LOOKOUT FOR HOPE-1 “鬼才”ビル・フリゼールが結成した自己名義のバンド=「ビル・フリゼールバンド」のデビュー盤『LOOKOUT FOR HOPE』(以下『ルックアウト・フォー・ホープ』)。

 予想通り=期待通りに『ルックアウト・フォー・ホープ』でもビル・フリゼールの“不思議ちゃん”ワールド全開!
 ただし,ハンク・ロバーツチェロが効きすぎてしまった副産物なのだろう。ビル・フリゼールの“不思議ちゃん”ワールドが固まってきている。『イン・ライン』で感じた“浮遊感”や“狂気”がバンド・サウンドとして上手に固定化できている。 

 『ルックアウト・フォー・ホープ』での混沌とした“ごった煮”感のバンド仕様が,かえってビル・フリゼールソロギターを浮き上がらせる仕掛けなの? チェロあるいはバンジョーが,こんなにもハマッたジャズ・アルバムはそう滅多にあるものではない。

 『イン・ライン』での異空間が『ルックアウト・フォー・ホープ』で立体化している。エレクトリックアクースティックがクロスする,奥行きのあるジャズ・ギターとして進化している。
 チェロをも呑み込むジャズ・ギターが無敵! そう。ビル・フリゼールの懐の深さこそが“宇宙空間”! ブラックホールのように,そこで鳴っている音楽だけでなく,聴いているリスナーさえをも呑み込んでみせる。管理人もビル・フリゼールの体内に取り込まれてしまった → HELP ME!

 そう。「ビル・フリゼールバンド」の3人のメンバーは,すでにビル・フリゼールに取り込まれてしまっている。司令塔=ビル・フリゼールの意のままに“ビル・フリゼールの音”を発している。

LOOKOUT FOR HOPE-2 『ルックアウト・フォー・ホープ』にはビル・フリゼールの“影武者”がいる。バンド・メンバー=チェロハンク・ロバーツベースカーミット・ドリスコルドラムジョーイ・バロンが,個性全開で,ただし
ビル・フリゼール“ばり”に演奏していく。だ・か・ら立体的な“不思議ちゃん”ワールド全開!

 一人多重録音メイン+ゲスト・ベ−シストの『イン・ライン』を越えた,四人による“疑似”一人多重録音作『ルックアウト・フォー・ホープ』。
 「伸びやかなまま揺らぐリリカルな静けさ」を基調とするECMの申し子=ビル・フリゼールの“バンド・サウンド”を堪能できる。

  01. Lookout for Hope
  02. Little Brother Bobby
  03. Hangdog
  04. Remedios the Beauty
  05. Lonesome
  06. Melody for Jack
  07. Hackensack
  08. Little Bigger
  09. The Animal Race
  10. Alien Prints

(ECM/ECM 1988年発売/UCCE-3028)
(ライナーノーツ/松永紀代美)

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