GOOD DOG, HAPPY MAN-1 『NASHVILLE』は最高だったのになぁ…。
 これが『NASHVILLE』の続編である『GOOD DOG,HAPPY MAN』(以下『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』)を聴いた後の正直な感想であった。

 『NASHVILLE』で,アメリカン・カントリーの真髄を“掘り当てた”ビル・フリゼールの金脈探しに正直,食傷気味になってしまった。そこまでやるか〜,な気分に襲われる。

 『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』が,紛れもない名盤であることは認める。ただし,ここまで来てしまうと「“ジャズ・ギタリスト”の看板を下ろしてからにせい」とのたまいたくもなってくる。
 そう。『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』には『NASHVILLE』に残されていた“遊び”がない。『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』は“本格派”アメリカン・カントリー・アルバムに仕上がっている。

GOOD DOG, HAPPY MAN-2 信じ難いが『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』のほとんどで,ビル・フリゼールはサビを弾いていない。
 とはいえメロディーを基に演奏を膨らましていく手法はジャズ的であるし,一見何も主張していないのに確かに「ギター・ミュージック」している。
 こんな切り口で演奏できるジャズ・ギタリストなんてビル・フリゼールを他にしてそう滅多にいるものではない。ウォー!

 ビル・フリゼールのホンノリ土臭く浮遊感漂うギターが,ただただ気持ちいい。ビル・フリゼールギターが曲を“装飾するかのように”メロディーを紡いでいる。

 『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』でのビル・フリゼールは「ふにゃ〜ん」である。素朴なフレージングを垂れ流しっぱなしである。な・の・に・見事な構成美を強く感じてしまう。なんだこれ〜。

GOOD DOG, HAPPY MAN-3 『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』の本質を例えるなら「車窓から眺める風景のような音楽」。ビル・フリゼールギターは車窓を流れる雲のようなものである。
 バックの音が暗くなると雨雲のように響き,バックがカンカン照りになると入道雲のようにモクモク,バックがロックで稲妻雲…。そんな中,どんなに気候が急変しようと雲の流れだけは一定であるようにビル・フリゼールは「ふにゃ〜ん」なのである。ブレテいない。四角い車窓のキャンバスの中だけで雲が流れ続けていく構成美。

 うん。この構成美がやりすぎだ。『NASHVILLE』は,ハミ出すかハミ出さないか,のコントロールが絶妙であった。『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』のビル・フリゼールは決してハミ出さない。やりすぎた分だけ退屈なのだ。

 “天才”ビル・フリゼールは牧歌的にギターを鳴らす“ツボ”を心得ている。懐かしさ以上に“リアル”なアメリカン・カントリーを感じさせてくれる。
 そう。『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』こそ“現在進行形”のアメリカン・カントリー! これぞ『NASHVILLE』の完成形!

GOOD DOG, HAPPY MAN-4 “天才”ビル・フリゼールさん。あなたのチャレンジ精神が大好きでした。特に『NASHVILLE』は“未完の大器”仕上げでしたので最高でした。

 “天才”ビル・フリゼールさん。『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』で『NASHVILLE』の全貌を知らされてしまった私は今後どうしたらよいのですか? 何を楽しみとしたらよいのですか? もうすでに『グッド・ドッグ,ハッピー・マン』以降のソロ・アルバムは全て売り飛ばしてしまったのですから〜。

 えっ? あっそうですか? 何回聴いても“不思議ちゃん”な『IN LINE』を聴け!ですか? そうですよね〜。

  01. Rain, Rain
  02. Roscoe
  03. Big Shoe
  04. My Buffalo Girl
  05. Shenandoah (for Johnny Smith)
  06. Cadillac 1959
  07. The Pioneers
  08. Cold, Cold Ground
  09. That Was Then
  10. Monroe
  11. Good Dog, Happy Man
  12. Poem for Eva

(ノンサッチ/NONESUCH 1999年発売/WPCR-19012)
(☆スリーブ・ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/熊谷美広)

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