
これは正しい情報である。しかし管理人は長いこと『ウェルカム』を,モントルー・ジャズ・フェスティバルのライブ盤,だと思い込んでいた。
誤解のきっかけは『ウェルカム』封入のライナーノーツ。そこには延々と1983年のモントルー・ジャズ・フェスティバル出演時のドキュメントが綴られている。1時間20分の演奏時間とも書かれている。そう。『ウェルカム』の真実である,2曲のスタジオ録音と六本木ピット・インでのライブが半分以上との説明はない。
しかしこれは誤植ではない。きっとこれはワーナー・パイオニアの狙いであったのだろう。そしてこの全てを松岡直也も容認したのだろう。そう。『ウェルカム』は“仮想”モントルー・ジャズ・フェスティバルの完全実況盤なのである。
2曲のスタジオ録音トラック=【ザ・マジシャン(オープン・セサミ!)】【シオン−ウェルカム】の演奏も,5曲の六本木ピット・インでのライブ・トラック=【ア・ソング・オン・ザ・ウィンド】【九月の風】【アモローサ】【モノローグ】【夕なぎ】の演奏も,あの日,あの時,モントルーで演奏した“雰囲気そのまんま”に録音されているのだ。
騙されたと思って1度「レマン湖のほとり」を思い浮かべながら聴き通してみてほしい。録音の場所も日時も異なれど(当然音質も異なれど)一夜のショーに異論なし。
まずは1曲目の【ザ・マジシャン(オープン・セサミ!)】の存在である。原曲は『海辺のステファニー』収録。『海辺のステファニー』収録の【ザ・マジシャン】は中近東チックなアレンジなのに対して『ウェルカム』ヴァージョンは疾走感溢れるラテン・ロック・アレンジ。この臨場感溢れる演奏に,ずっとライブ・テイクと信じて疑わなかった。
そしてラストの【シオン−ウェルカム】でのフェード・インする拍手と高橋ゲタ夫のメンバー紹介。その後,観客の歓声に呼応して始まる松岡直也のリリカルなアドリブ。これはライブならではでしょ? しなやかなリズムとメロディ・メイキング。この臨場感溢れる演奏に,ずっとライブ・テイクと信じて疑わなかった。
正真正銘のライブ・テイク=モントルー・ジャズ・フェスティバルと六本木ピット・インでのライブ・テイクで感じる松岡直也のオリジナリティ。「外タレ」ラテン・フュージョン・バンドに興奮したのはスイスの観客だけではない。ピット・インの観客の熱狂振りは「外タレ」のソレ。そう。スイスでも日本でも同じ熱狂=舶来のリズム天国と哀愁の美メロにメロメロなのだ。
『ウェルカム』を聴けば,読者の皆さんも一音でライブ会場へとトリップできる。ここは“仮想”モントルー。隣りには松岡ファンのスイス人。きっと大勢の観客と共に【サンスポット・ダンス】に踊り狂うことだろう。
※ 『ウェルカム』批評のジャケット写真はミュージック・カセット・テープ版です。
01. THE MAGICIAN(Open Sesame!)
02. A SONG ON THE WIND
03. THE SEPTEMBER WIND
04. AMOROSA
05. MONOLOGUE
06. EVENING CALM
07. MAPLE WIND
08. SUNSPOT DANCE
09. A FAREWELL TO THE SEASHORE
10. TOUCH THE NEW YORK PINK
11. CHILLON-WELCOME
(ワーナー・パイオニア/WARNER-PIONEER 1983年発売/LKI-3012)
(ライナーノーツ/I.O.)
(ライナーノーツ/I.O.)