ALONE-1 ビル・エヴァンスが好きだ。しかし熱狂的という訳ではない。どこかで冷めたもう一人の自分がいる。無意識に距離を置いてしまうもう一人の自分がいる。
 理由は分かっている。『ALONE』(以下『アローン』)である。『アローン(アゲイン)』は大好きなのに『アローン』が全くなのだ。

 これは管理人の欠点だと自覚している。それはピアニストの優劣をピアノ・ソロで判別してしまうクセ。ダメなことだと分かっているのだが,もうすでに自分の中でのピアニストの試金石=判断基準となっている。もはや取り除くことも動かすこともできないのだからどうしようもない。

 ビル・エヴァンスにとって不運だったのは,生涯中にピアノ・ソロを3枚しか制作しなかったことだ。しかもその内の1枚『EASY TO LOVE』は寄せ集めの録音集ゆえ実質2枚=『アローン』と『アローン(アゲイン)』。
 そして管理人は『アローン』を最初に聴いた。名盤アローン(アゲイン)』が先だったら良かったと思う。『アローン』にガッカリして『アローン(アゲイン)』には長らく興味を失ったままだった。

 駄盤の『アローン』。世評的にもビル・エヴァンスソロ・ピアノと来れば完全ピアノ・ソロのよりも一人多重録音とかエレピを指して用いられる。
 お〜っと,何だかズタボロに書いてしまっているが『アローン』の出来は水準以上。かのグラミー賞まで受賞している。

 しか〜し,思い返せばこのグラミー受賞=戦犯のキーワード。
 『アローン』の演奏曲目は,ジャズスタンダードというよりポップな有名既存曲ばかり。ビル・エヴァンスソロ・ピアノに難解なところはない。
 そう。『アローン』は,ビル・エヴァンス一流の弾きこなし&調理法が受けたのだ。所謂,リリシズムのイマジネーション満開である。だから大衆に受け入れられたのだ。

 しかし,どんなに大衆に受け入れられようとも,管理人が求めるピアノ・ソロは『アローン』の中にはみつからなかった。管理人が求めるビル・エヴァンスは『アローン』の中にはいなかった。

 一言でいえば『アローン』のピアノ・ソロの世界観に入り込むことができなかった。音の濃度がクリアーすぎてダイレクトすぎる“非ジャズ”に嫌悪感を抱いてしまった。
 これはビル・エヴァンスの意図とは無関係に録音のせいかもしれない。『アローン』のピアノの残響音は「木端微塵なドライ音」。

ALONE-2 そう。生涯のメロディ弾きのビル・エヴァンスに,勝手にキース・ジャレットやらチック・コリアやらの「インプロビゼーションの開祖」に期待を膨らませすぎた分,ガッカリ度が高かった。

 駄盤の『アローン』。それは管理人の大きな勘違い。ただそれだけ。だけど刷り込みがインプット完了なので駄盤。ただそれだけ。頭真っ白にして聴いた『アローン』の続編『アローン(アゲイン)』は大好きなのだから,期待が裏切られた時のショックの大きさだけなのだろう。

 でも,もはや『アローン』への悪感情は修復不能。不運である。管理人は『アローン』を“ビル・エヴァンスの不運”と呼んでいる。なんのこっちゃ〜。

  01. HERE'S THAT RAINY DAY
  02. A TIME FOR LOVE
  03. MIDNIGHT MOOD
  04. ON A CLEAR DAY (YOU CAN SEE FOREVER)
  05. NEVER LET ME GO
  06. ALL THE THINGS YOU ARE / MIDNIGHT MOOD
  07. A TIME FOR LOVE (Alternate take)

(ヴァーヴ/VERVE 1969年発売/UCCU-5021)
(ライナーノーツ/杉田宏樹,岩浪洋三)

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