WELCOME TO THE MINORU'S LAND-1 「トレイン・シュミレーター」系の発売ラッシュで“売れっ子”となった向谷実であるが,向谷実ソロ・アルバムの歴史は『WELCOME TO THE MINORU’S LAND』(以下『ミノル・ランド』)から始まった。

 すでに現在の向谷実を予感させるトラックもあって大変興味深いのではあるが,一人多重録音による徹底した音楽へのこだわりは“鉄道おたく”を越えた“音楽おたく”そのものである。
 個人的趣味丸出し=素・本性・地の丸出しの完全に“自己満足の世界”ではあるが「由緒正しい」ソロ・アルバムなのだから誰にも遠慮はいらないはず。ここまで“やり切る”のが至極当然。ゆえに出来には文句な〜し。
 この“潔さ”そして“ハート・ウォーミング+陽気な音”が,カシオペア・ファンとしてはたまらなくうれしかった。

 最近の向谷実の“突出ぶり”ははなはだしい。以前から音楽活動以外でも,例えばFM東京「ビート・カフェ」でDJをやったり,NHKへの出演も多かったりと“正統派の話し手=司会屋実”として大活躍していたのだったが,近年の向谷実のファン層が“キーボードおたく&MCおたく”以上に“鉄道おたく”で埋め尽くされてきたからもう大変。
 今では旧友のよしみか「タモリ倶楽部」への出演も果たし,もはや向谷実を“カシオペアキーボード・プレイヤー”と紹介する人の方が少なくなってしまったのでは?

 そこで『ミノル・ランド』! このソロ・アルバムは,カシオペアの絶頂期にリリースされたこともあり,純粋に向谷実の“フュージョン愛”が感じられる。やはり向谷実の原点は“カシオペアキーボード・プレイヤー”である。

 さて『ミノル・ランド』発売時のカシオペアは,しばらくバンド活動を休止して,各自のソロ活動真っ盛り! メンバー4人全員がソロ・アルバムを同時期に制作していた。
 管理人はメンバー全員のソロ・アルバムを購入して聴き比べてみたが,向谷実の『ミノル・ランド』が,一番フュージョンからは遠く,一番カシオペアの音に近かった。

WELCOME TO THE MINORU'S LAND-3 それは向谷実キーボードの“響き”がカシオペア・サウンドの特徴となっていたからだろう。普段はギターベースを耳で追っているつもりだったので,こんな感想を持つなんて,正直,自分でも驚いてしまった。潜在意識の中では「カシオペア向谷実」がインプットされていたのかもしれない。

 そんな意外な新発見に気付いてからというものカシオペアの聴き方が変わったものである。向谷実カシオペアの「司会担当」などではなく「彩り担当」であった。
 尤も,一人多重録音は音質的にはNG。管理人は後年,高音質なゴールドCD盤仕様の『ミノル・ランド』を買い直してみたのだが,どうにも“薄っぺらい”機械音が嫌いで,未だ真剣に聴き込む気にはならない。読者の皆さんにも「カシオペア流の響き」が勝負のゼネラル・オーディオ向きと割り切って聴いてもらいたい。

PS 千葉へ上京してから実家に置いてきた『ミノル・ランド』をどうしても聴きたくなり「ゴールドCD盤」を買い足しました。実家に所有している『ミノル・ランド』の品番は「K32Y6027」です。CDジャケット写真を差し替えました。

 
01. 2つのピアノのためのプレリュード
02. ASIA
03. TAKE THE SL TRAIN
04. SPACE TRIP
05. RECOLLECTION
06. ROAD RHYTHM
07. KAKEI
08. FAMILY LAND
09. 1940

 
MINORU MUKAIYA : Keyboards, Piano

(キングレコード/ELECTRIC BIRD 1985年発売/228E6015)
(☆ゴールドCD盤仕様)
(ライナーノーツ/向谷実)

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サムエル記第二19章 ヨアブがダビデをたしなめる
アート・ブレイキー 『コンプリート・バードランドの夜 Vol.2