「根明」なキャノンボール・アダレイと「根暗」なビル・エヴァンス…。
「ソウルフル」なキャノンボール・アダレイと「ファンタスティック」なビル・エヴァンス…。
「ファンキー」なキャノンボール・アダレイと「リリカル」なビル・エヴァンス…。
そう。正反対な個性で鳴らす2人のジャズ・ジャイアント,キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスの共演は「水と油」?
NO! 「水と油」が決して混ざらないのは物質工学のお話。音楽において,それがジャズ・ジャイアント同士であれば「水と油」も溶け合ってしまうのだ。その物質工学の証拠が『KNOW WHAT I MEAN?』(以下『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』)。大名盤の完成である。
ズバリ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』の聴き所は,キャノンボール・アダレイでもなければビル・エヴァンスだけでもない。『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』を駄盤だと評するジャズ・ファンはキャノンボール・アダレイを単独で,ビル・エヴァンスを単独で聴こうとしているのではなかろうか?
そのような聴き方をしていれば多分に駄盤である。『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』におけるキャノンボール・アダレイのアルト・ソロを抜き出して聴いても,ビル・エヴァンスのピアノ・ソロを抜き出して聴いても,パッとした部分は少ない。
そう。『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』は「キャノンボール・アダレイ・ウィズ・ビル・エヴァンス」名義。キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスの“濃厚な”インタープレイを聴いてこそ!
互いの突出したキャラクターが抑えられている分,互いの普段は余り目立たないエッセンスが上手に引き出されている。料理で言う所の“隠し味”。辛口カレーに甘口のリンゴ,ハチミツ,ココナッツ,おまけにバナナやヨーグルトが効くのと同じ現象である。
「陰と陽」の代表格,キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスが互いの“甘辛い”個性を補い合い,それぞれの良さを引き立て合っているのだ。“能天気すぎない”キャノンボール・アダレイと“美しすぎない”ビル・エヴァンスが最高なのである。
『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』の成功の秘訣は,キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスが互いに示す最高度のリスペクトにある。
「キャノンボール・アダレイ・ウィズ・ビル・エヴァンス」名義であるのだから,主役を張るのはキャノンボール・アダレイの方であろうが,ビル・エヴァンスの代表曲【WALTZ FOR DEBBY】と【ELSA】といい,他のミディアム〜バラード系の選曲といい,ビル・エヴァンス中心のアルバム作りがなされている。
そう。『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』におけるキャノンボール・アダレイの狙いは,第二の『カインド・オブ・ブルー』のそれである。
キャノンボール・アダレイがビル・エヴァンスに共感しビル・エヴァンスに寄り添っている。こんなにも繊細で軽やかにスイングするキャノンボール・アダレイを管理人は他に知らない。チャーリー・パーカーやアート・ペッパーと肩を並べる都会的なモード・アルトの香り。
これぞ“エヴァンス効果”なアルト・サックスである。
一方のビル・エヴァンスも【WALTZ FOR DEBBY】と【ELSA】における“歌心”はオリジナルを超えている。
キャノンボール・アダレイこそ,絶妙なバランス感覚を必要とするビル・エヴァンスの音世界にベストマッチなアルト・サックス奏者である。キャノンボール・アダレイの流麗で包み込むようなフレージングがビル・エヴァンスのリリカルなピアノを増幅している。
これぞ“キャノンボール効果”なピアノである。
「水と油」と思えたキャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスの想像を超えたケミストリー。そもそも水も油も同じ水溶性物質。キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスは共にインテリジェンスなモードの権化。
「陰と陽」が中和された,思いっ切りまろやかで伸びやかなジャズ。そう言えばキース・ジャレットもアメリカンではデューイ・レッドマンと! ヨーロピアンではヤン・ガルバレクと!
01. Waltz for Debby
02. Goodbye
03. Who Cares? (take 5)
04. Venice
05. Toy
06. Elsa
07. Nancy (with the Laughing Face)
08. Know What I Mean? (re-take 7)
09. Who Cares? (take 4)
10. Know What I Mean? (take 12)
「ソウルフル」なキャノンボール・アダレイと「ファンタスティック」なビル・エヴァンス…。
「ファンキー」なキャノンボール・アダレイと「リリカル」なビル・エヴァンス…。
そう。正反対な個性で鳴らす2人のジャズ・ジャイアント,キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスの共演は「水と油」?
NO! 「水と油」が決して混ざらないのは物質工学のお話。音楽において,それがジャズ・ジャイアント同士であれば「水と油」も溶け合ってしまうのだ。その物質工学の証拠が『KNOW WHAT I MEAN?』(以下『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』)。大名盤の完成である。
ズバリ『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』の聴き所は,キャノンボール・アダレイでもなければビル・エヴァンスだけでもない。『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』を駄盤だと評するジャズ・ファンはキャノンボール・アダレイを単独で,ビル・エヴァンスを単独で聴こうとしているのではなかろうか?
そのような聴き方をしていれば多分に駄盤である。『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』におけるキャノンボール・アダレイのアルト・ソロを抜き出して聴いても,ビル・エヴァンスのピアノ・ソロを抜き出して聴いても,パッとした部分は少ない。
そう。『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』は「キャノンボール・アダレイ・ウィズ・ビル・エヴァンス」名義。キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスの“濃厚な”インタープレイを聴いてこそ!
互いの突出したキャラクターが抑えられている分,互いの普段は余り目立たないエッセンスが上手に引き出されている。料理で言う所の“隠し味”。辛口カレーに甘口のリンゴ,ハチミツ,ココナッツ,おまけにバナナやヨーグルトが効くのと同じ現象である。
「陰と陽」の代表格,キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスが互いの“甘辛い”個性を補い合い,それぞれの良さを引き立て合っているのだ。“能天気すぎない”キャノンボール・アダレイと“美しすぎない”ビル・エヴァンスが最高なのである。
『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』の成功の秘訣は,キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスが互いに示す最高度のリスペクトにある。
「キャノンボール・アダレイ・ウィズ・ビル・エヴァンス」名義であるのだから,主役を張るのはキャノンボール・アダレイの方であろうが,ビル・エヴァンスの代表曲【WALTZ FOR DEBBY】と【ELSA】といい,他のミディアム〜バラード系の選曲といい,ビル・エヴァンス中心のアルバム作りがなされている。
そう。『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』におけるキャノンボール・アダレイの狙いは,第二の『カインド・オブ・ブルー』のそれである。
キャノンボール・アダレイがビル・エヴァンスに共感しビル・エヴァンスに寄り添っている。こんなにも繊細で軽やかにスイングするキャノンボール・アダレイを管理人は他に知らない。チャーリー・パーカーやアート・ペッパーと肩を並べる都会的なモード・アルトの香り。
これぞ“エヴァンス効果”なアルト・サックスである。
一方のビル・エヴァンスも【WALTZ FOR DEBBY】と【ELSA】における“歌心”はオリジナルを超えている。
キャノンボール・アダレイこそ,絶妙なバランス感覚を必要とするビル・エヴァンスの音世界にベストマッチなアルト・サックス奏者である。キャノンボール・アダレイの流麗で包み込むようなフレージングがビル・エヴァンスのリリカルなピアノを増幅している。
これぞ“キャノンボール効果”なピアノである。
「水と油」と思えたキャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスの想像を超えたケミストリー。そもそも水も油も同じ水溶性物質。キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスは共にインテリジェンスなモードの権化。
「陰と陽」が中和された,思いっ切りまろやかで伸びやかなジャズ。そう言えばキース・ジャレットもアメリカンではデューイ・レッドマンと! ヨーロピアンではヤン・ガルバレクと!
01. Waltz for Debby
02. Goodbye
03. Who Cares? (take 5)
04. Venice
05. Toy
06. Elsa
07. Nancy (with the Laughing Face)
08. Know What I Mean? (re-take 7)
09. Who Cares? (take 4)
10. Know What I Mean? (take 12)
(リバーサイド/RIVERSIDE 1961年発売/VICJ-41060)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,岩浪洋三)
(ライナーノーツ/オリン・キープニュース,岩浪洋三)