FOUR BY FOUR-1 『FOUR BY FOUR』(以下『4 X 4』)とは「カシオペアの4人 VS リー・リトナー・グループの4人」の意。
 そう。『4 X 4』は“我らが”カシオペア初の他流試合=セッションCDである。

 ライナーノーツを読んで驚いた。『4 X 4』の録音時間はわずか9時間であった。いくら“世界の”リー・リトナー・グループとはいえ,来日翌日の,しかもノー・リハーサルという悪条件で,準備万端迎え撃つ,超絶技巧集団=カシオペアとの“ガップリ四つ”! 恐るべしリー・リトナー・グループ! とりわけネーサン・イーストハービー・メイソンのリズム隊は,一音でジンサクを沈黙させる程,重く腰が低いはずなのに手数でも勝っている!
 この『4 X 4』との出会いが,リー・リトナーとの出会いであり,管理人の“フュージョン熱”を(良くも悪くも)加速させた原因だったと思っている。

 ( 以下,管理人の回想シーン )

 ジャズフュージョンを聴いていると(たぶん皆さんも経験あると思いますが)この音は誰の音?という疑問に出くわす。そこへ来ての『4 X 4』。分からない。
 このフレーズは誰が弾いているの? このギター野呂さんなの? リー・リトナーなの? 全く同じ音がする。あれっ,これってツイン・ベースツイン・ドラムだったの? ETC

 湧き上がる疑問を解決するため,ライナーノーツ片手に『4 X 4』のヘヴィー・ローテション!
 しかし8人同時の演奏をいくら聴いたところで当然わかるはずもなく,8人の特徴を“せっせと掴む”ため,再びカシオペア名義のCDの海へ,リー・リトナー名義のCDの海へと飛び込む毎日に没入するのだった…。(完)

 そのような涙ぐましい努力を続け,ついに『4 X 4』の演奏が解読できる日がやって来た。うれしい。その時の感想が上記“ガップリ四つ”! しかしこれはひいきめだったかも?
 学生時代は,カシオペアと互角に渡り合うなんて,と思っていたが,今聴き返すとリー・リトナー・グループのフレーズが“一枚上手”のハイセンス! “受け”に回ったリー・リトナー・グループが“先手”カシオペアの意図通りに合わせている。彼らとしては普通にやっていることなのだろうが実は相当に凄いことなのだと大人になって認識した次第です。恥ずかしい〜。

 そんな思い入れタップリの『4 X 4』の聴き所は,カシオペアのメンバー個々の戦闘力(ミュージシャン・シップ)!
 カシオペアの最大の魅力は「バンド・サウンド」である。個々の超絶技巧が“一丸となって”複雑で高速なユニゾンを奏でる「バンド・パワー」である。
 国内では“向かう所敵なし”のカシオペアの元に,ある日,スタッフが果たし状(企画書)を持ってやってきた。果たし状の中身がタイバンならいつでも受けられる。しかし今回の中身は「バンド対バンド」ではない。カシオペアが勝手知る【GALACTIC FUNK】など6曲を,4人ではなく8人でセッションするのだ。“カッチリまとまりきれない”即席バンドの中に放り込まれた8人のミュージシャン・シップの“熱きソロ・バトル”が聴き所なのである。

FOUR BY FOUR-2 結果はプロデューサー・宮住俊介氏の“狙い通り”8人の個性がブツカリ合い,素晴らしいセッションに仕上がっている。
 相手のフレーズに引っ張られるでもなく,自分の世界に完全没入するでもなく“アイディア豊かで自由なアドリブ”で,互いの顔を研ぎ合ううちに,リー・リトナー・グループの4人の名手に追いつき,追い越さんばかりに“肉薄”している。
 「他流試合で通用する人材になれ」と語ったのは“鉄道の”カシオペアのJRプロデューサーのお言葉であるが“J−フュージョンの”カシオペアの4人は『4 X 4』で「セッションで通用する超一流のジャズメン」となった!

 『4 X 4』の豪華競演盤で“世界に目を向けた”カシオペアの4人は,次作『フォトグラフス』のレコーディングが始まるまでプチ充電期間に入る。野呂一生はインド。向谷実はヨーロッパ(向谷さんの場合は,フュージョンの武者修行を兼ねたメインはヨーロッパの鉄道旅行でした)。桜井哲夫はブラジルとジャマイカ。神保彰はニューヨーク。そう。次なるステージ,目指すは世界だ!

  01. MID-MANHATTAN
  02. PAVANE -Pour Une Infunte Defunte-
  03. TRANSATLANTIC
  04. GALACTIC FUNK
  05. KAUAI
  06. CHANDELIER

(アルファ/ALFA 1982年発売/VRCL-2208)
(ライナーノーツ/野呂一生,宮住俊介)
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