ディア・フレンズ / 小曽根真 本日,TOKYO−FM系「ディア・フレンズ」に小曽根真がゲスト出演しました。
 『TIME THREAD』にまつわる制作秘話とニューヨーク・フィルハーモニックとの共演ライブのプロモーションです。

 「基本,お家が今東京にあるんですけど,ニューヨークに住んでいたんですけど,10年位までからクラシックを演奏させていただくようになってヨーロッパに行く機会が増えてたんですよ。日本にツアーに来たりコンサートに来たりしてニューヨークに帰って洗濯だけして,次の日の飛行機でヨーロッパに行ったりとか,だんだんニューヨークのアパートが洗濯場だけになってきて。それも22丁目辺りでしたから結構高い洗濯場だったんですね」。
 「これはあきらめて一度ちょっと日本に,相棒が役者やってますから彼女も日本に住んでるので,夫婦バラバラに住んでいるのはよくないので,今,日本が拠点になってヨーロッパとアメリカを行ったり来たりなんですけど,ちょっとニューヨークが増えてきそうなので,やっぱりどこかにもうちょっと安めの洗濯場を作った方がいいかな」と話す小曽根真の超・多忙ぶり!

 バークリー音楽大学出身。エリートコースのジャズ・ピアニスト説を一蹴。「スケールの名前も分からなくて,楽典を勉強しにバークリーに行った。結果,今,ビッグ・バンドに書けるようになったりオーケストラに書けるようになった。ピアノは元々,オスカー・ピーターソンという“超絶技巧”なピアニストが好きだったので,彼のスタイルで弾けるように練習すると派手になる。目立つようになると先生から「お前上手いな。一緒に仕事しようぜ」ってことで演奏活動が活発になってきて,学校内でも「自分のリサイタルにピアノ弾いてほしい」とか。よろず屋と言われていてどんなスタイルでも弾いていると,勝手に,バークリーでは首席みたいなことになった。授業とかテストの結果よりも実技が重視される。内容よりも派手なピアノだった」。
 「学校の先生からは,ジャズって自分のスタイルを作らなければいけない,って言われていたんだけど,その頃はデビューするって思っていなかったし,オスカー・ピーターソンのように弾ければ幸せだったし,世界で一番速く弾けるピアニストになりたかった。「スピード命」だった。デビューすることになって,自分の音楽を作らなきゃいけないと慌てふためいて,それから突然クラシックを聴いたりとか。こてこての「ジャズ派」ではない」とのこと。

 小曽根真の“恩師”であるヴィヴラフォン奏者のゲイリー・バートンとのデュオ作『HOT HOUSE』の制作秘話が必聴。

 卒業と同時に出会って「スピード命」でピアノを弾いている時で,ゲイリー・バートンは「ああ,かわいそうにこの子テクニックを弄んで音楽性ゼロだ」って思われていたそうで,その一週間後にバークリーの学長さんの家でアルバイトでBGMを弾いていたら,小曽根真ピアノの後ろにずっと立っている人がいた。休憩時間が来たからクルッと後ろを向いたら「なんだお前,ちゃんとピアノ弾けるんじゃないか。明日,俺のオフィスに来い」ってゲイリー・バートンに言われて。それから毎週1回ゲイリー・バートンから手ほどきを受けて30年…。
 そんないろんな小曽根真の中にあるゲイリー・バートンとのエピソードをテーマに曲を書いたのが“時間の糸”『TIME THREAD』“紡いできた時間”の音楽とのこと。

 そこから世界デビューしてキャリアを積んできた小曽根真。今では年間のコンサートの3分の1はクラシック・コンサートなんだとか。ここから先はクラシック話。“ジャズ・ピアニスト小曽根真は一休み。

 「最初クラシックを弾き始めた頃は,それこそモーツァルトの【2台のピアノのコンチェルト】と,ガーシュインの【ラプソディ・イン・ブルー】と【コンチェルト・イン・エフ】ぐらいしかなかったんですけど,一つやってその結果が良かったりすると,コンダクターが「次何やろうか」って言って下さって。「何やろうかって言っても僕は何も知らないので何をやったらいいか教えてください」って言って。という事で少しずつレパートリーが増えて来て」。
 「コンダクターと関係を築いていくのが大事というよりも,ジャズは即興で自分が聴こえた音を手と相談しながら弾ける。でもクラシックは書かれている音を弾かないといけないので練習しないといけない。元々,我流で好き放題ピアノを弾いてきているんで,習うのが嫌いなんですですね。怠け者の練習嫌いな人間でも,やらなきゃいけないからやりますよね。曲をいただく時にコンダクターに「俺に弾ける思う?」と聞くと「半年ぐらい本気でやればできんじゃない?」って感じ。
 「でも譜面通りに弾けたら終わりじゃない。ようやく発表会からコンサートになってきた。手応えを感じてきた。初めて門のところに立った気がする。これはえらいところにきちゃったなぁと。ジャズの合間にクラシックは練習するしかないから150歳ぐらいまで生きたい。時間が欲しい」とのこと。

 そうしてニューヨーク・フィルハーモニックとの共演話。
 「クラシックを弾くという事自体もそうなんですけど,自分の人生プランの中には微塵もなかったことですよね。特に今回【ラプソディ・イン・ブルー】っていうあまりにも有名な曲なんですけど「本家本元」ニューヨーク・フィルと僕が出来るっていうのはピアニストにとってはこれほど幸せな…同時に怖いんですけどね」。
 「ニューヨーク・フィルの指揮者と初めてお会いした時に,名刺代わりに小曽根真ジャズCDを3枚渡したら,1月ほどして「家族みんなで聴いてて凄い楽しい」ってメールが来て。2日間連チャンで家に遊びに行ったら,夜ずっと2人でクラシックではなくジャズを聴いた。20年来の親友みたいな感じでパーンと繋がった。コンサートが楽しみ」とのこと。

 最後に小曽根真ジャズ・ピアニストとしてクラシックに挑むモチベーションが興味深い。
 「以前はクラシックと言っただけで肩が凝っていたし,譜面に書かれた音楽を弾いて何が楽しいの?って言っていた。でも実際にそこにたまたま行ってみて,音楽の展開の仕方,ハーモニーとリズムとメロディがジェットコースターのように違う所に連れてってくれて。会話のような言語がジャズと同じだと思った」とのこと。

 コンポーザーはその時代に生きた人の音符を奏でることを望んでいる! 音を奏でるという行為の“魂の叫び”がクラシックにもジャズにもある!

 以下,オンエア曲一覧です。

1曲目 : 【LEE’S PARTY】 / 小曽根真 & ゲイリー・バートン
2曲目 : 【MY WITCH’S BLUE】 / 小曽根真