COCAGE-1 『COCAGE』(以下『コカージュ』)を聴いて,管理人とMALTAの蜜月関係が解消した。

 管理人がこれまでMALTAを支持してきた理由は,MALTAの熱い「ジャズメン魂」を感じていたからだ。しかしMALTAは『コカージュ』で「ジャズメン魂」を悪魔へと売り飛ばしてしまった。「ジャズメン魂」と引き換えに“売れ線”という媚薬を手に入れたのだ。

 『コカージュ』はMALTAの13枚目。『コカージュ』へと行き着くには行き着くなりの“それなり”の理由があった。
 まず大きいのはMALTAが“売れっ子の味”を覚えたことであろう。一度味わうと忘れられない麻薬のような快感。TVで冠番組を持ちCMで自身の曲がガンガン流れている。それがなくなると人間なら誰しも寂しく感じるものなのであろう。
 そして世界のジャズ・シーン。元来,ジャズはスラングである。そこにブランフォード・マルサリスマイルス・デイビスのヒップ・ポップ作が話題となった。「MALTAよ,お前もか…」。

 『コカージュ』の内容,それ自体は良いと思う。ラテン・ヒップ・ポップ・ベースの斬新な音造りは正に時代の最先端であった。
 【ソウル・プレイン】は往年のウキウキ・ソング。トロピカルな【ソンブリラ】。【ラヴァーズ】は名バラードだと思う。

COCAGE-2 では何がそんなに鼻につくのだろう。管理人が悔しいのはMALTAアルト・サックスを置いたことだ。
 【J & B】【オエ・コモ・ヴァ】【イフ・ユー・アスク・ミー・トゥ】【AIR】…。
 あれ程ワンマンにアルト・サックスを吹き鳴らしてきたMALTAアルト・サックスを“味付け”として使用していることだ。

 メインはラップ? シンセ? ラテンのリズム? それ位,アルト・サックスの陰が薄いのだ。そう。『コカージュ』でのMALTAは,アルト・サックス・プレイヤーではなくサウンド・クリエイター。
 コンポーザー,アレンジャー,プロデューサーとして奔走した挙句“自分本来の音”を失ってしまっている。「金に目がくらむ」とはこのことか…。

 すまん。MALTA。管理人は“ストイックにジャズと向き合う”昔の貴方が大好きでした。

  01. J & B
  02. OYE COMO VA
  03. IF YOU ASK ME TO
  04. SOUL PLANE
  05. LAS MUCHACHAS
  06. SOMBRILLA
  07. LOVERS
  08. TRUST (IN WHAT YOU FEEL INSIDE)
  09. COCAGE
  10. AIR II
  11. AIR V (BIG PACIFIC)
  12. BEST FRIENDS (LOVERS)

(ビクター/JVC 1992年発売/VICP-175)
(ライナーノーツ/河原英三)

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