NEW-S-1 『ハイパー・サックス・プレイヤー,本田雅人加入。ヴァージョン・アップしたニュー・サウンド』!
 このCD帯を見て初めて,T−スクェアのフロントが本田雅人へ交代したことを知った。

 T−スクェアは伝統的に?メンバーの出入りが激しいバンド。しかしT−スクェアの,いや,J−フュージョン界の“顔”であった伊東たけしの脱退にはさすがに落胆を覚えた。「またか」ではなく「まさか」のビッグニュースであったのだ。

 ちょうどカシオペアジンサクに生じた内部分裂の傷が癒えたばかりだったのに…。またしても管理人の青春が,一つの時代が終わった瞬間であった。
 …が,まだのりピーととろりんがいるではないか!っと思ったのもつかの間,管理人を癒してくれたのはのりピーでもとろりんでもなく“新生”T−スクェアの音=本田雅人の音・音・音! 本田雅人の“ハイパー・サックス”が,管理人の不安な気持ちを一息で吹き飛ばしてくれたのだ。

 とにかく『NEW−S』(以下『ニュース』)は,1曲目の【MEGALITH】に尽きる!
 誰が言ったか「メガリス・ショック」! このインパクトはT−スクェア史上最強である!
 とにかくカッコイイ。音にしびれるとはこのことである。超テクニカルでアグレッシブな演奏力のプレッシャーに,思わず後退りする感じ!? チック・コリア・エレクトリック・バンドの日本初ヴァージョン!? 過去のハードな名演PRIME】【TRUTH】【ARCADIA】とも別物。これまでのスクェアでは感じなかった“異次元の”カッコ良さ! (どうしてかなぁ)どこか“イモっぽい青年然”としていたスクェアがついに“シティ系”へと大変身! 徹底的に都会的センスで固められている。

 世のサックス・ファンは皆,本田雅人なら抱かれてもよい?( ←たしか,伊東たけしの擁護者たちによって,新加入の本田雅人はジャニーズ系だと「ルックスの良さ」を揶揄されていました。そこしか攻撃できる箇所がなかった? 今となってはバカバカしい話ですが,物語るは当時の伊東人気の凄まじさ! )

 そう。【MEGALITH】で,スクェアが“新生”スクェアとなった。
 『WAVE』でのザ・スクェアT−スクェアへの改名は表面上の変化にすぎない。【MEGALITH】が起こした「メガリス・ショック」こそ,T−スクェアの真の転換点。「その時歴史が動いた」のだ(←NHK風)。

 メンバー全員が“バカテク”の持ち主であるスクェアだが,バンドの基本として“必然性のないバカテク”を披露することは決してない。売りはどこまでも楽曲の良さ! この“志の高さ”がマーカス・ミラーに通じる好感度UP。

 しか〜し『ハイパー・サックス・プレイヤー,本田雅人加入。ヴァージョン・アップしたニュー・サウンド』のコピー通り,本田雅人の目指す“ハイパー・サックスな音造り”の構図は必然的にテクニカルにならざるを得ない。
 指を攣らせながらも,必死で本田雅人に追随しようとする他の4人。そう。ビッグ・バンド・アンサンブルで鍛え上げられた本田雅人サウンドは120%の演奏力が求められるのだ。

 そう。「メガリス・ショック」を経て,T−スクェアの演奏がレベルアップしている。もともと「伝説の5人」として完璧に出来上がっていたところへ“激薬”本田雅人の投入。躍動感溢れるフレージングがいけどもいけど加速する。
 【MEGALITH】の凝りに凝ったアレンジは生演奏には不向きである。「せーの」で録ってドラム以外は何度も録り直し。そりょそうなるわなぁ。

 とりわけスクェア・サウンドの変化の特徴がソプラノ・サックスの活用にある。
 本田雅人の写真を見ると手にはいつでもアルト・サックス(今でも本田雅人のジャケ写の友はアルト・サックスです)。本田雅人がマルチリード・プレイヤーだとは知らなかった。伊東たけしの後釜なのだから本田雅人アルト吹きだと疑わなかった。
 聴けば聴く程,本田雅人株が急上昇! こんなアルト・サックス聴いたことなどない〜! 後日,本田雅人ソプラノ吹きであることを知って,な〜んだ,だったのだが,その時は既に本田雅人=天才の公式がすり込まれた後の祭り。ただし本田雅人=天才の公式は訂正する必要はないだろう。
 そう。本田雅人ソプラノ・サックスが“新生”スクェアのトーンである。

NEW-S-2 さて,そんな「メガリス・ショック」な『ニュース』であったが,管理人が『ニュース』を聴きたく思うのはいつも【MEGALITH】以上に【WHEN I THINK OF YOU】である。

 『ニュース』での本田雅人の演奏はテクニカル全開で実に素晴らしい。1曲目から9曲目までは「メガリス・ショック」を“引きずっている”自分がどこかにいた。
 しかし『ニュース』の最後で辿り着く【WHEN I THINK OF YOU】に本田雅人の“全て”を聴いた思いがした。

 伊東たけしアルト・サックスは“味”があった。ちょっとくすんで苦味ある伊東たけし特有の“味”である。
 【HEARTS】【FORGOTTEN SAGA】のバラードは“伊東たけしあってこそ”の名演であった。
 そんな伊東たけしへの断ち切れない思いが交差する中流れ出した【WHEN I THINK OF YOU】。イントロの和泉宏隆ピアノのトーンに,バッチリハマル,本田雅人アルト・サックスが泣いていた。情感が込められ過ぎている。く〜っ。

 やはり,本田雅人なら抱かれてもよい? これマジでハートを鷲掴み状態。こんなに豪快に吹き上げているのにロマンティック本田雅人アルト・サックスと一緒に幾晩泣いたことだろう。もはや真打=本田雅人アルト・サックス登場前に,和泉宏隆ピアノが鳴り出した時点で涙腺が…。
 この時,管理人は2●歳。現在4●歳の管理人は『ニュース』をCDトレイにセットしただけで泣けてしまう。もはや病気である。

 本田雅人作【MEGALITH】で幕が開け,本田雅人作【WHEN I THINK OF YOU】で幕が閉じる“フィーチャリング本田雅人”な“新生”スクェア
 タイトルの『NEW−S』は『NEW SQUARE』だから『NEW−S』なのだとさ。T−スクェアが10歳は若返りましたとさ。

  01. MEGALITH
  02. ガーティの夢
  03. 真夏のためいき
  04. LITTLE LEAGUE STAR
  05. YOUR RESTLESS EYES
  06. MIDNIGHT CIRCLE
  07. THE SUMMER OF '68
  08. NAB THAT CHAP!!
  09. ROMANTIC CITY
  10. WHEN I THINK OF YOU

(CBSソニー/CBS/SONY 1991年発売/CSCL1691)
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