LIVE IN TOKYO-1 ラリー・カールトンラリー・カールトンの共演。あるいはロベン・フォードロベン・フォードの共演。それが『LIVE IN TOKYO』(以下『ライヴ!』)の真実である。

 ラリーがLでロベンがR! 後日そう知ったから戸惑いはないが,予備知識なしに『ライヴ!』を初めて聴いたあの夜の衝撃は大きかった。
 あのトーンにしてあのフレーズ。2人のエレキギターが全く同じに聴こえてしまう。極上のアドリブが流れているが,それがどちらのギター・ヒーローのものか気になってしまい,もうアドリブどころではない。愕然としてしまった。

 正直,聴き込み不足なのかもしれない。管理人はハッキリ言ってLAラインでは,ラリー・カールトンでもロベン・フォードでもなくリー・リトナー命でしたので…。でもそれにしても,人並み以上にラリー・カールトンロベン・フォードを聴いてきたはずなのに…。
 そうなんだ。『ライヴ!』とはコンセプト・アルバムなんだ。『ライヴ!』のコンセプトとは「競演」ではなく「共演」だったんだ。

 ラリー・カールトンロベン・フォードギター・スタイルの“地”は似ている。2人とも「シティ系のブルース・サウンド」が魅力のギタリストである。基本ブルースであるがロックもあればフュージョンもある。
 その“似た者同士”の2人が,思う存分遠慮なしの手加減なしで,互いの得意フレーズにどんどん踏み込んでいく。クロスオーヴァーして当然である。

 一部でバトルも出るけれど主役はあくまでも自分ではなくリスペクトする共演者である。ラリー・カールトンロベン・フォードに合わせれば,ロベン・フォードラリー・カールトンに合わせている。競争心など微塵もない。
 『ライヴ!』の名演は,お互いに相手をリスペクトしてきた成果であろう。一夜限りのライブにして「絶妙のコンビーネーション」が最高である。

 悪く言えば2人の“らしさ”が消えているのだが,それは当の2人が望んでのこと。ラリー・カールトンロベン・フォードのカラーが溶けあい,ラリー・カールトンでもロベン・フォードでもない“NEWラリー”と“NEWロベン”が聴ける! ここが『ライヴ!』の最大の聴き所である。

LIVE IN TOKYO-2 尤もラリー・カールトンにしてもロベン・フォードにしても自分のソロの時間は“ギンギン”である。
 ラリー・カールトンは最初に大きな絵を描いて息の長いフレーズでアドリブを組み立てる。一方のロベン・フォードは短めのピースを徐々に完成させて全体を書いていくタイプ。最終的に同じ絵を描いているのだが,制作途中の筆遣いに“手癖”の違いが聴き取れる。
 バッキングに回った時の“節回し”の方が個性の違いが分かりやすいかな? ストレートにフレーズを刻むロベン・フォードに対しラリー・カールトンは何かとひねりたがっている?

 う〜む,この論調で2人の特徴を書き綴るとすると「じゃあどっちが凄い?」と白黒つけたくなってくる。でもそれは『ライヴ!』のコンセプトには似合わない。
 ここは頭をカラにして,ただぼんやりと“2人で1人の”ギター・サウンドに身を委ねてみてほしい。繰り返し聞き続けると,いつしかこの“ハーモーニー”が癖になる。この“味”が分かり出すと,次第にラリー・カールトンと共鳴できるようになる。次第にロベン・フォードとも共鳴できるようになる。

 そう。共演の“喜びの輪の中に”読者の皆さんも“割って入れる”不思議体験! ラリー・カールトンロベン・フォードの快感を感じ取れ!

 
01. That Road
02. Burnable
03. Cold Gold
04. Rio Samba
05. Derrick's Blues
06. Two Bad
07. Talk To Your Daughter
08. Too Much

 
LARRY CARLTON : Guitar
ROBBEN FORD : Guitar
JEFF BABKO : Keyboards
TOSS PANOS : Drums
TRAVIS CARLTON : Bass

(ビクター/335 RECORDS 2007年発売/VICJ-61429)
(ライナーノーツ/成田正)

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