MORNING ISLAND-1 「ナベサダフュージョン」の「頂点」。それが『MORNING ISLAND』(以下『モーニング・アイランド』)である。

 管理人の中で「ナベサダフュージョン」と「J−フュージョン」は同じではない(尤も,これは個人的な主観であって,世間では「ナベサダフュージョン」も「J−フュージョン」も同じです)。
 読者の皆さんも渡辺貞夫日野皓正の音楽を聴いた後に,DIMENSIONTRIXを聴いてみたらすぐに分かる。

 違いの理由は音楽性の構造の違い。渡辺貞夫日野皓正の第一世代が“基本ジャズの発展形”なのに対し,DIMENSIONTRIXの第三世代は“基本脱ジャズの発展形”。
 ズバリ,バックボーンとしてのジャズを,持つか否か,の違いである。

 そう。ジャズをバックボーンにPOPにクリエイトされた『モーニング・アイランド』。『モーニング・アイランド』は「J−フュージョン」第一世代の最後の名盤である。
 『モーニング・アイランド』は,軽く聞き流すことはできやしない。ジャズメンが作ったフュージョンのテイストが残っている。テーマは分かりやすいのだがアドリブが高度なままで少々難解なテイストが残っている。

 ナベサダ・ファンの大方は『マイ・ディア・ライフ』『カリフォルニア・シャワー』と『モーニング・アイランド』『オレンジ・エクスプレス』の2:2の間で線を引く人が多いと思う。理由は“南国リゾートな”LAと“都会の摩天楼な”NY。そう。ジェントル・ソウツスタッフのバックの違いであろう。バック・メンバーが違うのだからカラーの変化はある意味当然なこと。しかしトータル・サウンドとして聴いてみて欲しい。

 『モーニング・アイランド』で強く感じるのは,スタッフ色ではなくデイブ・グルーシン色。デイブ・グルーシンが『マイ・ディア・ライフ』『カリフォルニア・シャワー』でジェントル・ソウツの面々をまとめ上げたように『モーニング・アイランド』ではスタッフの面々をまとめ上げている。

 「ナベサダフュージョン」の場合,バックは,LAかNYか,ではなく,デイブ・グルーシンか否か,なのである。
 それでおせっかいを承知で「ナベサダフュージョン」の楽しみ方をレクチャーすると,デイブ・グルーシン目当てで「ナベサダフュージョン」を聴くのは有りだが,ジェントル・ソウツ目当て,スタッフ目当てで聴き漁るのなら,本来のジェントル・ソウツスタッフのイメージを掴み損ねますのでご注意を。

 お〜っと,かなり本論から脱線してしまっているが,管理人なら『マイ・ディア・ライフ』『カリフォルニア・シャワー』(皆さんお忘れですが『オータム・ブロー』)に『モーニング・アイランド』までをまとめて線を引くということ。2:2ではなく3:1。大好きな『オレンジ・エクスプレス』は第二世代の最初の名盤扱いでいいと思っている。

MORNING ISLAND-2 だから『モーニング・アイランド』が「ナベサダフュージョン」の「頂点」。『マイ・ディア・ライフ』〜(皆さんお忘れですが『オータム・ブロー』)〜『カリフォルニア・シャワー』の流れが全てにおいて『モーニング・アイランド』で結実している。

 渡辺貞夫はやっぱり渡辺貞夫だった。一つ一つの音の背後にナベサダらしい温かさを感じ取る。マイルドで,分かりやすく,心に響くアルト・サックスソプラニーニョフルート

 細かく聴けばスタッフデイブ・グルーシンになりデイブ・グルーシン渡辺貞夫になっている。
 そう。共演者の全員で“世界のナベサダ”のハーモニーを奏でている。

 渡辺貞夫のあの笑顔に,あのアルト・サックスの音色に皆が引き寄せられている。『モーニング・アイランド』で明らかになった渡辺貞夫の求心力! だ・か・ら・他のどんな「J−フュージョン」とも異なる“オンリー・ワン”な「ナベサダフュージョン」!
 “ザ・渡辺貞夫”は,共演者だけでなくリスナーをも心酔させる男であった。

  01. MORNING ISLAND
  02. DOWN EAST
  03. SERENADE
  04. WE ARE THE ONE
  05. HOME MEETING
  06. PETET VALSE POUR SADAO
  07. SAMBA DO MARCOS
  08. INNER EMBRACE

(フライング・ディスク/FLYING DISK 1979年発売/VICJ-61362)
(紙ジャケット仕様)

人気ブログランキング − 音楽(ジャズ)