LIVE IN MOLDE-1 いや〜,分かる。無名のジャズ・オーケストラとの共演であっても,チック・コリアCD化したくなった気持ちがよ〜く分かる。

 チック・コリアジャズ・オーケストラの共演って,なんで今までなかったのだろう? とにかく,チック・コリアトロンハイム・ジャズ・オーケストラによるライブ盤=『LIVE IN MOLDE』(以下『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』)が,最高にハッピーで素晴らしい演奏なのだ。

 とにかく,ステージも客席も“ダンシング”である! もう黙って席に着いているなんて失礼極まりない“スイング大会”である!
 『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』を,踊り出したくなるのを我慢して冷静に分析してみると,実は一番ノッテいるのがチック・コリア“御大”ではなかろうか?

 『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』では,ジャズ・オーケストラの指揮とアレンジを,チック・コリア同じピアニストアールンド・スコムスヴォールに委ね,チック・コリア自身は“客演ピアニスト”として演奏だけに注力する構成である。

 “ジャズ・ピアニスト”一本に注力したチック・コリアが凄すぎる! 分厚いジャズ・オーケストラをバックにチック・コリアの“天才”が大爆発している!
 恐らくは,アールンド・スコムスヴォールの書いた譜面が用意されていたのだろう。勝手知ったる自作曲なのに,自分の頭の中にはなかった新鮮なアプローチに,チック・コリアの歓びと驚きがMAX! 自分の行きたいようには行けないアレンジの縛りが,却ってチック・コリアの“天才”を覚醒させている! チック・コリアの“ダンシング”!

 チック・コリアのバックを務めたトロンハイム・ジャズ・オーケストラの演奏であるが,所謂,ジャズビッグ・バンドではなく,チューバホルンまで加わったクラシックやアヴァンギャルド系を意識した,これぞ“ヨーロピアン”なアンサンブルを鳴らしている。

 もたつく部分が少しもない“超絶技巧系”のジャズ・オーケストラであって,洗練された雰囲気に仕上がっている。特に【WINDOWS】【ARMANDO’S RHUMBA】【BUD POWELL】における「変態ブラス隊」の響きを追いかけ続けるのが聴いていて最高に気持ち良かった。

LIVE IN MOLDE-2 それにしてもチック・コリアの自作曲って,こんなにジャズ・オーケストラに合うものなんだ。まるで最初からジャズ・オーケストラのために書き下ろしていたかのよう…。
 遅まきながら,チック・コリアの「ジャズフュージョン」界における名コンポーザーとしての“天才”を『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』で実感させられたのであった。チック・コリア「有難や〜」。

 『リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・イン・モルデ』のハイライトは(管理人の知る限り)チック・コリア初めての再演となる【RETURN TO FOREVER】であろう。
 【RETURN TO FOREVER】だけはエレピ。もうこれはこうなるしかないのだろう。出来上がりとしては??なのだが,とにかく著しく敷居の高い【RETURN TO FOREVER】の再演だけに,ファンとしては「有難や〜,あ〜,有難や〜」。

  01. CRYSTAL SILENCE
  02. WINDOWS
  03. MATRIX
  04. DUENDE
  05. ARMANDO'S RHUMBA
  06. RETURN TO FOREVER
  07. BUD POWELL
  08. SPAIN

(MNJ/MNJ 2006年発売/UCCJ-3016)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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