DOWN UPBEAT-1 “手に汗握る演奏”とは『DOWN UPBEAT』(以下『ダウン・アップビート』)のためにある! 『ダウン・アップビート』の放つ“殺るか殺られるか”のごとき緊張感,凄まじい熱気は,カシオペア史上最高である!

 重くダークに「ダウン・アップするビート」が実に“生々しい”! 『ダウン・アップビート』が流れると,そこはいつでもライブ会場の最前列! カシオペアが自分の目の前で演奏している。しかしこのド迫力は最前列では聴いていられない。後ずさりして3列目まで逃げ出してしまいたくなる位の“生々しさ”!
 『ダウン・アップビート』を数ヶ月の間隔を空けて聴く場合は,大抵ヘッドホンのボリュームを下げてしまう。

 『ダウン・アップビート』の“生々しさ”は,オーバー・ダビングなしの“一発録り”から来ている。普段からカシオペアの演奏は凄すぎるのだが“一発録り”となると更に凄い! ライブ盤でも感じる“桁外れの”集中力の確かさは,さすがにスタジオ・ライブの精密描写!
 『ダウン・アップビート』と『THE PARTY』は“前のめりの後ノリ”が理路整然と炸裂している。

 神業級のアクロバティックな演奏力が図抜けている! 「どうだ,まいったか」と,口では言わないが4人が演奏で口走っている! 「できるものなら完コピしてみろ」とも言わないが“泣く子も黙らす”超絶技巧でライバルたちを叩きのめす! 野呂一生ギタリストとしての,向谷実キーボード・プレイヤーとしての,桜井哲夫ベーシストとしての,神保彰ドラマーとしての“プレイヤー気質”が頂点に達したような貫禄の演奏!
 こんな演奏,世界中を見渡してもウェザー・リポートカシオペアにしかできやしない!? ← ちょっと買いかぶり過ぎでしょうか?

 『ダウン・アップビート』で,カシオペアは新たなステージに突入した。それこそ“世界”である。

DOWN UPBEAT-2 前作『ジャイヴ・ジャイヴ』から『ダウン・アップビート』のレコーディングの間,カシオペアは世界のジャズフェスを“はしご”してきた。スイスのモントルーではマイルス・デイビスの前座を務めマイルス・デイビス以上に観客を沸かせ,オランダのノースシーでは8000人の観客を総立ちにさせてきた。
 そのままの勢いで乗り込んだ最後のライブ・ステージ=ニューヨーク録音の『ダウン・アップビート』には“世界のカシオペア”の余韻が香り立っている。

 折りしも『ダウン・アップビート』発売時はロサンゼルス・オリンピックの真っ最中! 日本も森末や山下が金メダルを獲得したが“アクロバット一発録り”競技があったなら『ダウン・アップビート』が金メダル! “世界のカシオペア”は,フュージョン競技の金メダリストである。

  01. ZOOM
  02. DOWN UPBEAT
  03. THE CONTINENTAL WAY
  04. ROAD RHYTHM
  05. FROUFROU
  06. HOMESTRETCH
  07. NIGHT STORM
  08. COOKIN' UP
  09. TWILIGHT SOLITUDE
  10. AIR FANTASY

(アルファ/ALFA 1984年発売/VRCL-2232)
(ライナーノーツ/野呂一生,宮住俊介)

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