BRAIN-1 今月一日,上原ひろみさんがご結婚されました。おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
 “隠れ”上原ひろみファンとしては,いささかショックではありますが,本命ではなかったので…。なんてねっ。(強がっているのか,オレ)

 それで今回は管理人からの祝電として,上原ひろみの絶賛レビューをお届けしようと思います。
 あっ,先に断わっておきますが,ご祝儀でのリップサービスではありません。本音で語っても,上原ひろみの「元気がでるピアノ」が好きなんです。ただし“好き”と言えるようになるまでには紆余曲折がありました。
 まずはその辺の“揺れる”ファン心理から書き綴ってみようと思います。心情を吐露することで気持ちの整理を…。なんてねっ。

 さて,上原ひろみJ−ジャズ界の“時の人”として,ちまたで騒がれ始めてもう4年になるが,上記,結婚報道を目にしたのは,あの「ヤフー・ニュース」のTOP記事! もはや一ジャズ・ピアニストの域を超えてしまっている。いやあ,真にビッグになったものである。

 4年前の上原ひろみの大ブレイクは“正統派”ジャズ・ファンの間で物議を醸し出したものだ。当時の管理人と言えば,こちらもこれまた大ブレイク中のアキコ・グレースに肩入れしていたこともあり,アンチ上原ひろみ派に所属していた。
 デビューCDアナザー・マインド』の「非ジャズ的」な音造りが,おもしろくなかった。嫌いだった。不快に聴こえた。
 嘘ではなく,実際にCDラックで“お蔵入り”。上原ひろみと完全に「決別」するつもりで批評していた。未来永劫,二度と聴くつもりもなかった。

 ただし,このアンチ上原活動の本当の理由は(自分でも気付いていたのだが)アキコ・グレースを守るための本能! 追いかけてくる上原ひろみに「天才」「本物」だけが持つ“怖さ”を感じ取っていたからなのだと思う。
 “良くも悪くも”ピアノで自己主張してくる。訴えかけてくる。表情豊かな「表現者」の音世界に恐れをなしていた。

 そしてその脅威が管理人の中で現実のものとなった。きっかけはFMラジオ! 二度と聴くまい,と決めていた管理人の耳が奪われた。『BRAIN』(以下『ブレイン』)の特集だった。

 『ブレイン』で感じた“瑞々しさ”。これぞ従来のジャズの「殻」を打ち破って出現した,新時代のジャズ・ピアノジャズの伝統フレーズを聴かせてくれたと感じた次の瞬間に,前言を撤回させられてしまう。そう。異次元の音世界。これが真にジャズ・ピアノの「再創造」なのだと思う。

 『ブレイン』から,上原ひろみのチャレンジ精神がほとばしっている! ただしその圧倒的なエネルギーは“内へ内へ”と向かっている。繰り返し聴き込むリスナーだけが,一歩一歩“ベールを剥がすかのごとく”核心部分に迫ることができる。ついに上原ひろみの“熱狂”と対面できる。

BRAIN-2 これが“あの”上原ひろみなのか? 素晴らしい。前衛などではなかった。クリエイティブな王道ジャズ・ピアノ! 一人ラジオの前で“手を叩いて”絶賛してしまった。これぞ大傑作!
 もう抵抗する力など残っていなかった。あの圧倒的な音力に,変な意地を張っていた自分が途端にアホらしく思えた。管理人の中で何かが崩れ去った。上原ひろみ“開眼”の瞬間であった。どちらも応援しよう。いや,これからは上原ひろみを応援しよう。

 こうして強引?に(ただし自らの意志で)アンチ→熱烈ファンへと変貌させられたわけであるが,アンチの頃の後遺症が残っている。管理人の中で上原ひろみへの「好き」は,アキコ・グレースへの「好き」とは趣きが異なっている。
 そう。アキコ・グレースへの好きは「LOVE」であり,上原ひろみへの好きは「LIKE」であり「INTERESTING」なのである。

 そう。上原ひろみは「好き」と言うより「凄い!」と言うピアニスト。ニュアンス的には(単なる偶然だと思うが)上原ひろみと関係の深いチック・コリアの延長線上にある。
 チック・コリアも正直「好き」というよりは「気になる」ピアニストである。小学生時代の恋心よろしく,気になる気になるは「好き」の裏返しなのだと思う。

 これからも上原ひろみを毎晩聴くことはないだろうが,新作が出る度に買いたくなる,妙に気になり買わずにはいられない,ジャズメンの一人となるに違いない。
 うん。結婚されても応援しますよ。旦那さんとはもちろんのこと,管理人とも末永いお付き合いをお願いします。今でも愛しのひろみ嬢…。

 
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02. IF...
03. WIND SONG
04. BRAIN
05. DESERT ON THE MOON
06. GREEN TEA FARM
07. KEYTALK
08. LEGEND OF THE PUROLE VALLEY
09. ANOTHER MIND

 
HIROMI UEHARA : Piano, Keyboards
TONY GREY : Bass
ANTHONY JACKSON : Bass
MARTIN VALIHORA : Drums

(テラーク/TELARC 2004年発売/UCCT-1090)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/上原ひろみ,児山紀芳)

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