NO MYSTERY-1 リターン・トゥ・フォーエヴァーは『RETURN TO FOREVER』でのチック・コリアソロ・プロジェクトとしてスタートし『LIGHT AS A FEATHER』で「チック・コリア & リターン・トゥ・フォーエヴァー」名義となる。
 そしてリターン・トゥ・フォーエヴァーの第2期は『HYMN OF THE SEVEN GALAXY』『WHERE HAVE I KNOWN YOU BEFORE』と来て,エレクトリックギターを聴かせるチック・コリアスタンリー・クラークの双頭バンド,という形をとって発展してきた。

 では『NO MYSTERY』(以下『ノー・ミステリー』)と『ROMANTIC WARRIOR』(以下『浪漫の騎士』)でのリターン・トゥ・フォーエヴァーはどうであろうか?
 ズバリ『ノー・ミステリー』と『浪漫の騎士』は,もはやメンバー・チェンジなどなくても,チック・コリアスタンリー・クラークの双頭バンドではなくなり,チック・コリアスタンリー・クラークレニー・ホワイトアル・ディメオラの4人の“対等バンド”へと様変わりしている。

 この全てはリーダーであるチック・コリアが望んだことであり,レニー・ホワイトアル・ディメオラが急成長した,というわけではない。
 スタンスは異なるが,チック・コリアリターン・トゥ・フォーエヴァーのバンド運営で取った手法はチック・コリアのかっての師=マイルス・デイビスから学び取ったものだろう。

 『ノー・ミステリー』は,チック・コリアがバンドを支配することを意識的に止め,メンバーの才能を自由に発揮させるというマイルス・デイビスの手法が大当たり。4人のバカテクが心の底から堪能できる“狂喜乱舞”状態の名盤に仕上がっている。

 ただし,この試みが花開いたのは,次作『浪漫の騎士』でのこと。完全に“こなれた”『浪漫の騎士』が最高の名演であるとすれば『ノー・ミステリー』は“やってみないと分からない”あるいは“手探り”の名演である。
 完成度を取れば『浪漫の騎士』だが,聴いて面白いのは“プレイヤー指向な”『ノー・ミステリー』の方である。

NO MYSTERY-2 チック・コリアが音をまとめ上げていないのだから,バンド・サウンドとしてのアレンジはいま一つ。この条件は『ノー・ミステリー』も『浪漫の騎士』も同じなのだが『浪漫の騎士』では,意識せずとも4人がバッチリ合ってしまっている。

 この点で『ノー・ミステリー』は4人がわずかにズレている。これはレニー・ホワイトアル・ディメオラが前に出た結果,チック・コリアスタンリー・クラークが下がってしまった結果だと思う。

 ゆえに『ノー・ミステリー』のハイライトと,スタンリー・クラークが前に出てバンドをリードした【DAYRIDE】とチック・コリアスタンリー・クラークデュオNO MYSTERY】とチック・コリア“お得意の”組曲【CELEBRATION SUITE】の4トラック。
 チック・コリアが「責任編集」しなかった『ノー・ミステリー』の残る5トラックは「極上の音のルール無視な大爆発」である。

 チック・コリアが「責任編集」しなくとも『ノー・ミステリー』で芽を出した“制御不能な勢い”がバンドのコントロール下におかれてしまったのだから『浪漫の騎士』が凄すぎるのも納得である。

  01. DAYRIDE
  02. JUNGLE WATERFALL
  03. FLIGHT OF THE NEWBORN
  04. SOFISTIFUNK
  05. EXCERPT FROM THE FIRST MOVEMENT OF
     HEAVY METAL

  06. NO MYSTERY
  07. INTERPLAY
  08. CELEBRATION SUITE PART I
  09. CELEBRATION SUITE PART II

(ポリドール/POLYDOR 1975年発売/POCJ-2701)
(ライナーノーツ/成田正)

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