
そんな中,管理人が大枚をはたいてでもどうしても手に入れたい,正真正銘の「幻の名盤」がある。それが『RAY BRYANT PLAYS』(以下『レイ・ブライアント・プレイズ』)! ジャズ・ピアニスト=レイ・ブライアントの最高傑作である。
「幻の名盤」の『レイ・ブライアント・プレイズ』のエピソードは,今や中古市場での語り草。
驚くなかれ! 『レイ・ブライアント・プレイズ』のシグネチュア原盤(LP)の取引価格が,嘘か誠か,何と30万円超え! 要因はマイナー・レーベル=シグネチュアゆえの“少量生産”にあるのだろうが,単なる希少価値を超えた,これぞ黄金伝説である。
“一枚30万円”の幻のジャズLP! この言葉にマニアの血が沸き立たないはずがない! まだ年若く血気盛んだった管理人は『レイ・ブライアント・プレイズ』を求めて東京近郊のジャズ喫茶をハシゴした末,ついに高田馬場「イントロ」で拝聴することができた。
第一印象はムムッ,ほら見たことか。やっぱり眉唾物じゃないか…。これは今思うに「幻の名盤」の“化けの皮を剥がしてやろう”と手ぐすね引いて乗り込んだせいなのだろう。
実は,管理人が『レイ・ブライアント・プレイズ』の真価に接したのはそれから数年後のことである。あの日の印象は忘れることができない。
特にお目当てがあるわけではなく“普段着”で出かけた「イントロ」の店内。流れ出した【デロネェのジレンマ】に,コーヒーをすする手が止まった。続く【ブルー・モンク】で耳がダンボになり【ミスティ】でかかってしまった“金縛り”を解くべく,レコード・チェックに向かった先で目にしたLPとは…。それが『レイ・ブライアント・プレイズ』であった。
レイ・ブライアントの優しいピアノ・タッチが“やけに”切々と訴えかけてくる。決して押しつけるではなく,あの圧倒的な存在感は管理人好みのピアニストの音であった。
パウエル,モンク,エヴァンスのラインとは違う,ソニー・クラーク・ラインでの好みである。そう。レイ・ブライアントのピアノには「優しさと黒さ」があるのだ。ここに“一枚30万円”の値をつけたジャズ・ファンの耳の確かさを思い知らされた。
2003年某日,あの日以来“恋い焦がれ続けた”『レイ・ブライアント・プレイズ』が,ついに我が家へやって来た。
…と言っても,30万円で購入したわけではない。2500円。そう。CD復刻盤に形を変えてのお出ましであった。こんな安値なのに高音質で手間いらず。“庶民派”ジャズ・マニアにとっては良い時代になったと思う。
ところがVIP待遇でお迎えしたはずの『レイ・ブライアント・プレイズ』が鳴いてくれない。あれ? でも大丈夫。『レイ・ブライアント・プレイズ』の真価は2回目から…。やっぱりそうだ。3回目。来た来た。4回目。ニンマリ笑顔。ああ,もっと早く手に入れるべきだった。ずっと手元に置いておきたいと思う。
『レイ・ブライアント・プレイズ』は「幻の名盤」に違いない。ただし現在は「幻の名盤」などではない。入手可能な大名盤!
読者の皆さんにも“一枚30万円”のジャズ・ピアノの真価を是非体感していただきたいと思う。『レイ・ブライアント・プレイズ』は聴き込めば聴き込む程味が出る“スルメ盤”である。
01. DELAUNEY'S DILEMMA
02. BLUE MONK
03. MISTY
04. SNEAKING AROUND
05. NOW'S THE TIME
06. WHEATLEIGH HALL
07. DOODLIN'
08. A HUNDRED DREAMS FROM NOW
09. BAGS GROOVE
10. WALKIN'
11. TAKE THE "A" TRAIN
12. WHISPER NOT
(シグネチュア/SIGNATURE 1960年発売/TOCJ-9474)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,杉田宏樹)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,杉田宏樹)