アナザースカイ / 上原ひろみ 昨日,日本テレビ系(FBS)「アナザースカイ」にジャズ・ピアニスト上原ひろみが出演しました。

 上原ひろみアナザースカイ(海外にある,第2の故郷)。それは6年在住しているニューヨーク。「ニューヨークには強大なエネルギーがつまっている。世界中からいろんな国の人が集まって切磋琢磨してここで夢を掴もうとしている。何かに向かって頑張っている人たちの中に身をおくと,凄く刺激を受ける」。

 そう語る上原ひろみ自身も「夢を掴もうとして」ニューヨークへとやってきた1人。「音楽は音楽から作られるものではなく,人との出会いやいろんな刺激から作られる」。そう信じて法政大学を中退してボストンのバークリー音楽院へと留学。
 ボストンからニューヨークで演奏がある時にいつも利用していたバス・ターミナル。10ドルで4時間のチャイナタウン・バス。「自分にとってのスタートラインというか,ここで降りて初めてニューヨークでライブをしたので,背筋が伸びる感じがある」。うん。ホーム・グラウンド。

 それから6年。現在の上原ひろみのホーム・グラウンドはブルーノート。そう。「ジャズの聖地」。実力を認められた者だけが出演を許される憧れの舞台。
 そこに立つだけでも大変だが立ってからの方がもっと大変な場所。お客さんよりもウェイターの方が多いステージ。幼なく見られるので心配そうな客の視線。音を弾いまでは…。
 「音が全てを飛び越えていく」「全部即興演奏なので,いい時は自分で演奏しているよりも音楽に連れられていく感覚がある」と語る上原ひろみの絶対の自信! 客もまばらな昼公演から耳の肥えたファンで埋まる夜公演へとステップアップ。そして今年日本人としては初めて7年連続7日間公演を成功させた。真にブルーノートがホーム・グラウンド。

 NO。“売れっ子”上原ひろみに安住の地はない。「年間100日150公演」のワールド・ツアー。しかしライブ大好き=上原ひろみは「世界は広いので,どこの場所に行っても必ず自分のことを知らない人がいて,初めて私の音楽に触れてくれる人がいる。そういう意味では“生涯ルーキー”でいられる」と過酷なツアー生活を楽しんでいる。貪欲だよなぁ。
 人間,年齢と共に自分にとって未知の世界や不慣れなことは避けたくなるもの。しかし上原ひろみは“生涯ルーキー”と,とても前向きに捉えている。これが世界的ジャズ・ピアニストとして名声を得た現在でも成長し続けている秘訣なのかなぁ。

 オフの過ごし方についてのインタビューの中では「時間がある限りピアノに触っている。練習すればするほどステージで上達を感じる瞬間があるのでやめられない」ということで“手羽先風”のピアノ筋を得意気に披露。
 “練習の虫”上原ひろみにスランプはない。上原ひろみが考えるスランプとは「さなぎ期間」。やり続ければ必ず出られる所はスランプではないし,逆に抜けた時に必ず前の自分に見えなかったものが見えるに違いない」と語っていた。

 実際に矢野顕子との4時間を越える壮絶な練習風景がオン・エア。【りんご祭り】の同じフレーズを4時間も繰り返す。休憩を一切取らないからレコーディング中でもエンジニアやアシスタントが倒れるそうだ。上原ひろみは星飛雄馬以上の“練習の虫”である。

 その他「落語って一生をかけて成長していく芸なので音楽と似ている。年輪を積み重ねながら階段をこつこつ昇るような感じが好きだ」。「ラーメンはピアノに通じる。1杯に託された一発勝負。1杯1杯新鮮な気持ちで湯きりしたりとか。自分が公演に臨む時に,それがツアーの何公演目であっても常に最初で最後だと思いたいし」などと,ジャズ・ピアニストならではの目線で落語道やラーメン道の楽しみを語っていた。
 上原ひろみにとってニューヨークという場所は「オフの時はホーム。オンの時は戦う場所」。マジでオンとオフの差が激しいお方でした。

 ラストはピアノの生演奏。88ある鍵盤は上原ひろみの身体の一部と化し,歌を口ずさむかのように音を紡ぎ出してゆく。【HAZE】を聴いて号泣する長谷川潤ちゃんが素敵でした。

 上原ひろみが目指すもの。それは「昨日より今日。今日より明日。自分の今伝えたい気持ちを音にしたい」。
 いや〜,この言葉にグッと来ました。これまでも応援してきましたが上原ひろみが,もっともっと好きになりました。