音を鳴らしている。そんなデヴィッド・サンボーンの姿勢がいつになく野太い音色につながっているように思う。  

 『エンジョイ・ザ・ビュー』の聴き所とは,デヴィッド・サンボーンの「完全復活」! 「フュージョン界のスーパー・スター」としての看板を降ろして久しいが,ジャズを吹いてもブルースを吹いてもR&Bを吹いてもデヴィッド・サンボーンデヴィッド・サンボーン

 ジャズ・ファンにとっての『エンジョイ・ザ・ビュー』とは,ボビー・ハッチャーソンブルーノート・アゲインの記念碑的アルバムであるが“サンボーン・キッズ”にとっての『エンジョイ・ザ・ビュー』とは“エモーショナル”なデヴィッド・サンボーン・アゲインの記念碑的アルバムである。

 
01. Delia
02. Don Is
03. Hey Harold
04. Little Flower
05. Montara
06. Teddy
07. You

 
BOBBY HUTCHERSON : Vibes
DAVID SANBORN : Saxophone
JOEY DeFRANCESCO : Organ, Trumpet
BILLY HART : Drums

(ブルーノート/BLUE NOTE 2014年発売/UCCQ-1009)
(☆SHM−CD仕様)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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スガダイロー / スガダイローの肖像・弐5

スガダイローの肖像・弐-1 スガダイローという人は,単なる“ジャズ・ピアニスト”ではない。「新しい音楽の発明家」だと思う。
 『スガダイローの肖像・弐』の斬新な音楽性は,フリージャズからはみ出ただけでなく,ジャズというカテゴリーをも超えてしまっている。

 『スガダイローの肖像・弐』がジャズというカテゴリーを超えてしまった最大要因は,スガダイローの全く個人的な「好き」という感情が「これでもか!」と詰め込まれているがゆえであろう。
 【山下洋輔】の名前を筆頭に,スガダイローの好きなものの名前がズラリとメニュー表に並べられた感じ? ゆえに『スガダイローの肖像・弐』は「スガダイローの音楽」としか呼びようのないアルバムに仕上げられている。

 『スガダイローの肖像・弐』での演奏は相当に激しい。スガダイローの“伝えたい”が伝わってくる。
 その伝え方がいいんだよなぁ,これが。強引に「耳の穴をかっぽじって聞け」と圧をかけるスタイルではない。そうではなく,スガダイローの主張を分かってもらいたいという気持ちはあるんだけど,分かってもらえない人が大勢いることを前提に“分かりやすい”演奏に徹している。激しいけども厳しくない。初心者でも“ついていける”渾身のメロディー集だと思う。

 『スガダイローの肖像・弐』の印象は,フリージャズではなくピアノ・トリオを聴いていることを強く意識してしまう。ピアノ・トリオって,こんな音楽が作れるんだ,という印象である。
 う〜ん。ちょっと違うな。ピアノ・トリオではなくピアノなのだ。「ピアノを超えたピアノ」。これである。

 ピアノの鍵盤の数は88と決まっている。ビル・エヴァンスキース・ジャレットも,他のどんなピアニストであっても88の鍵盤の中で勝負している。
 しかし,この『スガダイローの肖像・弐』の中で,スガダイローは「88の鍵盤の呪縛」を超える音楽を創造している。
 そう。東保光ベースを89番目の鍵盤として,服部正嗣ドラムを90番目の鍵盤として扱っている。ねっ「ピアノを超えたピアノ」でしょ? ねっ「新しい音楽の発明家」でしょ?

スガダイローの肖像・弐-2  勿論,東保光ベースには東保光の音を感じる。服部正嗣ドラムには服部正嗣の音を感じる。
 つまりスガダイローは「王様」などではない。そうではなく東保光ベースの特徴をピアノ・トリオに取り入れる術を知っている。服部正嗣ドラムの特徴をピアノ・トリオに取り入れる術を心得ている。
 そう。一心同体=スガダイロー隊! ← このクダリ,分かりますかぁ?

 88の鍵盤の表現を超えた90の鍵盤だからできる表現が『スガダイローの肖像・弐』の中にある。新しいメロディーが鳴っている。こんな凄い音楽そう滅多に聴けるものではありませんよっ!

 
01.
02. 蒸気機関の発明
03. 山下洋輔
04. BLUE SKIES
05. さやか雨
06. 春風
07. 無宿鉄蔵毒団子で死なず
08. 寿限無
09. 戦国
10. 時計遊戯
11. 最後のニュース
12. ALL THE THINGS YOU ARE

 
DAIRO SUGA : Piano
HIKARU TOHO : Bass
MASATSUGU HATTORI : Drums

TONY CHANTY : Vocal
CHIZURU ISHI : Hand Drums

(ポニーキャニオン/PONY CANYON 2011年発売/PCCY-30194)

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サイラス・チェスナット / ビフォー・ザ・ドーン3

THE DARK BEFORE THE DAWN-1 管理人がサイラス・チェスナットを知ったのはマンハッタン・トリニティ以後のことである。
 マンハッタン・トリニティにおけるサイラス・チェスナットピアノが素晴らしい。繊細なピアノ・タッチで美メロのツボを確実に突いていく。カクテルっぽい部分が前面に出てはいるが,サイラス・チェスナットの“根っこ”にあるブルール・フィーリングが絶妙のバランスで“見え隠れする”のだから一瞬も聴き逃せない。さぁ,次はサイラス・チェスナットソロ・アルバムの番である。

 最初に手に取ったのが『THE DARK BEFORE THE DAWN』(以下『ビフォー・ザ・ドーン』)である。
 マンハッタン・トリニティを聴いて,恐らくはサイラス・チェスナットをたくさんコレクションすることになると思ったので,どうせなら古いものから順番に時系列で聴いていきたい,と『ビフォー・ザ・ドーン』の購入は先を見据えてのものであった。…が,しかし…。

 『ビフォー・ザ・ドーン』がハマラなかった。こんなにもゴリゴリでペラペラのピアノだったっけ? 全くスマートなジャズピアノではないし,かといってアーシーなジャズピアノでもない。
 サイラス・チェスナットの「地黒」って,管理人の嫌いなゴスペル専門系の「黒」だったのか?

 『ビフォー・ザ・ドーン』のサイラス・チェスナットは表情が沈んでいる。というか窮屈そうに奥まって,背中を丸めてピアノを弾いている。
 マンハッタン・トリニティの“看板”という立場から離れた途端,自分が本当に演奏したい音楽を見失ってしまった感じ?

 要はマンハッタン・トリニティにおけるサイラス・チェスナットの繊細なピアノ・タッチは,ベースジョージ・ムラーツドラムルイス・ナッシュに引っ張られての演奏なのだろう。
 そう。マンハッタン・トリニティの真実とは,サイラス・チェスナットの個性に合わせて“老練”2人が完璧にお膳立てしたフォーマット。後は
サイラス・チェスナットが譜面通りに演奏すれば成立する「美メロのジャズピアノ」。

 サイラス・チェスナットピアノを鳴らす「腕」には確かなものがある。緩急を付けた表現力には耳を奪われる。しかしジャズメン足るもの,そのテクニックを“どう使うか”が勝負である。何を“どう訴えかけるか”が勝負である。

 要はあのキラキラとした輝きはサイラス・チェスナット主導の音楽ではなかったということ。ジョージ・ムラーツルイス・ナッシュによって作られたサイラス・チェスナットの“虚像”であったのが残念でならない。

THE DARK BEFORE THE DAWN-2 サイラス・チェスナットの輝く場所とはメインではなくサイドメンとしてであろう。事実,サイラス・チェスナットはファースト・コールのサイドメンとして引っ張りだこ。リーダーからのリクエストを一瞬で掴む能力には類まれなものがある。

 超一流のジャズメンのすぐ側で弾くサイラス・チェスナットピアノはいつでもゴキゲンである。特に実際にヴォーカルが入るかどうかは関係なく,例えインストであっても「歌ものの伴奏」を演らせたら当代随一のピアニストである。

 だからこそサイラス・チェスナットの資質を見極めたジョージ・ムラーツルイス・ナッシュの凄さが分かる。
 管理人はもう2度とサイラス・チェスナットソロ・アルバムは購入しないが,サイラス・チェスナットの名前がサイドメンとしてクレジットされているだけで俄然聴いてみたくなる。

 ソロでも化けろ! 化けてみろ! サイラス・チェスナット

 
01. Sentimentalia
02. Steps Of Trane
03. The Mirrored Window
04. Baroque Impressions
05. A Rare Gem
06. Call Me Later
07. Wright's Rolls And Butter
08. It Is Well (With My Soul)
09. Kattin'
10. Lovers' Paradise
11. My Funny Valentine
12. The Dark Before The Dawn
13. Sometimes I'm Happy

 
CYRUS CHESTNUT : Piano
STEVE KIRBY : Bass
CLARENCE PENN : Drums

(アトランティック・ジャズ/ATLANTIC JAZZ 1995年発売/AMCY-1130)
(ライナーノーツ/リアンダー・ウィリアムズ,岩浪洋三)

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