ART PEPPER MEETS THE RHYTHM SECTION-1 アート・ペッパーの“最高傑作”のみならず,コンテンポラリーを,そしてウエスト・コースト・ジャズをも代表する名盤ART PEPPER MEETS THE RHYTHM SECTION』(以下『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』)。
 このアルバム・タイトルの真意を紐解けば『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』成功の秘訣が見えてくる!

 『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』はアート・ペッパーソロではない。ソロでなければ,一般的に「リズム・セクションが参加している」とわざわざ記す必要性はないと思う。
 しかし『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』の場合は『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』だとリズム・セクションの存在を明記する必要性があった。

 コンテンポラリーが仕掛けたは“当代髄一の”リズム・セクション。定冠詞つきの「ザ・リズム・セクション」と称された3人。ピアノレッド・ガーランドベースポール・チェンバースドラムフィリー・ジョー・ジョーンズ
 そう。マイルス・デイビス栄光の第1期黄金クインテットの3人なのである。

 アート・ペッパーマイルス・デイビスの「ザ・リズム・セクション」の共演は,ウエスト・コースト・ジャズ最高のアルト・サックス・プレイヤーにして,白人最高のアルト・サックス・プレイヤーのアート・ペッパーを売り出すらめの仕掛けである。話題性に富むマイルス・デイビスリズム隊との共演なのだから「ザ・リズム・セクション」をプッシュしたのも当然であろう。

 そんな“下心”で付けられた何の変哲もないアルバム・タイトル。しかし『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』とネーミングされた「ザ・リズム・セクション」との“対等な”共演こそが『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』をアート・ペッパーの“最高傑作”へと押し上げた最大の理由なのである。

 そう。“西の代表”アート・ペッパーの「白さ」と“東の代表”ザ・リズム・セクションの「黒さ」。これぞ「ウエスト・ミーツ・ザ・イースト」の決定盤。後付の偶然にして「意味深」だよなぁ。「名は体を表わす」だったよなぁ。

 ええい,べらんめぇ。ここで暴言覚悟で一言物申す。
 ズバリ「ウエスト・ミーツ・ザ・イースト」の『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』は“50年代のフォープレイ”なのだ。管理人はこれを言いたいのだ。
 フォープレイこそ「ウエスト・ミーツ・ザ・イースト」。「西の代表」リー・リトナーネーサン・イーストハービー・メイソンと「東の代表」ボブ・ジェームス。こんな組み合わせが聴きたかった〜!

 4人対等のチーム・プレイが身上のフォープレイと同じく『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』の4人も対等のチーム・プレイ。“クールで洗練された”アート・ペッパーが“ブルージーな”レッド・ガーランドポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズと音を重ねても全く違和感を感じない。いいや,あたかもレギュラー・グループのような息の合った演奏を展開している。

 この“50年代のフォープレイ”のような名演の副産物が“オーディオ・マニア必携の”高音質盤の誕生へとつながっている。
 アルト・サックスアート・ペッパーピアノレッド・ガーランドに負けない,ベースポール・チェンバースドラムフィリー・ジョー・ジョーンズの明瞭さが際立っている。ベースドラムがバランス・ギリギリまで前に出ている。大音量でクリアな音質のベースドラムこそが高音質盤の秘訣であろう。

 マジで音がいい。XRCDに買い換えて大満足。これぞ大音量で鳴らすに値する超名盤。東のヴァン・ゲルダーと並び称される西海岸を代表する録音技師=ロイ・デュナンの音はとてもクリアでアート・ペッパーの軽やかなアルト・サックスの魅力を伝える驚異の臨場感。いつでも聴きたい,いつまでも持っていたいXRCDである。

ART PEPPER MEETS THE RHYTHM SECTION-2 さて,ここまで『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』を“最高傑作”と連呼してきたが,アート・ペッパーの“アドリブの冴え”は『サーフ・ライド』前後の絶頂期には及ばない。

 『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』の最大の魅力は,アート・ペッパーの“端正でオーソドックスな”ジャズ・サックスの「教則本」のお手本として出てきそうなスマートなアドリブである。陰影の少ない軽やかなアルト・サックスが重量級のリズム・セクションの上を艶やかな音色で飛翔している。

 そう。『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』は「超一流の演奏と聴きやすさが同居した」がゆえの“最高傑作”。ゆえにウエスト・コースト・ジャズの代表盤。言わば「万人向け」の大名盤
 『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』は,マイナー調のメロディ&分かりやすいアドリブ命のジャズ初心者と全てを一巡したジャズ上級者のための大名盤

 暴言覚悟で断言すれば『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』を耳タコになるまで聴き込んだマニアならBGMとして楽しめる。何百回聴いても肩の凝らないBGM。だって“50年代のフォープレイ”なのですから。これ本気で書いています。

 名演にして高音質。あまりにも“ベタな”『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』。
 『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』が苦手な読者の皆さん,あなたはジャズの中級者ではありませんか?

  01. YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO
  02. RED PEPPER BLUES
  03. IMAGINATION
  04. WALTZ ME BLUES
  05. STRAIGHT LIFE
  06. JAZZ ME BLUES
  07. TIN TIN DEO
  08. STAR EYES
  09. BIRKS WORKS
  10. THE MAN I LOVE

(コンテンポラリー/CONTEMPORARY 1957年発売/VICJ-61039)
(ライナーノーツ/レスター・ケーニッヒ,久保田高司)
(☆XRCD24盤仕様)

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