『MUSIC FROM MO’ BETTER BLUES』の4曲目は【AGAIN NEVER】(以下【アゲイン・ネバー】)。

 『モ’・ベター・ブルース』のどのような場面で使われているのかは知らないのだが【アゲイン・ネバー】を聴いていると映画の1シーンを勝手に思い描いてしまう。

 その場面とはこうである。ジャズを愛しトランペットを愛する,将来を嘱望された主人公。
 ある日,幼ない子供を助けるために身を挺して不慮のケガ。あろうことか右手が負傷し,もうトランペットは吹けない,と医師から宣告されてしまう。絶望の淵に沈む主人公。
 もう人生は終わりだ,とばかりにバーボンに明け暮れる毎日。しかし財布の中には今でもマイルス・デイビスの写真がしのばせてある…。
 そう。どうしてもジャズトランペットが好きで忘れられないのだ。
 無意識のうちに人気のない河川敷へと足が向く。夕陽に向かって一音吹く。出た,最高の音が出た! と,歓びもつかの間。右手が以前のようには動いてくれない。またも奈落の底へと突き落とされてしまう。
 しかしもうあきらめない。右手がだめなら左手があるさ。いざ,レフト・ハンドのトランペッターへ…。
 根性の猛練習で奇跡のカムバック! 世紀のアドリブ! ジャズ・ジャイアントの誕生である。ねっ,素敵でしょ?

 なぁんてね。誠に自分勝手な“思い込み”というやつで,空想&妄想の頂点! でもこんな映画なら見てみたいでしょ? 誰かこんなジャズ映画作ってくれないかなぁ。
 あっ,『モ’・ベター・ブルース』。そう。『MUSIC FROM MO’ BETTER BLUES』。やっぱりスパイク・リーである。

 管理人はこのような“インスピレーション”を与えてくれる【アゲイン・ネバー】が大好きである。溢れ出る「ジャズ愛」に“ジーン”と感動してしまうのである。

 テレンス・ブランチャードの“哀愁”のトランペットに,ブランフォード・マルサリスの“黄昏”のソプラノ・サックスが実に良く合う。この“渋め”のトーンが全編を支配していく。
 そこへ“割って入る”ケニー・カークランドピアノが実にいい。1分51秒からのピアノソロは“弾きすぎず&引きすぎず”。自然なテンションの上がり方に感情移入してしまう。

 
BRANFORD MARSARIS : Tenor Saxophone, Soprano Saxophone
KENNY KIRKLAND : Piano
ROBERT HURST : Bass
JEFF 'TAIN' WATTS : Drums
TERENCE BLANCHARD : Trumpet

MUSIC FROM MO' BETTER BLUES-1
MUSIC FROM MO' BETTER BLUES
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