
カズミ・バンドとは,NYの精鋭を起用した『ト・チ・カ』の日本人バンド・ヴァージョン。メンバーはギターの渡辺香津美に,キーボードの笹路正徳,テナー・サックスの清水靖晃,ベースの高水健司,ドラムの山木秀夫。
そう。カズミ・バンドの真実は渡辺香津美+マライア。マライアの面々が放つ吹き矢が渡辺香津美のハートを射抜き,渡辺香津美の全身に毒が回っている。そう思わざるを得ない位に,ハーモニーに心酔しのたうち回ったアドリブ・ラッシュの渡辺香津美“一世一代の”大名演。
カズミ・バンドを経験し,もはや毒なしでは演奏できない体になってしまった渡辺香津美。続くMOBO〜ビル・ブラッフォード〜レゾナンス・ヴォックス〜アコースティックやらストリングスやらクラシックやらの“自滅の人生”は,カズミ・バンドを超える“毒探しの旅”に思える。
今の渡辺香津美に必要なのは毒である。答えは明白=カズミ・バンドの再結成だと思うのだが…。
いいや,今の渡辺香津美に必要なのは猛毒である。答えは明白=「世界のプログレ・ドラマー」ビル・ブラッフォード・リターンズ(仮想でOK)であろう。
『ガネシア』で花開いた「バカテク・変態・変拍子」こそビル・ブラッフォードの代名詞。カズミ・バンドが5人がかりで「世界のプログレ・ドラマー」と対峙している。そのようにして日本のプログレ・フュージョンが誕生した。
ドラマー=山木秀夫が強烈な甲高いスネアのリズムで打ち抜いてゆくのは勿論だが,渡辺香津美のディストーションなギター・サウンドと他の3人の重心が下がった音造り。そう。カズミ・バンドの各人が考える,5人5流のビル・ブラッフォード・ライクなプログレ・フュージョン。

確かにその通り。しかし管理人には『ガネシア』なのだ。『ガネシア』の魅力は“熟れる寸前の”魅力。実験作なのに完成されている。完成されているのにまだまだ頂上を探っている。
一音たりとも聴き逃せない超硬派な【リボージ】。泣きの【ムーン・ドロップス】。人を喰ったかのような【カゴのニュアンス】。
この振り幅は要するに過渡期。『ガネシア』前・『ガネシア』後がない唯一無二のプログレ・フュージョン。混沌と整然が絶妙に同居する抽象性。適当にやったはずが全てピシャリ。この快感は他に類例がない。
管理人の結論! 『ガネシア』こそ,渡辺香津美とJ−フュージョンの飛び抜けた大傑作である!
PS 『ガネシア』の先進性は音楽だけではありません。色違いのジャケット3種類はジャニーズ・ハロプロ・AKB商法の元祖でした。
01. RIBOJ
02. RETURN OF THE BOLIVIAN SOONG SOONG MAN
03. GANAESIA
04. MOON DROPS
05. RACOON ROLL
06. MOENEGA
07. JAZOO
08. カゴのニュアンス
(ポリドール/DOMO 1982年発売/POCJ-2425)
ガネシアは大好きなアルバムです。
LPで赤ジャケと水色ジャケの2種類を持っています。
残りの一色とはまだ出会えてません(笑)