SWEET SPHERE-1 バンド名義とソロ名義では,敢えて違ったサウンド・カラーを打ち出すものだが,カシオペアギタリスト野呂一生のファースト・ソロ『SWEET SPHERE』は,カシオペアの「外典」であった。

 尤も,野呂一生自身はカシオペアとは異なるアプローチを試みている。その最大要因はインストの禁じ手「ボーカルの導入」にある。
 ギタリストのソロなのに歌ものメイン。ファン待望の「ギター弾きまくり」はなし。ギターがバックでボーカルを支えるユニゾン・タイプ&メロディに重きを置いた“野呂一生流のコンテンポラリー”。ちょっとAORっぽい?

 『SWEET SPHERE』には「世界初の3拍子ファンク」と称えられた【BRIGHT TIMES】など“リズムに凝りまくった”一面もある。
 なんせリズム隊はLAのスーパー・フュージョン・スター軍団。ネイサン・イーストベースジョン・ロビンソンドラムポリーニョ・ダ・コスタパーカッション。何でもできる〜。
 ポリーニョ・ダ・コスタとは『アイズ・オブ・マインド』で,ネイサン・イーストとは『4 X 4』以来の再共演もうれしいが,管理人的にはジョン・ロビンソンドラムが好きなんだよなぁ。

 この“艶やかなリズム隊”と絡むのがスクェア絡みでお馴染みの?ジェリー・ヘイゲイリー・グラントラリー・ウィリアムスの「シーウィンド・ホーンズ」。なんともゴージャスな響きがアクセントである。

 「ボーカル+艶やかなリズム隊+ゴージャスなブラス隊」を導入した『SWEET SPHERE』。カシオペアを離れて野呂一生でなければ奏でられない音が出来上がるはずだった…。
 しか〜し,完成した『SWEET SPHERE』は「サンタモニカ〜♪」な「西海岸のカシオペア・サウンド」。やっぱり野呂一生のアイデンティティはカシオペアに色濃く反映されていた。

 『SWEET SPHERE』を聴いて,管理人はジャズメン・野呂一生の大物ぶり=リーダー気質を確信した。
 カシオペアでも,向谷実桜井哲夫神保彰をリードしてきた。ソロとなってもネイサン・イーストジョン・ロビンソンポリーニョ・ダ・コスタジェリー・ヘイゲイリー・グラントラリー・ウィリアムスをリードする。
 メンバーの個性を理解し,それを自分の理想の音楽性の実現に組み入れる才能。野呂一生は素晴らしいバンド・リーダーなのだ。

 例えば【YOU CAN DO IT】でのユニゾン。ボーカルのバックで“歌うギター”。例えば【IN OUR WAY OF LIFE】でのユニゾン。ブラスのハーモニーから“飛び出すギター”。く〜っ。
 ギターを殺したアレンジが逆に糸を引いている。知らず知らずのうちに野呂一生ギターばかりを追いかける自分に気付く。

SWEET SPHERE-2 管理人の結論。『SWEET SPHERE批評

 『SWEET SPHERE』は,絶頂期のカシオペアのオーヴァー・ダビング作。イメージとしては『HALLE』ではなくて『PHOTOGRAPHS』系統である。
 そう。『SWEET SPHERE』は『PHOTOGRAPHS』の「外伝」である。

PS ソロCDの一発目を【BRIGHT TIMES】に決めたのは,パット・メセニーの【BRIGHT SIZE LIFE】を意識してのことですか?

  01. BRIGHT TIMES
  02. THE MESSAGE IN THE NIGHT “SMOOTH
     ROMANCE”

  03. IN OUR WAY OF LIFE
  04. TRANSPARENCY
  05. YOU CAN DO IT
  06. MOON DANCE
  07. WISHFUL THINKING
  08. SWEET SPHERE “A LIGHT BLUE LULLABYE”

(ビクター/JVC 1985年発売/VICJ-18177)

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